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キャリア理論をもとに考えるエンジニアのキャリア/Engineer's careers base...

Daisuke Sato
December 08, 2023

キャリア理論をもとに考えるエンジニアのキャリア/Engineer's careers based on career theory

## 概要
「一歩先の未来を見据える」エンジニアのキャリアについて、キャリア理論をもとに考察をします。本セッションでは、VUCA時代に着目されているキャリア理論を解説するとともに、その応用としてエンジニアのキャリアについてお話をします。

## イベント
https://event.shoeisha.jp/devboost/20231209

Daisuke Sato

December 08, 2023
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Transcript

  1. ©2023 Joystruct 本セッションのゴール • キャリアとは、何だろうか • キャリアは、どう作ればいいのだ ろう • 目指したいものがない

    ──と、考えてしまうかもしれない。 同じ悩みを抱えていた先人たちは、こ れらをキャリア理論として体系化して いる。 本セッションで、キャリア理論に触れ ることで、今後のキャリア作りに活か せる「自分の考え」を見つけよう。 4
  2. ©2023 Joystruct キャリア・ラダーの課題 キャリアを「梯子」に例えることは、伝統的な捉え方だが課題がある。 • 制限: 定められた梯子を登ることで、個々の興味や強み、キャリアの目標 に対する可能性が制限される • 一方向性:

    梯子を登ることでキャリアが成功したと見なすため、横方向の 移動や他のキャリアへの機会が阻害される • 適応性: 固定的なキャリアパスになるため、新しい技術や業界の動向に対 応するのが難しい 14
  3. ©2023 Joystruct キャリア・ラティス The Career Lattice Model [1] Teaching Responsib

    ilities Role Options Teacher as Learner Knowledge Production Peer Observation/C oaching Teacher Preparation Mentoring Leadership Student Evalution Planning Curruculum Instructional Strategies Materials Classroom Management Discipline Climate(Scho ol/Classroom) Communicati on Professinalis m Co-Curricular キャリア・ラティスは、業務に おける「責任」と「ロールオプ ション」を用いてマトリクスを 作る。 二つの交点により、能力開発 の可能性がわかる。 16
  4. ©2023 Joystruct エンジニアリングのキャリア・ラティスの例 実行責任 ロールオプション 知識生産 設計 レビュー/ フィードバック 育成/教育

    メンタリング リード バックエンド フロントエンド インフラ アーキテクチャ セキュリティ チームビルディング 17
  5. ©2023 Joystruct 外的キャリアと 内的キャリアの 相互作用 キャリアが人を作り、人が キャリアを作る。 文化によりキャリアが形成さ れ、キャリアには「個人差」が 介在する。

    A cultural model of career dynamics [4] Organizational culture (values, norms, and artifacts) National cultures (basic assumptions) External career Internal career Individual differences 23
  6. ©2023 Joystruct バウンダリレス・キャリア 「境界のある」/「組織的」キャリアの反意語。伝統的な組織のキャリアに依 存するのではなく、そこから独立するというもの[5]。 1. 典型的なシリコンバレーのキャリアのように、キャリアが別々の雇用主の境界を越えて移動す る場合 2. 学者や大工のようなキャリアが、現在の雇用主の外から正当性(市場性)を引き出す場合

    3. 不動産業者のようなキャリアが、組織外のネットワークや情報によって支えられている場合 4. 伝統的な組織のキャリアの境界線、特に階層的な報告や昇進の原則が破られるときに生じる 5. 個人的な理由や家庭の事情で既存のキャリアの機会を拒否する場合に生じる 6. キャリア行為者の解釈によるもので、構造的な制約に関係なく、境界のない未来を認識する場 合 出典<Sullivan, S. E., & Arthur, M. B.『The evolution of the boundaryless career concept: Examining physical and psychological mobility』(Journal of vocational behavior・2006). 訳は筆者による>[6] 27
  7. ©2023 Joystruct 移動には「キャリア・コンピテンシー」が大事 キャリア・コンピテンシーは、3つの”知る”からなる[7]。 1. 「なぜ」を知る: 動機とアイデンティティを理解する 2. 「誰と」を知る: 人間関係と評判を理解する

    3. 「どのように」を知る: スキルと専門知識を理解する キャリア・コンピテンシーが高い人ほど、内的キャリアが成功して、市場価値が向 上(外的キャリアの成功)もするという。 34
  8. ©2023 Joystruct キャリアは資産 キャリアは無形資産であり、有 形資産の形成を手助けする。 これを、貸借対照表で表現す る試みもある。 無形資産 (生産性資産) (活力資産)

    (変身資産) 無形資産 有形資産 負債 資本 資産 負債 資本 有形資産 (投資)負債 資本 貸借対照表 キャリア資本表① キャリア資本表② キャリアの貸借対照表 [8] 39
  9. ©2023 Joystruct キャリア理論のまとめ • キャリアは、ラダーではなく「ラティス」になる • キャリアは、組織を超えて形成される • 外的キャリアだけではなく、内的キャリアを認識する •

    キャリアは、個人のものであり企業のものではない • 物理的移動だけではなく、心理的移動が新しいキャリアに繋がる • キャリア形成の能力「キャリア・コンピテンシー」を高める • キャリアは、「人生のプロセス」だと考えて主体的に構築する • キャリアを資産と考えて、計画的に築いていく 42
  10. ©2023 Joystruct キャリアを作る プロセス例① • 学習: 新知識の習得や勉強会への参加 は、現場での応用能力を高める • 人脈形成:

    コミュニティ活動を通じて異 なる分野や業界の人との交流を深める • キャリア目標: 外的キャリア目標は計測 しやすく、キャリアの進展を具体的にす る • etc… 新しい技術や知識を学び、コ ミュニティ活動をとおして、心理 的移動性を高める。 内的キャリアを認識して、外的 キャリアの目標を作り、物理的 移動性を高める。 44
  11. ©2023 Joystruct キャリアを作る プロセス例② • 新しい職務経験: 例えば、バックエンド エンジニアがフロントエンド開発に挑戦 するなど •

    異なる業界経験: ゲーム業界から金融業 界への移動など • 副業経験: 本業では得られない技術や経 験を副業を通じて得る • etc… 異なる業界に移動、未経験の 職務に異動、フリーランスや起 業など、新しい道を選ぶ。 45
  12. ©2023 Joystruct キャリアを作る プロセス例③ エンジニアにとって、マネジメン トもキャリアの一環であり、キャ リアの終着点ではなくプロセス になる。 マネジメントのキャリアを通じ て、多岐にわたる経験が得ら

    れる。 • チームビルディング: リーダーシップを使 い分けながらチームを作り、チームととも に目標を達成する経験 • 人材の育成とメンタリング: 1on1や人材評 価などをとおして、チームメンバーの成長 を支援する経験 • 組織戦略と予算: 組織戦略や組織デザイン を作り、そして資源(ヒトモノカネ)を管 理する経験 • etc… 46
  13. ©2023 Joystruct [1] Christensen, J. C. (1988). Personalizing Staff Development:

    The Career Lattice Model. Fastback 281. Phi Delta Kappa, Eighth and Union, Box 789, Bloomington, IN 47402. [2] Benko, C., & Anderson, M. (2010). The corporate lattice: Achieving high performance in the changing world of work. Harvard Business Press. [3] Arthur, M. B., Hall, D. T., & Lawrence, B. S. (1989). Generating new directions in career theory: The case for a transdisciplinary approach. Handbook of career theory, 7, 25. [4] Arthur, M. B., Arthur, M. B., Hall, D. T., & Lawrence, B. S. (Eds.). (1989). Handbook of career theory. Cambridge University Press. [5] Arthur, M. B., & Rousseau, D. M. (Eds.). (2001). The boundaryless career: A new employment principle for a new organizational era. Oxford University Press, USA. [6] Sullivan, S. E., & Arthur, M. B. (2006). The evolution of the boundaryless career concept: Examining physical and psychological mobility. Journal of vocational behavior, 69(1), 19-29. [7] DeFillippi, R. J., & Arthur, M. B. (1994). The boundaryless career: A competency‐based perspective. Journal of organizational behavior, 15(4), 307-324. [8] 田中研之助. (2019). プロティアン. 日経BP. 参考文献 49
  14. ©2023 Joystruct • BenKo, C., & Weisberg, A. (2008). Mass

    Career Customization. Building the corporate lattice organization, Deloitte Review, Accessed online: https://www2.deloitte.com/content/dam/insights/us/articles/mass-career-customization-building-the-corporate-latti ce-organization/US_deloittereview_MassCareerCustomization_jul08.pdf • Burke, P., Heideman, R. G., & Heideman, C. (Eds.). (1990). Programming for staff development: Fanning the flame. Psychology Press. • Arthur, M. B., Khapova, S. N., & Wilderom, C. P. (2005). Career success in a boundaryless career world. Journal of Organizational Behavior: The International Journal of Industrial, Occupational and Organizational Psychology and Behavior, 26(2), 177-202. • 松本雄一. (2008). キャリア理論における能力形成の関連性 : 能力形成とキャリア理論との統合に向けての一考察 (上)(下). 商学論究, 56(2), 65-116. 参考文献 50