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第7回資源プラのトップランナーJ-EPSリサイクリング

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June 16, 2025
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 第7回資源プラのトップランナーJ-EPSリサイクリング

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Panachemical

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  1. 第1回 「資源プラ」という挑戦! 第2回 「資源プラ」とは? 第3回 「資源プラ」と「廃プラ」の住み分け 第4回 資源プラの成立要件「経済的な合理性」とは? 第5回 資源プラの成立要件「技術的な妥当性」とは?

    第6回 「資源プラ」成功のカギ、それは「潔さ」! 第7回 資源プラのトップランナー「J―EPSrecycling」から学ぶ! 第8回 資源プラ物流の“血液”、それは「お金」と「情報」! 第9回 資源プラ製造の担う「ヒト」の在り方 第10回 資源プラが切り拓くプラスチックリサイクルの未来 •本講座のスケジュール
  2. (自律的で自立的な事業) (オーバースペックの回避) 経 済 的 な 合 理 性 技

    術 的 な 妥 当 性 事業の持続性を担保 適切な技術スペックの選択 “潔く”安定性と持続性を判断! •まずは前回の復習から
  3. マテリアルリサイクルに適さないものは、躊躇する事無くサーマルリカバリー (熱回収 )や衛生的な処理 ・処分など の 他の手法を “潔 く”選択すべ き! 「潔さ」の視点で、リサイクル事業の安定性と持続性を合理的かつ客観的に判断

    1.経済的な合理性 : 事業の持続性を担保(自律的で自立的な事業の確立) 2.技術的な妥当性 : 適切な技術スペックの選択(オーバースペックの回避) 「潔さという合理的な判断」に基づき、プラスチック廃棄物の性状や由来に応じた「行き先」 を事業の安定性と持続性の視点から決定し、身の丈に合ったビジネスモデルを構築する! •資源プラの底を流れる「潔いリサイクル」という“思想”
  4. ざっくばらんに言ってしまえば、「潔さ」とは 無理をせず、身の丈に合った、長く続ける 事 が 可 能 な 、 「 リ

    サ イ ク ル の 仕 組 み 」 を 選 択 し て 構 築 す る た め の “ 道 し る べ ” という様な感じです。
  5. 「 潔 さ 」 の 視 点 で 事 業

    ( ビ ジ ネ ス ) の フ レ ー ム を 俯 瞰 ・ 検 証 す る 事 に よ り 、 無 理 や 無 駄 が 省 か れ た リ サ イ ク ル システムの“正しい形”が見えてくる!
  6. 「 潔 い リ サ イ ク ル 」 と

    い う 思 想 に 立 脚 し た 資 源 プ ラ ビ ジ ネ ス の “ 先 駆 的 な 成 功 例 ” そんな訳で今回は、 についてお勉強しましょう!
  7. 異物除去 使用済みEPS製魚箱 ポリスチレン(PS)インゴット 検 品 家電躯体 日用雑貨品 文具・玩具 工業原料 機能性材料

    出 荷 梱 包 出荷前のPSインゴット 摩擦熱利用 粗 破 砕 ペレタイズ 単純再生ペレット 複合再生ペレット 成 形 単純再生 PSインゴット粗破砕物 ペレタイズ 複合再生 減容処理 •J-EPS recyclingの基本的なフロー 用途の多様性 カスケード リサイクル
  8. •「潔さ」の視点でJ-EPS recyclingを考えてみると・・・ 廃棄発泡ポリスチレン (廃棄物) ポリスチレンインゴット (資源プラ) 再生ポリスチレン原料 (工業製品) 由来、排出量、異物・汚れの程度など 製

    造 物 流 品質、荷姿、処理履歴など 物性、機能、性状、用途など 作業者の能力、処理技術、環境負荷など トレーサビリティ、市況、法規制など 資源プラビジネスモデルの先駆的事例である「J-EPS recycling」は、 「潔いリサイクル」という基本的な“思想”を見事に体現しているのだ!
  9. •オンサイト処理は絶対的に有利です! 2.衛生的な処理が可能! 4.集約的な環境対策の実施 3.防災面でのメリット 汚れや異物 他素材、不適素材 1.異物管理の徹底が可能! → (1)“川上”である程、異物除去は有利! (2)異物管理のノウハウが蓄積!

    → (1)魚アラなど腐敗性異物の除去 (2)防鼠防虫対策 → 可燃物である発泡ポリスチレンの減容 処理(インゴット化)により、火災リスク を低減できる!(安定化、安全化) → 周辺環境への環境面での配慮
  10. 「 E P S に 特 化 し た 専

    用 処 理 装 置 を 企 画 開 発 ! 」 3つ目の「潔さ」 とは?
  11. •“潔く”、EPSに特化した専用処理装置を企画開発! 1.資源プラを製造するために“必要かつ十分な”処理能力 → 異物の分離機能、汚れの洗浄機能、処理物の物性劣化の程度が低い処理技術 2.作業者が“安全かつ衛生的に”作業を行う事が可能な処理技術 → 巻き込み防止、粉塵の飛散防止 3.環境に調和した処理技術 → 排ガスや悪臭の発生が少ない処理技術、騒音・振動対策が盛り込まれた装置

    (株)山本製作所製 ハイメルター RE-E1000 (資源プラ製造装置認定取得装置) (2)「技術が市場を創る」のではなく、 「市場が技術を選ぶ」時代に! (1)ヒトが技術を使いこなして、 資源プラを「製造」する! → 「処理」から「製造」への転換! → 「装置メーカー」と「商社」の連携! (“餅は餅屋”で、役割分担が重要!)
  12. 木 片 プ ラ ス チ ッ ク 片 野

    菜 く ず 魚アラ(干物くず)と魚の鱗 •破砕後の乾式比重選別で除去された異物の例(2)
  13. •発泡ポリスチレンの脱泡減容処理の進化 摩擦熱減容方式 電熱減容方式(自然流下式) 1.高温(約220℃)で処理 2.減容槽内への供給量は制御されず 3.減容物は自然流下(重力)により排出 → 減容槽内での滞留は制御されず、 ポリスチレンが過剰に加熱される! →

    処理物(資源プラ)の熱劣化が大きい! 1.低温(約100℃)で処理 2.減容部への処理物の供給および 減容物の排出を自動で制御 → 減容部での加熱が適切に行われ、 処理物が速やかに系外に排出される! → 処理物(資源プラ)の熱劣化が少ない!
  14. 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

    バージンPS 摩擦熱減容方式 電熱減容方式 (自然流下式) MFR(g/10min) 図1.発泡スチロール(EPS)の減容処理におけるメルトフローレート(MFR)の変化 データ出典 : 株式会社 本堀商会、本堀技術士事務所による測定データより (押出・発泡用グレード) •発泡ポリスチレンの脱泡減容処理の進化 破砕と加熱を伴う中間処理 (減容・脱法)に伴って、 → ポリマーの分子量が低下 → MFRの値は大きくなる! 加熱の適正化により、 → ポリマーの分子量 低下を抑止 → MFRの値は小さくなる! 加熱の適正化がPSインゴット(資源プラ)の品質や物性を飛躍的に向上させた!
  15. ★PSインゴットの資源プラとしての市場流通性 : PSペレットと比較してみると・・・ 再生プラスチック原料では無く、再生プラスチック原料の「基材」である事がミソ! → ポリスチレン(PS)の用途の多様性(=出口の多様性)が、 需要増減や取引価格変動への柔軟な適応を可能にする! •“潔く”、「インゴット」という再生プラスチック原料の基材を選択! 1.再生プラスチック原料の川上にある「基材」の方が異物や汚れの管理が楽! (品質の確立)

    2.再生処理(ペレタイジング)時に排出源が異なるインゴットを適宜混合する事 で、再生プラスチック原料の物性調整(均質化)が可能となる!(品質の安定化) 3.市場のニーズに見合った再生処理(コンパウンディング)技術が適用可能! (用途の多様化) 4.再生プラスチック原料生産の市況(需要動向)に応じた生産調整が可能 (安定供給体制の確立)
  16. 「 グ ロ ー バ ル な 商 流 の

    構 築 と い う 戦 略 を 選 択 ! 」 5つ目の「潔さ」 とは?
  17. 「地球規模での資源循環の輪」を構築すれば、リスクの分散が可能となる! 市況の変化 需要の減退 1.世界各地の経済環境は多様である! 2.資源循環の輪も多様性に富んでいる! → どこかの資源循環の輪は必ず生きている! 1.需給 : 「地域」と「時間」でラグが生じる!

    2.市況 : 経済や社会動向や政策の影響が大きい → 受ける影響の程度は地域によって異なる! → 「しなやかで有機的な資源循環の輪」 → 世界のどこかに必ず需要は存在する! •“潔く”、グローバルな商流の構築という戦略を選択! 「 用 途 の 多 様 性 ( 出 口 戦 略 の 多 様 性 ) 」 と 「 資 源 循 環 の 輪 の 多 様 性 」 のマッチングこそが、J-EPS recyclingにおける最大の成功要因である! 世界のどこかに必ず需要は存在する!
  18. •重層化する法規制の網をクリアするためには? プラスチック 廃棄物 有 害 無 害 有価物 廃棄物 有価物

    廃棄物 廃 掃 法 × 〇 × 〇 バーゼル法 〇 〇 × × (特定有害廃棄物等に該当) 外 為 法 〇 〇 〇 〇 関 税 法 〇 〇 〇 〇 表1.プラスチック廃棄物の輸出入における法の適用範囲 滋賀のP社の事例 資源プラ
  19. •改正バーゼル条約における廃プラスチックの取り扱い 附属書の改正 (追加) 追加された廃プラスチック 規制の 有無 バーゼル法上 の取扱い 附属書Ⅱ 「特別の考慮が必要な廃プラスチック」

    を追加(Y48) → 附属書VIIIとIXに定める廃プラ スチック以外の廃プラスチック → どの様な廃プラスチックが特 別な考慮が必要な廃プラス チックに該当するかは各国の 解釈に委ねられている 有 バーゼル法第2条 附属書Ⅷ 「有害な廃プラスチック」を追加 (A3210) → 保有する物理的・化学的・生物学的 な性質などに由来する有害性を 有する廃プラスチック 有 バーゼル法省令 別表第三 附属書 Ⅸ 「非有害な廃プラスチック」を追加 (B3011) → リサイクルに適した廃プラスチック の範囲を明示 無 バーゼル法省令 別表第四
  20. •資源プラ化による法令上の戦略的な住み分け バーゼル条約における区分 規制 例 リサイクル の適性 採るべき戦略 有害な廃プラスチック (附属書Ⅷ A3210)

    有 含ハロゲン プラスチック (PVC、PVDC等) 低い 素材の単一性を高めても環境 汚染のリスクをヘッジできない → 資源物流の現場から排除し て、適切に管理・処分 → 環境中への逸出を防ぐ事を 第一の目的とする 特別の考慮が必要な 廃プラスチック (附属書Ⅱ Y48) 有 汚れや異物が十 分に管理されてい ないプラスチック 廃棄物の処理物 (破砕・粉砕品、圧 縮品等) 処理の 程度に より可能 「素材の単一性」を高める処理 (=資源プラ化)を施し、越境に 伴う環境負荷の発生を抑止で きる形にして、有価取引可能な 形(商品)で資源物流に乗せる 非有害な廃プラスチック (附属書Ⅸ B3011) 無 (1)PSインゴット (2)単一素材であ る破砕・粉砕 (アロイも含む) (3)成形端材など のプレコンシュー マー品 高い (1)そのまま再生プラスチック 原料の基材として利用可能 (2)越境や再生処理における 環境汚染のリスクが低い →「資源プラ」として積極的に 輸出し、再生資源(工業原料)と して有効活用すべき 結局、「資源プラ化」こそが、最良のバーゼル条約対策である! 「資源プラ化」 という戦略
  21. バーゼル条約の主旨 越境に伴い環境を汚染する可能性のある廃棄物の輸出を規制 → 廃プラスチックの物流過程や、相手国での更なる処理(中間処 理や再生処理)の段階で新たな環境汚染の要因である環境負 荷が生じない形にすればよい (課題1) 商品としての市場流通性 (課題2) 物流における環境調和性

    品質管理が徹底された処理物 = 資源プラ (品質 : 汚れの程度、異物混入の程度、物性、機能など) 「商品」としての再生原料の基材 → 成形原料として求められる物性や機能が確保されているか? •資源プラが“一気に”解決する2つの課題 一 気 に 解 決 !
  22. 「 公 正 な 市 場 取 引 に 委

    ね る 戦 略 を 選 択 ! 」 6つ目の「潔さ」 とは?
  23. 価 格 廃プラスチック(再生可能なもの) プラスチック原料(バージン材) 再生プラスチック原料(資源プラ由来) 0 廃プラスチック(再生不可能なもの) 有 償 取

    引 が 可 能 → 市 場 が 形 成 さ れ る 処 理 料 金 資源プラスチック(資源プラ) 再生プラスチック原料(廃プラ由来) (1)高品質(異物、物性) (2)品質の安定性 (3)環境調和性 (4)履歴の健全性 (1)異物や汚れが・・・ (2)品質が不安定で・・・ (3)履歴が不安です・・・ (4)環境に調和してる? プラ原料市場における 「資源プラ」という “グレード”の確立! 公正な市場取引での品質 に基づく戦略的な住み分け” •市場での「廃プラ」と「資源プラ」の戦略的な住み分け 資源プラである事が取引上の大きな価値!
  24. •資源プラ製造型リサイクルビジネスの大きなメリット 資源プラの有価物としての市場取引が、結果として、不適正処理を防ぐ! 排出事業者 中間処理業者 最終処分業者 廃棄物 廃棄物 中間処理委託料金 最終処分委託料金 1.通常の廃棄物処理における「モノ」と「カネ」の流れ

    : 「適正な処理」に対する商取引 「モノ」と「カネ」が同じ方向に動いていく! ➞ 不適正処理、不法投棄した方が儲かる! 2.資源プラ製造販売型ビジネスモデル : 処理物の公正な市場取引による対価性の確立 有価物売買契約では「モノ」と「カネ」が逆に動いていく! ➞ 適正に処理した方が儲かる! 有価物(資源プラ) 廃棄物 中間処理 委託料金 資源プラ売却益 再生業者 (中間処理業者) ㈱パナ・ケミカル 排出事業者 有価物(資源プラ) 資源プラ売却益 資源プラ売却益 廃棄物処理料金 (1)品質(異物・汚れの程度) (2)市況 (3)需給動向 (1)処理コスト (2)処理の難易度 (3)社会動向、規制
  25. •公正な市場取引に委ねる理由は? 1.「品質」を取引指標とするため、高品質である程、評価が高くなる! → 品質に優れる処理物(資源プラ)を製造した方が儲かっちゃう! (「処理」から「製造」への転換) → 高品質の資源プラは、市場での取引の幅が広がる! 「 経 済

    的 な 合 理 性 」 に 基 づ く 「 公 正 な 市 場 取 引 」 が 、 「 法 制 度 や 法 規 制 の 限 界 」 を 補 完 し て い る ! 2.不適正な処理に由来する低品質なプラスチック廃棄物の処理物は、 取引市場での評価が得られず、 “自ずと”市場取引から排除される! → 「新たなユーザーの獲得」 と 「資源プラという工業製品のブランドの確立」 → (1)悪質業者の排除 (2)発泡ポリスチレンの「ヒトの社会での資源循環の輪への取り込み」が可能に! → 経済的なシステムによるJ-EPS recyclingモデルの環境調和性の確立!