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オープンデータとまちづくりを繋げたい

 オープンデータとまちづくりを繋げたい

[Code4LIB Japan 2025 通常発表セッション]
オープンデータとまちづくりを繋げたい発表資料
https://wiki.code4lib.jp/wiki/C4ljp2025/presentation#p8

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K.Sakanoshita

September 07, 2025
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Transcript

  1. オープンデータとまちづくりを繋げたい 坂ノ下 勝幸 諸国・浪漫 / OpenStreetMap Foundation Japan Code for

    OSAKA,Harima,Kusatsu/ 淀川アートネット Facebook: K.Sakanoshita X.com: @K_Sakanoshita P.1 本資料で利用している地図: © OpenStreetMap contributors
  2. P.2 自己紹介 - 坂ノ下 勝幸 ◼ 主な所属コミュニティ・団体 ⚫ OpenStreetMap Foundation

    Japan ⚫ Wikimedians of Japan User Group ⚫ 諸国・浪漫 / 淀川アートネット ⚫ Code for OSAKAなど ◼ 主な活動内容 ⚫ マッピングパーティの開催および協力 ⚫ ウィキペディアタウンの開催および協力 ⚫ オープンソース/データの活用(アプリ開発など) ◼ 目指していること ⚫ 地元の情報は、自分たちで発信する文化を作る ⚫ 現場こそ最強のツールとデータが使えるように P.2
  3. P.4 Wikimediaの各プロジェクトとは P.4 Wikimedia財団 英語版 日本語 ドイツ語 フランス語 ・・・ 英語版

    日本語 ドイツ語 フランス語 ・・・ 英語版 日本語 ドイツ語 フランス語 ・・・ 英語版 日本語 ドイツ語 フランス語 ・・・ 英語版 日本語 ドイツ語 フランス語 ・・・ 英語版 日本語 ドイツ語 フランス語 ・・・ 言語毎に独立して運用 写真や動画は ここに集約 • 個人や団体の寄付で運営 • サーバー運用など、プロ ジェクトの下支えを担当 • プロジェクトの運営には 直接的には関わらない Commons (写真・動画) Wikipedia (百科事典) Wiktionary (辞書) Books (教科書) Source (原文) Wikiquote (引用集) News (ニュース) 今回はWikimedia Commonsを紹介
  4. P.7 OpenStreetMap(OSM)とは ◼ OpenStreetMap(OSM)とは ⚫ 何処かの企業の製品や提供しているサービスではありません ⚫ 世界中のみんなと一緒に「地図」を作る国際プロジェクトです ⚫ 2004年に英国から始まり、日本では2008年頃に始まりました

    ◼ でも、単なる「地図」だと、使い道は多くはない ⚫ 目に見えない人は「図」使えないし、トイレの情報が欲しい時に お店の情報が地図に表示されていると探しづらくなるよね? 正確に言えばOpenStreetMapは地図と違います 「様々な場所の情報を集めたデータベース」です P.7
  5. P.10 まちづくりのデジタル化は進んでいる ◼ まちづくりもデジタル化しています ⚫ ほとんどの方はスマホを持っていて、SNSも使えます Instagramに写真を載せるのも、立派なデジタルまちづくりです ⚫ 街の古い写真を集めて公開する活動も増えてきていますね ◼

    でも、デジタル化の問題もあります ⚫ データの保管場所に信頼性が高くない場所を使う危険性 ✓ 無料で利用できるホームページやブログを提供しているサービスなど ✓ 2019年に終了した「Yahoo!ジオシティーズ」は400万件のサイトを保有 ※参考) https://seniorguide.jp/column/furuta/1176647.html ⚫ ライセンスを決めず「とにかく集めた」可能性 ✓ 「昔の写真を集めてアーカイブサイトを作ろう」として写真を集めるが、 利用規約を決めてないので、他の誰も使えない。お年寄りに利用規約を 説明すること自体が難しい場合も多い まちづくりでアーカイブも増えたけど課題も増えた P.10
  6. P.11 図書館とまちづくり ◼ まちづくりでは様々な活動があるけど ⚫ 特にアーカイブ関連は、専門知識が役立つと考えられます ⚫ 具体的には、著作権とIT関連が不足している実感があります ✓ 司書が持つ、著作権の基礎知識とITスキルが役立つ可能性

    ◼ 個人的な経験ですが… ⚫ まちづくり活動で、司書が参加する活動は限られている印象 ⚫ 司書を前面に出して活動している人は見たことが無いかなぁ ⚫ 逆に、まちづくりで図書館を利用する方たちも多くない印象 ✓ コミュニティが分かれて、それぞれ別に活動している感じかな ◼ Code forやCivic Techもまだまだ ⚫ ITに興味ある方たちが中心。まちづくりとの連携は弱い印象 まちづくりのデジタル化によって、図書館が 関われる領域は増えていると考えられる P.11
  7. P.12 オープンデータとまちづくり ◼ 「まちづくり」と言われるものの例 ⚫ 街の魅力を見つけて発信する活動 ✓ 歴史・文化の記録と発信を行う活動 ✓ 観光資源を発掘したり、新しく作る活動

    ⚫ 地域コミュニティを活性化させる活動 ✓ コミュニティカフェの運営 ✓ 各種文化・運動系の活動 ✓ 防災・子育ての活動(名簿作成、声掛け、訓練、交流など) ✓ 地域のお祭り(マルシェ、祭事も含む) ✓ その他(ゴミ拾い、清掃、防犯など) オープンデータの活用で、まちづくりの デジタル化による課題を解消できる可能性 また、図書館も関われる可能性がある P.12
  8. P.13 オープンデータをどう活用するか ◼ 街の魅力を見つけて発信する活動 ⚫ ウィキペディアタウン、OpenStreetMapマッピングパーティなど ✓ Wikimedia、OpenStreetMapのオープンデータを充実させることで 街の魅力を記録し、下記のAIや様々な活動に活かすことが出来る ⚫

    オープンデータはAIの重要なデータソース ✓ 「ネット検索」から「AIとの対話」に時代が変化しつつあることで、 貴重なデータソースとして、オープンデータの価値が高まっている ✓ 従来型の活動(本などのアーカイブ)と平行して重要な活動となる ◼ 地域コミュニティを活性化させる活動 ⚫ 充実したオープンデータを活用することで、活動の幅が増える ✓ 観光・文化マップ、防災マップ、飲食店マップ、子育てマップなど ✓ 地域の歴史解説、昔の写真や動画で展示会やグッズ・商品制作など 逆に言えば、オープンデータ以外を使うと 著作権侵害の可能性も(例:Google Mapsのスクショ) P.13
  9. P.14 なぜ、WikimediaやOpenStreetMapか? ◼ 地域資料を将来に残すならオープンデータ ⚫ 少なくとも、何も取り決めずに「単に集めただけ」での活用は厳しい ✓ ルールが無いので、集めた人や団体の信用だけに頼ることになる ⚫ 将来に残すことを考えると、オープンデータでの情報収集が望ましい

    ✓ CC-BYだと、別の誰かが改訂する度に著作権表示が増えていく… ✓ ルールを守る側が逆に不利になるなら、いっそのことCC0の方が楽 ◼ 国際的なプラットフォームの活用 ⚫ 補助金でサーバを持つ場合、補助金が切れるとデータが消失する恐れ ⚫ 寄付やスポンサーで運営基盤が安定している国際プロジェクトを利用 することは、データを長生きさせる(将来に残せる)可能性がある ⚫ また、将来的に「全く新しい活用方法」が見つかる可能性もある まちづくりでは、デジタルアーカイブの視点は あまり考慮されない(図書館が関わるメリット) P.14
  10. P.15 さて、どう活用していくか ◼ Wikimedia各プロジェクトやOpenStreetMapに関わる? ⚫ 残念ながら「さぁ、みんなで編集しよう」では人は動かない ⚫ 理由は様々だが、「巨大プロジェクトの一部」に埋没してしまい 活動の動機となる地域性が失われると感じる人が多いからかも? ◼

    他にも関わりにくい理由がある ⚫ Wikimedia commonsに写真を載せただけでは見られない ⚫ WikidataはIT詳しくない人には「訳が分からない」 ⚫ OpenStreetMapは「単なる地図」にしか見えない ✓ 単なる地図なら、Google Mapsで十分でしょ? ⚫ Wikipediaだけは、Google検索で表示されるので 他と違って、埋没しない可能性がある 単にウィキペディアタウンやマッピングパーティを 開催するだけでは、まちづくりとは距離が開く P.15
  11. P.16 アプリでオープンデータを活用する ◼ やりたいことと、必要なことは別物 ⚫ インフラ層のイメージは電気やガス、水道かな ⚫ みんながやりたいことはアプリケーション層 ✓ 例えば、地域の歴史書、子育てマップ、バリアフリーマップなど

    ⚫ 必要なこと(Wikimedia各プロジェクトやOpenStreetMap)はインフラ層 ✓ 例えば、その地域の歴史・文化、施設の位置情報など 「やりたいこと」と「必要なこと」を繋げる ためにアプリを開発する方法があります 名称 意味 アプリケーション層 みんながやりたいこと ※アプリケーションが該当 インフラ層 実現させるために必要なもの ※オープンデータが該当 やりたい! P.16
  12. P.18 アプリの独自データ Wikipedia記事 OSMとWikimediaを組み合わせる ◼ アプリを開発し、独自データとOSMを組み合わせることで、 「何処に何があるか」を写真や説明を含めての可視化 ⚫ コミュニティマップメーカーとして公開中 Wikimedia

    Commons データベース OpenStreetMap データベース 国際的なオープンデータの プラットフォーム(保管先) 地域の方たちが必要な情報だけを 分かりやすく地図表示するアプリ P.18
  13. P.27 事例のまとめ ◼ 事例的にはマップが多いけど ⚫ 内部的にはWikimedia Commons/Wikipediaを多々利用している ⚫ オープンデータが単体であるだけでは、まちづくりには使い難い ✓

    誰でも自由に使える仕組みを準備、提供する必要がある ✓ オープンデータとは「国のデータを公開すること」では無く、 個人や組織間のコラボレーションを促進させる仕組みのこと ◼ まちづくりでは多様なデータが潜在的に求められる ⚫ 明確な要求。例えば「明治時代の写真や新聞が欲しい」などなら 図書館に問い合わせが来ることもあるけど ⚫ まちづくりでは、その手前の「どうすれば良いか?」で悩んだり、 手っ取り早い方法をあまり考えず、実行してしまうことがある ✓ まちづくりにとって最優先なのは、住民たちのコミュニケーション ✓ アーカイブの必要性は分かるが、それはあくまでおまけ程度の認識 図書館(専門家)が長期的な視点で関われる可能性 P.27 まちづくり にこそ必要
  14. P.28 ではどうやって関わるか? ◼ 図書館の「図」 ⚫ 「地図」は当然含まれますし、まずは欲しい地域資料ですね ✓ 地域によっては商用地図(ゼンリンなど)が弱い所もあります ⚫ OSMマッピングパーティで地域を調べて、記録する

    ✓ まちづくりとしては弱い活動。ただ、アートフェスマップの様に 他に使えるデータが無い時(実は思った以上に多い)には必要 ➢ 知らずにGoogle Mapsを利用したり、独自データを作ることで手間が 増えたり、他団体と連携できなかったり、将来に残らないことになる ◼ 図書館の「書」 ⚫ ウィキペディアタウンで地域を理解し、発信する ⚫ Wikimedia Commonsに写真や動画を記録し、活用する ✓ 地域情報のアーカイブかつ、将来的に残る可能性が高い活動 ✓ 補助金に依存せず、全世界の有志&ハッカーが協力している 地味だけどオープンデータがまちづくりを支えていく P.28
  15. P.29 アプリでオープンデータを使いませんか? ◼ まとめ ⚫ 地域活動では、著作権やアーカイブに関する視野が狭い時がある ⚫ 地域活動の成果は地域の宝であり、出来れば将来に残していきたい ⚫ そのためには、オープンデータ&国際的なプラットフォームが大事

    ⚫ ただし、「自分たちの活動」として認識できる仕組みが必要となる ⚫ アプリから積極的にオープンデータを活用することで、地域活動の 低コスト化と自然なデジタルアーカイブ化が出来る可能性がある ⚫ まちづくりの方たちと、長期的な視点で図書館は関われる可能性 ◼ 先ほど紹介したアプリはオープンソースで公開中 ⚫ https://github.com/K-Sakanoshita ⚫ https://github.com/armd-02 オープンソースなのでご自由にお使いください 欲しいアプリがあればお気軽にご相談ください P.29