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FAST導入1年間のふりかえり〜現実を直視し、さらなる進化を求めて〜 / Review of ...

FAST導入1年間のふりかえり〜現実を直視し、さらなる進化を求めて〜 / Review of the first year of FAST implementation

Loglass Tech Talk vol.6「FAST実践のリアル〜壁にぶつかり、悩み、試し続けた1年間〜」
https://loglass-tech.connpass.com/event/357161/

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Kyosuke Awata

July 24, 2025
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Transcript

  1. FASTの簡単なおさらい - FASTとは • ⾃⼰組織化とスケーリングの技術 ◦ ⼈々が仕事を中⼼に⾃⼰組織化し、スケールしていくための⽅法 • デリバリーとディスカバリーの両⽅に対応 ◦

    従来の多くの⼿法がデリバリーに偏っていたが、FASTはディスカバリー活動にも対応 • 変化に強い組織を⽬指した仕組み ◦ 変化の速い時代において、⾼い適応⼒とレジリエンスを備え、継続的なイノベーションを促進する • 超軽量で最⼩限の構造のみが存在する ◦ 適応と創発を推進するために、あえて超軽量で最⼩限の構造 FAST - Fluid Adaptive Scaling Technology とは 14 引⽤:(http://fastagile.io)
  2. FASTの簡単なおさらい - チームとコレクティブ • “コレクティブ” で、共通の⽬的を達成する ◦ 共通の⽬的のために集まった、⾃律的で権限を持つ⾃⼰組織化された集団 • “チーム”

    は “コレクティブ” の中で、流動的に作られる ◦ チームは固定されず、作業に応じて流動的に形成される ◦ 知識やスキルの共有、必要な場所への⼈員配置の柔軟性などが促進される • “チーム” 同⼠は、サイロ構造ではなくネットワーク構造 ◦ チームが固定されたサイロになるのではなく、ネットワーク状につながる構造を作り出す ◦ 静的なチーミングやサイロが引き起こす課題(限られた知識リソース、知識共有の困難さ、柔軟性の ⽋如、依存関係など)を解決する チームとコレクティブ 15 引⽤:(http://fastagile.io)
  3. FASTの簡単なおさらい - バリューサイクル バリューサイクル 16 コレクティブ ⽴ち上げ FAST Meeting FAST

    Meeting FAST Meeting ここ • FASTにおける「連続的な作業サイクル」のこと ◦ FAST Meetingによって区切られる • スクラムのスプリントと違ってタイムボックスではない ◦ 期間も可変に設定できる • バリューサイクルをどのように過ごすかは基本的に⾃由 ◦ 集合知と各⾃の判断を組み合わせ、⾃⼰管理的に解決する ◦ 必要に応じて、⼀時的に別のチームに移って共同で作業することも可能 ここ 永遠に 繰り返す 引⽤:(http://fastagile.io)
  4. FASTの簡単なおさらい - FAST Meeting FAST Meeting 17 第1部 バリューサイクルの完了 第2部

    バリューサイクルの開始 第3部 マーケットプレイス 前回のバリューサイクルで達成したことや学んだことを コレクティブ全体で共有し全員が共通の理解を持つ PdMからコレクティブにメッセージを伝え 次のバリューサイクルを開始する 次に何に取り組むべきかのマーケットプレイスボードを作成し メンバーが個々に貢献したい作業を選びチームを形成する 引⽤:(http://fastagile.io)
  5. FASTに対する評価 - 社内でアンケートを取りました 詳細な質問内容 24 • 以下3項⽬の「理解度、⾔語化度、納得度」 ◦ スケーリングと向き合う必要性について ◦

    フレームワークとしてFASTを選択した理由について ◦ 具体的なFASTへの取り組み⽅について • FAST導⼊によって得たもの、失ったもの ◦ 個⼈、チーム、組織を問わず
  6. FASTに対する評価 - 具体的なFASTへの取り組み⽅について FAST歴、職種別 36 • 歴とともに着実に伸びている:実際に体感し深く学ぶことの価値はあると確信 • すべてがMAXになる⼈々がいる:歴が⻑い⼈がしっかり理解し現場を推進しているといえる •

    (同じ)ビジネスサイドへのアプローチは課題:適切に情報共有やアラインメントが取れているかは要確認 ※ 「まったくそう思わない=1点〜とてもそう思う=5点」として平均点を算出
  7. FASTに対する評価 - FASTによって得られたもの • 流動的なチーミング ◦ 以前のスクラムチームをまたいだ⼈の流動性 ◦ イシューに応じてメンバーをアサインできるようになった ◦

    チームの⼈数の増減が⾃由にできる • メンバーの成⻑ ◦ 個⼈の主体性が発揮されやすくなった ◦ スクラム以上に常に⾃律的に考えることを強いられる ◦ 各⾃が⾃分を向き合い続けた結果ときどき突出して成⻑する⼈が現れる印象 ◦ これはFASTじゃないと得られない化学反応なのではないか • 視座の向上 ◦ チームのスケーリングについて考える機会が増えたと ◦ ボトムアップの組織を維持し続ける⼤事な⼟壌になっている ◦ 「プロダクトとしてどうするか?」という意識での思考は個々に増えてきたと個⼈的に感じている 強靭な組織の⼟壌は出来つつあるが、プロダクトの価値貢献にはまだ届かず? 38
  8. FASTに対する評価 - FASTによって失ったもの • 意思決定者、責任者 ◦ 責任の所在が曖昧になった気がするとの声 ◦ プロダクトのオーナー誰、意思決定誰がするの問題 •

    特定の領域に特化した⼈材、チーム ◦ 認知負荷の低さ ◦ 技術的な領域のリード(その領域に詳しい⼈物) • ピープルマネジメント的な観点 ◦ メンバーの得意不得意、成果を発揮するにはどうすれば良いか ◦ タスクアサインによる期待の掛け⽅ • 運⽤系タスク ◦ 暗黙知や個々⼈の関係性が深まらないため、⽣産性向上への動きが鈍いように⾒える ◦ 新規開発の⽐率が⼤きくなっている 意図的に捨てたもの、そうじゃないものが混在している 40
  9. さらなる進化に向けて - 抱えている課題と、⽬指す姿を再定義したい • 時間の経過とともに、熱量や納得感などは薄れていくことが予想できる ◦ 新規事業チームへの移動や新⼊社員の増加などにより、⽐率が薄まっている ◦ ⼊社したときから FAST

    の⼈も⼀定数存在していて、過去のペインを知らない ◦ 急拡⼤する組織の中で、FASTに取り組まなければいけない状態 • 当時描いていた課題や⽬指す姿との乖離が⽣まれつつある(と思う) ◦ 「経営管理コレクティブでOrgTopologiesのB2を⽬指す」本当にいまも同じだろうか? ◦ FASTへの解像度が上がったことで違う世界が⾒えつつある ◦ 最新状態へ更新したうえで、改めて周知しモメンタムを取り戻したい • FASTによる悪影響と元々そうだったものがより区別しにくい状況に ◦ FAST導⼊後もずっと社員は増え続けているしプロダクトは成⻑し続けている ◦ ⼤量の変数からFASTによる影響とそうではないものを的確に⾒抜くことは難しい ◦ ただし、⼤事なのは犯⼈探しではなく、原因の特定とそれを解決すること 抱えている課題と、⽬指す姿を再定義したい 42
  10. さらなる進化に向けて - 理解度、⾔語化度、納得度の向上に取り組みたい • FASTをやっているメンバーに限定しても、同じ温度感でスケーリングと向き合えていない ◦ 職種による差、歴による違いなどで温度差が存在してしまっているのは事実 ◦ FASTの思想を「体現できているか」ではなく「体現しようとしているか」が重要 ◦

    抽象度が⾼いので実践から学ぶのが最も近道になる • ビジネスサイド(と区切りたくないが)に正しく情報を伝える必要がある ◦ 実際に課題と直⾯してないし、開発側の⽇々の動き⽅がイメージできないと理解も難しい ◦ ⼀緒にプロダクトを作っていく重要なステークホルダーで、敵ではない ◦ 協業のためにも相互理解を深め、信頼を築いていきたい • 理解度、⾔語化度、納得度が低い原因を⾃分たちの中に⾒つけたい ◦ ⼈を変える前にまず⾃分が変わほうが早い ◦ FASTをやっているメンバーが、理解度、⾔語化度、納得度を上げていくことは必須 ◦ そして、⾃分たちが使っている⾔葉ではなく、相⼿に伝わる⾔葉で話す 理解度、⾔語化度、納得度の向上に取り組みたい 43
  11. さらなる進化に向けて - プロダクトを主語にした議論をもっと活発にしたい • FASTは「プロダクトの成功」のために取り組んでいる ◦ プロダクトの価値最⼤化のために取り⼊れたことを改めて周知 ◦ ⾔葉だけでなく実際にプロダクトに価値を出していかねばならない ◦

    プロダクトに対して「FASTだからできた/できること」の探求 • その感覚をまだ⼗分に届けられていない ◦ アンケート結果もプロダクトへの⾔及は少ない(聞き⽅の問題もあるとして) ◦ プロダクトへの価値提供まで接続して考えられる⼈がまだ少ない ◦ ここは明確な伸びしろだなと感じている • 組織の話とかプロセスの話で終わってしまうと、職種や部署の間に壁が⾒え始める ◦ そのためにも主語は「プロダクト」に変えていきたい ◦ 事業貢献の意欲が⾼い⼈が集まっていると思っているので、できるはず ◦ 良いプロダクトを作るのに、職種は関係ない プロダクトを主語にした議論をもっと活発にしたい 44
  12. さらなる進化に向けて - ログラスにとってのスケーリングとは?を考え続けたい • FASTをこのまま続けることが唯⼀の正解だとは思っていない ◦ 「とりあえず以前の状態に戻す」といった、易きに流れる選択肢は取りたくない ◦ FASTは特に薄いフレームワークなので、他のさまざまな思想を取り⼊れやすいはず ◦

    実際にそういったMIXさせてみようといった動きもあり、効果が出始めている • 適切な分解ポイントは常に探り続けたい ◦ 課題を分解して解いた結果、元の課題が解決できないは危険 ◦ 元の課題が解決できる分解ならやれば良い ◦ スケーリングと同じくらい適切な分割は難しいが、それに価値はあるはず • わたしたちにとって最適な「スケーリング」とは? ◦ ⼩規模なチームであれば、変数が少なく再現性のある事例を引っ張ってこれるかもしれない ◦ スケーリングが必要な規模であれば、独⾃の仕組みが必ず必要になるはず ◦ 適応するだけではなく、⽣成するといったマインドチェンジが必要になってくるのではないか ログラスにとってのスケーリングとは?を考え続けたい 45
  13. 52