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たかが特別な時間の終わり / It's Only the End of Special Time

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December 02, 2025

たかが特別な時間の終わり / It's Only the End of Special Time

イベント:Developers Boost 2025 ~U35エンジニアの登竜門~
公演タイトル:たかが特別な時間の終わり - コーディングエージェント以後の不確実なキャリアについて
https://event.shoeisha.jp/devboost/20251206/session/6416

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December 02, 2025
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  1. About Me 渡邉 洋平(watany) • 所属:NTTテクノクロス株式会社 • AWS Ambassadors(2024〜) •

    JAWS-UG東京(AWSコミュニティ) 運営 • 寄稿:CodeZine ◦ https://codezine.jp/article/detail/22245 2
  2. 本講演の位置づけ - 対象:35歳以下のITエンジニア、 ITエンジニアを⽬指す学⽣ - 私が35歳の頃に作ったスライド と、その9か⽉後の現在 (2025/12/6)を踏まえたトークです 3 ・Developers

    Boost 2025 https://event.shoeisha.jp/devboost/20251206 ・エンジニアに許された特別な時間の終わり https://speakerdeck.com/watany/the-end-of-the-special-time-granted-to-engineers
  3. LLM Chat / Coding Agent、何が違ったか • Coding Agentはテキスト⽣成に留まらず ◦ 実装の依頼に対して「計画&振り返り」

    ▪ 利⽤者がしたのは承認‧決断のみ ◦ 実装に必要な「ツール実⾏」 ▪ ファイルのRead/Write、コマンド実⾏… • Coding Agent:コード補完やチャット応対を越え、⾃⽴したSWE として振舞うAI Agent ◦ 副操縦⼠/Copilot → 操縦⼠/Pilot 12
  4. Cline • VS Code Extension コーディングエージェント(OSS) ◦ ”必要になれば⼈間に聞く” Human-in-the-Loop ◦

    ”⼈間に聞かない機能” Auto Approve • 多彩なツールの実⾏ ◦ ファイルの作成‧編集、コマンド実⾏ ◦ ヘッドレスブラウザを⽤いたデバッグ ◦ MCP経由でのPlugin機能 https://github.com/cline/cline/blob/main/assets/icons/icon.png 13
  5. Cline • VS Code Extension コーディングエージェント(OSS) ◦ ”必要になれば⼈間に聞く” Human-in-the-Loop ◦

    ”⼈間に聞かない機能” Auto Approve • 多彩なツールの実⾏ ◦ ファイルの作成‧編集、コマンド実⾏ ◦ ヘッドレスブラウザを⽤いたデバッグ ◦ MCP経由でのPlugin機能 14
  6. コーディングにおける”⾃動運転”のレベル 副操縦士(Copilot) レベル0 AI支援な し レベル1 AI支援 Chat レベル2 AI支援

    補完 +Chat レベル3 Agent 人間が支 援 レベル4 Agent 人間の支 援なし レベル5 実装の完 全自動生 成 操縦士(Pilot) 23
  7. コーディングにおける”⾃動運転”のレベル 副操縦士(Copilot) レベル0 AI支援な し レベル1 AI支援 Chat レベル2 AI支援

    補完 +Chat レベル3 Agent 人間が支 援 レベル4 Agent 人間の支 援なし レベル5 実装の完 全自動生 成 操縦士(Pilot) ドライバー席 助手席 後部座席 エンジニアがドライバー席を譲ることで次 の段階へ進むことができる 24
  8. ⾃動運転のアナロジー The 5 levels of AI agent autonomy: learning from

    self-driving cars https://speakerdeck.com/layerx/ai-era-management-and-bet-ai 25 AI Agent 時代のソフトウェア開発を支える AWS Cloud Development Kit (CDK) https://speakerdeck.com/konokenj/everything-as-code-cdk
  9. 質とスピード 和⽥卓⼈⽒(@t_wada)の代表的な講演シナリオ(2019〜) - 「質と引き換えにスピードを出す」の愚かさ - ”すべきことを省略したスケジュール担保”の損益分岐点は早い - Quick & Dirtyは神話であり、汚いアウトプットを拙速さで誤魔

    化したもの - 何をサボって速度を出してしまっていたか - クオリティ=内部品質=保守性を犠牲にした、負債の先送り - ”質速”転化 - コードの品質を保つと開発が速い - コードの品質を保てる「品質の⾼いメンバ」だと開発が速い - コードの品質を保てる「品質の⾼いチーム」だと開発が速い 40
  10. AI Agent = ”tools in a loop” I think “agent”

    may finally have a widely enough agreed upon definition to be useful jargon now https://simonwillison.net/2025/Sep/18/agents/ 43
  11. Coding Agentで開発を10倍速にした事例 Classmethod accelerates development velocity with Claude Code https://www.claude.com/customers/classmethod

    How Our Engineering Team Embraced AI and Claude Code for 10x Productivity https://www.treasuredata.com/blog/engineering-team-agentic-ai/ 45
  12. Context Engineering =「LLMという関数」の⼊⼒ / 出⼒管理 12-Factor Agents -3. Own your

    context window https://github.com/humanlayer/12-factor-agents/blob/main/content/factor-03-own-your-context-window.md 50
  13. コンテキストを書く / 選ぶ / 縮める / 分ける ための技術 Context Engineering

    https://blog.langchain.com/context-engineering-for-agents/ 51
  14. > A specification is a kind of (version controlled, human-readable)

    super prompt. — 仕様書とは、一種の(バージョン 管理され、人間が読める)スー パープロンプトです。 仕様駆動開発(Spec-Driven Development) Kiro and the future of AI spec-driven software development https://kiro.dev/blog/kiro-and-the-future-of-software-development/ 53
  15. > That’s why we’re rethinking specifications — not as static

    documents, but as living, executable artifacts that evolve with the project. — 仕様書を静的な⽂書ではなく、 プロジェクトと共に進化する⽣ きた実⾏可能な成果物として捉 え直しています。 仕様駆動開発(Spec-Driven Development) Spec-driven development with AI: Get started with a new open source toolkit https://github.blog/ai-and-ml/generative-ai/spec-driven-development-with-ai-get-started-with-a-new-open-source-toolkit/ 54
  16. Vibe Coding =「コーディングレスのプログラミング」 - 狭義Vibe Coding (Andrej Karpathy提唱) - キーボードレス‧⾳声での指⽰、全てを承認

    - 広義Vibe Coding - Agentに委ねてプロセス(How)に介⼊しない - ⽣成されたコードは読まない - 要求を指⽰し続ければバグはいつか直る Vibe Coding 60
  17. Vibe Coding is Dead - つまり、「品質を担保する技術」= 反「Vibe Coding」 - ”責任あるコード”のために実施されるVibe

    Codingへのカウン ターカルチャー - 結果として、エンジニアの主な仕事は「スピードを犠牲に質 を⾼める」⽅向へ進もうとしている。 61
  18. - 「スピードと引き換えに得た保守性/内部品質」は、 Coding Agentが本来発揮できるスピードより速いのか? - 「Quick & Dirty」は神話だが「Slow & Quality」に正当性はあるか

    - ⼈間のQuick = すべきことの省略 - エージェントのQuickは、本当に怠惰さ故なのか - 怠惰を前提とする既存の考え⽅をそのまま当てはめてよいか - 「質とスピード」のテーマに対し、別の⾓度からの検討を試みる 2025年の疑問 62
  19. - 「スピードと引き換えに得た保守性/内部品質」は、 Coding Agentが本来発揮できるスピードより速いのか? - 「Quick & Dirty」は神話だが「Slow & Quality」に正当性はあるか

    - ⼈間のQuick = すべきことの省略 - エージェントのQuickは、本当に怠惰さ故なのか - 怠惰を前提とする既存の考え⽅をそのまま当てはめてよいか - 「質とスピード」のテーマに対し、別の⾓度からの検討を試みる 2025年の疑問 63
  20. 合意と壁打ち 対AIのレビューにブレーキはないが、それ⾃体がブレーキになり得る - ⼈間相⼿のレビュー:合意 - レビュアー/レビューイは互いに配慮しつつレビューを進める - レビュアー/レビューイで合意した完成像に現実的な範囲で近 づけられる -

    AI相⼿のレビュー:壁打ち - レビューイの負荷を考慮せずいくらでも追い込める - ⼈間関係(⼝調/表現/衝突/初期化)への「ブレーキ」が不要 - レビュアーの完成像に無制限に近づけられる 70
  21. IKEA Effect IKEA効果(Norton, Mochon, & Ariely (2012)) →⾃分で労⼒をかけて組み⽴てた製品を、 本来の品質以上に⾼く評価し、愛着を持ち やすい⼼理的傾向

    類例: ‧ホットケーキミックスに卵を⼊れる ‧⾃分でテディベアを組み⽴てる https://www.irasutoya.com/2014/08/blog-post_488.html 71
  22. Coding Agentへの無意識のバイアス Coding Agentの登壇‧記事のオチに「結局は技術者が必要」は多い - アンナ‧カレーニナの法則 - 成功に対し失敗の理由は多い=ナレッジの価値が⾼い - 「結局は⼈間」オチを外すと、AI驚き屋だと評価されてしまう

    - AI驚き屋:LLMモデル/プロダクトの新機能を過剰に喧伝し、 アテンションを集める⼈ - 「結局は技術者が必要」は、エンジニアが安⼼して”特別な時間” を過ごすためのカーゴカルトではないか 73
  23. チキンレースとブレーキ - ⾃動⾞(Agent)と運転⼿(LLMモデル)の性能は、概ね収束する - CodexとClaude Codeのどちらに賭けても、リリース速度はきっと変わ らないだろう - チキンレースの世界観: -

    崖に向かって⾛り出し、先にブレーキを踏んだ者が「チキン」 - ブレーキを踏まないと命を落とす、早く踏むと勝利から遠のく - エージェントに依存すると破綻するし、疑い続けると勝てない - 事実上、開発速度の⽀配項が「ブレーキング技術」となる 77
  24. 質とスピード(再掲) 和⽥卓⼈⽒(@t_wada)の代表的な講演シナリオ(2019〜) - 「質と引き換えにスピードを出す」の愚かさ - ”すべきことを省略したスケジュール担保”の損益分岐点は早い - Quick & Dirtyは神話であり、汚いアウトプットを拙速さで誤

    魔化したもの - 何をサボって速度を出してしまっていたか - クオリティ=内部品質=保守性を犠牲にした、負債の先送り - ”質速”転化 - コードの品質を保つと開発が速い - コードの品質を保てる「品質の⾼いメンバ」だと開発が速い - コードの品質を保てる「品質の⾼いチーム」だと開発が速い 79
  25. ブレーキと質 - 「速さと引き換えに質を⾼める」の神話は永遠か - 妥協無しに速度を出すCoding Agent - そのレビューはクオリティのため? ”特別な時間”のため? -

    AIエージェントで確保した時間でのレビュー時間は適切か - エージェントを信頼できているか。 - 負債の解消という名のオーバーエンジニアリングをしていないか - 「ブレーキと質」を⼀致させる能⼒ - ブレーキのタイミングが適切だとコードの品質を保てる - ブレーキのタイミングが適切なメンバだとコードの品質を保てる - ブレーキのタイミングが適切なチームだとコードの品質を保てる 80
  26. 当たり前だったことが当たり前になる Coding Agentとの開発は、既存の考え⽅をそのまま移⾏できる - LLMが扱うファイルはプレーンテキストが好ましい - Unix哲学、Markdown、Everything as Code -

    失敗をAgentへ即時にフィードバック - Type, Test, Format, Lint, Runtime Checks, Pre-commit Hooks, CI(Continuous Integration) - Agentの⾃由度を制御しつつ、⾃⾛⼒を活かす - Git管理、環境分離(DevContainer, WebIDE)、開発者体験 92
  27. 新しい潮流 - 仕様駆動開発への検証 > Property tests are a great match

    for specification-driven development, — プロパティテスト は、(Kiro が行う ような)仕様駆動開発と非常に相 性が良いです。 Does your code match your spec? https://kiro.dev/blog/property-based-testing/ 93
  28. ”振り⼦と螺旋” 和⽥卓⼈⽒の講演「技術選定の審美眼」で中核的な概念 - 新技術は単純化 - 複雑化の両極を振り⼦のように⾏き来する - 「極端に振れても戻るので、学ばなくていい。」→ No -

    新技術の運動は振り⼦に⾒える。実際の動きは「螺旋状」 - 元には戻らず、最先端へ進む - 核となる強固な部分と、以前との差分 - 最先端の吸収⼒が若⼿の強み / 差分の理解がベテランの強み 97
  29. 元ネタ - ブレーキと質 表紙‧内容 ※和⽥卓⼈⽒のコーディングエージェントへの ⾒解はこちらが参考になります。 質とスピード( AWS Dev Day

    2023 Tokyo 特別編、質疑応答用資料付き) https://speakerdeck.com/twada/quality-and-speed-aws-dev-day-2023-tokyo-edition AI時代のソフトウェア開発を考える( 2025/07版) https://speakerdeck.com/twada/agentic-software-engineering-findy-2025-07-edition 103