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ICH Q3D 無機不純物について
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xjorv
August 16, 2020
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ICH Q3D 無機不純物について
ICH Q3Dは無機不純物についてのガイドラインです。Q9の制定後に制定されたガイドラインだと思われ、Q9(リスクマネジメント)の要素を含んでいます。
xjorv
August 16, 2020
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Transcript
ICH Q3D 無機不純物について 2020/8/1 Ver. 1.0
Elemental Impurities(無機不純物) 合成に由来する無機的な不純物・夾雑物について • 合成の触媒・用器などに由来する • 夾雑物は治療的意味を持たないので、除く • 基本的にPermitted Daily
Exposureに従った規格が必要 (PDE) • Q9(リスクマネジメント)に従った規格設定を行う
ガイドラインの対象 未承認の新規有効成分とその製剤を対象とする • 精製タンパク、ポリペプチド等を含む • 生薬・放射性医薬品・ワクチンは含まない • 血液製剤・細胞抽出物・遺伝的/細胞治療薬も含まない • その無機物に治療効果がある場合も除く
安全性の検証 有効成分の投与経路により、必要な安全性が異なる • どの経路においても、PDEに準拠した規格設定となる • PDEは有害性の検証報告から作成されている • PDEが不明なもの*はパラジウムと同じ扱いとする *イリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム
PDE決定のための安全性検証の項目 有効成分の投与経路により、必要な安全性が異なる • 医薬品に含まれた場合の酸化度 • ヒトでの暴露影響・Safety dataの情報 • 信頼できる動物実験 •
投与経路 • 投与終了時点*(Relevant endpoint) *適切な訳は不明
吸入時の有害性 経口剤と吸入剤ではPDEの基準が異なる • 吸入剤のPDEは吸入時安全性情報から作成するのが望ましい • 情報がない場合には、経口剤のPDEから計算する • 1%以下 • 1-50%
• 50-90% • 90%以上 経口のバイオアベイラビリティ*が PDEを100で割る PDEを10で割る PDEを2で割る PDEをそのまま用いる *生物利用性。経口で取り込んだものの生体内吸収の度合いのこと
特殊な投与経路について 特殊な投与経路でも、経口剤のPDEを基準として考慮する • 非経口・吸入剤のPDEを基準としたほうがよい場合もある • 部分的影響・毒性の発現機構などを考慮して決定する • バイオアベイラビリティについて考慮する
PDEより不純物が多いとき 特定の場合では、正当化できれば許容できるときもある • 間欠的に投与する場合 • 短期間のみの投与の場合 • 生命に危機がある・患者数が著しく少ない場合* *Unmet medical
needs(適切な治療法を持たない場合)を含む バイオアベイラビリティ・半減期・投与期間などで正当化する
非経口剤の有害性 一日投与量が2Lを超えるかどうかで判断する • 2L以下なら一日の最大投与量で計算する • 2Lを超える場合には2Lを基準に考える *Parenteral products: 直訳は非経口剤。基本的には注射剤や輸液を対象にしていると思われる
無機元素の分類 残留溶媒と同様に、物質の毒性によって元素を分類する • クラス1: もっとも毒性が強いもの ヒ素、カドミウム、水銀、鉛。基本的に製造に使用しない • クラス2: 投与経路によって毒性を持つもの 医薬品への混入可能性により、2Aと2Bの2クラスに分けられる
• クラス3: 経口以外での毒性の可能性を持つもの バリウム、クロム、銅、モリブデン、アンチモン、スズ この他の元素については現地の規制当局で決定する
元素のクラスとPDE 元素 クラス 経口剤のPDE 非経口剤のPDE 吸入剤のPDE 元素 クラス 経口剤のPDE 非経口剤のPDE
吸入剤のPDE カドミウム 1 5 2 3 ロジウム 2B 100 10 1 鉛 1 5 5 5 ルテニウム 2B 100 10 1 ヒ素 1 15 15 2 セレン 2B 150 80 130 水銀 1 30 3 1 銀 2B 150 10 7 コバルト 2A 50 5 3 プラチナ 2B 100 10 1 バナジウム 2A 100 10 1 リチウム 3 550 250 25 ニッケル 2A 200 20 5 アンチモン 3 1200 90 20 タリウム 2B 8 8 8 バリウム 3 1400 700 300 金 2B 100 100 1 モリブデン 3 3000 1500 10 パラジウム 2B 100 10 1 銅 3 3000 300 30 イリジウム 2B 100 10 1 スズ 3 6000 600 60 オスミウム 2B 100 10 1 クロム 3 11000 1100 3 PDEの単位はμg/day
リスクアセスメントとコントロール 不純物の制御にはリスクアセスメントを利用する • リスクアセスメントはQ9に記載 • Q8とQ11(開発と製造)も共に考慮する • リスクアセスメントの結果を文書とする
リスクアセスメントの原則 3段階で実施する • 製剤に混入する可能性のある不純物を特定する • PDEと製剤に存在しうる量を比較する • 制御法をまとめ、文書とする
不純物の混入原因 特性要因図を元に、混入経路を推定する • 合成触媒として加えられるもの • 原料・水・添加剤に含まれるもの • 製造機器から混入するもの • 包装から混入するもの
不純物の特定 混入経路によって考慮の仕方が異なる • 触媒からのものは特定が用意 • 添加剤にからのものはクラス1と2Aについて調べる • 機器からのものは他の製品と共通にできる • 包装との相互作用については有効期限を考慮する
包装について検討すべき項目 包装に関して、以下の項目について検討しておく • 親水性・疎水性 • イオン濃度 • pH • 温度
• 接触表面積 • 包装素材 • 最終滅菌法 • 包装工程 • 構成要素の滅菌 • 保管の期間
リスクアセスメントする元素 Class 1とClass 2Aは基本的に実施が必要 • 2Bは必要ないが、追加しておくと好ましい • 3は吸入剤では必須、経口剤には必要ない • 非経口剤ではLi、Sb、Cuを調べておく
(Class 3)
リスクの評価(Evaluation) 混入リスクがあるばあいには、リスクを評価する • 知見や製品の試験結果を参考とする • 混入リスクの原因となり得る要素をあげておく • 工程中での不純物の排除効率 • その元素の自然存在率
• 特定の混入源における元素濃度 • 製品の処方・構成 など
リスクアセスメントのまとめ(Summary) 混入しうる元素とそのリスクをまとめる • PDEと予想される混入濃度の比較を行う • PDEの30%を規格とするなど、制御閾値が必要 • 制御閾値を超えるものについては、制御を必要とする • 混入濃度のバラツキを考慮する
混入濃度の検証について 混入濃度のバラツキを説明する結果を準備する • 製造スケールの3ロット • パイロットスケールの6ロット のどちらかで調べる
生物工学的製剤について 不純物の混入リスクは比較的低い • 触媒不要、金属を加えない、精製で取り除かれるため • 基本的に制御の可能性を考慮しなくてよい • 生物工学特有の元素混入についてはリスクを考慮する
不純物混入の制御(Control) 混入可能性がある場合にはリスクコントロールが必要 • 原料・添加剤使用量に制限をつける • 製造工程・包装資材を見直す • ICH Q6Aにしたがい、定期的検査を実施する
PDEと限度規格 PDEに対して、十分低い規格値である必要がある 3つの規格設定方法がある • 一日処方量が10g以下の製剤に対する方法 • 元素の一日摂取量から計算する方法 • 最終製品分析から算出する方法
Speciation(化学種・化学形) 同位体比、酸化還元的特性・分子構造などのこと • Speciationによって毒性が異なるため、PDEの参考とする • 承認時に示す必要はないが、リスク考慮の根拠となる
分析方法 各元素に適した方法を用いる • 局方記載の方法を元に考慮する • 適した他の方法があれば、採用してもよい
ライフサイクルマネジメント ICH Q10記載の方法で管理する • 開発・製造の情報を蓄積し、参考とする • 蓄積した情報を元に管理方法を最適化する • 承認内容変更時にはリスクを再考する