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「持続可能な社会づくりを支える地理教育の社会実装:山野博哉(国立環境研究所センター長)

 「持続可能な社会づくりを支える地理教育の社会実装:山野博哉(国立環境研究所センター長)

「持続可能な社会づくりを支える地理教育の社会実装:山野博哉(国立環境研究所センター長)
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持続可能な社会づくりに向けた地理教育の充実
-SDGs実現における教育の役割-
日本学術会議公開シンポジウム(2017Nov04)開催報告

http://www.iknowshachu.org/scj/

Taichi FURUHASHI

November 04, 2017
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  1. 2 山野博哉 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター長 専門:自然地理学 1993:沖縄に行く、卒論開始 1999:東京大学大学院 理学系研究科地理学専攻修了 1999-現在:国立環境研究所 2005-2007:ニューカレドニア

    フランス開発研究所(IRD)で在外研究 研究内容 サンゴ礁の… ・造礁生物分布 ・地形形成史 ・リモートセンシング ・気候変動影響評価(データマイニング、 モニタリング、将来予測) ・保全計画(重要海域選定、保護区配置、 陸域負荷の低減)
  2. 提言:持続可能な社会づくりに向けた地理教育の充実 に挙げられた項目 (1) 「持続可能な社会づくり」に向けた解決すべき課題の明確化 持続可能な社会の在り方や解決すべき課題について、国民的な議論を深め地理教育に反映で きるように取りまとめること (2) 「持続可能な社会づくり」に資する地理教育の内容充実 レジリエンスや多様性の視点、地球規模や地域的な課題の理解と課題解決に向けた教育 (3)

    「持続可能な社会づくり」に向けた地理教育を支えるための体制整備 ・・・自然と人間のかかわりを学際的・俯瞰的視点から深く理解した教員の育成 (4) 「持続可能な社会づくり」に向けた学校教育・教員養成を支える大学教育の充実 ・・・①環境問題や災害の現場に直接触れて自ら考える機会を充実させ、②関連する最新情報 を収集して客観的な情報インフラを整備し、③情報を分析して学際研究を深化させる (5) 「持続可能な社会づくり」を支える地理教育の社会実装 ・・・政府や産業界の意思決定に活かすには、フューチャー・アースが掲げる超学際的な協働の 場を充実させる 3
  3. Planetary Boundaries:生物多様性の損失が顕著 気候変動 海洋酸性化 成層圏オゾン減少 窒素・リン流出 淡水資源利用 土地利用変化 生物多様性損失 エアロゾル負荷

    化学物質汚染 Rockström et al. (2009) 保全と利用の両立が必要・・・持続可能な開発目標14と15 4 提言のキーワード:持続可能な社会
  4. 5 提言のキーワード:持続可能な社会 14.1 海洋汚染を防止、削減 14.2 持続的な管理と保護、生態系の回復 14.3 海洋酸性化の影響を最小限化 14.4 漁獲を効果的に管理

    14.5 沿岸域及び海域の 10 パーセントを保全 14.6 過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止 14.7 海洋資源の持続的な利用
  5. 最近のサンゴ礁の変化 赤:危機的な状況 黄:中程度の危機 青:危機的状況ではない “Reefs at Risk” (http://www.reefbase.org) 1980 2000年

    1990 0 50% カリブ海のサンゴ被度の推移 海水温上昇による ・白化 ・高緯度での種変化 海洋酸性化による石灰化阻害 ローカルなストレスとの複合影響 Gardner et al. (2003) サンゴ白化 サンゴ北上 提言のキーワード:地球規模や地域的な課題の理解と課題解決
  6. グローバルな要因 ・水温上昇 ・酸性化 ・台風 ・強光 ・海面上昇 ローカルな要因 ・淡水 ・土砂 ・栄養塩

    ・金属、毒物 ・漂着ゴミ 生物間相互作用 ・オニヒトデ ・バクテリア ・魚の乱獲 ・過利用 二酸化炭素排出 社会経済 人口 土地利用 降水量変化 気候変動 グローバル ローカル サンゴ斃死 ↑ ↓ 藻類繁茂 8 サンゴ礁が受けているストレス 提言のキーワード:環境問題や災害の現場、超学際的な協働の場
  7. 生物多様性条約第10回締結国会議 (CBD/COP10) 愛知ターゲット • 目標10:2015年までに、気候変動 又は海洋酸性化により影響を受け るサンゴ礁その他の脆弱な生態系 について、その生態系を悪化させ る複合的な人為的圧力を最小化し、 その健全性と機能を維持する

    10 生物多様性国家戦略:生物多様性の4つの危機 第1の危機:開発など人間活動による危機 第2の危機:自然に対する働きかけの縮小による危機 第3の危機:外来種など人間により持ち込まれたものによる 危機 第4の危機:地球温暖化や海洋酸性化など地球環境の変化 による危機
  8. 13 1 3 28 7 60 151 220 338 363

    127 95 42 23 日本のサンゴとサンゴ礁の分布 緯度勾配が明瞭 気候変動の影響を検出しやすい 93 数字:サンゴの種数 Sugihara et al. (2014) Kayanne et al. (2012)
  9. 17

  10. 気温上昇 水温上昇 海洋酸性化 Hoegh-Guldberg et al. (2007) 21 海洋酸性化ー地球温暖化と同時に進行するCO2 問題

    温室効果ガス排出 Inoue et al. (2013) 海洋酸性化によりソフトコーラルに変化
  11. 地球温暖化(水温上昇)と海洋酸性化(アラゴナイト飽和度)予測 Projection of global warming (SST warming) and ocean acidification

    (aragonite saturation state; Ωarag ) 将来のサンゴ分布域予測 Projection of future coral habitats 気候モデル Climate model NCAR-CSM1.4 CO2 排出シナリオ CO2 emission scenarios SRES A2 [高排出 high-mid emission] SRES B1 [低排出 low emission] 気候モデルを用いた予測 Future projection based on a climate model A2 B1
  12. 2000s 2090s 2090s 2060s 2090s 2000s 30˚C in summer (白化指標bleaching)

    10˚C in winter (分布北限 northern distributional limit) 2000s 2000s 2070s Ωarag =2.3 Distributional limit 地球温暖化(水温上昇)によるサンゴ分布変化 Coral habitat change due to SST warming 海洋酸性化によるサンゴ分布変化 Coral habitat change due to ocean acidification CO2 高排出(SRES A2) シナリオによる予測 高水温(夏の水温>30˚C)と海洋酸性化により、2070年代には日本近海からサンゴ消滅 Coral will disappear in the 2070s due to high SST and ocean acidification Yara et al. (2012)
  13. 2000s 2000s 2090s 2000s 2090s 2090s 2000s 白化海域無し No bleaching!

    地球温暖化(水温上昇)によるサンゴ分布変化 Coral habitat change due to SST warming 海洋酸性化によるサンゴ分布変化 Coral habitat change due to ocean acidification CO2 低排出(SRES B1) シナリオによる予測 高水温は無く、海洋酸性化の影響は九州〜四国まで No bleaching, and the effect of ocean acidification would be limited to higher latitudes 気候変動の緩和の必要性と根拠を提示、その上で適応策として保全すべき海域を特定 Yara et al. (2016)
  14. グローバルな要因 ・水温上昇 ・酸性化 ・台風 ・強光 ・海面上昇 ローカルな要因 ・淡水 ・土砂 ・栄養塩

    ・金属、毒物 ・漂着ゴミ 生物間相互作用 ・オニヒトデ ・バクテリア ・魚の乱獲 ・過利用 二酸化炭素排出 社会経済 人口 土地利用 降水量変化 気候変動 グローバル ローカル サンゴ斃死 ↑ ↓ 藻類繁茂 26 サンゴ礁が受けているストレス
  15. 赤土等流出 生物多様性 の劣化 サブテーマ1(生物) 生物多様性の評価と 保全目標設定 サブテーマ2(地域・計測) 赤土等流出機構解明と 発生源対策の提示 サブテーマ3(社会)

    作物選択モデルの開発と 対策の費用効果分析およ び政策メニューの提案 短期的対策 現状の土地利用を維持 サトウキビ畑への対策 長期的対策 土地利用のデザイン 作物転換 国立環境研究所分野横断型提案研究 「生物多様性と地域経済を考慮した亜熱帯島嶼環境保全策に関する研究(H25-27)」 連絡先: 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 山野博哉 Tel,Fax: 029-850-2477, e-mail: [email protected] 28
  16. 生物と赤土の関係解析による削減目標値の設定 儀間川 スハラ川 定点カメラによる農地モニタリング →土砂流出モデルとの統合 →発生源の特定 30-100kg/33 >200kg/m3 赤土堆積量 <10kg/m3

    10-50kg/m3 50-100kg/3 >200kg/m3 サンゴ被度<5% ミドリイシ生息なし サンゴ被度~10% ミドリイシ生息 クメジマボタル、カワニナ 生息なし クメジマボタル、カワニナ 生息 2014/04/17 2014/03/17 クメジマボタル カワニナ 100kg/m3 50 生物分布と赤土堆積量の関係 →削減目標値の設定 削減目標 400kg/m3
  17. 刈取り日 DOY 定点カメラから検出した 刈り取り日(裸地化)情報 正射投影 土砂流出モデルへの入力 赤土流出計算結果の向上 500m 0.25トン未満 0.25~1トン

    1~5トン 5~10トン 10トン以上 年間総流出量 農地一筆ごとの 流出量算出 定点カメラ情報と土砂流出モデルの統合による 要対策農地の抽出 30
  18. 31 農家へのアンケート調査 調査年月 2014年6月 調査対象 沖縄県久米島のサトウキビ農家 調査場所 甘味資源作物交付金受給の生産者要 件審査申請(各地域(字)の公民館) 調査方法

    対面式 調査項目 出荷している作物と面積、赤土流出対策 実施状況、農業・産業・環境に対する考 え方、学歴、農業従事者の構成など 回答数 280
  19. 農地への赤土流出防止対 策費用と削減量の関係の モデル化 アンケート調査による生態 系の観光資源としての価 値評価 保全の費用便益分析とインセンティブに基づく 生物多様性と地域経済を考慮した亜熱帯島嶼環境保全策 聞き取りとアンケート調査 による対策インセンティブ

    の解明 農地への赤土流出防止対策の実施支援 行政・事業との連携、他地域への適用 保全の 実践と 展開 対策の社会経済的評価 グリーンベルト 植栽の支援 久米島町、沖縄県等 と連携、対策支援 基本モデル完成 試算結果: サンゴ礁の価値 =1326万円/ha/yr 33
  20. 発生源対策実施 琉球列島・島嶼国への応用 要対策農地の抽出 発生源対策オプション の提示 生物相ー環境要因の 関係 生物多様性回復のた めの赤土等流出削減 目標の設定

    農地における現実的な 赤土等流出削減対策 の提案 生物相 赤土等 流出・堆積 土地利用 作物転換の 意志決定 対策コスト 環境ー生物応答 解析、モデル化 赤土等流出モデル 構築・適用 対策の社会経済的 評価 生物・生態系 地域環境・計測 社会経済 就業形態 年齢構成 分野横断・地域連携アプローチによる赤土等流出防止対策 34 Yamano et al. (2015)
  21. 地理学的アプローチの社会実装 サンゴ礁保全を例に • 俯瞰的な視点 – 問題の時空間的な理解 – 階層的な問題解決のデザイン 35 具体的な成果を示し、

    ・様々な場での地理教育の充実 ・超学際的な議論の場の充実 へとつなげていく必要がある (問い)生物からの視点だけで保全は 可能なのか? (問い)ここを保全する重要性は? 優先的に保全すべき場所はどこか? 世界の中での問題の提示 南北に長い日本での予測に基づく 対策オプションの提示、優先地域の選定 • 超学際の視点 – 問題解決のための協働の場 – 解決策の社会実装の場 陸域からの影響と社会経済を考慮した 持続的な保全策 枠組みを他の地域や課題に広く展開
  22. 36

  23. 有害生物・感染症の 分布変化予測 (例:侵入種) 生態系の 分布変化予測 (例:サンゴ礁・藻場)  現在の生態系・種を維持するための管理  気候変動の影響が少ない地域の特

    定と優先的な保全  気候変動以外のストレス低減  移動・分散経路の確保、生態系ネッ トワークの形成  生態系を活用した適応策の推進 気候変動要因(温度・降水量)+気候変動以外の要因(土地利用) +生態学的要因(環境適応度、繁殖・分散様式)の統合モデル化による予測 生物・生態系影響と適応計画 国〜自治体での適応計画策定支援  駆除活動の指針  検疫・防除手法開発  保護区設計  人間活動の負荷低減 生物多様性分野における気候変動への適応につい ての基本的考え方;平成27年7月環境省自然環境局
  24. 38