月額定額の顧問型サービス「納品のない受託開発」を生み出すまでの過程を通じて、当たり前を問い直す思考法を見つける。
・脳のブレーキを壊す体験 ・ビジネスモデルの構造的な欠陥 ・社内ベンチャーと新規事業の失敗 ・パラダイムシフトで大逆転 ・小さな会社だからこそビジョン ・「納品のない受託開発」の誕生
納品をなくせばうまくいく~当たり前を問い直す思考法~
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倉貫 義人 https://kuranuki.sonicgarden.jp/株式会社ソニックガーデン 代表取締役(創業者)株式会社クラシコム 社外取締役(2018年〜)● 1974年、京都府出身、10歳からプログラミング● 1999年、TIS株式会社、アジャイル開発の普及に貢献● 2011年、TIS社内ベンチャーをMBOして創業● 2016年、オフィスを無くし、全社員リモートワーク● 2018年、株式会社クラシコムの社外取締役に就任
株式会社ソニックガーデン● ミッション「納品のない受託開発を提供する」● ビジョン 「プログラマを一生の仕事にする」● 2011年創業、社員5名→57名、11期連続増収● 2016年〜オフィスなし、全員リモートワーク
見積りなしドキュメントなしプロジェクトなし契約時間なし納品のない受託開発通勤のない働き方働く場所の縛りなし本社オフィスなし申請・制限なし勤怠報告なし管理のない会社経営上司/指示命令なし承認・決裁なし部署・管理職なし売上目標・評価なし
納品のない受託開発通勤のない働き方管理のない会社経営
納品のない受託開発新規事業を立ち上げたい既存システムに課題がある基幹業務をシステム化したい業務改善で効率化を図りたいまるで優秀な内製チーム、しかもマネジメント不要。月額定額の顧問形式で、事業の成長を支え続けます。
なぜやっているのか● 投資に対するソフトウェアの価値を最大化する● お客様のパートナーとなって事業を支え続ける● 習慣を変えることのできるソフトウェアを創る
脳のブレーキを壊す体験
学生時代の原体験● ベンチャーの経験、好きなことが仕事になる● 研究室でゲーム製作、インターネットに感動● プログラミングできる会社を探してTISへ入社
1999年頃のSIerはマネジメント重視へ● 入社年度に方針転換、マネジメントの会社へ● プログラミング能力が重宝されてデスマーチ● 大型案件を立て直せずプログラマとして挫折
アジャイル開発との出会い● プロジェクトの分析、上流工程は綺麗な世界● ウォーターフォールが元凶なのではないか?● アジャイル開発ならばプログラマが主役に?
会社を辞めるか続けるか● アジャイル開発を広げるための活動を始めた● コミュニティ参加して脳のブレーキが壊れた● 「独立するなら、有名になれ、仲間を作れ」
ガラパゴスなキャリア戦略● 大企業でアジャイル開発している珍しい人物● 社外でコミュニティ活動している珍しい社員● 技術特化の本社部門の新設時に招聘され異動
アジャイル開発の限界● 営業からプロジェクトマネージャまで試した● パートナー「言われたことだけをやりたい」● 不要なものでも全部開発するビジネスモデル
ビジネスモデルの構造的な欠陥
従来の受託開発が抱える問題● 発注者と受注者で目指しているゴールが違う● 利用価値よりも、要件定義に従うことが価値● 生産性が低いほど、見積もり金額が高くなる
ディフェンシブな開発● SIerの利益は何か?バッファを守り残すこと● SIerの価値は何か?リスクを丸受けすること● SIerの評価は何か?沢山の人数で大きな案件
ビジネスモデルの構造的な欠陥● 全ての機能を作るのなら、アジャイルは不適● 多重請負の構造によるリスクバッファの無駄● 労働集約と完成責任の捻れで利益が出せない
お客さまから見た受託開発納品したら開発者は解散直したくても直せない使い始めてから不満が出てくる何が必要か予想は難しい
開発者から見た受託開発● 人月の見積もりは、生産性向上の意欲を削ぐ● 開発と保守の分離は、品質向上の意欲を削ぐ● 案件毎の体制は、チームワークの意欲を削ぐ
誰も幸せにしないビジネスモデル● 開発会社は規模を追求するしか生き残れない● お客様は使えないシステムしか手に入らない● 開発者は成長のモチベーションが得られない
社内ベンチャーと新規事業の失敗
受託開発から足を洗う● チームの解散、辞めるか(入社以来2度目)● プログラマで転職は無理、社内で転職しよう● 社内システムを外注しないで自分の手で作る
社内システムとアジャイル開発● 社内向けSNSの開発と運用、企画と展開まで● 社員ユーザの近さ、フィードバックの嬉しさ● 企画・開発・運用が同じチームのスピード感
社内向けシステムを外販へ● 社内システムのアジャイル開発は順調だった● コストセンターには解散と引き抜きのリスク● 生き残るため自分たちで稼ぐ、外販していく
社内ベンチャーの誕生● 社内資産のオープンソース化、社長決裁の道● 経営統合と新社長の就任、リセットと直談判● 子会社を妥協して社内ベンチャー制度を作る
プログラマから経営者へ● プログラミングを封印、初めての経営に集中● 営業もマーケティングも広報も経理も未経験● ずーっと赤字、どれだけ管理しても成果なし
仮説の失敗とピボット● 仮説:薄利多売、マスマーケ、スケールする● 実際:B2Bの難しさ、契約・営業コストが大● 売り方をピボット、苦手やめて強みを活かす
パラダイムシフトで大逆転
経営の本質● マーケの転換:お金をかけない、知識を使う● 営業の転換:儲けるためから、お客様のため● 管理の転換:働きやすい環境、自由にさせる
“Point of Sales”から“Point of Use”へ時間構築償却利用中が最高品質(サービス業の発想)買った時点が最高品質(製造業の発想)時間品質 品質
組織のパラダイムシフト● 開発よりも運用、継続性と保守性の品質重視● 完成よりも成果、コストパフォーマンス重視● 計画よりも適応、事業の成長を最優先に置く
品質のパラダイムシフト「誰が顧客なのかがわからなければ、何が品質なのかもわからない。」(リーンスタートアップより)
開発のパラダイムシフト● 絶対バグを出さない → 出してもすぐに直す● 絶対サーバ落ちない → 落ちてもすぐに復旧● 予見的なデータ設計 → データは変わる前提
社内ベンチャーを買い取って独立● 低コスト戦略で黒字化、しかし親会社が合併● 成果は製品よりもチーム、チームを続けたい● 株式会社ソニックガーデン設立、MBOの実施
小さな会社だからこそビジョン
ビジョンの作り方● ビジョナリーカンパニー、同じバスに乗る人● プログラマ中心の会社、プログラマを幸せに● 一緒に独立してくれた仲間を幸せにする会社
バックトゥ受託開発● サービスでレベニューシェアしたいお客さま● 起業して新規事業を始めて育てたいお客さま● 継続的に複数のシステムを作りたいお客さま
2011年当時の世の中● クラウドとスマホが普及し、所有から利用へ● 要件定義できない新規事業やスタートアップ● 従来の受託開発では取り組めないマーケット
求められるソフトウェア開発これまで これから品質重視で作ってから売る事前の計画に従う大きく投資してビックバン減価償却するまで使うリリースまでのプロジェクトスピード重視で市場に出すフィードバックから改修初期投資はスモールスタートスケールアウトが前提事業が続く限り改善も続く
小さな会社が負けない戦略● 従来の受託開発が抱える構造的な問題を解決● アジャイルとクラウドの経験と強みを活かす● ウェブの新規事業というマーケットの広がり
改めて受託開発に潜む問題● 不幸の元凶は発注者と受注者のゴールの違い● 要件定義どおりに完成する使えないシステム● 一括請負における圧倒的な費用対効果の悪さ
「納品のない受託開発」の誕生
納品のない受託開発● 月額定額で、開発と運用をずっと続けていく● 顧問として、一人ですべての工程を担当する● 働く時間でなく、働いた成果を提供する契約
お客さまは何が嬉しいか● 要件定義をしない、いつでも仕様変更できる● 営業が伝言しない、開発者に直接相談できる● 作らない提案がもらえる、気軽に相談できる
お客さまが抱えている課題● 内製するのは、開発者の採用と育成が難しい● SIerに発注するのは、柔軟性が低くて高価格● フリーランスに頼むのは、いなくなるリスク
私たちが提供する価値● お客さまと対話して、抱える課題に提案する● 仕様設計から実装まで、一気通貫で開発する● クラウドで安定運用して、継続的に保守する
銀の弾丸でも万能薬でもない● ドキュメントは作らない、営業担当はいない● 客先に訪問しない、働いた時間の報告しない● 絶対に納期を死守するという約束はできない
ブルーオーシャン分析低コスト構造化 差別化要件定義なしドキュメントなし客先訪問、客先作業なし営業担当、見積もりなし納期の約束なし一度に決めなくて良い動くモノで確認できる作る人と直接話せる無駄なものを作らないずっと相談できる
当たり前を問い直す思考法
ありがとうございました(講演者について)倉貫義人株式会社ソニックガーデン代表取締役https://kuranuki.sonicgarden.jpブログ連絡先 [email protected]