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素材産業のDxに貢献する 『Matlantis』のご紹介_nano tech2022_2022/1/28

nano tech2022での講演資料です。
https://www.nanotechexpo.jp/main/

汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis」に関して、技術的な背景知識から、実際の活用事例まで紹介しております。

Preferred Computational Chemistryウェブサイト
https://matlantis.com/ja/

Matlantis

July 24, 2023
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Transcript

  1. 化学 x AI で材料設計 → Materials Informatics マテリアルズ・インフォマティクス(MI)  ・ 材料開発に機械学習やAIを用いて

    膨大な候補物質から有望材料を見出す技術  ・ 研究者の経験や勘に頼る従来の手法から加速できる  ・ 近年 各国でMI技術を使った材料開発が活発化 世の中の取組状況 材料探索の加速 MI活用 バーチャル実験 シミュレータ ~10回/月 実験 ~10回/月 従来 数千回/月 米国 2011年 Materials Genome Initiative(MGI)立上げ 低コスト・高速の材料開発を目指す 欧州 2015年 Novel Material Discovery Laboratory(NOMAD)設立 中国 2015年 中国科学院・中国工学院が 連携して中国版MGIに着手 日本 2014年ごろから国家プロジェクト増加 (内閣府、文科省、経産省) 企業 素材メーカを中心に、単独あるいは IT企業と連携しての取組みが増加 開発に時間がかかる 5
  2. 一般的なMaterials Informatics データ ベース AI・機械学習 モデル 計算 候補材料 X 特長

    ・理屈が分からなくてもモデルを作れる 課題 ・学習外の物質の予測が困難 ・広範囲・膨大なデータが必要 ・データ収集コスト 6
  3. 一般的なMaterials Informatics データ ベース AI・機械学習 モデル 計算 候補材料 X 特長

    ・理屈が分からなくてもモデルを作れる 課題 ・学習外の物質の予測が困難 ・広範囲・膨大なデータが必要 ・データ収集コスト 7
  4. DFT計算 x 機械学習の事例 9 [1] Gómez-Bombarelli, R., Aguilera-Iparraguirre, J., Hirzel,

    T. et al., Nature Mater 15, 1120–1127 (2016). [2] Zhong, M., Tran, K., Min, Y. et al., Nature 581, 178–183 (2020). • CO 2 還元触媒の探索 [2] • 有機EL材料の探索 [1] ✓ 文献から候補抽出 →DFT理論予測 →実験候補の抽出 ✓ コスト軽減のためDFT算出 の物性値推算モデルを構築 ✓ t-SNEで吸着構造を分類することで 理想的な触媒組成・反応機構の考察 ✓ 合計23万ものCu系触媒表面CO 2 吸着 構造を計算・解析
  5. • DFTでは物質の電子密度を計算 → 行列方程式を自己無頓着に解くため莫大な演算数をこなす DFT (Density Functional Theory)の課題 → 高速化をしたい

    DFT計算は計算コストが高いことが課題 • ex. 一般的な計算機を使った場合、 - 固体触媒上での反応計算(100原子程度):約2週間 - Liイオンの拡散計算(50原子程度):約1カ月 10
  6. 高速かつ良精度とされる計算化学手法 DFTB法 ReaxFF ハミルトニアンの積分項をパラメータ化することで DFTよりも高速 分子動力学法ベースの手法のためDFTよりも高速 [3] S. Manzhos, G.

    Giorgi, and K. Yamashita, Molecules 20, 3371 (2015). [4] K. Nishikawa, H. Akiyama, K. Yagishita, and H. Washizu, Jurnal Tribologi 21 63 (2019). ×公開パラメータの対応原子が限られる ×パラメータの作成・フィッティングが必要 ×公開パラメータの対応原子が限られる ×パラメータの作成・フィッティングが必要 強束縛近似を用いたKSハミルトニアンの簡略化 ex. アモルファスTiO 2 表面の酢酸吸着[3] 電荷・結合パラメータを加えた古典分子動力学法 ex. Cu/Cu 2 O表面のベンゾトリアゾール分子吸着[4] 11
  7. ここまでのまとめ DFT計算 機械学習技術 Neural Network Potential 12 ✓ Materials Informaticsが提唱され久しく、様々な事例が発表された

    ✓ 未知の材料領域へアプローチするために計算化学アプローチ(DFT)が注目されるが計 算コストが課題 ✓ DFTに近い精度で高速計算するアプローチは汎用性に課題
  8. 一般的なMaterials Informatics データ ベース AI・機械学習 モデル 計算 候補材料 X 特長

    ・理屈が分からなくてもモデルを作れる 課題 ・学習外の物質の予測が困難 ・広範囲・膨大なデータが必要 ・データ収集コスト DFT x AI 高速化 13
  9. DFT計算を高速化する技術:Neural Network Potential [5] J. S. Smith, O. Isayev, and

    A. E. Roitberg, Chem. Sci. 8, 3192 (2017). メリット:高速 •量子化学計算手法(DFT)と比べ  圧倒的に高速 デメリット: •精度面 ― 精度の評価が難しい •教師データ取得が必要 –学習するためのデータ収集として、結局DFT計算が必要 –取得したデータの周辺しか予測できない 15
  10. 16

  11. 第一原理計算結果 数千万を教師データ、独自に設計したGraph Neural Networkで学習モデ ルを構築したもの Our Neural Network Potential “Matlantis”の概要

    … 教師データ(数千万) 分子・結晶等様々な構造の第一原理計算結果 GNN エネルギー Matlantis予測値 学習・出力  エネルギー DFT(教師データ) Ex. molecule Ex. cluster Ex. slab Ex. crystal Ex. adsorption Ex. disordered 17
  12. Graph Neural Network 18 • Graph Neural Network:グラフを入力でき、データの “つながり” の情報を学習

    • グラフとは:頂点(node) x と辺(edge) e で構成 - Social Network(SNSの結びつきグラフ)、Citation Network(論文の引用を示 すグラフ) - 商品Network(同時購入された商品を結ぶグラフ) - Protein-Protein Association Network - 有機分子 etc…
  13. Graph Convolution Neural Network 19 • 画像の畳み込みに似た “グラフ畳み込み” 🡪 Graph

    Convolution を考えることで実現 画像分類 class label 物性値 Chemical property CNN: Image Convolution GNN: Graph Convolution
  14. 汎用なNeural Network Potential 教師データ Neural Network Architecture [11] S. Takamoto

    et al., arXiv:2106.14583 様々な化学状態(結晶・分子・界面)を計算するために… • 結晶構造、クラスター構造、表面構造、吸着構造、disordered構造等のDFT計算データを 独自に収集することが必要 • Neural Network の形状はGNNを採用 22
  15. 第一原理計算結果 数千万を教師データ、独自に設計したGraph Neural Networkで学習モデ ルを構築したもの Our Neural Network Potential “Matlantis”の概要

    … 教師データ(数千万) 分子・結晶等様々な構造の第一原理計算結果 GNN エネルギー Matlantis予測値 学習・出力  エネルギー DFT(教師データ) Ex. molecule Ex. cluster Ex. slab Ex. crystal Ex. adsorption Ex. disordered 23
  16. Our Neural Network Potential “Matlantis”の概要 … 教師データ(数千万) 分子・結晶等様々な構造の第一原理計算を実施 GNN エネルギー

    Matlantis予測値 学習・出力  エネルギー DFT(教師データ) Ex. molecule Ex. cluster Ex. slab Ex. crystal Ex. adsorption Ex. disordered 24 PFNのスーパーコンピューターで 1台のGPUなら273年かかる計算時間を費やし データセットを作成
  17. 約10万倍 高速 Our Neural Network Potential:PFPの性能 第一原理計算 Matlantis 2ヶ月 (外挿値)

    0.3秒 0.1秒 2時間 第一 原理 計算 原子数 第一原 理計算 第一原理計算と比較し圧倒的高速 約2千万倍 高速 第一原理計算条件 ・solver = QUANTUM ESPRESSO (PWscf) ・ver:6.4.1 ・PP:Pt.pbe-n-kjpaw_psl.1.0.0.UPF ・Ecutoff:40 Ry (≒544 eV) ・Xeon Gold 6254 3.1GHz x 2 (36 cores) ・RAM:384 GB Fcc Ptバルク構造一点計算時間 55元素に対応 Our NNP対応元素周期表 25
  18. BaTiO 3 は約130℃において正方晶(Tetragonal)から立方晶(Cubic)へ相転移し誘電特性が変化することが 知られている[13] →現象を再現するためには電子状態を適切に取り扱えるモデルであることが重要 【実施】BaTiO 3 正方晶構造を初期構造としてMatlantis(PFP)でMD計算。温度ごとの格子定数変化を取得。 BaTiO 3

    結晶の相転移解析事例 27 PFP計算条件 原子数 320 (4x4x4 supercell) MD 0.1 ns (1 x 105 steps) Ensemble NPT (Berendsen) Temperature 300 ~ 600 K [13] Smith et al., J. Am. Chem. Soc., 130, 6955-6963 (2008) Tetragonal Cubic 400 K付近の BaTiO 3 相転移 を再現
  19. LiBに関する計算事例 : イオン拡散 https://www.kek.jp/ja/newsroom/2016/06/22/1833/ Li 10 GeP 2 S 12

    系固体電解質は高イオン伝導度を示す結晶 構造としてよく知られており、次世代電池材料として 注目を集める。 既報データも多く[14,15]、PFPで再現検討を実施。 計算条件 原子数 50 MD 1 ns (2x106 steps) Ensemble NVT (Langevin) 実行時間 46 h 平均二乗距離@523K 拡散係数 活性化Energy(meV) PFP DFT[14] Exp[15] 230 210 242 [14] Mo et al. Chem.Mater. (2012) 24, 15-17 [15] Y. Kato, et. al. Nat. Energy 1, 16030. • DFTおよび実験結果をよく再現 • 高速な計算により低温領域まで計算可能 https://matlantis.com/ja/cases/calculation004/ DFT[14] PFP 28
  20. 【PFP】   64.4 [kJ/mol] 【DFT[16]】 61.0 [kJ/mol] 多孔質材に関する計算事例 : MOF

    29 [16] F. Bonino, et. al., Chem. Mater. 20, 4957 (2008). https://matlantis.com/ja/cases/calculation002/ ゼオライトに代表されるようなナノサイズの微小細孔を持つ材料は 吸着材、分離膜、触媒材料として幅広い分野で利用されている。 【実施】 近年注目を集めるMetal-organic frameworks(MOFs)への水分子吸着 エネルギーを計算 ΔE = 1/n (E ads - E MOF - nE H2O ) MOF-74Niの構造 左:水分子吸着なし、右:水分子吸着あり 原子数:162     原子数:216   
  21. 石油合成触媒探索 Fischer-Tropsch process Co+V触媒上でのC-O解離反応 Co触媒の一部元素置換による活性化エネルギー変化 (Coのみの基準を1.0) 良 1.0 0.0 0.8

    0.6 0.4 0.2 メタン化反応 活性化エネルギー比較 DFT[18] vs. PFP 30 • Fischer-Tropsch機構の律速過程CO解離反応を促進する高性能触媒 組成を探索 • およそ9,300回の反応経路解析( NEB)スクリーニングを実施 • Co/V系で活性化エネルギーの低減を確認 →実験事実[17]と合致 [17] K. Shimura, T. Miyazawa, T. Hanaoka, and S. Hirata, Applied Catalysis A: General 494, 1 (2015). [18] B. Zijlstra, et al., Catalysis Today 342, 131 (2020).
  22. 潤滑油添加剤の油膜形成過程解析 1 nm 32 背景 • 潤滑油は機械装置の省エネに不可欠 • 摺動部の摩擦・摩耗を抑える添加剤 トリメチルフォスファイト

    P(OCH 3) 3の作用機構解明 実施内容 • P(OCH 3) 3作用機構解明には、摩擦 場における化学反応(トライボケミ カル反応)を扱う • 第一原理分子動力学(従来手法)で 1年以上かかる計算がMatlantisを用 いて半日で完了 • 添加剤と鉄表面の反応による潤滑油 膜(リン化鉄)生成を再現 理論化学会誌に掲載:小野寺ほか、フロンティア第3巻3号 (2021) 161
  23. • 汎用なNeural Network Potentialである“Matlantis”とその活用事例について 紹介いたしました。 • Matlantisを使うことで、 ◦ デジタル空間で大規模なスクリーニング実験→実空間実験の効率化、 ◦

    実空間での分析等では解明が進まない現象の解析、 等が実施可能になります。 • Matlantisは、革新的なマテリアルの創出、持続可能な世界の実現に貢献できると 確信しております。 まとめ 34
  24. 35