Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
ADR運用におけるデータ利活用の考え方
Search
Aja9tochin
July 25, 2025
Technology
0
330
ADR運用におけるデータ利活用の考え方
ADR運用におけるデータ利活用の考え方
Aja9tochin
July 25, 2025
Tweet
Share
More Decks by Aja9tochin
See All by Aja9tochin
DDD集約とサービスコンテキスト境界との関係性
pandayumi
2
110
業務改善原則を使った企画の重要性
pandayumi
0
10
セキュリティ視点以外の重要な脅威分析
pandayumi
0
4
脅威モデリングによるシフトレフト活動
pandayumi
0
8
ビジネスアーキテクチャにおける脅威分析
pandayumi
0
8
既存の脅威モデリング実施における新たな脅威とその対策に必要な思考
pandayumi
0
4
Other Decks in Technology
See All in Technology
「守る」から「進化させる」セキュリティへ ~AWS re:Inforce 2025参加報告~ / AWS re:Inforce 2025 Participation Report
yuj1osm
1
180
Grafana MCPサーバーによるAIエージェント経由でのGrafanaダッシュボード動的生成
hamadakoji
1
900
Figma + Storybook + PlaywrightのMCPを使ったフロントエンド開発
yug1224
10
3.5k
Grafana Meetup Japan Vol. 6
kaedemalu
1
190
Nstockの一人目エンジニアが 3年間かけて向き合ってきた セキュリティのこととこれから〜あれから半年〜
yo41sawada
0
110
絶対に失敗できないキャンペーンページの高速かつ安全な開発、WINTICKET × microCMS の開発事例
microcms
0
360
Webアクセシビリティ入門
recruitengineers
PRO
3
1.4k
異業種出身エンジニアが気づいた、転向して十数年経っても変わらない自分の武器とは
macnekoayu
0
250
Browser
recruitengineers
PRO
7
2.1k
努力家なスクラムマスターが陥る「傍観者」という罠と乗り越えた先に信頼があった話 / 20250830 Takahiro Sasaki
shift_evolve
PRO
2
130
プロダクトの成長に合わせたアーキテクチャの段階的進化と成長痛、そして、ユニットエコノミクスの最適化
kakehashi
PRO
1
110
なぜSaaSがMCPサーバーをサービス提供するのか?
sansantech
PRO
2
510
Featured
See All Featured
The Language of Interfaces
destraynor
160
25k
Distributed Sagas: A Protocol for Coordinating Microservices
caitiem20
333
22k
The Art of Programming - Codeland 2020
erikaheidi
55
13k
Performance Is Good for Brains [We Love Speed 2024]
tammyeverts
11
1.1k
Rebuilding a faster, lazier Slack
samanthasiow
83
9.1k
It's Worth the Effort
3n
187
28k
The Success of Rails: Ensuring Growth for the Next 100 Years
eileencodes
46
7.6k
Docker and Python
trallard
45
3.5k
Evolution of real-time – Irina Nazarova, EuRuKo, 2024
irinanazarova
8
910
Documentation Writing (for coders)
carmenintech
73
5k
Fantastic passwords and where to find them - at NoRuKo
philnash
52
3.4k
Facilitating Awesome Meetings
lara
55
6.5k
Transcript
ADR運用における データ利活用の 考え方 ビジネスアーキテクト 工藤 ユミ
この発表の目的 この発表で何を伝えたいのか?:ADRの運用を通して、その資産を最大活用するアイデア ※検証の浅い思い付きアイデアのため、効果を保証はしません。んが!たぶん行ける 主に誰に向けて?:ADRを描いてるor描き始めたアーキテクトさん これ聞いた皆さんにどうなってほしいのか?: 日頃からADRを描き、構造化整理している 過去のADRを参照し、使えるものは再利用できている 自社の他の事業だけでなく、似たコンテキストの企業と共同でADRの情報・知識交換をしている 検証した結果をわたしに共有してくださいm(__)m ※危機感:全エンジニアは、データ分析の思考の基本を身に着けないと滅びマシュ
2025/8/2
すっ飛ばす前提知識 2025/8/2
自己紹介? 今回不要なので、すっ飛ばします。 不要プロセスを排除=ECRSのE これぞアジャイル 2025/8/2
本日のアジェンダ 2025/8/2 ADRの説明 DIKWの概念説明 ADRデータ利活用のためのテクニック まとめ
ADRの説明 • ADRとは何か? • ADRの構成要素 • ADRは何のためにあるか? 2025/8/2
ADRとは何か? Architectural Decision Record:アーキテクチャ決定記録は、 アーキテクチャにおける重要な意思決定とその背景、代替案、そしてその決定がもたらす結果(影響)を 記録するための簡潔なドキュメントです。 私なりの解釈は、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」 というワード、これに集約される。 過去の出来事(歴史)から教訓を得て、同じ過ちを繰り返さないことの重要性を説くドキュメント。 学習しない組織は、自分たちの経験からすらも学ばないが、賢者=成⾧・学習する組織はADRという資産
を用いて、自分&自分たち以外の(過去の)経験からも学ぶことができる。 2025/8/2
ADRの構成要素 1. タイトル:決定の内容を簡潔に、かつ明確に表す。ADRの名前意図重要!! 2. ステータス: ADRの現在の状態(承認済み)を示す。決定のライフサイクルを追跡するために重要な項目。 3. コンテキスト:決定を行うに至った背景、状況、問題点、関連する制約、考慮すべき事項などを説明します。 なぜこの決定が必要になったのかを明確にする最も重要な部分
解決した結果、どんな状況になりたいのか?も定義推奨 4. 決定:どのような方針、手法、技術、ツールを選択したのかを明確にします。 各重み付けした評価軸での、検討した代替案とその⾧所・短所を述べ、なぜその決定を選んだのかの理由を説明 5. 予測結果/影響:決定を適用した後に予測される、または実際に発生したアーキテクチャやシステム、運用、開発 プロセスなどへの影響を演繹法を使って記述します。 ※決定がなされた日付や作成者/承認者などのログも残した方が後々良い。 2025/8/2
ADRが何のためにあるか? 意思決定の透明性と記録:意思決定プロセスが透明になり、後からその決定の妥当性を検証できる 知識の共有と継承:新規参画者がプロジェクトの設計思想を短期間で把握するため 同じ議論の繰り返し防止:ADRを参照することで迅速に回答し、無駄な繰り返し議論の時間を削減 技術的負債の管理と解消の支援:特定の技術制約やトレードオフを明記し、将来の改善計画の判断材料とします。 アーキテクチャの進化と整合性の確保:過去の決定が外部環境変化などで、現在の状況に合わなくなった場合に、 なぜ変える必要があるのか?というADRを作成する。 説明責任と合意形成の促進 ADRの承認フロー中のログを見て、承認フローのプロセス改善←地味に役立つ(ECRSしてみ? )
この威力を底上げするために、1つの武器であるDIKWを学びましょう 2025/8/2
さらに一歩前進!! ここでADRを終えたら、ADRの価値は激減します。 ADRは、その企業の無形資産です!!! 金と違って、知恵を伴う無形資産は、 使うほど価値を増します!! 使いまくりましょう! 情報のまま終えたら、宝の持ち腐れです。 そのために、データのDIKW! 利活用! データの分析と似たようなもの
2025/8/2
DIKWの概念説明 • DIKWピラミッド • データ • 情報 • 知識 •
知恵 • DIKWのそれぞれの関係図 2025/8/2
DIKWピラミッド(知識ピラミッド) 昨今バズってるデータ駆動、データ利活用などの文脈で 用いられるピラミッド階層関係。 データ利活用のためには、この粒度を合わせていないと いけない。(SLAP原則を適用) データの利活用とは、まさにDIKWピラミッドを底辺の 企業の持つデータから頂点の知恵へと昇っていく過程そ のものです。 ※知恵まで昇華させて価値を得られる 2025/8/2
全体像を表現すると以下の構図 2025/8/2
データ Data 概要:未加工の事実、数値、記号の集まりで、これ単体では直接的な意味や文脈を持たない。 事例: Webサイトのアクセスログの1行「2025-07-24 23:25:10 /product/123」 あるセンサーが計測した「25.0℃
」という数値 データベースに記録された「山田太郎」 「30歳」、「東京都」という単なる意味をなさない文字列や数値 ADRの各構成要素である、タイトル名とか、ステータス単体のこと 2025/8/2
情報 Information 概要:データが処理、整理、構造化され、文脈を与えられたもの。 データとの違い:データが5W2H各問いに答えることで、人にとって理解 しやすい意味(ストーリー)、文脈を持っている。 事例: 「2025-07-24の23:25:10に、ユーザーID:1103の工藤が、商品ID:123の 製品ページにアクセスした」という、文脈が与えられたアクセスログ
「山田太郎さんは東京都に住む30歳の男性である」という、複数のデータが関連 付けられ、意味を持つペルソナ解説文として解釈されたもの ADRの構成要素全てに回答したもので、ADRドキュメントそのままの姿 2025/8/2
知識 Knowledge 概要:複数の情報が関連付けられパターン、傾向、規則性、因果関係などが発見され、どの ように?なぜ?といった問いに答えられるようになった状態 情報との違い:情報に推論思考(主に帰納法)を施したもの 事例:パターン、原則、ノウハウ、アンチパターン、デザインパターンなどが該当する 情報1: 「7月25日、東京の気温は30度だった。」
情報2: 「過去5年間、東京の7月下旬の平均気温は30度を超えてる。」 情報3: 「30度を超える日は、熱中症患者が増加する傾向にある。」 上記から「東京の7月下旬は⿁暑く、熱中症リスクが高い」という一般的な傾向や知識が導き出されます。 複数のADRから帰納法を使って導出したパターンとかが知識になる!! 2025/8/2
知恵 Wisdom 概要:知識をさらに広い文脈で理解し、価値観、倫理観、判断力、そして将来の洞察に基づいて活用。 なぜその知識を適用すべきか、その行動がどんな結果をもたらすか?を洞察を含む。 知識との違い:情報や知識は、単体では単なる事実の集積、パターン認識に過ぎない。 それらを状況に応じて適切に、倫理的に、⾧期的な視点を持って活用し、最適な結果を導き出すためには、 「知恵」が必要不可欠。なぜその原則をあえて破る必要があるのか?とか。 事例:顧客セグメントへの割引が短期的な売上増加に繋がるという知識がある。一方で、「⾧期的なブランドイメージへの 影響」や「他の顧客層への不公平感」といった自分たちの倫理側面を考慮し、割引の実施を見送るという判断
製造プロセスのボトルネックを解消するための知識がある一方で、「その改善が二酸化炭素増加など環境に与える影響」や 「従業員の働き方に与える⾧期的な負の影響」を考慮し、より持続可能な改善策を選択する判断 2025/8/2
全体像を表現すると以下の構図 2025/8/2 ADRを情報のまま終わらせない!!
ADRを情報から知恵に昇華せよ このDIKWの考え方をADRと掛け合わせます! アーキテクチャWisdomを我々は作るんです!! ADRは書いて、ただ何となく参照するだけでは、価値が激減する。利活用してなんぼ! ADRを単なる情報で終わらせるのではなく、分析できる形に構造化し、知識→知恵へと昇華する 同じ企業内の他の事業のADR~さらに俯瞰した別企業のADR知識と並べて知恵にする そのために、何したらええの? 具体的なHowをいくつか紹介にいくで? 2025/8/2
ADRデータ利活用 のための テクニック • ADRを情報から知恵に昇華せよ • レーダーチャートで評価を可視化 • 予測結果は因果モデルで図解せよ •
実際と予測のズレから学びを得る • 進化的アーキテクチャの実現 2025/8/2
①利用時~プロセス品質までを推論した図を残す CXデータを握ったマーケティングの人とQA、データ 分析者と対話しながら、要因分析を図解する。 a. 重要な利用時品質明らかにする b. 外部品質明らかにする c. 内部品質明らかにする ※利用時品質の重みづけがないと、外部品質の
重みづけも定義できない。 このモデルは更新し続けないといけない。 2025/8/2
②レーダーチャートで評価を可視化する 事前条件:①が完了済であること ※複数ある評価軸は、すべてが同じ重みではない。 a. Geminiなどでトレードオフ関係の一般傾向を可視化 ※たまに変なの出してくるから、微調整必要 b. 以下のように期待値計算する 総合評価スコア=0.4×3+0.2×2.5+~ 0.4とかが全体に対するその品質評価軸の重みの割合。
完了条件:複数案のスコアリング レーダーチャートが可視化され期待値計算でスコアリングされてる 2025/8/2
③予測結果は因果モデルで図解せよ 前提知識:演繹法(三段論法) 概要:原因と結果の因果連鎖モデルで可視化 AsIs状態+行動→ToBe状態というモデルを軌跡で 描く(イベントソーシング式にモデル作成して) 安全にかつ予測精度高めるためちょっと先を予測する このモデルで、望ましい結果と副作用を必ず描く 理由は、すべてのアーキテクチャには副作用があるから 例:モノリスから分散化した結果、
望ましい結果:独立性上がる 副作用:複雑化や運用コストアップ 間違ってもいい。あとで振り返って後に生かせばいい 2025/8/2
④振り返りで実際-予測のズレから学びを得る これもADRに残しとこ~な 2025/8/2
⑤階層構造にして一般法則を得る 右図のようにADRから知識を得て、 その抽象度をそろえておくと、 そこからさらに帰納法を使って、 「ある外部品質上のボトルネックを解消すると、 利用時品質の〇〇が副作用として下がりやすい」 といったパターンをあぶり出す。 これを継続すると、③の予測モデルの精度が増す。 2025/8/2
データ駆動で進化的アーキテクチャの実現 2025/8/2 継続的な知識の創造と蓄積: 螺旋を回すことで、個人レベルの 経験や知見が組織全体の知識となり、さらに新しい知識へと発展し ていきます。 組織の成⾧と進化: 知識創造のサイクルが繰り返されることで、 組織は単に問題を解決するだけでなく、より高次元の知恵を獲得し、 持続的に成⾧・進化していきます。
「外部環境が似てる」「内部環境が似てる」といった、 過去のコンテキストと似たとこが出てきたら、歴史から学ぶチャンス!
今日のまとめ 2025/8/2
今日のまとめ ADRは、文章の情報だけでなく図解とセットで描きましょう。 その際、原因結果モデル、レーダーチャート評価図を推奨します。 ADRは、単に決定を記録するだけでなく、 1. その情報を知識に昇華させやすくするために構造化する 2. その構造化された情報からパターンと因果関係を推論して、知識を生成する 3. 最終的にその蓄積された知識を基に、より良い意思決定を行うための知恵へと繋げる
という継続的な学習と改善のサイクル=進化的アーキテクチャを組織にもたらす無形資産として運用する。 AIさんで、さらに超高速で実現できんじゃない?詳しい人は今日のを改善して共有してね 2025/8/2
図にしようADR 構造化しようADR 知識にしようADR つくろうアーキテクチャWisdom はい、あざっすM(__)M