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ガイドラインとエビデンスから考える遠隔心理支援の倫理

PPi, LLC
August 02, 2020

 ガイドラインとエビデンスから考える遠隔心理支援の倫理

2020年8月2日13:00-16:00
日本ブリーフセラピー協会主催オンライン・シンポジウム「コロナ禍におけるブリーフセラピーの役割」

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August 02, 2020
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  1. ガイドラインとエビデンスから考える遠隔心理支援の倫理
    木内敬太 [email protected]
    合同会社実践サイコロジー研究所
    2020年8月2日 日本ブリーフセラピー協会主催オンライン・シンポジウム「コロナ禍におけるブリーフセラピーの役割」

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    Keita Kiuchi Practical Psychology Institute, LLC [email protected]
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    Keita Kiuchi Practical Psychology Institute, LLC [email protected]
    2020/08/02
    Contents
    1. ガイドライン等の紹介
    2. 遠隔心理支援の倫理対応の実際
    3. 遠隔心理支援のエビデンス
    4. 質問への回答
    ※講義中チャットより質問をお寄せください。

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    2020/08/02
    アメリカ心理学会の資料をCOVID-19Bustersで翻訳しました

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    ガイドライン等の紹介 アメリカ心理学会の資料を有志で翻訳
    日本心理学会 / COVID-19関連ページ / 遠隔心理支援
    https://psych.or.jp/special/covid19/telepsychology ※セキュリティの警告が出ますが危険なサイトではありません。
    タイトル 概要
    遠隔健康支援を放棄することの意味 米国では、一時的に、心理支援を含む遠隔医療が保険適用になった(電
    話、テキストは除外)。さらに、民間保険の適用拡大に向けて動いている。
    遠隔実践およびスーパービジョン 遠隔心理支援導入のための概要と、遠隔支援の実施や遠隔のスーパービ
    ジョンが正式な養成プログラムとして認められるという記載。
    遠隔心理支援のためのチェックリスト 具体的に遠隔心理支援を行う際に必要な準備や体制づくりについての
    チェックリスト。米国におけるシステムの要件などを含む。
    インフォームドコンセントチェックリスト 遠隔支援を行う際にインフォームド・コンセントに含むべき内容のチェックリスト。
    守秘義務の制限、技術的な問題への措置、録音の禁止、ネット環境等。
    実践のためのガイドライン 心理士に求められる能力、セキュリティ、インフォームド・コンセントなど、包括
    的なガイドライン。別に、スーパービジョンのガイドライン(英語)もある。

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    遠隔心理支援のための相談体制チェックリスト
    1. クライアントのスクリーニング
     活用能力、資源(PC、スマホ、カメラ、部屋等)
     必要な配慮、保護者の許可、安全性(自傷等)
    2. 技術面
     セキュリティに関して法的な要件を満たしているか
     安全なネット環境か
    3. セッティング
     プライベート空間、アイコンタクト、画質や音質
    4. セッション前
     インフォームドコンセント、未成年の場合の保護者の居場所
    5. セッションの開始
     接続場所と連絡先の確認、カメラ起動、録音しない

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    テキスト相談の一例

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    合同会社実践サイコロジー研究所
    SNSコーチング
    テキスト相談
    法人メンタルヘルス
    相談窓口
    専門家サポート
    スーパービジョン
    キャリア相談
    @ココナラ

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    サービス内容の説明 SNSコーチング/テキスト相談
    • 当サービスはテキストメッセージのやり取りを通して提供されます。
    • メッセージ返信の頻度は土日祝日を除く24時間を基本としています。(購入者様の返信はいつでもお時間のある
    時で構いません)
    • 当サービスは具体的な目標(「月のノルマ達成」「年商○○万」「恋人を作る」など)の達成を保証するもので
    はありません。
    • 当サービスは医療行為を提供するものではありません。臨床心理士、公認心理師、キャリアコンサルタントといった
    専門の知見に基づくサポートを提供させていただきます。
    • ご相談内容に関して主治医がいる場合には、主治医の許可を得てからご利用ください。
    • 違法行為や倫理的に問題のあると考えられる目的(「他者をだますこと」「公共の福祉に反すること」など)の
    サポートをお受けすることはできません。
    • 秘密は守られます。ただし、サポートの質の向上を目的として、個人情報を除いたデータを開示し、事例検討や
    スーパービジョン、研究発表を行うことがあります。
    • オンライン完結という特性上、十分お力になれないこともあるかもしれません。まずは困りごとについてお問い合わせく
    ださい。

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    業務委託契約 キャリア相談(キャリあど)
    第5条(成果物の権利帰属)
    委託業務により作成された成果物に関する無体財産権及び有体物に関する一切の権利は、甲に帰属する。
    第6条(秘密保持)
    乙は本契約に関して知りえた情報を一切他に漏洩させてはならない。ただし、クライアントからの了承が得られた場合に限り、事例検討や科学
    的研究の目的のために、クライアントの個人情報を保護した上で、乙は本業務に関する情報の一部を第三者に開示することができる。
    第7条(報告義務)
    乙は、甲の求めがあるときは、委託業務に関する情報をすみやかに報告しなければならない。
    第8条(契約解除)
    2.乙が次の行為を行った場合、甲は何らの催告をせず、直ちに本契約を解除し、また被った損害の賠償を請求することができる。
    • 本業務の提供用のシステムへのログインに必要な情報を他に漏洩させるもしくは本業務の提供以外の用途に用いること
    • 本業務の提供用のシステムにログインし、アカウント情報の変更など、本業務の提供に関係のない操作を行うこと
    • 本業務の提供用のシステムにログインし、他者の相談内容など、自身の提供する相談以外の情報にアクセスすること
    • キャリアコンサルタントの職業倫理に反する行為を行うなどして、世間における甲の評価を低下させること
    • 公への情報の提示により、甲の名声や信用について社会から受ける評価を違法に低下させること
    • その他、甲の指示に反して、甲の社会からの名声や信用を低下させる可能性のある行為を行うこと

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    2020/08/02
    ちょっと困ったケース… ※秘密保持のために一部の情報を修正・追加しています。
    1. 夫婦の共有アカウントでの申し込み
    夫婦で共有しているアカウントで、二人一緒に相談を受けたいという申し込みがあった。
    2. 夫から妻の相談の申し込み
    申し込みと支払いは夫で、実際のクライアントは妻だった。
    3. 夫婦別々に申し込み
    妻が夫に紹介。同時期に別々に二人の相談対応を行った。
    4. 写真が送られてきた
    メディアは強制的に取得させられるので、面接室に現物を持参されるよりもインパクトがある。
    メディアの送受信についても一定のルールがあらかじめ共有されている方がいいかもしれない。

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    すでに諸外国では効果研究は山ほど行われています

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    遠隔心理支援のエビデンス
    (福島県立医大の竹林先生が27のメタ解析を抽出)
    • うつ病:コンピューター支援CBT 対 統制(g=0.50)、テキスト相談(SMR=0.23)
    • 睡眠障害:睡眠効率、総睡眠時間、不眠症重症度指数の改善。インターネットによる治療と対面治療の間に有意差なし。
    • PTSD:インターネット介入 対 待機(g=0.68)、ビデオ会議 対 対面(直後g=-0.05 ns; 3~6か月後g=-0.25)、iCBT 対 他の介入(g=0.28)
    • 社交不安障害:iCBT 対 待機/能動的統制(g=0.84/g=0.38)、VR曝露 対 待機/能動的統制(g=0.82/ns)
    • 強迫性障害:遠隔CBT 対 統制/対面(g=1.06/g=-0.21 ns)、低強度 対 統制(g=1.36)
    • 摂食障害:eセラピープログラム 対 統制群(摂食障害行動g=-0.43; 摂食障害態度/信念g=-0.38)
    • アルコール問題:eスクリーニング&短期介入 対 統制(3か月までMD-32.74g; 12か月未満MD-14.91g; 12か月以上 ns)、テキスト相談の効果なし
    • 禁煙:介入 対 統制(禁煙のオッズ比1か月後1.70、18か月後1.83)、CPプログラム、ウェブサイト、インターネット、電話、テキスト
    • 自殺防止:デジタル教材 対 統制(自殺念慮g=-0-18)、自殺を標的(g=-0.23)、うつ病を標的(g=-0.12 ns)
    • 消化器疾患:過敏性腸症候群に対するオンラインCBT(消化器症状特有の不安MD=-8.5, 症状誘発性の障害MD=-2.78)
    • がん患者:インターネット心理教育(うつ症状SMD=-0.58、疲労MD=-9.83、苦痛SMD=-1.03 ns、QOL MD=1.10 ns)
    • 疼痛:eヘルスおよびmヘルスは短期、中期の追跡調査で痛みの強さ、うつ症状に有意な効果
    • 多発性硬化症:電話(うつ症状SMD=-0.47)、電話 対 統制群/他の介入で、疲労、QOL、症状、身体活動、服薬アドヒアランスへの介入の短期的な効果
    • 周産期:遠隔医療を用いた産後うつと不安のCBTのエビデンスは限られてる。母と新生児の健康(テキスト介入により生後1か月の母乳育児率の改善)
    • 非臨床:eヘルス(うつ症状MD=-0.25; 不安MD=-0.31)、eヘルス(うつ症状 短期SMD-0.19、長期SMD=-0.22)、eヘルス 対 待機/能動的統制/他の介
    入(不安SMD=-0.56/-0.18 ns/-0.10 ns、うつSMD=-0.43/-0.28 ns/-0.33 ns、ストレスSMD=-0.73/-/-)、第3世代CBT eヘルスの不安、うつ、QOLへの効果
    • 思春期:うつ症状や不安へのコンピュータ CBT/注意バイアス修正プログラム/認知バイアス修正プログラム 対 待機群(g=0.66/g=0.41/ns)、対面のCBTと同等
    • 職場:eメンタルヘルス(ストレスg=0.54、不眠g=0.70、燃え尽きg=0.51、うつ症状g=0.30、不安g=0.34、ウェルビーイングg=0.35、マインドフルネスg=0.42、
    アルコール問題 ns
    • 治療同盟:ビデオ面接 対 対面(治療同盟SMD=-0.30、症状の軽減SMD=-0.03 ns)
    SMR: standardized mean redaction 標準化平均減少、SMD: standardized mean difference 標準化平均差、MD mean difference 平均差

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    まとめ
    • 遠隔心理支援はすぐに始められる
    • 倫理に関しては、ガイドラインを参照
    • ITのセキュリティは専門家に相談
    • 既存のエビデンスを確認しましょう
    日本の心理支援へのアクセスを
    高めるのは、全実践家の責任です!

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    2020/08/02
    チャットに質問がたくさん寄せられていますね!

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