公益社団法人日本滑空協会 2022/02/27 講師 (公社)日本グライダークラブ 山木 宏
日本グライダークラブ 山木 宏日常整備に役立つ雑学Japan Soaring Club
View Slide
1975 19 H-23Cにてフライト開始1977 21 Estrella遠征、Ka-8購入 自家用操縦士1979 教育証明、三等航空整備士1980 Narromine遠征 航空級無線通信士1985 29 ASW-20L2001 45 Nimbus-4DM2003 整備士(動滑)限定変更2004 48 Duo Discus-T2008 耐空検査員2009 53 Super Dimona2013 57 Arcus-T2015 59 Arcus-M年間のフライト 約 30回、30時間私の経歴Japan Soaring Club
趣味・組織管理ではない:基本的には一人で考え、実行・自己チェックしかない:整備作業に対する全責任を負う・時間的に余裕あり:運行優先となることは少ない機体品質 (メーカ年商:~20億円?)・小企業の手作り品:機体は長い歴史があるが、エンジン関連は試作品・マニュアルは十分な内容?グライダー整備の特徴Japan Soaring Club
・構造や機構などを広く理解した整備方針ドイツ:職人文化で一般常識を有することが前提・機体やパーツ、作業に関する原理、機構の正しい理解あるべき最良の姿を考えられるとベスト逆の言葉:「これまで使っていて問題ないから」「いずれ・・」・確実な作業と自己エラー・マネジメント間違えない、最悪のストーリーの想定と対策・正しい基本作業習慣環境作り:集中できる、よく見える・・作業中の整理整頓、取り外し部品の分別袋ベストな工具の選定と使用・落ち着いて、楽しく整備作業に向き合える姿勢 (趣味ですから)整備に必要と思われる事項Japan Soaring Club
最近の航空法改正航空法16条 航空機の使用者による整備・改造の実施義務・耐空証明のある航空機の使用者は、整備をすることにより、耐空性審査要領に適合するように維持しなければならない。 ⇒ 詳細はサーキュラー 1-501サーキュラー 1-501 使用者が実施すべき整備・改造、耐空証明検査に向けた準備等の基準・対象:滑空機などの自家用機・基本的な考え方を示したもので、詳細は各サーキュラー参照予備品証明制度の廃止 6月18日以降 すべての装備品に対して「基準適合証」が必要・装備品購入時、修理時は「EASA Form-1」が必要 JIS規格品などは別・高度計の24か月ごとの点検は、保守作業で「基準適合証」は不要・VHF無線機の定期点検についても、保守作業で「基準適合証」は不要・修理改造検査による装備品の交換は不可Japan Soaring Clubサーキュラー、TCDの入手:https://www.asims.mlit.go.jp/
機体の組立、点検と分解1. 結合部の清掃、点検2. 組立:自由度を減らす作業Wing Stand、Riggerの活用すきま、マーキングの活用3. 組立後点検:操縦席、外部 (ゆがみ、凹み)動翼のガタと結合、たたき?4. 分解:エンジン機は使用後の点検も重要点検 ・いつも決めた方向(左回り)と手順・途切れたら、確実に確認したところからJapan Soaring Club出典 Discus2 Flight Manual
パーツ類の知識 -11. グリース・適切な塗布量、混ぜない基礎知識 www.kyodoyushi.co.jp/knowledge/grease/category/・ウレア系の活用 和光ケミカル www.wako-chemical.co.jp/ など・防錆油:別途準備がベター2. 粘着テープ・粘着剤に使用するゴム:ゴム系、アクリル系、シリコーン系・・・塩ビテープ:短期使用の翼根シール のみ・長期使用:非塩ビ、アクリル粘着 (例:3M ビニール補修用)・すべり用:テフロン ⇒ 超高分子量ポリエチレン・粘着剤剥がし :リモネンなど (溶剤は粘着剤が溶けて剥がしにくい)*溶剤スプレー:速乾よりも中速乾の方が洗浄力が大きいJapan Soaring Club
3. バッテリ:リン酸鉄リチウムバッテリ (LiFePO4) www.chikuden-sys.com/ など鉛との比較・軽い ・自己放電が少なく長寿命・使用時の電圧降下が少なく実質容量が大きい・リチウム系の中では安全 + 保護回路付き4. 配線 www.aircraftspruce.com/ など・配線:テフロン被服 AWG 18(1.0Φ):14-18A、22(0.65Φ):8-10A 各色あり塩ビ被服配線:耐熱性低く、燃える・ブレーカの活用 特に各バッテリJapan Soaring Clubパーツ類の知識 -2出典 http://shop.fusion-boats.com/?pid=139302966E-T-A社製483
5. 計器配管軟質塩ビ配管:古くなると、動いただけでシールは?・固定配管:硬質ナイロン、ウレタンチューブ(エア配管継ぎ手:Oリング付き、軟質はインナスリーブ)・計器付近:シリコーンゴム配管 (5/9mmなど)シリコーンゴム:クリープが少ない⇒ 漏れない、折れない・再接続時は、半ピッチ切断・動圧系統は漏れると・・*漏れテスト (サーキュラー 3-010)⇒ 漏れない配管システムJapan Soaring Clubパーツ類の知識 -3出典 https://www.silicone.jp/catalog/pdf/rubber_j.pdf出典 https://www.pisco.co.jp/media/book/book_a01
6. 高度計・Winter製は低精度の規格 機械式は摩擦による誤差大・参照予備計器:電気式高度計 (高精度、初期調整ミス防止)、GPS高度Japan Soaring Club試験高度 Winter United エンコーダ電気式エンコーダ実力0 ±45 ±20 ±75 02000 ±45 ±30 ±75 04000 ±90 ±35 ±75 +58000 ±120 ±60 ±75 +1010000 - ±80 ±75 +1512000 ±180 ±90 ±75 -20000 ±300 ±130 ±75 +30パーツ類の知識 -4Cambridge 302の校正実績
7. TEプローブ:円管まわりの圧力:静圧 - 動圧・すべり特性・前方汚れ (掃除が大切)・シールリングのチェックwww.esa-systems.com/en/products/Japan Soaring Clubパーツ類の知識 -5出典 http://fkojima.web.fc2.com/incompressible_fluid10.pdf
8. タイヤ圧力・規定圧 +0.3 -0.2 barを目安・高い方が耐荷重UP (許容圧内)・古くなったら交換 (安い)、チューブも交換・N2は? O2のガス透過性は少し大きい・ホイールは分割式:エア抜き後に分解ホイールとタイヤにスリップマーク・エクステンションは機体に搭載9. ブレーキ・DOT4などのブレーキオイル(吸水性)は定期的に交換・TOSTのレトロフィット部品で最新モデルに変更Japan Soaring Clubパーツ類の知識 -6TOST油圧ブレーキ
基本整備作業-1・確実な作業と自己エラー・マネジメント間違えない:最悪のストーリーの想定と対策・正しい基本作業習慣環境作り:集中できる、よく見える・・作業中の整理整頓:各作業ごとに工具戻し、取り外し部品の分別保管工具:ベストの選定と正しい使用工具は手先と同じベストのもの/一流品は何かを知っておくことが必要・整然とした配管と配線 ⇒ 異常の早期発見へ*整備士資格受験・推奨:運航整備士 ⇒ 整備士・資格の取得に必要な勉強と、実用的な知識には大きな違いJapan Soaring Club
基本整備知識 -21. ボルト締結・強度区分表示 8.8以上が必須・適切なトルク ⇒ ゆるみ止め代表的なトルク M6:10 Nm、M8:20 Nm・セルフロックナット:繰り返し使用可能 (要確認)・ロックタイト:金属+酸素なし で硬化呼び1回目ねじ込みmax.金属 / 非金属 1回目戻しmin. 5回目戻しmin.M5-0.8 1.6 / 0.8 0.29 0.2M6-1.0 3.0 / 1.5 0.45 0.3M8-1.25 6.0 / 3.0 0.85 0.6M10-1.5 10.5 / 5.3 1.5 1.0M12-1.75 15.5 / 7.8 2.3 1.6セルフロックナットの規格 強度区分8.8 JIS B1056:2011 トルク NmM6 セルフロックナットの繰り返し性能Japan Soaring Club出典 東日トルクハンドブック出典 西精工 NEWナイロンナット
基本整備作業 -32. 外装 (キャノピ含む) いつもきれいに・こまめに削って磨く:ポリッシャのパッドと研磨剤の組み合わせ低反発ウレタン+目消し、ソフトスポンジ+艶出し・ゲルコートクラック:削り ⇒ PU塗料 で長持ち・塗料:自動車用ウレタン塗料例:関ペ レタンPGエコ、日ペ マイティラック・サンドペーパー:一流品を惜しげなく使うKovax、Sia、3M塗料とサンドペーパーはいつも最新モデルJapan Soaring Club400番にてサンディング後
基本整備作業 -32. 外装・動翼シール機体メーカは5年程度で貼り替えを推奨https://wingsandwheels.com/tapes-seals.html一番外側の薄いテープ:ゴム系粘着剤のため短寿命⇒ 張り替え用を用意TESA® PVC Safety Tape 0.065 mmJapan Soaring Club出典 https://wingsandwheels.com/tapes-seals/mylar-gap-seal.html
軽微な保守 有資格整備士の確認を必要としない作業 サーキュラー3-001特別な知識・経験を必要とせずに実施できる作業 = 軽微な保守作業原則:相当の経験、知識及び技能を有する作業者、操縦技能証明を有し、かつ、整備に係る教育訓練を受けたパイロット or有資格整備士の指導の下にある作業者により行われることa. 簡単な保守予防作業であって緊度、間げき、隙の調整及び複雑な結合作用を伴わない正規部品の交換、給排油等 (正規部品:パーツカタログに記載)無資格でできる整備サーキュラー、TCDの入手:https://www.asims.mlit.go.jp/保守耐空性等を維持するために必要な作業。原則として、運用限界の範囲内で航空機を使用した場合に、通常必要となる作業(必要な点検及び検査を含む。)Japan Soaring Club