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核燃料政策を問う─英国の決断と日本
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HKano
June 20, 2025
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核燃料政策を問う─英国の決断と日本
6月11日、院内集会「原発・核燃サイクルの中止を求めて」での発表資料
HKano
June 20, 2025
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Transcript
核燃料政策を問う 英国の決断と日本 2025年6月11日 院内集会 原発・核燃サイクルの中止を求めて 主催 脱原発政策実現全国ネットワーク 於 衆議院第1議員会館大会議室 田窪雅文
ウェブサイト核情報主宰 http://kakujoho.net/ https://twitter.com/kakujoho takubomasa(at)ybb.ne.jp ※ (at) は @ に置き換えて下さい
英国政府、プルトニムはゴミと決定 民生用約120トンを溶けにくい母材に閉じ込めて深地下処分 外国籍を合わせた英国保管総量は約140トン 核兵器1万5000発分(8㎏で1発とのIAEA数え方)処分の3択 1)無期限貯蔵 (元々将来の高速増殖炉用) 2)廃棄物としての処分 3)原子炉の燃料として使用*これも原子炉で燃やすというゴミ処分の一形態 2025年1月24日英政府発表最終方針 「ゴミとして地層処分」
2011年報告書オファー 日本分22トンなど、外国籍分も合わせて処分も可 「商業的条件が英国政府にとって受け入れられるものであれば」他国のプ ルトニウムの所有を英国に移し、英国所有のものと一緒に処分してもいい
どうする日本? 経済産業省幹部 今回の英政府の発表で日本の核燃料サイクルの政策に影響が出るわけではない」 (日経2025年2月4日) 近藤駿介元原子力委員会委員長 英プルトニウムは元々核兵器用と説明 「海外で起こってることが日本にアプリカブル[当てはまる]かどうかについては ちょっと別の観点で考えなきゃならない。」 衆議院 原子力問題調査特別委員会
2025年6月3日 原子力問題調査特別委員会アドバイザリー・ボード会員 元東京大学原子力研究総合センター長 前原子力発電環境整備機構(NUMO)理事長 (=地層処分実施事業体) 使用済燃料再処理・廃炉推進機構運営委員 (再処理主体 料金徴取して日本原燃に委託) 東海大学国際原子力研究所所長
近藤駿介 元原子力委員会委員長 1 • プルトニウムの処分に関しましてはですね、ご承知のように米 ソでSTARTの核兵器削減交渉というのが行われまして、その保 有核弾頭の数を減らすことについて合意し、その結果生ずるプ ルトニウムをどうするかということについて議論がなされ、そ してロシアは高速炉にも使うし、どんどん使っていくと、アメ リカは
プルサーマルで使うと、いうことを決めて、そのために、 最初にMOX工場を作り始めたんですがそれが、建設がうまくい かなくて失敗してやめちゃったということがございます。問題 は、急いで言うと、アメリカの場合も やはり使い道がないなと いうことになっているわけです。
近藤駿介 元原子力委員会委員長 2 英国が大量に抱えていたプルトニウムは核兵器用だった 必要がなくなったので処分に決めた • イギリスはなぜプルトニウムをあんだけ抱えてたかという問題ですが、これ問 題はですねこの核兵器の話をあまりしたくないんですけど核兵器の弾頭プルト ニウム・ピットと言いますが、これがあの劣化するわけですね。で定期的に交 換しなくてはならない。この劣化についてのデータをどこまで持ってるかが、
プルトニウムの扱いを決めるんですね。これについても長い議論がありまして ですね、最近にいたって、ピットは100年ぐらいは、能力を維持しているかなと いうことが大体皆さんのコンセンサスになってきたんですね。それを受けてイ ギリスでは それならばもう自分たちは抱えてる必要がないかなということで判 断をして、[米と同様]処分にしたというそういう経緯がございます。ですから海 外で起こってることが日本にアプリカブル[当てはまる]かどうかについては ちょっと別の観点で考えなきゃならない。 衆議院 原子力問題調査特別委員会 2025年6月3日 https://www.youtube.com/watch?v=THCdDX6KnEE (*1:29:00~1:35:00 辺り)
現在の水爆 http://kakujoho.net/inpk/ui_fmct.html 6 プルトニウム・ピット(芯)
ピットの寿命と軍事用余剰指定は別の問題 米国の余剰プルトニウム問題--核兵器用 • 1988年 エネルギー省長官 「米国はプルトニウムであふれかえっている。 • 1994年 米、軍事用プルトニウム38tと非兵器級すべてを「余剰」と宣言 •
2000年及び2010年の米ロの合意に基づき軍事用34トンを軽水炉用のMOX燃料にする ための工場が2019年、工事の遅れと建設費高騰で建設中止確定 • このため特殊な化学物質と混ぜ、分離が難しい状態にし地下処分場に入れて処分する 「希釈・処分(D&D)」方式決定。処分対象の余剰プルトニウム合計約50t(総量87.8t) • 2025年5月23日 トランプ大統領令 D&Dを中止し、「先進原子力技術の燃料製造 に利用できる形で産業界に提供」*電力会社が欲しがっているわけではない。 ピット寿命問題ーーピット製造工場が必要かどうかの問題 • ピットの寿命が尽きれば、既存のピットのプルトニウムあるいは別のプルトニウムで 元の設計通り新しいピットを作ればいい。工場が必要になる。この際、分かったつも りで改良を加えると、想定通り爆発するか確認したくなり核実験再開への圧力となる。 • 2006年 科学者諮問グループJASONがほとんど型のピットは少なくとも100年は持つ と結論 *議論は続いており、今年また新しい報告が出る予定。
英国保有の約120tのプルトニウムは民生用 英国の軍事用プルトニウムは約3t •1995年 英国、爆発用のプルトニウムの生産を中止と発表 •2010年 英国保有の軍事用プルトニム(兵器級)は3.2tと発表 *出典Global Fissile Material Report
2010, International Panel on Fissile Materials (核分裂性 物質に関する国際パネル) https://fissilematerials.org/library/gfmr10.pdf 英国はなぜ民生用プルトニウムをあんだけ(約120t)抱えるよう になったか? 米国にならって高速増殖炉の夢を追いかけ、日本と同じく、提唱 国の米国が夢を放棄した後も民生用再処理を続けたため。
プルトニウム処分方法検討の経緯 1998年 王立協会 固定化・埋設も検討要求 当時の方針:将来の原子炉での燃料用に貯蔵 2007年 王立協会 再処理中止要求 2011年報告書 MOX利用追求の暫定的方針
だが、「いかなる代替案に対してもオープン」 2025年1月24日 最終方針「ゴミとして地層処分」 「無期限の長期貯蔵を続けることは、安全保障上 のリスクと核拡散上の問題を将来の世代に負わせること になる…保管中の長期的な安全性及び[核]セキュリティ上の負担を軽減し、地層 処分施設での処分に適した形態にすることが政府の目指すところ」 http://kakujoho.net/npt/pu_uk_dsp.html 英開発中「熱間等方圧加圧法 (HIP)」 プルトニウム、カルシウム、ジ ルコニウム、チタンの酸化物の 混合物をセラミックに変え、地 層下処分。
英国で最近まで運転の二つの再処理工場 B205工場 軍民両用 1500t/y • 1964~2022年(1981年~BNFL社) 約84トン(民生用*) THORP(ソープ:酸化物燃料再処理工場)1200t/y • 1994~2018年
約56トン
英国で最近運転停止の二つの再処理工場 1 B205工場(1500t/y) 軍民両用1964~2022年(1981年~BNFL社) 約84トン 第一世代黒鉛減速炭酸ガス冷却炉用(軍民両用のコールダーホール型炉:金属天然 ウラン燃料) *兵器級プルトニウム生産の際は、燃料を燃やす期間を短縮 別名マグノックス炉(マグネシウム合金の被覆管から) 被覆管が水に溶けやすく、プールに貯蔵後短期で再処理が必要
1995年軍事用プルトニウムの需要終了も、セラミック型燃料にする措置なし 民生用プルトニウムは高速増殖炉用として貯蔵 最後の炉2015年閉鎖。受注残再処理2022年7月終了 東海(第一原発:約17万KWe)用再処理 約3300㎏分離 約800㎏が1970~81年に日本に輸送 http://kakujoho.net/npt/pu_mrtnf.html 北朝鮮の5MWe(5000KWe)原子炉はこの型のコピー 「平和のための原子」公開情報から https://web.archive.org/web/20050601034042/http://www.ceip.org/files/projects/npp/resources/northkoreapics.htm 北朝鮮プール1996年撮影
英国で最近運転停止の二つの再処理工場 2 日本が支えた THORP(ソープ:酸化物燃料再処理工場)(1200t/y) 1994~2018年 約56トン • 軽水炉の使用済み燃料用 「基礎契約」7000トンの3分の2が海外顧客 •
残り 第二世代「改良型ガス冷却炉(AGR)」低濃縮酸化ウラン 被覆管ステンレス鋼 *目的:増殖炉初期装荷燃料用のプルトニウム抽出 英1994年高速増殖炉計画放棄) • 70年代計画 79年建設開始 基礎契約の約40%日本 *日本分再処理2004年9月終了 2009年 「フランス電力(EDF)」が英ブリティッシュ・エナジー社買収 英国で16基のAGRと英国唯一の軽水炉サイズウェルBを運転 EDFエナジー社、再処理も、軽水炉でのプルトニウムのMOX使用も拒否。 THORP運転停止 *BEも2001年、再処理反対と英国議会に。経済性ないと。 2012年 NDA(核廃止措置機関:2005年設立) 契約分再処理終了後、再処理中止と決定 2016年同原発で乾式貯蔵施設建設、17年から使用開始 1994年 ドイツの電力会社に対する再処理義務規定、撤回
THORPの基礎契約 日本が40%近く 日本 ポスト基礎契約は結ばず: 1985年六ヶ所工場地元と協定 六ヶ所1993年着工 1997年竣工予定 出典:The Legacy of
Reprocessing in the United Kingdom Martin Forwood, July 2008
英国に置き去りの日本のプルトニウム 22トン 2023年末英国保管プルトニウム 合計140.9トン 英国籍 116.8トン 外国籍 24.1トン(21.735トンが日本、1.58トンがイタリア) *2025年2月26日、イタリア分は英国に移譲と発表 英国籍約118.4トン
外国籍22.5トン 英国にはMOX製造工場がない 約22トンの日本分が置き去り 実証工場2001年閉鎖 1999年高浜4号に輸送MOX燃料(225kg含)2022年に返送(データ捏造) 商業用工場 2001~2011年 福島事故後閉鎖(運転実績 設計能力1%) ★主顧客日本の需要が見込めなくなったため。 2011年報告書のオファー 「商業的条件が英国政府にとって受け入れられるもので あれば」他国のプルトニウムの所有を英国に移し、英国所有のものと一緒に処分して もいいゴミ処分 どうする日本?英国にゴミ処分をお願いする? 参考:プルトニウムはゴミ──「再処理大国」英国の結論 2025.04.02 http://kakujoho.net/npt/pu_uk_dsp.html セラフィールドの製品・残留物保管施設 2011 年運用開始。臨界事故を防ぐため、プルトニウムの入った缶が、それぞれ別のロッカーに収納 http://kakujoho.net/npt/MOXalternativeJ.pdf
英国への移譲の例 海外プルトニウムの 英国所有への移譲 単位:kg 国名 /移譲日 ドイツ スウェーデ ン オランダ
スイス 日本 スペイン 英国へ 12年7月13日 4,000 ─ ─ ─ ─ ─ 4,000 13年4月23日 1,675 ─ 350 925 ─ 2,950 650 650 14年7月3日 140 835 ─ ─ ─ 975 17年1月19日 5 600 605 2017年1月19日現在 英国所有への移譲合計 8,530 kg 英国の再処理施設監視団体「放射能の環境に反対するカンブリア人(CORE)」 http://kakujoho.net/npt/cap_pujp.html *独・東電の名義交換
世界のプルトニウム2023年末 総量550トン 民生用320トン 軍事用余剰合わせると処分必要量410トン 軍事用140トン 2023年末 国内 8.6トン 英国 21.7トン
フランス 14.1トン 合計 約44.5トン=約5600発分 IAEA:8㎏のプルトニウム 最初の1発が製造できると想定 六ヶ所試験再処理量425トン 分離量3.6トン 英国 フランス ロシア
1993年、英国に宛てたバーチャル再処理案 THORP運転中止 • 1993年、ホワイトハウス「科学・技術政策局」国家安全保障担当次官だった フランク・フォンヒッペル(現プリンストン大名誉教授)、英国に宛てた 「バーチャル再処理案」を起草 内容:「英国は、顧客の使用済み燃料を受け取り、それをそのまま保管。顧客 には、マグノックス炉の使用済み燃料の再処理ですでに取り出されているプル トニウムと高レベル廃棄物を送る」そうすれば、THORP運転により英国でさら にプルトニウムを増やし、除染の必要な施設を追加しなくて済む
これをクリントン大統領の科学顧問が英国側担当大臣に電話で伝えた。(実は 英国でも数カ月前に同様の議論があったことが後に判明)。 2025年6月7日 フォンヒッペル名誉教授から日本へのメッセージ 「高くついた英国の失敗から日本が学び、六ヶ所再処理工場を稼動させないた めの時間はまだあります。」
米・英・日(独)の決断と惰性 • インド核実験 1974年 • カーター政権登場1977年 高速増殖炉・再処理計画の見直し再処理中止 • 東海再処理工場 カーター政権の反対に抗し、ホット運転開始1977年
• 六ヶ所再処理工場着工 1993年 (1997年完成予定) • フォンヒッペルのバーチャル再処理案 1993年 • 英国高速炉放棄 1994年 • THORP 運転開始 1994年 • ドイツ、再処理義務規定撤廃 1994年 • 米国が1994年に軍事用プルトニウム余剰宣言(兵器級プルトニウム38トンと非兵 器級プルトニウムのすべて)。米科学アカデミーの同年の報告書『余剰核兵器プ ルトニウムの管理と処分(1994年)』が米ロの解体核のプルトニウムの転用を 「今そこにある危機」と呼ぶ。 • もんじゅ事故 1995年 • 英国軍事用プルトニウム生産終了発表 1995年 =B205 運転停止可能に
2022 2019 緑風出版 http://www.ryokufu.com/isbn978-4-8461-2116-7n.html 原著序文:モハメッド・エル バラダイ元国際原子力機 関(IAEA)事務局長 推薦文:ロバート・ガルーチ 元米国側対北朝鮮交渉責 任者(1994年)と
エドワード・マーキー米国 上院議員(核軍縮・核不拡 散の第一人者) http://kakujoho.net/ndata/pu-book.html 参考資料 再処理とその代替案の 乾式貯蔵について 本書 と ウェブサイト のご活用を http://kakujoho.net/ https://cnic.jp/wp/wp- content/uploads/2023/07/plutonium_final_2023 0721.pdf