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「持続可能な社会づくり」に資する地理教育の内容の充実:須貝俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)

 「持続可能な社会づくり」に資する地理教育の内容の充実:須貝俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)

「持続可能な社会づくり」に資する地理教育の内容の充実:須貝俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
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持続可能な社会づくりに向けた地理教育の充実
-SDGs実現における教育の役割-
日本学術会議公開シンポジウム(2017Nov04)開催報告

http://www.iknowshachu.org/scj/

Taichi FURUHASHI

November 04, 2017
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Transcript

  1. 構成 ★ 1. 提言紹介 「持続可能な社会づくり」に資する地理教育の内容充実 ★ 2. 枠組み 私たちはどこから来たのか? どこへ向かうのか?

    人間社会―自然環境系の歴史を俯瞰する 歪む環境の多層構造、失われるレジリエンス 20世紀までの地理学、21世からの地理学 地理教育を支えるネットワーク 大学・政府機関・市民・産業界の共働 ★ 3. 地理院地図の活用 携行容易、縮尺可変、重ね合わせ自由な地図を使いこなす いま・ここ と 地球をつなぐ ②
  2. (2) 「持続可能な社会づくり」に資する地理教育の内容充実 持続可能な社会づくりを支えるためには、ESD で扱われてきた内容を踏まえる とともに、更に ESD を深化させ、レジリエンスや多様性の視点、地球規模ある いは地域的課題の理解と課題解決に向けた教育を強化する必要がある。文部科 学省は、解決すべき課題と方向性に関する考え方と最新の知見を常に教育内容 に反映させ、その一翼を担う地理教育を充実させなければならない。特に高等

    学校に新設される「地理総合」は「持続可能な社会づくりに必須となる地球規 模の諸課題や、地域課題を解決する力を育む科目」とされ、SDGs の実現を支 える ESD として最重要な教育機会であり、教科書等の内容の充実を図るべきで ある。 その実現において、インターネットを介して様々な地理空間情報に主体的に触 れることによる学習は効果的であり、国土地理院の「地理院地図」などを積極 的に活用すべきである。その効果的運用のため、①全国的な地理空間情報の継 続的整備、②三次元表現も取り入れた地域理解のための機能強化、③容易に扱 えるインターフェースの開発などを実現すべきであり、国土交通省や環境省、 内閣府、地震調査研究推進本部などの関連省庁及び研究機関は、「地理院地 図」などの汎用性の高いシステムで運用可能な地理空間情報整備を行うことが 求められる。そのことにより政府データの学校教育における活用が、容易にな るであろうし、アクティブ・ラーニングを支援することにもなる。 ★1. 提言紹介 ④
  3. ★ 枠組み(背景) 1.私たちはどこから来たのか? どこへ向かうのか?という人間にとって の根源的な問いに答えるための“学びの場”が国際社会レベルで必要とされる 時代を迎えている。 2.Sustainable Development Goals 高リスク社会・不安な暮らし

    から 低リスク社会・安心な暮らし へ 転換するための目標群が掲げられている。 そもそもなぜ、高リスク社会・不安な暮らしなのか? それはどのように あるのか? なぜそうなったのか? が問われなければならない。 この問いと向き合うことによって、持続可能・安心安全な社会の共同設計 ・経営者になるための素養が全ての人々に必要とされる時代に突入したこ とを実感できる。 3.ステークホルダーは、現代と未来の全地球市民 自分の未来と人類の未来がつながるグローバル化時代を、よりよく生きる ために、今日まで歩んで来た道を振り返り、これから歩んで行く道を想像 (創造)しよう ★2. 枠組み ⑤
  4. 人間社会-自然環境系の動的モデル 人間 人間 人間 自然 自然 自然 自然 産業革命 農業革命

    狩猟革命 リスクの増大・ グローバル化 災害の巨大化 地球環境問題 自然システムの変容 人為自然改変の加速 共生革命 自然の猛威を軽減し、自然資源の持続的利用を 可能にする地球・地域デザイン ★2. 枠組み もっぱら自然環境に適応する段階から、農業革命(栽培化・家畜化)、産業革命 (工業化)を経て、人間活動は巨大化し、自然環境を不可逆的に変化させるに 至った。その変化の負の影響が人間社会に及びつつあることから、これまでの人 間活動を見直し、自然環境との関係を再構築する必要が指摘されている。 ⑦
  5. 人間 社会 自然 環境 開発 保全 人間自然環境系 マネジメント 人間にとっての 部分最適の実現

    (時空間限定) 全体調和 Geodiversity の保持 ★2. 枠組み 利益最大化:ex.資源開発 損益最小化:ex.災害防止 ⑧
  6. 環境の多層構造 人間 人工物環境 社会環境 文化環境 自然環境 ★2. 枠組み ⑨ U

    U U U 人類の歴史は、文化・社会・人 工物環境を充実させてきた歴史 と言い得る。社会・文化環境は、 厳密に空間的に層構造をなして いるということではない。むし ろ時間の包有関係を空間で置き 換えているイメージに近い。 文化環境は、人間と環境の相互作用の歴史に よって形成される、過去世代から受け継いだ 資源でもある。
  7. 歪む環境の多層構造 人間 (避難可) 人工物環境 社会環境 文化環境 自然環境 自 然 災

    害 自然災害 災害 文化 ハザード 文化・社会・人工物 空間へ突発的に 制御不能状態で侵入 自助 互助 公助 自然 現象 ★2. 枠組み ハザード防御 リスク要素に転化 自然資源 の枯渇 リスク要 素の増大 避難 レ ジ リ エ ン ス ⑩ 人工物環境の急拡大は、新たな災害リスク要因 を生み出し、文化環境の欠如した空間に、即席 の社会環境を出現させ、互助精神に乏しい地域 が形成される. 過剰な人工物は、自然環境と人間とを隔て、自然 の多様な振る舞いに対する感性を退化させうる. レジリエントな社会は、調和 的な環境多層構造をもつ社会
  8. 21世紀の 地理学 地理学 自然 地理学 人文 地理学 地誌 19~20世紀 の地理学

    Ai ICT フィールドワーク 地図 地理情報 自然の 猛威 と 恩恵 zero max 防御 極大 断絶 越境 自助・ 乱開発 互助力 環境 低下 悪化 減災環境保全 地域資源活用 リスクコミュニ ケーション 他者(自然)に 対する驕り 防災から減災へ 保護から保全へ 自然(他者)への 畏敬の念を取り戻す King of kings Co- existence ⇒失敗 ⇒思考 停止 ⇒再生 ★2. 枠組み ⑪ 第2次大戦前 戦後しばらくの間 人間-環境系 21世紀 他国資源開発から 地産地消・再生エ ネルギー開発へ
  9. 地理教育 小・中・高・ 大・大学院 世界の人々 国民 地域住民 個人 国土地理院 文科省 内閣府

    都道府県 市町村 etc 地理教科書等出 版社、メディア、 測量・航測、地 図、etc 自然地理学 人文地理学 地理教育の関係主体 による共働が不可欠 ★2. 枠組み 学 官 産 民 教育の関係主体(ステークホルダー) ⑫ 本発表では、以下、 地理教育における 地理院地図等活用の 観点から検討する
  10. 国土地理院による地理教育支援の取り組み 趣旨:学習指導要領の改訂(平成28・29年度)による小中学校における地理教育の充実 と高校地理必修化(平成34年度から実施)を見据え、主に初等、中等教育における地理 教育等の教育現場の支援の方策を検討する。 (1) 高校地理必修化や小中学校における地理教育の充実に伴い課題となる、地理を 専門としない教員が地理を教える現場に国土地理院はどのような 支援をすべきか。例 えば; ①

    現場で使いやすい紙地図の提供 ② すぐに使える教材や試験問題などの提供 ③ 地理院地図や基盤地図情報の特性、活用法についての分かりやすい 解説 ④ 教員に対 する研修などの実施、協力 (2) 新たな学習指導要領のもとで行われる地理空間情報活用社会における 地理教育 はどのようなものか。新たな地理教育に国土地理院はどのよう な支援をすべきか。 例えば; ① タブレットの利用など新たな教育環境での地理教育を支援する情報 提供 ② 地理空間情報活用社会の担い手に必要な教材提供 ③ 3D を活用した地形・防災教育や フィールドワークの支援 (3) 子どもたちに地理や地図に親しんでもらうために国土地理院はどのような活動 をすべきか。例えば; ① 地理を楽しむ活動のネットワークづくり ② 地理オリンピック などの活動の支援 ③ 地域レベルの活動の支援 院内に「地理教育支援チーム」を平成27年に設置し「地理教育勉強会」を実施(リー ダー:国土地理院地理地殻活動研究センター長 宇根 寛 )。同会作成報告書「地理教育 の支援に向けた課題の整理と具体的取組への提言 ~国土の豊かな恵みを次の世代に引 き継ぐために~(案)」http://www.gsi.go.jp/kohokocho/kohokocho40323.html ★ 3. 地理院地図の活用 ⑬ 測量行政懇談会の下に「地理教育支援検討部会」を平成29年に設置し、以下を検討中
  11. 性能・品質が保証された地図であること 地理院 地図 正確 継続 更新 ★ 3. 地理院地図の活用 ⑯

    ・地理教育で使う地図が満たすべき条件 地図を用いた地理総合教育
  12. ★ 3. 地理院地図の活用 ㉙ 羽村取水堰から、多摩川 が形成した河成段丘であ る立川面、武蔵野面、下 末吉面の上を順に流れる ように、玉川上水を通し、 上水の(周辺部に対す

    る)位置エネルギーを相 対的に増やすことで、用 水が自然に流れるように して、武蔵野台地の新田 開発を進めた 多摩川上流水再生セ ンターhpの図に加筆 武蔵野台地の地形を利用した玉川上水
  13. 郎 駒場東大前駅 開析谷 段丘面 井の頭線 国土地理院 5 m mesh DEMに

    より作成 ★ 3. 地理院地図の活用 国 写真 号 写真 ★写真撮影位置 駒場東大前 駅ホーム ㉚ 駒場東大前駅を下車するとき、東 口改札へ行くにはホームから階段 を上り、西口改札へは階段を下る。 ホームが、段丘面と開析谷底の間 の高さにつくられているから。 井の頭線の電車は緩い勾配で 移動できる。 開析谷