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大企業でもできる!ボトムアップで拡大させるプラットフォームの作り方

 大企業でもできる!ボトムアップで拡大させるプラットフォームの作り方

2025/12/11開催『Platform Engineeringの進め方とコミュニケーション ~組織の壁への向き合い方~』( https://findy.connpass.com/event/375302/ )の登壇資料です。

■ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター データ活用推進グループ 主任技師 前川 博志さん

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Transcript

  1. 自己紹介
 所属、職位 
 • ダイキン工業 テクノロジー・イノベーション センター 主任技師
 • (いわゆる『課長級』)

    
 
 これまでの経歴 
 • IoTプラットフォーム「DK-Connect」のSRE チーム
 • サービスエンジニア支援プラットフォーム のアーキテクト
 • AWSを始めとした開発インフラの標準化
 • それらの開発プラットフォームを活用する アジャイル開発チームのアジャイルコーチ
 • 技術情報の情報交換を行うコミュニティ運 営

  2. 最近の外部登壇
 • DevOpsDays Tokyo 2025
 ◦ Effectuational DevOps: "エフェクチュエーション"で駆動するDevOps組織 変革

    
 
 • AI Engineering Summit by Findy Tools
 ◦ 研究開発部門で生成AIを一年間追いかけて学んだたった一つのこと 
 
 • JaSST関西 2025(基調講演)
 ◦ DevOpsを加速させるテスト、DevOpsで加速するテスト 
 
 • Developer's Summit 関西 2025
 ◦ 技術とともに進む、ダイキン工業のソフトウェア開発

  3. 今日お話しすること
 Platform Engineeringを進める上での組織の壁 
 • DevOps組織の意義が理解されず、エンジニアや予算が十分に与えら れない
 • 基盤を広げていくのが難しい、押しつけ基盤となってしまう
 •

    取り組みが組織全体に広がらず、活動が頭打ちになる
 • 直接的な事業インパクトを生み出せないため、予算削減対象になりや すい
 
 
 これらにどう向き合ってきたか? 
 • 「エフェクチュエーション」という考え方を軸に振り返る

  4. エフェクチュエーションとは
 未来を予測して目標から逆算するのではなく、手持ちの資源から可能なこ と を考え行動し、偶然を取り込みながら目的を創造 していくアプローチ
 
 
 • 特に新規事業など 変化の激しい環境

    の意思決定に有効とされる
 • バージニア大学ダーデン経営大学院のサラス・サラスバシー教授によっ て提唱
 • 日本では書籍「エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する5つの 原則」が有名

  5. エフェクチュエーションの5つの原則
 • 手中の鳥: 目的ありきではなく、手持ちの手段から始める
 • 許容可能な損失 : 失っても許せる範囲で挑戦する
 • レモネード

    : 予期せぬ出来事を機会に変える
 • クレイジーキルト : 関係者との相互作用で未来を共創する
 • パイロット : 未来は予測せず、コントロール可能な範囲に注力する
 
 
 ⇒ この5つの原則でダイキンでの取り組みを振り返る 

  6. 手中の鳥: 自分たちの持つ武器をどう定義するか?
 目的ありきではなく、手持ちの手段から始める原則 
 • 「自分は何者か?」「何を知っているか?」「誰を知っているか?」
 • 今あるリソース(技術、人、知識、ネットワークなど)を最大限に活用して 何ができるかを考え、行動を起こす
 


    
 「もっとXXがあれば、、、」を捨て、今ある武器を探す 
 • 技術: これまで曲がりなりにも大規模なAWSプロジェクトを進めてきた
 • 人: 一緒に難しいプロジェクトをくぐり抜けてきた仲間が一人
 • つながり: 色々目立つ社内活動(火消しの傭兵)のおかげで、信頼貯金 有り

  7. 許容可能な損失: 小規模だからこそできる取り組みを活かす
 失っても許せる範囲で挑戦する原則 
 • 「この挑戦に失敗した場合、失っても許容できる損失はどれくらいか」を 自問し、その範囲内で行動を選択
 • 大きなリスクを取らずに新しい試みを始めやすくなる
 •

    特に リソースの限られる状況 で有効とされる
 
 
 短期的な利益がみえなくても、とりあえずやってみよう 
 • 相談ベースの支援をとりあえず沢山うけてみる
 • 「そんな事一々やってたらキリないよ」は無視!!
 • これが実は「手中の鳥」となっていた

  8. コミュニティも「許容可能な損失」で立ち上げ
 ダイキン工業AWSコミュニティ ACDC 
 • AWS Community for Daikin Co-workers


    • ACDC変換のように、異なるエリアの人たちが交われる場に
 • メーカーとして、ハードウェアに近いような言葉を入れたかった

  9. ACDCのあゆみ
 • 2023年6月くらい: 企画 ⇒ とりあえずの仕切りを引き受ける 
 • 2023年9月: 社内でのAWSカンファレンスを実施

    + 告知
 • 2023年10月: 正式立ち上げ、Teamsなどでの相談うけつけを開始
 • 2024年12月: ACDCカンファレンスを開催
 • 最終的には200名を超える組織に 
 
 
 ⇒ 「許容可能な損失」の範囲で始めたことが、大きな「手中の鳥」に成長

  10. レモネード: どんな課題(レモン)も見方を変えればレモネードに
 予期せぬ出来事を機会に変える原則 
 • 計画通りに進まないことや、予期せぬ問題・失敗(酸っぱいレモン)が発 生した場合の考え方
 • 単なる障害と捉えるのではなく、学びや新しい方向転換の機会(美味し いレモネード)として積極的に活用する


    
 
 どうせやらないといけない面倒事なら、楽しむ 
 • 社内規定は守らないといけない、、、それは仕方ない
 ◦ ⇒ だったら単にルールを決めるだけにしない、自動化する 
 • 誰も彼もが生成AIほしいと言ってるんだけど、、、これどうしよう
 ◦ ⇒ みんな使いたいなら使ってもらう環境を用意すればいいじゃん!

  11. クレイジーキルト: 社内外を有機的につなぐ
 関係者との相互作用で未来を共創する原則 
 • 事業を進める中で出会い、関心を示してくれた人々(ステークホルダー) と自発的なパートナーシップを築く
 • 相互作用 を通じて、当初は想像もしなかったようなゴールや事業内容

    を 共に創り上げていく 
 
 
 前提を持たずにコミュニケーションして発見を繰り返してく 
 • セキュリティ周りで全社IT部門と多く会話するように
 ◦ お互いの事情がわかり、建設的な議論 ができるようになった
 • 生成AIの事例の中で営業で技術を尖らせているメンバーを発見
 ◦ RAGテンプレートに巻き込み、想定以上のスピードで事例創出

  12. コミュニティの統合も「クレイジーキルト」
 AWSコミュニティとシステム開発コミュニティを統合し、ダイキンのあらゆる開 発者を対象としたコミュニティに変更 ⇒ Daikin Developers' Lounge: D2 Lounge 


    • 参加者約400名の巨大コミュニティに
 ◦ WAUも200名近い、生きたコミュニティ
 • 異なるバックグラウンドの人たちが有機的につながる場に 

  13. パイロット: 大きなことを一気に見すぎない
 未来は予測せず、コントロール可能な範囲に注力する原則 
 • 市場予測や競合分析といった 外部環境の予測に頼るのではなく 、自 らがコントロール可能な活動に焦点を当て、行動する
 •

    予測ではなく 未来を形作っていこう とする考え方
 
 
 コントロールできる範囲で動き、少しづつ波を大きくする 
 • 少しづつ広がる内製開発の取り組み
 • 進化と合わせて進む生成AI取り組み

  14. 内製開発の取り組み
 • 組織を大きく変えるのは難しくても、実績を積めば少しずつ
 • 個々の登壇実績でチームが成長し、ここまできた!!
 • (もちろんまだまだこれがスタート)
 
 
 アジャイル開発チームの成長

    
 • 立ち上げたばかりの内製アジャイル開発チームのアジャイルコーチ
 • 人数は倍以上に成長、高度なアジャイル実践者集団に
 • お互いに刺激を受けながら、チームを引っ張りメンバーに引っ張られて います!!

  15. 生成AIに向き合うのも「パイロット」
 コントロール出来ないものが多すぎる... 
 • 1年以上、生成AIを活用した仕組みを取り組んできたが、技術の進歩は あまりにも早い! 
 • これまで苦労して作ってきたものが一夜にしてAPIになる恐怖
 •

    では取り組みは無駄なのか?技術的にトライしなくていいのか??
 
 
 コントロールできるものに向き合う 
 • 新しいAIサービスの「本当の価値」がわかる ⇒ 「目利き力」が非常に 重要
 • いかに、どこを疎結合にするのかを常に考えるようになる ⇒ モジュー ル化、パーツ化を意識 
 • サンクコストをおそれず、やっていく
 • 陳腐化しない「経験」を人間にストアする

  16. Platform Engineeringの課題にどう向き合うか?
 課題
 • DevOps組織の意義が理解されず、エンジニアや予算などが十分に与えられ ない
 • 基盤を広げていくのが難しかったり、押しつけ基盤となって前向きに利用して もらえない
 •

    取り組みが組織全体に広がらず、活動が頭打ちになる
 • 直接的な事業インパクトを生み出せないため、予算削減対象になりやすい
 
 
 エフェクチュエーションでの向き合い方 
 • 意義が理解されるまでは 許容可能な損失 で地道に頑張り、クレイジーキル ト を紡いで 手中の鳥 を育てていく
 • 困難な状況をうまくフックに使い、レモネード で一気に加速させる
 • パイロット のように今ある状況を理解し、活かすことが重要

  17. 「エフェクチュエーション」していく中でも必要なこと
 これっていわゆる「行き当たりばったり」じゃないの??? 
 
 
 ビジョン = 実現したい絵姿なしにこれをやると、みんな混乱する 
 •

    ビジョンは大きくは「ソフトウェアを製造業においてビジネスを加速する 手段とすること」
 • そのために、DevOpsで質とスピードを上げる。内製も取り入れる。生成 AIも活用する。
 ⇒ 目指したい姿を常に示し、アップデートすることが必要 
 「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかとおもいます」 「要するに、行き当たり ばったりじゃな」 ― 銀河英雄伝説 「黎明篇」より