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科学的推論と領域固有スキルの関連に関する一考察
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Daiki Nakamura
August 23, 2019
Education
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科学的推論と領域固有スキルの関連に関する一考察
日本科学教育学会第43回年会 2019年8月23日
Daiki Nakamura
August 23, 2019
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Transcript
科学的推論と領域固有スキルの 関連に関する一考察 広島大学大学院 ◦中村 大輝 東京学芸大学附属世田谷小学校 大澤 俊介 広島大学大学院 松浦
拓也 科学教育学会 2019-8-23 全23枚+補
研究概要 研究の目的 理科の授業において領域固有スキルが 科学的推論能力の育成に及ぼす影響を 明らかにすること 2 1. 領域固有スキル(知識)が影響 2. 認知欲求の低群においては、
3. 領域固有スキル(視点)が阻害要因となり得る β=.250の影響 推論場面で知識が活用できるスキルが重要 視点を機械的に当てはめ、考えることを避ける →科学的推論能力育成の阻害要因
発表の流れ 3 Ⅰ.研究の背景 :科学的推論と2種類のスキル Ⅲ.結果と考察 :回帰分析と解釈 Ⅱ.研究の方法 :測定変数と例数設計
科学的推論の重要性 4 ⚫ 科学教育の両輪(Bransford et al., 2000) 科学的概念 科学的推論 科学に関する情報を適切に利用
することができる(Giere, 1979) 幼稚園~大学で最も価値のある 学習成果の1つ(Hetmanek, Engelmann, Opitz & Fischer, 2018) 生涯学習の観点からの価値がある (Engaleman, Neuhaus & Fischer, 2016) Scientific Reasoning
科学的推論研究の展開 5 ⚫科学的推論研究の3分類(Fischer et al., 2014) ① 科学的推論の発達段階に関する研究 (e.g., Koslowski,
2012) ③ 教育的文脈における科学的推論や論証を支援し, 促進するための幅広い指導アプローチの研究 (e.g., Furtak, Seidel, Iverson & Briggs, 2012) ② 教育心理学,教育学,科学教育,その他の教科 教育の分野の知見から,科学的論証の過程と 成果を見る研究(e.g., Chinn & Clark, 2013)
科学的推論とスキル 6 学習者の科学的推論 =多様な認知活動の集合(e.g., Osborn, 2010) 仮説を立てる 変数を制御する 証拠を評価する ...
領域一般 スキル 領域固有 スキル 広く適用可能 ある領域に特徴的
科学的推論スキルの例 7 領域一般 スキル 領域固有 スキル 演繹 変数制御 モデリング アーギュメンテーション
帰納 生物分類 化学式 フェーン現象 コンプトン散乱 運動方程式 ある領域に特徴的 広く適用可能 Contrast domain-general domain-specific
領域一般スキルに着目した研究 8 これまでの科学的推論の指導に関する研究は、 領域一般スキルに着目したものが多い ① 推論形式に着目した研究(e.g., 松浦ら,2015) ex. 演繹、帰納、類推、アブダクションなど ②
研究計画の立案・方略に着目した研究(e.g., Ross, 1988) ex. 変数制御、誤差、シミュレーションなど ③ 論証(Argument)に着目した研究(e.g., Brown et al., 2010) ex. 論証の構造、根拠、論拠など Schauble(2018)による3分類
領域一般アプローチに対する批判 9 • 科学における方法の範囲と多様性に対処することができない • すべての領域には、その領域で発生している問題にある程度 固有の手順に関する知識が蓄積されている (Satterfield et al.,
2009) • より内容に特化したアプローチを求める議論が生じる (Windschitl et al., 2008) 例 領域固有スキルに着目した研究(Lehrer, 2008) ガラス瓶の中に持続的な水系を構築させる課題を通して、 学習者が生物領域を中心とした様々な領域固有スキルを 用いる様子を詳細に報告 ⚫ 領域一般アプローチに対する批判
研究のアプローチと必要性 10 • 領域固有性を主張する研究者も、領域一般的な科学的推論 の存在を否定しているわけではない(e.g., Schauble, 2018) • 科学的推論は、両方のスキルの相互作用から生まれる (Klahr
et al., 2011) 理科の授業において領域固有スキルが科学的推論 能力の育成に及ぼす影響を明らかにすること 研究の目的 • 領域一般/固有スキルの両方と、科学的推論との関係性を 明らかにすることが重要な課題(e.g., Engaleman et al., 2018) 領域固有スキルが科学的推論の関係 については研究の蓄積が乏しい 実験的な状況が多く、通常の 授業文脈の研究に乏しい
2種類のスキルと新学習指導要領 11 学びに向かう力 人間性 知識・技能 思考・判断 ・表現力 理科の見方・考え方を働かせ、 (問題解決の活動を通して、) 見方:領域固有スキル
エネルギー領域:量的・関係的な視点で捉える 粒子領域:質的・実体的な視点で捉える 生命領域:共通性・多様性の視点で捉える 地球領域:時間的・空間的な視点で捉える 考え方:領域一般スキル 比較:問題を見出す場面 関係付け:予想や仮説を発想する場面 条件制御:解決の方法を発想する場面 多面的に考える:結果から振り返る、考察する場面 (科学的推論能力)
発表の流れ 12 Ⅰ.研究の背景 :科学的推論と2種類のスキル Ⅲ.結果と考察 :回帰分析と解釈 Ⅱ.研究の方法 :測定変数と例数設計
測定変数 13 理科の授業において領域固有スキルが科学的推論 能力の育成に及ぼす影響を明らかにすること 研究の目的 生物領域の授業 小学校6年生 「生物と環境」 全12時間 科学的推論能力
(事前) 科学的推論能力 (事後) 領域固有スキル (知識)(視点) 認知欲求 (非認知能力) 指導前 指導中 指導後
科学的推論能力の測定 14 科学的推論能力 (事前) 科学的推論能力 (事後) 2題(選択・記述) 6点満点 2題(選択・記述) 6点満点
金属の種類によって体積の増え方は異なる 考察場面 6年:より妥当な考えをつくりだす力
領域固有スキルの測定 15 領域固有スキル (知識) 領域固有スキル (視点) 計8問 8点満点 計3問 6点満点
各領域の知識を適用する 領域に特徴的な視点でとらえる (外形や餌などの共通性・多様性に基づき, 分類の視点を記述する) • 小学校教員8名で 妥当性を検討 • 第6学年53名を対象と した予備調査 • 児童の回答傾向を参考 に適宜表現の修正 Contrast
認知欲求の測定 16 認知欲求 (非認知能力) 中村・雲財(2018) 「理科における認知欲求尺度」 の一部を使用 5件法 7項目 雲財・中村(2018)に示された
困難度・識別力パラメーターを 用いて,調査協力者の特性値 θ をベイズ推定(EAP推定) 非認知能力が認知能力に影響を及ぼす (OECD, 2015) Cf. 項目反応理論 =考えることへの動機づけ
調査対象者と例数設計 17 𝛼\1 − 𝛽 0.7 0.8 0.9 0.95 5
% 76 92 116 138 1 % 109 127 155 180 0.1 % 153 174 206 234 • 科学的推論能力の発達研究は小学生を対象に実証されてきた (Zimmerman, 2007) • 帰納的推論能力の発達は小学校第6学年を境に鈍化傾向 (松浦ら,2015) 小学校第6学年の児童を対象 ⚫ 調査対象者の属性 ⚫ 必要なサンプルサイズ(中程度の効果量 f 2=0.15を仮定した場合) 検定力0.95 有意水準1% 東京都内の公立小学校2校 6学級 215名 を対象に調査を実施
発表の流れ 18 Ⅰ.研究の背景 :科学的推論と2種類のスキル Ⅲ.結果と考察 :回帰分析と解釈 Ⅱ.研究の方法 :測定変数と例数設計
相関分析 19 r (N=197) 1 2 3 4 5 ◼
科学的推論能力 1 科学的推論能力 (事前) ― 2 科学的推論能力 (事後) .23*** ― ◼ 領域固有スキル 3 領域固有スキル (知識) .30*** .29*** ― 4 領域固有スキル (視点) .23*** .09*** .38*** ― ◼ 認知欲求 5 認知欲求 .13*** .21*** .23*** .23*** ― • 科学的推論能力と領域固有スキルに弱い相関が見られる
階層的重回帰分析 20 科学的推論能力 (事前) 科学的推論能力 (事後) 領域固有スキル (知識) 認知欲求 領域固有スキル
(視点) 認知欲求 × 領域固有(視点) 交 R2 =.170 .206 有意 非有意 .123 .250 -.069 .149 領域固有スキル(知識)が 科学的推論能力の育成に影響 標準偏回帰係数 Step4
単純斜行分析 21 科学的推論能力 (事後) 領域固有スキル (視点) 認知欲求高群 領域固有スキル (視点) 認知欲求低群
M+1SD M-1SD .099 -.268 認知欲求が低い学習者において,領域固有スキル(視点)が 高いほど,科学的推論能力が低くなる 理科の各領域において事物・現象を捉える際に共通して当 てはめることが可能な視点(e.g., 共通性・多様性など)を機械的 に当てはめることで満足し,熟考することを避けている Cf. 認知的節約(cognitve economy) 有意 非有意 科学的推論能力 (事後) 偏回帰係数
授業時の様子より 22 「生物と環境」における推論場面 ➢ 食べ物に関する生物と環境のかかわりについて推論 New どうせ循環するように なってるんだよ 認知欲求低群
研究概要 研究の目的 理科の授業において領域固有スキルが 科学的推論能力の育成に及ぼす影響を 明らかにすること 23 1. 領域固有スキル(知識)が影響 2. 認知欲求の低群においては、
3. 領域固有スキル(視点)が阻害要因となり得る β=.250の影響 推論場面で知識が活用できるスキルが重要 視点を機械的に当てはめ、考えることを避ける →科学的推論能力育成の阻害要因