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メディアアートの作品体験における時間構造の分析 ―― ベルクソン時間哲学のマルチ時間スケール解...

メディアアートの作品体験における時間構造の分析 ―― ベルクソン時間哲学のマルチ時間スケール解釈に基づく試み

2025年8月17日に開催された日本記号学会「情報技術とプラグマティズム」研究会のオンラインセッション「記号・時間・ランドスケープ――マルチ時間スケール(MTS)記号論とメディアアートの可能性」に登壇した際に使用したスライドです。

この発表では、平井靖史さんとの共著論文「Transforming memory landscapes: an expanded Bergsonian approach to temporal structure in media art experiences(記憶ランドスケープの変容——メディアアート経験における時間構造への拡張ベルクソン的アプローチ)」について解説しました。

論文はオープンアクセスで公開中です(ウェブサイトのデフォルト言語はスペインですが論文の言語は英語です)。

https://doi.org/10.7238/artnodes.v0i36.431873

限られた紙幅に凝縮された議論を読み解いていただく際の手引きとして参照していただければ幸いです。

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Shigeru Kobayashi

August 17, 2025
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Transcript

  1. 本日の発表について 紹介する論文 Hirai, Yasushi, and Shigeru Kobayashi. 2025. “Transforming Memory

    Landscapes: An Expanded Bergsonian Approach to Temporal Structure in Media Art Experiences.” Artnodes , no. 36: 1-11. https://doi.org/10.7238/artnodes.v0i36.431873. 〔 「記憶のランドスケープの変容——メディアアート経験における 時間的構造に関する拡張ベルクソン的アプローチ」 〕 主な関連論文 Kobayashi, Shigeru, and Yasushi Hirai. 2024. “Extending Research in New Media Art Conservation: A Bergson- Inspired Multi-Timescale Approach.” RE:SOURCE 2023 (The 10th International Conference on the Histories of Media Art, Science and Technology) , 70–77. https://www.mediaarthistory.org/?page_id=4393. Hirai, Yasushi. 2025b. “From Closure to Transformation: Bergsonian Dynamics of the Societal Landscape.” Continental Philosophy Review 58 (2): 265–87. https://doi.org/10.1007/s11007-025-09697-z. Kobayashi, Shigeru. 2025. “Conserving Art Experience in Evolving Media Milieux: A Case Study of Light on the Net (1996/2024).” Proceedings of the International Symposium on Electronic/Emerging Art: 2025 (Seoul, Republic of Korea) , July 25, 1342–49. https://doi.org/10.23362/KOEN2025.07.25.5.233. 2
  2. 経緯 2023 年9 月:メディアアート・サイエンス・テクノロジーの歴史に関する国際会議「RE:SOURCE 2023 」開催 2023 年10 月:RE:SOURCE 2023

    予稿集に「Extending Research in New Media Art Conservation: A Bergson- Inspired Multi-Timescale Approach 」を投稿 2024 年7 月:Universitat Oberta de Catalunya が編集を担当する芸術・科学・テクノロジーの交差を多角的に 分析する学術雑誌Artnodes のRE:SOURCE 2023 特集号「Memory matters 」への投稿に関する招待 2024 年10 月:Artnodes のRE:SOURCE 2023 特集号に本論文を投稿 2024 年11 月: 《Light on the Net 》再展示が完了・公開(1 日) 、RE:SOURCE 2023 予稿集が公刊(16 日) 、 ISEA2025 に小林が関連論文「Conserving Art Experience in Evolving Media Milieux: A Case Study of Light on the Net (1996/2024) 」を投稿(30 日) 2025 年5 月:査読結果通知→対応、ISEA2025 で関連論文の口頭発表 2025 年6 月:平井の関連論文「From closure to transformation: Bergsonian dynamics of the societal landscape 」 が公刊(16 日) 、本論文が公刊(25 日) * † : 正式名称は「The 10th International Conference on the Histories of Media Art, Science and Technology 」 。 : 正式名称は「30th International Symposium on Electronic/Emerging Art 」 。 《Light on the Net 》の再展示(実質的に再制作) に至った経緯について、実装を担当した川嶋岳史さん、西田騎夕さんへのインタビューを基に構成。 * † 3
  3. 前提:メディアアートとは アートとテクノロジーが交差する領域 諸テクノロジーをメディウムと捉え〈有機的組織化〉しつつ使用する芸術実践(単なる道具として既存の 諸テクノロジーを作品制作に利用するのとはまったく異なる) 作品は、鑑賞者が鑑賞・受容する対象ではなく、参加者として自らも時間的内部でその一部となる メディアアートのアーカイブをめぐる二重の課題 保存(preservation ) :ハードウェア、ソフトウェア、ドキュメントなど物質的・テクノロジー的の両側面でそも そも保存が困難(例:Nam

    June Paik が使用したブラウン管) 維持(conservation ) :メディア環境の変化に伴い、人々の知覚が「進化」することにより、作品体験の質と 意味を継承・維持することが困難 * : 発表者による独自定義。 『創造的進化』における、 「完成された本能は、有機的な〔組織化された〕道具を利用し、それを 組み立てさえもする能力である。完成された知能は、無機的な〔組織化されていない〕道具を製作し、使用する 能力である。 」という対比を参照しています。 * 5
  4. 序論:記憶と未来 記憶の哲学の研究は、記憶の未来志向性を強調し(Michaelian 2016; Schacter et al. 2007 ) 、予測や シミュレーション主義の観点からベルクソンの再解釈を促してきた(Hirai

    2025a; Michaelian 2025 ) 記憶が現実の質的経験を制約しつつ解放する両義的能力については、依然として十分に検討されていない ベルクソン研究は、記憶が単なる保存(preservation )ではなく、未来へと向かう継続的な新規性の源泉である ことを強調してきた(Worms 1997; Mullarkey 1999; Ansell-Pearson 2002; Lawlor 2003; Guerlac 2006 ) →メディアアート作品との出会いにおいて、運動記憶と純粋記憶は、持続の未完了相——すなわち「開かれた」 時間的窓——といかに相互作用するのか? 6
  5. 1. 作品経験を分析・記述するためのベルクソンに基づくモデル 《Light on the Net 》 (1996 ) 慶應義塾大学藤幡正樹研究室+財団法人ソフトピアジャパンに

    よる、ウェブブラウザを介してインターネット経由で照明装置を 遠隔操作するプロジェクト 複数の参加者が同時にアクセスすると、自分の意図通りに 制御できなくなり、インターネット上で他者の存在を仄かに 感じる 当時のメディア環境による約15 秒の遅延で、インターネットの 存在を感じることも作品体験の重要な要素だと考えられていた 作品の展示風景(写真提供:藤幡正樹) 7
  6. 1. 作品経験を分析・記述するためのベルクソンに基づくモデル 再展示(2024 年11 月)をめぐる課題 1996 年と2024 年ではメディア環境が劇的に変化し、それに伴って 人々の知覚も「進化」している 低遅延に慣れている現在のメディア環境で単純に15

    秒の遅延を 再現しても所期の経験の質は再現されない →この問題に取り組むにあたり、ベルクソン時間哲学の マルチ時間スケール解釈に基づく作品体験の分析・記述が 有効なのではないかと提案(Kobayashi and Hirai, 2024 ) 作品の展示風景(写真提供:藤幡正樹) 8
  7. 1.1 持続・遅延・時間的拡がり 持続(durée / duration ) 量的な計測に先行する質的な生きられた時間 諸瞬間が継起するのではなく相互浸透し合うことにより、多様な要素からなる時間としての持続を成す ベルクソンは意識の織地として持続を論じたのち、生物学的基盤へと関心を拡げた 時間とはそのような躊躇である。そのようなものでないとすれば、時間とは何ものでもない。

    [... ]時間は遅延させる、という よりむしろ時間とは遅延なのだ Bergson 1934/1946, 101–102/109–110 〔原章二:訳『思考と動き』 (平凡社、2013 ) 、43–144 〕 有機体がまだ発達していない場合、振動が生じるためには、関心を引く対象との直接の接触が確かに必要になるだろう。そして その場合、反応はほぼ待ったなしのものになる。 [… ]しかし、反作用がより不確定になり、躊躇にいっそうの余地を 残すようになるにつれて[… ] Bergson 1896/1911, 28/22 〔杉山直樹:訳『物質と記憶』 (講談社、2019 ) 、41–42 〕 →我々が持続として経験する真の時間的自由は、感覚‐運動(sensori-motor )の時間スケールの進化的な拡張に 由来し、それは我々が連続的な流れとして時間を知覚する能力に直結している 9
  8. 1.2 持続とそのマルチ時間スケール(MTS )解釈 時間の捉え方の根本的転換 従来の哲学:時間とは抽象的な数学的直線で、現在とは直線上の 単なる点である ベルクソン:時間とは系ごとに内在するスケールで、現在とは 環境との相互作用が規定する厚みのある時間である →持続の多様体(multiplicity of

    durations ) マルチ時間スケール(MTS )解釈 階層0 :物理的な時間スケール(赤色光で約10 秒) 階層1 :知覚の時間分解能(視覚で約20 ミリ秒) 階層2 :現在の幅(秒単位)→階層1–2 間で心理的な流れ体験と しての持続が生まれる 階層3 :生涯の長さ(年単位) →現代の認知科学のモデルと接続することで、ベルクソンを抽象的な 類型論ではなく動的な時間的構造として再構築する 図1 :意識と心に関するMTS 構造における位置づけ -15 10
  9. 1.3 未完了相とその時間的構造 相互作用 意識の様々な現象的特徴は、隣接する階層間の相互作用として 記述できる ボトムアップだけでもトップダウンだけでも結果を決定できず、 新しく特別な時間的領域の出現が必要となると、時間の 未完了的な(imperfective )相 が開く

    階層1–2 :知覚の未完了(perceptual imperfective ) 階層2–3 :記憶の未完了(mnemic imperfective ) 凝縮(contraction ) 階層間の大きな時間スケールギャップにより、知覚できない 微小な時間的余剰が現象的質に変換される 階層0 →1 :感覚質=クオリア 図2 :階層1–2 間で生じる〈未完了相〉 図1 (再掲) :意識と心に関するMTS 構造における位置づけ * : 言語学用語では英語の進行形に対応する「未完了相」 。本論文では、形容詞「imperfective 」をあえて名詞化し、 「未完了的な時間的窓」を指すために用いている。例えば、 「記憶の未完了」は「記憶における未完了的な時間的窓」を 意味する。 * 11
  10. 2.1 時間のアウトソーシングとしての運動記憶:水路づけされた ランドスケープ ベルクソンの知覚理論の特筆すべき特徴は、環境への知のアウトソーシングにある 生物種ごとに異なる行動への潜在的誘発が、脳内だけでなく外部環境にも展開・配備されるという着想 →のちの「環世界(Umwelt ) 」 (von Uexküll

    1909 )や「アフォーダンス」 (Gibson 1979 )を部分的に先取り ベルクソンは、この形成プロセスを地質学的時間スケールにおける河川形成に準えて「水路づけ(canalization ) 」 と呼んだ ホワイトヘッド経由で水路づけ概念を継承した遺伝学者のワディントンに倣って、本論文では「ランドスケープ」 と呼ぶ 運動記憶は各生物のために最適化された潜在空間——生態学的ランドスケープ(ecological landscape )——を 構築する 生物のランドスケープは環境において展開される動作の可能性の特定の分布を指し、同じ種内であっても 運動記憶の獲得を通じて変更可能 運動記憶とは「リアルタイムの行動決定に先立つ事前の水路づけ」であり、持続の相互浸透的な流れを 無効化する 14
  11. 3. 知覚の経験:作品研究 シクロフスキー(1917/1965 )の「異化」概念やデューイ(1934 )による「経験の訓化批判」は、新奇性が 美的価値の重要な次元であることを示唆 本稿の目的は、美的判断を新奇性単独に還元することではなく、時間的経験がどのように展開するかをより 精緻に分析すること ベルクソンの持続と「ランドスケープ」概念を適用することで、芸術作品が時間的な「未完了」の窓を開く 方法を追跡する

    →美学理論において不足していた厳密な分析手法を提供し、新奇性を体系的に評価する方法を確立する この後に続く作品研究で取り上げる作品の選定にあたっては、キュレーターのChristiane Paul によるDigital Art を参照した。 ただし、運動記憶に関する議論の都合上、teamLab については「teamLab Borderless 」ではなく「teamLab Planets 」を 選んでいる。 16
  12. 3. ジェフリー・ショー《The Legible City 》 (1989–1991 ) 参加者は据え置き自転車を漕ぎ、それぞれの建物が 単一のアルファベット文字で構成された都市を 移動する作品

    3D で生成された都市が空間に投影されることは、 ほとんどの参加者が馴染んだ知覚の ランドスケープから逸脱していた これにより、知覚の未完了が開かれ、新たな 知覚体験をもたらした 17
  13. 3. スコット゠ソーナ・スニッブ《Boundary Functions 》 (1998 ) 天井に取り付けられたカメラで参加者の位置を 追跡し、それぞれの位置に基づいてボロノイ図を 生成して床面に投影する 参加者は、パーソナルスペースが他者との関係に

    おいてのみ存在し、境界が可視化されるにつれ、 誰の制御も受けずに変化することを自覚する 通常は無意識に追従しているパーソナルスペースの 可視化は、知覚のランドスケープから逸脱した 新たな知覚体験であり、同時にメタ認知をもたらす 18
  14. 3. チームラボ「teamLab Planets 」 (2018 ) 展覧会の会場は、4 つの大規模な作品と2 つの 庭園から構成

    参加者は壁一面がスクリーンで構成された空間を 裸足で歩き、時折水に浸かりながら、他の参加者と 共に広大な空間で作品群と対峙する これは、参加者たちに知覚の未完了をもたらす 19
  15. 4. 記憶の未完了とランドスケープの変容 運動記憶と純粋記憶 運動記憶(motor memory ) 反復により身体に刻み込まれた習慣的行動パターン (例:自転車に乗る、歩行する、文字を書く、 楽器を演奏する) 自動化により意識的な制御が不要となる

    感覚‐運動のループが完成すると、それは「時間の 外に出て行く」 (Bergson 1896, 88 〔 『物質と記憶』 116 〕 ) 純粋記憶(pure memory ) 記憶のランドスケープによって類型化される前の、 構造化されていない記憶(例:初めて自転車に 乗れた日の記憶、特定の展覧会での経験) あらゆる記憶イメージの源泉となる一回的で 還元できない個別の経験 通常は背景化しているが、探索的想起に より垂直的にアクセス可能で、創造的記憶機能の 基盤 〔… 〕それゆえ、アーティストは適切なランドスケープを探り当て、それをたどることにより、参加者を想起の空間へと円滑に 導くことができる。しかし、水路づけられた記憶を誘発するだけでは、記憶の未完了を開くには不十分である。真の 記憶探索には、これらの習慣的なランドスケープを超えた逸脱が必要である。 21
  16. 4. 記憶の未完了とランドスケープの変容 知覚の未完了(perceptual imperfective ) 既成の知覚パターンからの逸脱により、 階層1–2 間で開く 記憶の未完了(mnemic imperfective

    ) 既成の想起パターンからの逸脱により、 階層2–3 間で開く 実存の未完了(existential imperfective ) 記憶・知覚のランドスケープ自体の持続的な 変容が要請されることによって開く 閉じたときに主に記憶のランドスケープが、 それに伴って知覚のランドスケープが 再構築される 図3 :MTS 構造と水路づけられたランドスケープ 22
  17. 5. 作品研究:ショー《The Legible City 》 1. 多くの参加者が獲得している、自転車に乗ってペダルを漕ぐと いう運動記憶は、作品へのスムーズな導入を可能にする 2. その運動記憶に付随する知覚体験は、3DCG

    で表現された都市が 投影される空間を移動することで新奇なものとなり、 知覚の未完了を開く 3. 参加者は都市で自転車を乗るという記憶のランドスケープを 参照する 4. それぞれの建物が単一のアルファベット文字で構成されていると いう体験は記憶のランドスケープから逸脱しているため、 記憶の未完了を開く 5. VR 空間内のルールは現実世界のものから逸脱せず、現実世界から 完全に隔離されているため、知覚・記憶のランドスケープの 再構築は要請されず、実存の未完了は開かない 図3 (再掲) :MTS 構造と水路づけられたランドスケープ 発表者注:説明の便宜上、ステップ・バイ・ステップで進行するかのように記述していますが、実際には幅のある時間的窓の 内部で同時的・循環的に起きたことを回顧的に記述しているに過ぎないと考えた方がいいかもしれません。 24
  18. 5. 作品研究:スニッブ《Boundary Functions 》 1. 歩行や静止に関連する運動記憶は多くの参加者に共有されて おり、知覚のランドスケープが作品へのスムーズな導入を可能に する 2. ボロノイ図により他者との境界が可視化されるという新たな

    知覚体験により、知覚の未完了が開く 3. 他者との日常生活における記憶のランドスケープを呼び起こす 4. 他者と共に体験を継続する中で、メタ認知的に「無意識に他者と 境界を共有している」ことを認識することで、記憶の未完了が 開く 5. 知覚・記憶のランドスケープの再構築が要求され、 実存の未完了が開き、体験後の日常生活中においても 時折想起されるものとなる 図3 (再掲) :MTS 構造と水路づけられたランドスケープ 25
  19. 5. 作品研究:チームラボ「teamLab Planets 」 1. 多くの参加者が幼少期に体験したであろう裸足で水の中を歩くと いう曖昧な運動記憶が呼び起こされ、展覧会へのスムーズな 導入を促す 2. その場に居ることで作品がリアルタイムで継続的に変化すると

    いう新たな知覚体験が、知覚の未完了を開く 3. 展覧会でアート作品を鑑賞する記憶のランドスケープを 呼び起こす 4. 他者と共に(時折水の中を)歩き回る際、作品がリアルタイムで 継続的に変化し、参加者自身も作品の一部となり、 自分/作品/他者の境界が曖昧になるという体験は、 慣れ親しんだものから逸脱するため記憶の未完了を開く 5. この境界の溶解は、 (一部の参加者において)参加後も日常の 経験に持続し、現実世界と芸術作品の世界の間の不確定性を 喚起し、慣れ親しんだ知覚・記憶のランドスケープが揺るが されて実存の未完了が開く 図3 (再掲) :MTS 構造と水路づけられたランドスケープ 26
  20. 5. 記憶・実存の未完了の探求:作品研究のまとめ 影響力の大きいメディアアート作品は3 つの段階を経て展開される 1. 参加者の慣れ親しんだ運動記憶を入口として活用しつつ、知覚のランドスケープからの逸脱を導入することに より知覚の未完了を開く 2. より深い関与の過程で、習慣的な記憶のランドスケープを超えた純粋記憶への探索的想起を促すことにより、 記憶の未完了を開く

    3. 作品体験が参加者にランドスケープ群の根本的な再構築を要請し、実存の未完了が開く →この持続的な変容——単なる一時的な驚きではなく——を通じて、 参加者は「未来の記憶」を持ち帰り、作品を どう想起するか、そして未来をどう思い描くか、その両方を作り変える * : このように複数の段階に分けて考えることにより、既に制作された作品の体験を精緻に分析する場面だけでなく、新たに 作品を制作する場面における活用への期待があります。さらに精緻化すれば、 「単なるテクノロジーのデモ」と「作品」の 境界線を納得の行くやり方で定めるための指針にもなり得るでしょう。 * 27