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保育AIプロダクトの UXデザインで考えてきたこと / hoiku-ai-ux-de...

保育AIプロダクトの UXデザインで考えてきたこと / hoiku-ai-ux-design

25.08.21 AIで変わるUXデザイン【デザナレコレクション2025 Vol.3】
KYOTO CREATIVE COLLECTION 2025 サイドイベント 資料
https://vivivit.connpass.com/event/364576/
#KCC2025

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Takahiro Yamaguchi

August 21, 2025
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Transcript

  1. 発表者 is 誰 山口 隆広 HCD-Net 評議委員 ユニファ株式会社 執行役員CPO プロダクトデベロップメント本部

    本部長 兼 AI開発推進部 部長 1981年生、福島県出身、子(5歳)の父。 HCD-net認定 人間中心設計専門家。 ねこ大好き。ベーススキルは企画職。 @hiro93n 2
  2. 13 プロダクトより先に保育AI自体がどこまで受容されているかを検証 • 本格的に動き出していた2023年後半はAIモデルの実力もまだそこまで • 保育AIカテゴリそのものの受容性がどこまで来ているのか、受容していい という空気をどのように作りあげていくのかを検証 ◦ 定期的に自分たちの考え方を園・施設や国に当ててみてフィードバッ クを受けることを繰り返した

    • AIの理解とプロダクトの理解があるPMががマーケターやコミュニケー ションデザイナーと連携することで、AIの期待値がズレないメッセージン グを探り続けた これらの動きをとる中で、社内外で「保育AIを推し進めていいんだ」という空 気感の醸成にも繋がった
  3. 23 結構主観でスタートしたプロジェクト • 先生達が時間がとられて大変なのは「書類作成」なのは認識済み • 社内で「AIで課題解決を考える」という方針が立ち上がり、簡易的な文書生 成機能などは出していたがもっと本質的な解決手法はないか悩んだ • AIでRAGしてみるような実験もしていて、当時のモデル(gpt-3.5)性能は 正直イマイチではあった。ただ、その際に大量の書類を横断で検索できる便

    利さを感じていた。 • 社内で大変な書類作成といえば評価フィードバックで、これは様々な書類や チャットログを探しながらテキストを作成するになる定期イベント。 ◦ 結局の所は記憶頼りになる部分が多くあった。園の先生に取っても同じ なのではないかと感じた&RAGっぽく解決できるのでは?と思ったとこ ろがスタート。
  4. 25 リサーチプロセス • リサーチ設計 ◦ リサーチ目的、得たい結果の整理 ◦ リサーチ園の特定 • リサーチ実施(PM+プロダクトデザイナーで連携)

    ◦ リモートでのヒアリング ▪ Nottaやzoom、meetなどでの録音録画と文字起こし • リサーチ分析 ◦ meet文字起こしをCursorを利用し整形、要約 ▪ 要約を見つつリサーチャーの感じる温度感を元に整理 • AsIs~ToBeの整理 ◦ 園別整理の上、ユーザーストーリーマッピングで要求要件の整理 概念の受容性
  5. 26 リサーチ設計のポイント まずは関係者間で整理し、インタビューガイドを事前作成。 • 致命傷になるポイントは何か • どういう傾向が見えたらプラスか • 次のアクションに繋げるために聞くべきポイントは何か •

    「いつも話してくれる人」だけでなく遠慮なしにネガティブな意見も出して くれる人も確保できているか ◦ 社内「元先生」のグループインタビューも実施 • ヒアリング候補が各クラスタに分散しているか ◦ 自社サービス利用/ 未利用 ◦ 日常写真撮影の多寡 ◦ 園長・現場 / 本部担当 / 経営者 概念の受容性
  6. 27 リサーチ実施のポイント / 当時意識して聞いていた質問群 • その方向に行ったら絶対にイヤだと感じる機能はありますか ◦ AI嫌悪感の元になる要素を明らかにしたい • この機能を人に説明するならどのように伝えますか

    ◦ 今までにない概念だったので、率直にどういう要素で説明すると先生方 に伝わりやすいのかを把握したい ◦ 人に説明できないようであればまだ複雑すぎるので要素を減らしたい • (私たちはこういう用途に活きると思っていますが)先生なら他にどのよう に使いますか ◦ まだ認識していない有用性を理解し、最悪の場合に備えてピボットの可 能性も探りたい 概念の受容性
  7. 30 リサーチの結果、「やらないこと」を決めた • 生成AIが利用者の確認をとらず特定のタスクを完了できること ◦ ex. 勝手に連絡帳を作成して送付する • 生成AIが「独自の専門性らしきもの」を発揮して、先生に代わり保育記録 を作成すること

    • 普段生成AIを使ったり保育記録を積極的に作成している園が希望する機能 を作り込むこと(個別プロンプト編集、園・施設の方針RAGなど) 今の技術ではできるけど、いらないものはいらない。 一見良さそうだけど、それがあることで利用ハードルが上がってしまう。 将来的には必要でも、現時点でこれは時期尚早では?と判断していった。 概念の受容性
  8. 31 この判断の背景にあるプロダクトのスタンスと過去の失敗事例 • 過去「ふつうの園」を置いてけぼりにしたプロダクト開発の事例 ◦ 提供側の「こういう風な保育記録であるべき」が強くあり、一部の園 を除き実際利用がなかなか広がらなかった • 保育ICT全般としても「まずは目の前の業務負荷」というニーズが高くあ り、これの解決を今回のAI系プロダクトディスカバリーで重視

    ◦ このためにだけ新たなタスクが発生するのではなく、いつも通りのこ とをやっているだけでも恩恵を受けられる状態を作ることが重要 ◦ いつもの努力が報われるという設計 保育領域について、新しい概念こそアーリーアダプター向けに作らないことが 重要だと感じ、今回のディスカバリーに活かした。 概念の受容性
  9. 35 リサーチで得られたこと • 「思っていたよりもよくまとまっている」という感想を得られ、方向性の 正しさが確認できた。 ◦ データが少ない園は予想通り要約の質が安定しなかったが、データを 増やすことの重要性を感じていただき、既存機能の利用促進に繋がっ たケースも現れた。 •

    今のプロダクトでは解決できない課題も明確になった ◦ 解決できない前提で期待値コミュニケーションに反映した • 「これ良いと思うので1クラス分のpdf全部出して」という声があり、手 ごたえと「アプリケーション化しておいて良かった」と感じられた 実サービス全部がある必要はなく、コアとなる体験だけ提示できれば十分リ サーチに活かせることが分かった。 モノの満足度
  10. 38 使うハードルを下げるための設計 キーは「①覚えることを最小限+②他人の利用に気づける」 • 皆さんも普段使っている勤怠や稟議のサービスの新機能のリリースを追いか けたり、マニュアルをリリース直後に読み込んだり使ったりはしないはず • 他の先生に「ちょっと触ってみてよ」と言われてノリで使えるくらいの単純 さが重要 •

    知らないサービスのボタンを押す心理的ハードルは(我々IT民とは異なり一 般的には)高く、これ押したらどうなるのか?押してる人はそもそもいるの か?が分からないと積極的に使えないことは多い • 興味の高さと使いやすさを両立するところからスタートする
  11. 43 今日の「人間による」まとめ AIに対するスタンスを言語化し、繰り返し伝え、 誠実にプロダクトを提供し続けることが大事。 • 利用者に受け入れられるスコープになっている? • 必要以上に期待値が膨らんでない? • 必要以上のプロトタイプになってない?

    • 常に利用者とAIの関係性を探りつづけられている?そしてあなた自身もAIに 興味を持ち続けて、定期的に「これは他でも役立つかも」と思えている? AIにより「つくること」自体のハードルは大きく下がりましたが、それは本当 に課題解決に繋がること?に悩み、AIプロダクトを実現していきましょう。