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Akamaiのキャッシュ効率を支えるAdaptSizeについての論文を読んでみた

 Akamaiのキャッシュ効率を支えるAdaptSizeについての論文を読んでみた

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November 03, 2025
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  1. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 異なるサイズのオブジェクトのキャッシュ効率を上げるのは難しい ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  2. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    異なるサイズのオブジェクトのキャッシュ効率を上げるのは難しい ◦ CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  3. Akamaiとは • CDN(Contents Delivery Service)の一つ ◦ リクエストをしたユーザーに物理的に近いノードにキャッシュしデータを配信する ▪ 雑な言い方をすれば、httpsで扱える分散キャッシュシステム ◦

    キャッシュをせずとも最適な経路を通ることでレイテンシーが軽減されることもある ◦ 動画・ライブ配信や静的データの配信などに用いられる ◦ 最近の傾向としてはWAFがCDNに含まれることが多く、セキュリティ向上の要素もある ◦ CDNを用いることで、Origin(データ配信元)はより小さなリソースで運用できる
  4. Akamaiとは • CDN(Contents Delivery Service)の一つ ◦ リクエストをしたユーザーに物理的に近いノードにキャッシュ しデータを配信する ▪ 雑な言い方をすれば、httpsで扱える分散キャッシュシステム

    ◦ キャッシュをせずとも最適な経路を通ることでレイテンシーが軽減されることもある ◦ 動画・ライブ配信 や静的データ の配信などに用いられる ◦ 最近の傾向としてはWAFがCDNに含まれることが多く、セキュリティ向上の要素もある ◦ CDNを用いることで、Origin(データ配信元)はより小さなリソースで運用できる
  5. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 異なるサイズのオブジェクトのキャッシュ効率を上げるのは難しい ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  6. AkamaiにおけるCDNの課題 • 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦ CDN は メモリ→ ディスク → オリジンの多段キャッシュで配信効率を最大化している

    ▪ 今回はメモリを焦点にあてたキャッシュヒット率の向上のはなし ◦ 限られたメモリでのキャッシュヒット率の最適化には2つの要素がある ▪ admission: オブジェクトをキャッシュに入れるかどうかの判断 ▪ eviction: 新たなオブジェクトを追加する際、どのオブジェクトを追い出すかの判断
  7. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 異なるサイズのオブジェクトのキャッシュ効率を上げるのは難しい ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  8. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 異なるサイズのオブジェクトのキャッシュ効率を上げるのは難しい ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  9. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 異なるサイズのオブジェクトのキャッシュ効率を上げるのは難しい ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  10. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  11. AkamaiにおけるCDNの課題 • AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた ◦ アドミッション確率 p(size)=exp(-size/c)(サイズ依存。小さいほど入りやすい) ◦ 各オブジェクト i を

    LRU 上の独立マルコフ連鎖でモデル化 ◦ 上昇率 r_i(リクエスト率)と押下率 μ_c(平均場;c に依存)から P_i(in-cache) を閉形式で導出 ◦ P_i(in-cache) = { (exp(r_i/μ_c) - 1) * exp(-c * s_i) } / { 1 + (exp(r_i/μ_c) - 1) * exp(-c * s_i) } ◦ 容量制約 Σ_i P_i * s_i = K を満たすよう μ_c を解き、OHR(c) を評価 ◦ OHR を最大化する c をグローバル探索(例:Δ=250K req ごとに更新) •
  12. AkamaiにおけるCDNの課題 • AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた ◦ アドミッション確率 p(size)=exp(-size/c)(サイズ依存。小さいほど入りやすい) ◦ 各オブジェクト i を

    LRU 上の独立マルコフ連鎖でモデル化 ◦ 上昇率 r_i(リクエスト率)と押下率 μ_c(平均場;c に依存)から P_i(in-cache) を閉形式で導出 ◦ P_i(in-cache) = { (exp(r_i/μ_c) - 1) * exp(-c * s_i) } / { 1 + (exp(r_i/μ_c) - 1) * exp(-c * s_i) } ◦ 容量制約 Σ_i P_i * s_i = K を満たすよう μ_c を解き、OHR(c) を評価 ◦ OHR を最大化する c をグローバル探索(例:Δ=250K req ごとに更新) • よくわかり ませんでし た。。 続きは議論 で...
  13. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 異なるサイズのオブジェクトのキャッシュ効率を上げるのは難しい ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  14. 評価手法 • トレースベースシミュレーション+プロトタイプ実装ベンチ ◦ Varnish・Nginx • Akamaiプロダクショントレース ◦ HK: 4.5億

    req / 157.5 TiB / 2,500万 objects ◦ US: 4.4億 req / 152.3 TiB / 5,500万 objects • メモリ1.2 GiB、C++シミュレータで各方式のOHRを比較 • 比較対象: Nginx / Varnish / 研究系8手法 / 将来知識ありの SIZE-OPT
  15. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 異なるサイズのオブジェクトのキャッシュ効率を上げるのは難しい ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  16. 評価結果 • 堅牢性 ◦ キャッシュヒット率を維持 ▪ 事前知識を持つSIZE-OPTと比較 • スパイクリクエスト: 95%

    • 敵対的ミックス: 81% ◦ Randomized: 短期間に大量のトラフィックが急増するようなケース ◦ Adversarial: 性質の異なるアクセスを繰り返す(Web⇔動画)
  17. 本日の発表の流れ • 自己紹介 • Akamaiとは • AkamaiにおけるCDNの課題 ◦ 「CDNの最大の課題はメモリから配信されるキャッシュヒット率の最適化」 ◦

    CDNゆえのキャッシュヒット率向上の課題を複雑にする要素がある ◦ 異なるサイズのオブジェクトのキャッシュ効率を上げるのは難しい ◦ 先行研究や実運用におけるキャッシュヒット率の限界 ◦ AdaptSizeではマルコフ連鎖チューニングモデルを用いた • 評価 ◦ 評価手法 ◦ 評価結果 • まとめと議論
  18. まとめと議論 • CDNでは時間帯によってリクエストパターンが異なる • その中でメモリ上のキャッシュヒット率を向上させる必要がある • 異なるオブジェクトを対象としたキャッシュヒット率ではadmissonが大事 ◦ 限られたメモリに大きなファイルを入れるとそれだけでキャッシュヒット率が落ちるため ◦

    十分アクセスされる大きなファイルだけを入れる必要がある • 既存の研究ではevictionに焦点を当てたものが多い • AdaptSizeではadmissiionに焦点を当てた • 事前知識がある SIZE-OPTと数ポイントしか性能劣化しない手法を考案した ◦ これが AdaptSize • Varnish統合ができ、非常に使い勝手が良い