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オープンデータを活用した万博を楽しむ事例紹介 / Case studies of using ...

オープンデータを活用した万博を楽しむ事例紹介 / Case studies of using Opendata to enjoy the Expo

2025/10/04 「2025年度 第1回 DBSJセミナー」用資料
https://dbsj.org/events/event_info/dbsj_seminar_2025_1/

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K.Sakanoshita

October 03, 2025
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Transcript

  1. オープンデータを活用した万博を楽しむ事例紹介 坂ノ下 勝幸 諸国・浪漫 / OpenStreetMap Foundation Japan Code for

    OSAKA, Harima, Kusatsu/ 淀川アートネット Facebook: K.Sakanoshita X(Twitter): @K_Sakanoshita 本資料で利用している地図: © OpenStreetMap contributors P.1
  2. P.2 自己紹介 - 坂ノ下 勝幸 ◼ 主な所属コミュニティ・団体 ⚫ OpenStreetMap Foundation

    Japan ⚫ Wikimedians of Japan User Group ⚫ 諸国・浪漫 / 淀川アートネット ⚫ Code for OSAKAなど ◼ 主な活動内容 ⚫ マッピングパーティの開催および協力 ⚫ ウィキペディアタウンの開催および協力 ⚫ オープンソース/データの活用(アプリ開発など) ◼ 目指していること ⚫ 地元の情報は、自分たちで発信する文化を作る ⚫ 現場こそ最強のツールとデータが使えるように P.2
  3. P.4 オープンデータって? ◼ 意外と勘違いされやすいこと ⚫ ネットで公開されているデータのことでは無い ◼ オープンデータで一番大事なこと ⚫ 利用できる、そしてアクセスできる

    ✓ コンピュータで簡単に利用出来ること(紙資料はオープンデータでは無い) ⚫ 再利用と再配布ができる ✓ どんな目的でも利用でき、データを書き換えて再配布できること ⚫ 誰でも使える ✓ データの使い道、人種、所属団体、思想、宗教などで差別してはならない 単に「望ましい」ではなく、複数のデータを 様々なことに使うには「オープンデータ」という ルールに沿って公開することが大事 P.4
  4. P.5 もう少し分かりやすく ◼ オープンデータは以下が出来る可能性に繋がる ⚫ 組織や個人のコラボレーションを可能にする基盤 ⚫ 将来にデータを残すための基盤 ◼ 具体的な話として

    ⚫ インターネットを活用し、組織や個人のコラボレーションを 行うことで、低コストでデータ整備が出来る可能性がある ✓ Wikipediaの百科事典、OpenStreetMapの地理空間情報など ⚫ オープンデータで資料を集めると、デジタルアーカイブの 整備・活用が進む可能性が高まる ✓ 資料毎にルールが違うと管理コストが嵩張り、活用出来なくなることも ✓ 元データの管理団体が活動停止しても、オープンデータなら第三者が 事業継承などの手続きをしなくても、データを引き継ぐことが出来る P.5
  5. P.7 ◼ 最初に伝えたいこと ⚫ 何処かの企業の製品や提供しているサービスではありません ⚫ 世界中のみんなと一緒に「地図」を作る国際プロジェクトです ⚫ 2004年に英国から始まり、日本では2008年頃に始まりました ◼

    みんなとは ⚫ 個人、企業やNGO、NPOなどの組織も含みます ⚫ 誰でも自由に参加出来るオープンな活動です ◼ OpenStreetMapは誰のもの ⚫ 英国にある OpenStreetMap Foundation が オープンデータ(ODbL)で提供しています OpenStreetMapのロゴ画像 ※3単語をまとめて1単語(スペース無し) OpenStreetMap P.7
  6. P.10 他の地図では出来ないの? ◼ OpenStreetMap以外の地図じゃ出来ないの? ⚫ もちろん、地図やデータを他社に販売している会社もあります ⚫ そういったビジネスが行われているのは一般的に良くあります ◼ 他の地図やデータはその会社の商品です

    ⚫ ビジネス上の理由で、一般人は地図アプリを無料提供している 会社もありますが、あくまで無料なだけで自由には使えません ⚫ アプリは無料で使えても、地図を印刷してチラシ内に 使ったり、データを抜き出すのは、ほとんどの地図で 禁止されており、自由な地図ではありません P.10
  7. P.11 OpenStreetMapが実現したいこと 店舗情報 背景地図 店舗情報 背景地図 経路情報 投稿情報 経路情報 大企業が提供している地図

    OpenStreetMapと組み合わせた地図 企業、団体、個人が 必要な層を追加できる (車いす、アレルギー、保育園 防災、防犯、歴史など) OpenStreetMap 交通情報 作りたい地図に必要な 情報がOpenStreetMapに あるので作る手間が減る P.11 作りたい地図に必要な 情報はあるが、印刷し て他の方に渡すのは 禁止など制約が多い
  8. P.14 全ては「万博非公式マップ」から ◼ 「万博非公式マップ」で検索すると… ⚫ 作者は自分で作ったと主張していますが、どうみても背景 地図は公式マップをそのままコピーしたものと分かる ✓ 万博公式マップ(コピー元の地図) https://www.expovisitors.expo2025.or.jp/map

    ✓ 恐らく、背景地図に追加した文章を「自分で作った」と主張されて いるのでは無いかと推測しています ◼ 背景地図にも著作権はあるので、勝手に使えません ⚫ でも、この非公式マップはSNSで大流行し、NHKで扱われる ほど人気なため、万博協会は何も言えないかと思います ⚫ いずれにしても、オープンデータでは無いので、安心して 誰もが自由に使い、将来に残る仕組みとしては不十分かな P.14
  9. P.15 オープンデータの必要性を感じて ◼ 結局の所 ⚫ 「自由に使える地図が無い」のが本質的な問題かなと ⚫ なら、OpenStreetMapの万博情報を充実させる必要がある ⚫ 世界中のマッパーがマッピングした結果、開幕から3日間で

    かなり充実し、普通の地図として使えるレベルになりました ⚫ 大阪市の許可を得て、令和6年 度航空写真を参考に地図を描 けるようになりました ⚫ 他にも、パビリオンの写真が Wikimedia Commonsに掲載 され始めてきました ✓ Wikimedia Commonsとは ➢ 自由に使える写真や動画を 掲載する世界プロジェクト P.15
  10. P.17 スマホで現地マッピングが便利 ◼ スマホアプリ「Every Door」 ⚫ https://every-door.app/ ◼ 誰でも簡単に情報提供出来るのが特徴 ⚫

    地図は「図」だけとは限らない。施設や 店舗、営業時間やバリアフリー情報なども OpenStreetMapに掲載する情報です ⚫ Every Doorを使えば、見つけた施設などを その場で情報を追加・編集できます ⚫ OpenStreetMapは様々に活用されることが 目的なため、データ投稿者の多様性も重要 P.17
  11. P.19 オープンデータは揃ってきたけど ◼ OpenStreetMapの知名度が低い ⚫ オープンデータは充実したが、知名度が低いと知られない ⚫ 知られないと、せっかく整備したデータ群がもったいない ◼ OpenStreetMapの使い方が分からない

    ⚫ そもそもOpenStreetMapプロジェクトが公開している地図は 自分たちの描いた地図を見るためで、地図サイトとしての 使い勝手はあえて落としている ✓ Mapbox社やMapTiler社など、OpenStreetMapのデータでビジネスを している企業のサービスを契約して使うことを推奨している ✓ または、自分でサーバを立てたり、アプリにデータを取り込んだり データを整備しても活用しないと意味がない 一般の来場者が使える仕組みを提供したい P.19
  12. P.22 コミュニティマップメーカーの仕組み ◼ アプリの独自データとOSMのデータを組み合わせることで 「何処に何があるか」を写真を含めて可視化ができる Wikimedia Commons データベース OpenStreetMap データベース

    アプリの独自データ 国際的なオープンデータの プラットフォーム(保管先) 地域の方たちが必要な情報だけを 分かりやすく地図表示するアプリ P.22
  13. P.36 最終的にはデジタルアーカイブ ◼ 万博終了後、「最新」の地図からデータは消える ⚫ ただし、OpenStreetMapは過去データを公開している ⚫ 全ての変更履歴を記録したデータも公開している ⚫ もちろん、全てオープンデータ(ODbL)として公開

    ⚫ 他にもWikimedia Commonsに写真も残している ◼ 当時の貴重な資料として活用することが出来る ⚫ 他の非公式マップと違い、ライセンスが明確なのも特徴 ⚫ 時間と許可があれば、 3D建物、排水路、電線も ⚫ デジタルアーカイブという将来世代への宝物 P.36
  14. P.38 データ整備とアプリ開発の両輪が大事 ◼ 非公式マップから始まった問題の本質 ⚫ 「オープンデータ」が不足している状況を解消させる ⚫ OpenStreetMapやWikimedia Commonsなどの充実が大事 ◼

    データを整備しても使われないと意味がない ⚫ 一般の方が気軽に使えるWebアプリを開発して提供する ⚫ オープンデータなことは免罪符とはならない、一般の方が 使えるレベルのデータとアプリの完成度が必要となる ◼ 万博マニアックマップを開発(コミュニティマップメーカー) ⚫ 一般の方でも気軽に使える完成度(のつもり) ⚫ 万博ボランティアの方も案内に使われていたり P.38
  15. P.39 最後に ◼ 万博は、たった半年で終わるお祭り ⚫ 半年後にはパビリオンは営業を終了し、一年もしたら建物も 大半が解体されたり、別の場所へ移設される運命 ◼ 今のうちにしっかり記録して将来に伝えたい ⚫

    今は情報があふれているけど、何十年後も残るものは少ない ⚫ 今は大した情報で無くても、未来では大事な情報になるかも ⚫ そういった情報をオープンデータで残すことに意義がある ◼ でも、記録するだけでは面白くない ⚫ 今を生きている私たちも、データを活用したい ⚫ 今と未来を繋げる仕組みを、オープンソースで 作っていけたら良いなと思います P.39