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数理統計学特論I
第7回 推定論
奥 牧人 (未病研究センター)
2022/06/01
2023/05/31
2024/05/29

Makito Oku

March 29, 2022
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Transcript

  1. 今回の位置付け 1. 前置きと準備 2. 確率と1次元の確率変数 3. 多次元の確率変数 4. 統計量と標本分布 5.

    統計的決定理論の枠組み 6. ⼗分統計量 7. 推定論 8. 検定論 9. 区間推定 10. 正規分布、2項分布に関する推測 その他の話題 11. 線形モデル 12. ノンパラメトリック法 13. 漸近理論 14. ベイズ法 確率と統計の基礎 良い点推定とは︖ 良い検定とは︖ 問題設定と準備 7章と8章に関する証明 回帰分析と分散分析を統⼀的に理解 常⽤される⼿法を改めて整理 ベイズ統計を簡単に紹介 ノンパラを簡単に紹介 3 / 37
  2. 推定における記法と設定 推定では、決定関数 のことを または単に と書き、 推定量と呼ぶ リスク関数として平均二乗誤差を使う バイアス-バリアンス分解 (ここだけ とおく)

    をバイアスと呼ぶ δ(X) ^ θ(X) ^ θ R(θ, ^ θ) = E[( ^ θ − θ) 2 ] E[ ^ θ] = μ E[( ^ θ − θ) 2 ] = E[( ^ θ − μ + μ − θ) 2 ] = E[( ^ θ − μ) 2 ] + E[(μ − θ) 2 ] + 0 = V [ ^ θ] + (μ − θ) 2 μ − θ 8 / 37
  3. 不偏推定量 が不偏推定量であるとは、以下が成り立つこと 例、不偏分散 (参考) 最尤推定の場合 ^ θ E[ ^ θ]

    = θ, ∀θ s 2 = 1 n − 1 n ∑ i=1 (Xi − ¯ X) 2 s 2 n = 1 n n ∑ i=1 (Xi − ¯ X) 2 10 / 37
  4. 一様最小分散不偏推定量 不偏推定の場合、平均二乗誤差は分散 のみになる 従って、不偏推定量の中では、分散が最小となるものが最適 一様最小分散不偏推定量 (Uniformly Minimum Variance Unbiaced estimator,

    略して UMVU と書く) 不偏推定量 が UMVU であるとは、任意の不偏推定量 に 対して以下が成り立つこと V [ ^ θ] E[( ^ θ − θ) 2 ] = V [ ^ θ] ^ θ ∗ ^ θ V [ ^ θ ∗ ] ≤ V [ ^ θ], ∀θ 12 / 37
  5. フィッシャー情報量 の確率質量関数または確率密度関数 を、パラメータ を明示して と書く フィッシャー情報量 対数尤度関数 とし、 と書け ば、以下のように略記できる

    の場合 が成り立つ X = (X1 , … , Xn ) p(x) θ f(x, θ) In (θ) = E [( ∂ ∂θ log f(x, θ)) 2 ] ℓ(θ) = log f(x, θ) ℓ ′ (θ) = ∂ℓ(θ)/∂θ In (θ) = E[ℓ ′ (θ) 2 ] X1 , … , Xn i.i.d. ∼ F In (θ) = nI1 (θ) 14 / 37
  6. 例 の の推定量 について計算 の確率密度関数 ( より 個分で良い) 対数尤度関数 で偏微分

    X1 , … , Xn i.i.d. ∼ N (μ, σ2 ) μ ¯ X Xi In (θ) = nI1 (θ) 1 f(xi , μ) = 1 √2πσ exp (− (xi − μ) 2 2σ2 ) ℓ(μ) = log f(xi , μ) = − (xi − μ)2 2σ2 − 1 2 log(2πσ 2 ) μ ℓ ′ (μ) = ∂ ∂μ ℓ(μ) = xi − μ σ2 16 / 37
  7. 例、続き フィッシャー情報量 クラメル・ラオの不等式の下界は、 これは に一致するので、 は確かに UMVU である。 I1 (μ)

    = E[ℓ ′ (μ) 2 ] = E [ (Xi − μ) 2 σ4 ] = 1 σ2 1 In (μ) = 1 nI1 (μ) = σ2 n V [ ¯ X] ¯ X ¯ X ∼ N (μ, σ2 n ) 17 / 37
  8. 証明 完備統計量の関数となる不偏推定量は一意であることを示す , を不偏推定量とし、 とおけば なので、完備性の定義より 続いて、任意の不偏推定量 に対して、 を完備十分とし を作ると、不偏となるので一意に定まる。

    は十分統計量なので ラオ・ブラックウェルの定理を適用すれば ^ θ 1 ^ θ 2 g(T ) = ^ θ 1 (T ) − ^ θ 2 (T ) E[g(T )] = θ − θ = 0, ∀θ ^ θ1 (T ) ≡ ^ θ2 (T ) ^ θ T ^ θ ∗ (T ) = E[ ^ θ|T ] T V [ ^ θ ∗ ] ≤ V [ ^ θ], ∀θ 21 / 37
  9. 例 母集団が正規分布 のとき、以下は完備十分統計量 , は完備十分統計量 の関数の形をしている , は不偏である 従って、 ,

    は UMVU である N (μ, σ 2 ) T1 = n ∑ i=1 Xi , T2 = n ∑ i=1 X 2 i ¯ X s 2 T = (T1 , T2 ) ¯ X = T1 n , s 2 = T2 − T 2 1 /n n − 1 ¯ X s 2 E[ ¯ X] = μ, E[s 2 ] = σ 2 ¯ X s 2 22 / 37
  10. スタインのパラドックス UMVU は不偏推定の中で最適なもの 不偏に限らなければ、より良いものが存在する場合もある 意外な例として、スタインのパラドックスがある , のとき、 の UMVU は

    自身である のとき、各要素を以下のようにした推定量の方が平均二乗 誤差が常に小さいことが示されている Xi ∼ N (μi , 1) i = 1, … , n (μ1 , … , μn ) (X1 , … , Xn ) n ≥ 3 ^ μi = (1 − n − 2 ∑ n j=1 X 2 j )Xi 26 / 37
  11. 例 二項分布の場合 を で微分して とおくと、 従って、最尤推定量は L(p) = ( )p

    x (1 − p) n−x ℓ(p) = x log p + (n − x) log(1 − p) + log ( ) n x n x ℓ(θ) p 0 x p − n − x 1 − p = x − np p(1 − p) = 0 ^ p = x/n 29 / 37
  12. 正規分布の例 とおくと、 まず を で偏微分して とおくと、 これを代入し、 で微分して とおくと、 より、

    を得る。 τ = σ 2 L(μ, τ ) = n ∏ i=1 1 (2πτ )1/2 exp (− (xi − μ) 2 2τ ) ℓ(μ, τ ) = − n 2 log(2πτ ) − 1 2τ n ∑ i=1 (xi − μ) 2 ℓ(μ, τ ) μ 0 ^ μ = ¯ x τ 0 − n 2 2π 2πτ + 1 2τ 2 n ∑ i=1 (xi − ¯ x) 2 = 0 ^ τ = s 2 n 30 / 37
  13. 漸近有効性 が大きければ最尤推定量は UMVU とほぼ同じになる サイズ の標本に基づく最尤推定量を と書く 幾つかの条件の下で、 のとき以下が成り立つ 1つ目の性質を一致性と呼ぶ

    2つ目は、バイアスが よりも速く減少するという意味 3つ目は、クラメル・ラオの不等式の下界に相当 n n ^ θ n n → ∞ ^ θn p → θ √n(E[ ^ θn ] − θ) → 0 nV [ ^ θ n ] → 1 I1 (θ) 1/√n 31 / 37
  14. クラメル・ラオの不等式の一般化 クラメル・ラオの不等式 (再掲) 多次元の場合 ( とする) ここで は の共分散行列であり、 は以下で定義される

    フィッシャー情報行列 また、行列 , について は が半正定値の意 V [ ^ θ] ≥ 1 In (θ) θ = (θ1 , … , θk ) V [ ^ θ] ≥ I(θ) −1 V [ ^ θ] ^ θ I(θ) Iij (θ) = E [ ∂ℓ(θ) ∂θi ∂ℓ(θ) ∂θj ] A B A ≥ B A − B 33 / 37
  15. まとめ (前半) 点推定の最適性に関する理論について説明しました。 1. 点推定論の枠組み 2. 不偏推定量とフィッシャー情報量 ! 不偏推定量の意味を説明できる? !

    フィッシャー情報量の意味を説明できる? ! クラメル・ラオの不等式の意味を説明できる? 3. 完備十分統計量に基づく不偏推定量 34 / 37