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情報科教育法(ゲスト講義用)2025

 情報科教育法(ゲスト講義用)2025

ゲスト講義で使用するスライドです。

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July 23, 2025
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  1. (参考) 自己紹介: 大西 洋(Ohnishi Hiroshi) 専修免許状(情報)・一種免許状(数学) 所持 学位: 修士(情報学)@京大情報学研究科 (2015)

    2 (参考) Researchmap https://researchmap.jp/h.ohnishi 所属 職位 業務内容 2014-2020 京都市立西京高校 非常勤講師(27H) 情報科・総合的な探究の時間 教育推進部(SGH事業) 2019-2020 大阪府立東百舌鳥高校 非常勤講師 情報科 2020-2021 京都市立京都堀川音楽高校 非常勤講師(27H) 情報科・数学科 学事情報部・生徒部・教務部 2021-2024 関西大学 教育推進部 非常勤嘱託職員 文章に関する個別相談担当・運営 2024-現在 ノートルダム清心女子大学 専任講師 情報デザイン学部の授業科目 情報科の教職課程担当 など 現在 河合塾にて共通テスト対策講座「情報I」への助言 など 2020-現在 京都大学にて教職科目「情報科教育法II」のゲスト講師を担当 2024 『マーク式基礎問題集 情報I』(河合出版・共著)を執筆・刊行
  2. 情報科の内容と構造: 「情報I」の内容 単元 項目 (見出しは教員研修用教材のものを使用) 1. 情報社会の問題解決 ア. 問題を発見・解決する方法 イ.

    情報社会における個人の果たす役割と責任 ウ. 情報技術が果たす役割と望ましい情報社会の構築 2. コミュニケーションと 情報デザイン ア. メディアの特性とコミュニケーション手段 イ. 情報デザイン ウ. 効果的なコミュニケーション 3. コンピュータと プログラミング ア. コンピュータの仕組み イ. アルゴリズムとプログラミング ウ. モデル化とシミュレーション 4. 情報通信ネットワークと データの活用 ア. 情報通信ネットワークの仕組みと役割 イ. 情報システムとデータの管理 ウ. データの収集・整理・分析 3 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  3. 学習指導要領: 内容(4)項目アの事項 • 内容 • 知識・技能: 情報通信ネットワークの仕組みや構成要 素,プロトコルの役割及び情報セキュリティを確保する ための方法や技術について理解する •

    思考力・判断力・表現力: 目的や状況に応じて,情報 通信ネットワークにおける必要な構成要素を選択する とともに,情報セキュリティを確保する方法について考 える • 内容の取扱い • 小規模なネットワークを設計する活動を取り入れる 4 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  4. 学習指導要領: 中学校技術科での学習状況 • 内容(2) • 生活や社会における問題を,ネットワークを利用した 双方向性のあるコンテンツのプログラミングによって 解決する活動を通して,次の事項を身に付ける • 情報通信ネットワークの構成と,情報を利用するため

    の基本的な仕組みを理解し,安全・適切なプログラム の制作,動作の確認及びデバッグ等ができる ※イメージはLINE。実践はmicro:bitなどが多い ※中学校への要求と現場の実践の乖離が大きい 5 (参考) 文科省「中学校学習指導要領」(2017) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_02.pdf 中学校での学習内容の定着は あまり期待できない分野 ⇒ 基礎事項から扱う
  5. ネットワークを扱う難しさ • 扱う順序が難しい • どこから説明すれば伝わるか? • 循環しない順序は? • 定義が確立・定着していない用語が多い •

    例: インターネットはWANか? • 例: ルータとアクセスポイント(AP) • 例: リンク層とネットワークインタフェース層 • 日進月歩で変化していく • 例: SSL → TLS, IPv4 → IPv6, TCP → QUIC? • 例: ブラウザのアドレスバーの マーク(廃止へ) • 生徒の目に見えないものが多い • 図解で可視化、体験的に学ぶなどで対応 8
  6. ネットワークに関する事項: 何をどの順番で扱う? • パケット交換・回線交換: TCPとの関係に注意 • WANとLAN、インターネット・イントラネット • クライアント・サーバモデル、クラウド •

    ルータ・AP・ハブ・ONU・光コンセント • 有線・無線、Wi-Fi: Ethernetとの関係に注意 • IPアドレス・サブネットマスク: IPとの関係に注意 • WWW・URL・DNS: HTTPとの関係に注意 • プロバイダとキャリア、移動体通信 • ダウンロード・アップロード、ストリーミング ※プロトコルの説明が必要な部分は後回しがよい? 9 (参考) 大西「ネットワークの基礎」(2020) https://www.scribd.com/document/464741372
  7. (参考) DNSの記号論的解釈 DNS (Domain Name System): 人間が認識しやすいドメイン名と 機械が処理しやすいIPアドレスの 間の変換を担う 10

    表現 内容 123.45.67.89 example.or.jp IPアドレス (IPv4) ドメイン名 DNS IPアドレスと ドメイン名の変換 指示先の サーバ ドメインの 階層構造 .jp or example .it .fr go
  8. プロトコルに関する事項 • プロトコルの必要性・役割: • TCP/IPプロトコル群 • アプリケーション層 • HTTP: WWW

    • HTTPSはプロトコルではない。SSL/TLSの説明は別途必要。 • URLの形式: https://www.kantei.go.jp/index.html • POP, SMTP, IMAP: 電子メール • Webメール時代だが名前くらいは… • IMAPは受信用というより、メールボックスのプロトコル • To, CC, BCCの使い分け: 古典的だが事故が絶えない • トランスポート層 • TCP: パケットの分割・整序・再送 • UDP, QUIC: 速度面で有利なことも • インターネット層 (IPv4, IPv6) • ネットワークインタフェース層 (Ethernet, 802.11) 11 (参考) 「ProtoSim」 https://protosim.csle-lab.org
  9. ネットワークに関する実習 「小規模なネットワークを設計する活動」をどうする? • 現実問題として、環境が整っていない学校が大半 • 校内で実運用されているLANは実習に使えない (権限の問題で、生徒が操作することは難しい) • 実習用の機材を多数用意・保守する必要がある (これらの機材は校内LANと接続困難)

    • 実践事例: 小平高校小松先生 「情報Ⅰで行ったネットワーク構築の授業実践」 https://www.wakuwaku-catch.net/jirei24340/ • 「設計」なので「実装」させなくてもよい (紙面・シミュレータなどを使ってもよい) 13 (参考) キミのミライ発見「「情報Ⅰ」学習指導要領項目別の事例一覧」 https://www.wakuwaku-catch.net/yoryo2020/#kochira4a
  10. セキュリティを扱う単元: 1章と4章の違い • 「情報社会の問題解決」の項目イ • 「情報セキュリティの重要性」 ⇒ セキュリティの基本的な理念・概念を扱うイメージ • 具体例:

    機密性/完全性/可用性, 認証, ポリシー, マルウェア, 不正アクセス • 「情報通信ネットワークとデータの活用」の項目ア • 「情報セキュリティを確保するための方法や技術」 ⇒ 実際に使われるアルゴリズムや技術を扱うイメージ • 具体例: 共通鍵/公開鍵暗号, デジタル署名, SSL/TLS, 誤り検出/訂正(パリティ, ハッシュ) 15 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  11. セキュリティを扱う単元: 留意点 • 具体例を盛り込みつつ体系的に扱う • 「身近な例」が多くなると生徒の満足度は上がるが… • 即物的な雑学が増えるだけだと、授業の効率が悪い • 限られた時間で深い学びになるよう意識する

    • 事故が起きないと重要性が伝わらない • 生徒の身近な文脈で体験的に学ぶ • スマホの紛失、SNSでの情報漏洩など • 他者への被害や賠償が生じると理解し責任をもつ • アナログなセキュリティは盲点になりやすい • いくらデジタルな部分のセキュリティを堅牢にしても、 パスワードを紙で持ち歩いていると骨抜きになる 16 (参考) 大西「Security(授業スライド)」(2020) https://speakerdeck.com/saireya/security
  12. (参考) 暗号の記号論的解釈 暗号(cipher): アルゴリズムと鍵( )を用いて、 あるデータ(平文)を、解読困難な データ(暗号文)に変換する技術 17 ※「復号」という言葉を使うとややこしいので、ここでは言及を避けている 表現

    内容 「かわいいねこ」 “-1” 「おろああぬけ」 ? encrypt 平文から暗号 文への変換 decrypt 暗号文から 平文への変換 平文 (ひらぶん) 暗号文 平文は 解読可能 暗号文は 解読困難
  13. 公開鍵暗号の説明における注意点 • 説明上は便利な南京 錠の例が多用される が、デジタル署名の説 明には使えない • 「デジタル署名のとき には秘密鍵で暗号化 する(公開鍵と秘密鍵

    の役割が逆になる)」 のは、RSAなど一部 の公開鍵暗号の性質 • 鍵の一方から他方を 求めることは、現実的 な時間では不可 Alice(送信者) Alice(送信者) Bob(受信者) Bob(受信者) 公開鍵 と秘密鍵 の 組( , )を作る 公開鍵 をAliceに送る 平文 を公開鍵 で 暗号化し暗号文 に 変換する 暗号文 をBobに送る 暗号文 を秘密鍵 で 復号し平文 に 変換する 18
  14. 情報科の内容と構造: 「情報I」の内容 単元 項目 (見出しは教員研修用教材のものを使用) 1. 情報社会の問題解決 ア. 問題を発見・解決する方法 イ.

    情報社会における個人の果たす役割と責任 ウ. 情報技術が果たす役割と望ましい情報社会の構築 2. コミュニケーションと 情報デザイン ア. メディアの特性とコミュニケーション手段 イ. 情報デザイン ウ. 効果的なコミュニケーション 3. コンピュータと プログラミング ア. コンピュータの仕組み イ. アルゴリズムとプログラミング ウ. モデル化とシミュレーション 4. 情報通信ネットワークと データの活用 ア. 情報通信ネットワークの仕組みと役割 イ. 情報システムとデータの管理 ウ. データの収集・整理・分析 23 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  15. 学習指導要領: 内容(4)項目イの事項 • 内容 • 知識・技能: データを蓄積,管理,提供する方法,情報 通信ネットワークを介して情報システムがサービスを 提供する仕組みと特徴について理解する •

    思考力・判断力・表現力: 情報システムが提供する サービスの効果的な活用について考える • 内容の取扱い • 自らの情報活用の評価・改善について発表し討議す るなどの活動を取り入れる 24 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  16. データの蓄積: ネットワークからのデータ取得 • 社会調査(アンケート)について扱うことは重要 • 探究学習ではWebフォームなどを活用 • 質問の作成方法についても扱うとよい (質問形式と尺度水準の関係に注意) •

    探究学習の内容によってはインタビューも扱うとよい • 社会調査自体は情報科の主要な内容ではないが、 放置すると探究学習の指導が大変になる • 元々のイメージはWebAPIからのデータ取得 • 十分な授業を実践できている学校は多くない • WebAPIは動作が変わりやすく、ついていけない • 急なサービスダウンで授業が成立しなくなることも (実習で利用するとDoS攻撃とみなされる場合も) • 難度調整を誤ると、プログラミングが主になってしまう 27 (参考) 大西「アンケート調査の基礎」(2024) https://speakerdeck.com/saireya/anketodiao-cha-noji-chu
  17. データの蓄積: ライフログの活用 人間生活に関するライフログは身近なデータで、 生徒が興味を持ちやすく、探究活動でも使いやすい 例: • 家計: 収支、光熱費、ポイント • 健康:

    体調、心拍数、睡眠、健診結果、運動量 • 移動: 交通経路、訪問地、GPS • 活動: 学習、ゲーム、ネット接続、運動、Web検索、 予定、タスク、写真、動画 • 制作物: レポート、作文、宿題、日記、旅行記、読 書メモ、SNSの投稿 • 評価: 成績、資格証明書、賞状 28
  18. データの管理: データベース • 関係データベース(RDB)を扱うことが多い • 指導要領上はDBでなくてもよい (JSONやCSV, Excelのテーブルでの対応も可) • ただ、操作の学習などを考慮するとRDBに絞られる

    • RDBの操作環境: • SQL Online (https://sqliteonline.com) • DB Browser for SQLite (https://sqlitebrowser.org) • sAccess (https://saccess.eplang.jp): 教育用の環境。使いやすいがやや特殊 • Microsoft Access: 使えることが多いが、RDBのうちでもやや特殊 30 (参考) 大西「データベース入門」(2025) https://speakerdeck.com/saireya/db00
  19. (参考) 関係表の記号論的解釈 • スキーマ(schema): 名前・属性名・制約などの関係表の構造 • インスタンス(instance): スキーマに基づく実際の関係表の例 31 表現

    内容 氏名 よみがな 年齢 氏名 よみがな 年齢 大久保 藍 おおくぼ あい 77 福島 紀子 ふくしま のりこ 44 加藤 吉孝 かとう よしたか 55 Schema 関係表の 構造 Instance 関係表の 実際の例 (出典) UserLocal「個人情報テストデータジェネレーター」https://testdata.userlocal.jp
  20. データの提供: オープンデータ オープンデータを活用する実習ができればよいが、 あまり手が回らないのが実情 (年度末が近い) • 実際のデータ: 分析以前の前処理や指導が大変 • e-Stat

    (https://www.e-stat.go.jp) • DATA.go.jp (https://www.data.go.jp) • RESAS (https://resas.go.jp) データ提供というよりは、可視化の事例 • 教育用データ: 使いやすいが、これでよいのか? • 「教育用標準データセット(SSDSE)」 https://www.nstac.go.jp/use/literacy/ssdse • 「統計データ分析コンペティション」 https://www.nstac.go.jp/statcompe 上記データを使うコンテスト (総合型選抜を意識) 32 (参考) 佐藤「SSDSEでPPDAC」(2024) https://www.zenkojoken.jp/wp-content/uploads/2024/08/2024_B1-6_satou.pdf
  21. データの提供: デジタルアーカイブ デジタルアーカイブを扱うのもよい • 国立国会図書館 (https://dl.ndl.go.jp) 中世~近代の文献・音源・美術作品 • 国立公文書館 (https://www.digital.archives.go.jp)

    古い公文書・絵巻 • 古地図コレクション (https://kochizu.gsi.go.jp) 古地図・測量図 • JAPAN SEARCH (https://jpsearch.go.jp) 地方含むデジタルアーカイブを一括検索 33
  22. (参考) 図書館情報学・GLAMと情報科 海外では図書館学と情報学が一体化し、 図書館情報学(information science)が成立 • GLAM: 文化施設を統一的な視点で捉える用語 • Gallery:

    美術館, Library: 図書館, Archive: 文書館, Museum: 博物館 • これらは、物品を展示して情報を提示することで利用 者の学習に資することを目的とする点で共通してお り、海外では一体的な視点での連携が進んでいる • 梅棹忠夫の情報産業論・国立民族学博物館は、 GLAMと同じ視座に立っている • CS系情報科教員の視野に入りにくい • 司書・学芸員養成は私大文系学部への依存が大きい • 筑波大学情報学群には知識情報・図書館学類がある 34 (参考) Bawden, Robinson(2019)『図書館情報学概論』勁草書房(田村・塩崎訳) 梅棹忠夫(1963)「情報産業論」中央公論, Vol.78, No.3, p.46-58
  23. 「情報システムについて学ぶ」とは? 情報Iの範囲と情報IIの範囲が混在 • システムの例を覚える? POS, ETC, GPS, IoT • 教科書を読んでもらえれば十分では?

    • ETC2.0は料金収受より広い機能をもつので注意 • システムの「信頼性」: MTBF, MTTR • ここでいう「信頼性」は可用性(availability)のこと (「システムが示した情報を信頼できるか」ではない) • システムが故障せず常に稼働し利用できるか • システムの構造: UML・状態遷移 • 一般システム理論 (Bertalanffy): 生命・心理・社会・創発などの根本になるモデル 39 (参考) 児玉(2008)『UMLモデリング入門』日経BP Bertalanffy(1973)『一般システム理論』みすず書房(長野・太田訳)
  24. 情報検索・情報推薦・フィルタリング • 情報検索: 明示されたqueryを元に結果を返す • 情報推薦: 明示されたqueryなしに結果を返す • フィルタリング: queryがあるがほぼ変化しない

    • Boolean Retrieval(AND・OR・NOT検索): 理論上は重要だが、実用性は年々低くなっている • cosine類似度: 三角関数+ベクトル! • 「検索語句を無視した結果」が返ってくる時代に ⇒ システムの過剰な「お節介」 • プロンプトエンジニアリング: queryは「質問」 (情報検索は生成AIの要素技術になっていく?) 40 (参考) Manning et al.(2008)『Introduction to Information Retrieval』p.1-5 https://nlp.stanford.edu/IR-book/html/htmledition/boolean-retrieval-1.html
  25. (参考) 情報検索の記号論的解釈 情報検索(information retrieval): 利用者の情報需要(information needs)に基づい て、needsと関連する結果(result)を出力する技術 ※検索語句(query): needsを表現したもの 41

    (参考) Manning et al.(2008)『Introduction to Information Retrieval』p.1-5 https://nlp.stanford.edu/IR-book/html/htmledition/boolean-retrieval-1.html 検索語句 (query) 検索結果 (result) Information needs needsと 関連する? 表現 内容 × × ◦ ◦ かわいいねこ [かわいいねこ]の 検索結果: 1. 2. 3. 4. ⋮ 検索 エンジン
  26. 情報科の内容と構造: 「情報I」の内容 単元 項目 (見出しは教員研修用教材のものを使用) 1. 情報社会の問題解決 ア. 問題を発見・解決する方法 イ.

    情報社会における個人の果たす役割と責任 ウ. 情報技術が果たす役割と望ましい情報社会の構築 2. コミュニケーションと 情報デザイン ア. メディアの特性とコミュニケーション手段 イ. 情報デザイン ウ. 効果的なコミュニケーション 3. コンピュータと プログラミング ア. コンピュータの仕組み イ. アルゴリズムとプログラミング ウ. モデル化とシミュレーション 4. 情報通信ネットワークと データの活用 ア. 情報通信ネットワークの仕組みと役割 イ. 情報システムとデータの管理 ウ. データの収集・整理・分析 47 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  27. 学習指導要領: 内容(4)項目ウの事項 • 内容 • 知識・技能: データを表現,蓄積するための表し方と, データを収集,整理,分析する方法について理解し技 能を身に付ける •

    思考力・判断力・表現力: データの収集,整理,分析 及び結果の表現の方法を適切に選択し,実行し,評 価し改善する • 内容の取扱い • 比較,関連,変化,分類などの目的に応じた分析方法 があることも扱う 48 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  28. 学習指導要領: 数学科での統計分野の扱い 内容 小 学 校 1. ものの個数、データの個数 2. 数量の分類整理、表やグラフの使用

    3. 日時・場所の観点でのデータの分類整理(※LATCHのLとT)、棒グラフ 4. 2つの観点でのデータの分類整理(※クロス集計)、折れ線グラフ、 適切なグラフの選択 5. 円グラフ・帯グラフ、統計的な問題解決、平均 6. 代表値(中央値・最頻値)、度数分布の表やグラフ(ドットプロット)、 階級、落ちや重なりなく調べる方法(※MECE) 中 学 校 1. ヒストグラム、範囲、相対度数、累積度数、コンピュータを用いたデータの 表やグラフへの整理、確率の必要性と意味 2. 四分位範囲、箱ひげ図、同様に確からしい 3. 標本調査の必要性と意味、コンピュータを用いた無作為抽出、全数調査 数I 分散、標準偏差、散布図、相関係数、仮説検定の考え方、外れ値 数 A 集合の要素の個数、和の法則・積の法則、順列・組合せ、 階乗、独立な試行、排反、条件付き確率 (※選択科目) 数 B 確率変数、確率分布、二項分布・正規分布、区間推定、 仮説検定の方法、信頼区間、有意水準 (※選択科目) 51 (参考) 文科省「学習指導要領」(2017・2018) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm
  29. 統計分野: 数学科との関係 • 数学Iと情報I、数学Bと情報IIが対応する想定 • 数学Iと情報Iは並行して履修することが多いの で、進め方に注意(数学Iが先に終わることが多 い) • 数学A・Bはそもそも選択科目であることに注意

    (数学A・Bでは全ての内容を扱うとは限らない) • 外れ値: 数学Iの教科書には外れ値の「定義」が 記されていることがあるが、情報科の外れ値は明 確な基準を持つ概念ではなく、定義がやや異なる • 仮説検定・回帰直線: 後述 52 (参考) 大西「「情報I」で扱われる学習内容の教育課程上の位置づけ」(2025) https://researchmap.jp/h.ohnishi/published_papers/49420852
  30. 統計分野: 仮説検定の扱い • 情報Iの学習指導要領本体には記載がない • 情報Iの学習指導要領解説には記載がある • 「地域や学校の実態及び生徒の状況に応じて,数学科と 連携し,データを収集する前に,分析の構想を練り紐付け る項目を洗い出したり,外れ値の扱いについて確認したり,

    データの傾向について評価するために仮説検定の考え方 などを取り扱ったりすることも考えられる」(p.38) • 数学Iの学習指導要領本体には記載がある • 「具体的な事象において仮説検定の考え方を理解するこ と」(p.93) • 情報Iの教科書では記載がないものが多い • 数学Iの教科書では記載があるが、基本事項のみ • 共通テストでは、補足説明なしでは出題できない…? 53 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領解説 情報編」(2018) https://www.mext.go.jp/content/1407073_11_1_2.pdf
  31. 統計分野: 回帰直線の扱い • 情報I・数学Iの学習指導要領本体には記載がない • 情報Iの学習指導要領解説には記載がある • 「データの形式や分析目的に応じた可視化の方法を選択 する学習活動を通して,相関係数などの統計指標,相関関 係や因果関係などのデータの関係性,調べようとするもの

    以外で結果に影響を与えている原因である交絡因子, データの関係性を数式の形で表す単回帰分析などについ て扱うことが考えられる。」(p.39-40) • 「データを分析及び可視化するために適切なソフトウェア を活用する学習活動を通して,(中略)相関関係の見られる 変数の組合せを見出し,その変数の組合せに関して回帰 直線を考え,データの変化を予測する力を養うことが考え られる。」(p.40) • 2025年共通テスト追試で用語説明なし(!)で登場 • 「統計ソフトウェアを用いて回帰直線の方程式を計算し」 54 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領解説 情報編」(2018) https://www.mext.go.jp/content/1407073_11_1_2.pdf
  32. 尺度水準: 定義・演算・統計量・例 55 (参考) S.S.Stevens, On the Theory of Scales

    of Measure, 1946, Science, Vol.103, No.2684, p.677-680, doi:10.1126/science.103.2684.677. 尺度水準 可能な 演算 計算可能 な統計量 特徴 例 質的(定性) データ qualitative data 名義 尺度 nominal scale =, ≠ 個数 最頻値 各項目を区別できる 背番号 電話番号 ダミー変数 順序 尺度 ordinal scale <, > 最小値 最大値 中央値 四分位数 項目間に順序が存在する 順位 等級 硬度 量的(定量) データ quantitative data 間隔 尺度 interval scale +, − 平均 分散 標準偏差 項目間の差に意味がある 日付 摂氏温度 比例 尺度 ratio scale ×,÷ 変動係数 項目間の比に意味がある 絶対的なゼロが存在する 質量 長さ 絶対温度
  33. 尺度水準: 定義上の問題 尺度水準の定義には2種類ある • 排他的な定義: • 共通部分が生じないように尺度水準を定義する • 包含的な定義: •

    包含関係を形成するように尺度水準を定義する • 名義尺度⊃順序尺度⊃間隔尺度⊃比例尺度 • 実用上はどちらで考えても支障ないが、 「間隔尺度は順序尺度でもあるのでは?」などの 混乱が生じないように、表現に注意が必要 (説明や作問のときに曖昧な表現を使わない) • 「禁忌」を犯さなければOK (例: 順序尺度のデータの平均を求める) 56 (参考) 大西「アンケート調査の基礎」(2024) https://speakerdeck.com/saireya/anketodiao-cha-noji-chu
  34. (参考) デジタル・アナログと質的・量的・濃度 • デジタル・アナログと質的・量的 • 濃度: 集合の要素数を一般化した概念 57 有限濃度 •

    要素数が有限 な集合の濃度 • 例: 要素数𝑛の 有限集合は濃 度𝑛 可算濃度ℵ0 • 番号をつけて数 えることが可能 • 例: 自然数(ℕ)・ 整数(ℤ)・ 有理数(ℚ) 連続体濃度ℵ • 番号をつけるこ とが不可能 • 例: 実数(ℝ)・ 無理数・ 区間(0<x<1) < < デジタル(digital) アナログ(analog) 連続体仮説: 可算濃度の次の濃度は 連続濃度か?(証明不可) デジタル(離散) アナログ(連続) 質的 量的 例: 年齢
  35. PPDAC: 統計的な問題解決手順のモデルの一つ • MacKay & Oldfordにより提案 (講義ノート?) • Wild &

    Pfannkuch(1999)により広く知られる • Wild(2015)「On locating statistics in the world of finding out」に経緯が書かれている • 教科書に掲載された他のモデルとの対応を説明 することが問題になる • 似たモデルを複数学ぶことは効率が悪い • 教科書には、それぞれの「問題解決の手順」に加え、 PDCA・PPDAC・デザイン思考が掲載されている • 教科書ごとの「問題解決の手順」: 大西(2021)「Peirceの探究段階論に基づく「情報I, II」の構造分析」doi:10.32203/jaeis.14.1_21 59 (参考) Wild & Pfannkuch(1999)「Statistical Thinking In Empirical Enquiry」 https://iase-web.org/documents/intstatreview/99.Wild.Pfannkuch.pdf
  36. データの活用の指導: 実習環境 • 表計算ソフトでデータを扱う • 学習指導要領には表計算についての規定はない • 小学校・中学校でほとんど表計算ソフトを使わないの で、使えるようになりたいという生徒側の需要がある •

    環境整備の手間が少なく、業務でも個人でも使える • 例: Microsoft Excel, Google Spreadsheet • プログラミング言語でデータを扱う • プログラミングの授業でPythonを使う場合に、 データの活用でも同じ環境を使う • ライブラリの更新による動作変更などが生じやすい • コードとビューが分離することの利点・欠点がある • 例: Python 60
  37. データの活用の指導: 共通テスト第4問 • データの活用は「数学I」の統計分野と地続き • 学習する生徒にとっては、どちらも同じ統計学 (「情報I」も「数学I」も受ける受験者が多いはず) • 「数学I」は統計量の算出や数量的な扱いなどに 重点があり、「情報I」はグラフの読み取りやデー

    タの解釈に重点がある…はず • だが、実際は「数学I」の統計分野の問題が かなり情報寄りになっているように思われる ⇒ 数学Iの統計と合わせて対策する方が効率的 (数学科と役割分担することも有効) 61
  38. 可視化: 統計グラフ 64 (参考) 三末(2021)『情報可視化入門』森北出版 名称 対象データ 表現 内容 箱ひげ図

    量的データ 箱とひげ 分布 ヒストグラム 量的データ→ 量的データ 棒の長さ 量 棒グラフ 質的データ→ 量的データ 棒の長さ 量 帯グラフ (円グラフ) 質的データ→ 量的データ 長方形の面積 (扇型の面積) 比率 折れ線グラフ 量的データ→ 量的データ 折れ線の傾き 変化 散布図 量的データ× 量的データ 点の散らばり 相関 レーダーチャート 𝑛次元 量的データ 形状の歪さ ばらつき
  39. (参考) データの活用の記号論的解釈 データの活用による問題解決: 可視化した統計グラフや算出された統計量の値から、 どのように解釈(復号)するかを判断する 67 表現 内容 𝑟 =

    0.31 𝑟: 相関係数 相関あり! 相関なし? 統計的な 解釈を考察 可視化した 統計グラフ 0 0.5 1 0 0.5 1 算出された 統計量の値
  40. 参考文献 • 総務省『生徒のための統計活用』 『高校からの統計・データサイエンス活用』 https://www.soumu.go.jp/toukei_toukats u/info/guide/02toukatsu01_04000486.h tml • 総務省「統計学習の指導のために 先生向け」

    https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/ 13974320/www.stat.go.jp/teacher/inde x.html 統計教育用の教材などを提供していたが消失。 WARPにコンテンツが保存されている。 70
  41. 情報科の内容と構造: 「情報I」の内容 単元 項目 (見出しは教員研修用教材のものを使用) 1. 情報社会の問題解決 ア. 問題を発見・解決する方法 イ.

    情報社会における個人の果たす役割と責任 ウ. 情報技術が果たす役割と望ましい情報社会の構築 2. コミュニケーションと 情報デザイン ア. メディアの特性とコミュニケーション手段 イ. 情報デザイン ウ. 効果的なコミュニケーション 3. コンピュータと プログラミング ア. コンピュータの仕組み イ. アルゴリズムとプログラミング ウ. モデル化とシミュレーション 4. 情報通信ネットワークと データの活用 ア. 情報通信ネットワークの仕組みと役割 イ. 情報システムとデータの管理 ウ. データの収集・整理・分析 72 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  42. 情報科の内容と構造: 「情報II」の内容 単元 項目 (見出しは教員研修用教材のものを使用) 1. 情報社会の進展と 情報技術 ア. 情報技術の発展の歴史

    イ. 情報技術の発展とコミュニケーションの変化 ウ. 情報技術の発展と知的活動への影響 2. コミュニケーションと コンテンツ ア. コミュニケーションの形態とメディアの特性 イ. コンテンツの制作 ウ. コンテンツの発信 3. 情報とデータサイエンス ア. 大量のデータの扱いとデータサイエンスが社会に果たす役割 イ. データのモデリングとその表現と解釈 ウ. データの分析と評価 4. 情報システムと プログラミング ア. 情報システム全体の情報の流れ イ. 情報システムの表し方,情報システムの分割と設計 ウ. 分割したシステムの制作・統合・テスト 5. 情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探究 73 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  43. 学習指導要領: 内容(1)項目ウの事項 • 内容 • 知識・技能: 情報技術が人や社会に果たす役割と及 ぼす影響について理解する • 思考力・判断力・表現力:

    情報と情報技術の適切か つ効果的な活用と望ましい情報社会の構築について 考察する • 内容の取扱い • 生徒が情報社会の問題を主体的に発見し明確化し, 解決策を考える活動を取り入れる 74 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  44. 学習指導要領: 情報II・内容(1)の事項 • 内容 • 知識・技能: • 情報技術の発展の歴史を踏まえ,情報社会の進展 • 情報技術の発展によるコミュニケーションの多様化

    • 情報技術の発展による人の知的活動への影響 • …について理解する • 思考力・判断力・表現力: • 情報技術の発展や情報社会の進展を踏まえ, 将来の情報技術と情報社会の在り方 • コミュニケーションが多様化する社会における コンテンツの創造と活用の意義 • 人の知的活動が変化する社会における 情報システムの創造やデータ活用の意義 • …について考察する • 内容の取扱い • 情報セキュリティ及び情報に関する法規や制度についても 触れる • 将来の情報技術と情報社会の在り方等について討議し発 表し合うなどの活動を取り入れる 75 (参考) 文科省「高等学校学習指導要領」(2018) https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
  45. 情報技術の変遷: 近年の技術例 Q. あなたなら何を取り上げますか? • ロボット: 自動配膳ロボ・物流ロボット • 自動運転: バス・ドローン

    • 3Dプリンター: 住宅・駅舎 • XR: AR/MR/VR・OJT・家具配置・髪型 • IoT: スマートスピーカー・家電・掃除機 • 個人ID: 個人番号・保険証・免許証・e-Tax • ブロックチェーン: 暗号通貨・NFT • 集合知: Wikipedia・道路通行状況 • 生成AI: 対話・画像・動画・ディープフェイク 78
  46. 情報技術の変遷: 人工知能と機械学習 人工知能(Artificial Intelligence, AI): 人間の知能が行うような高度な処理を人工的に再 現する技術 • 「高度な」=「現時点ではコンピュータには難しい と考えられる」

    • 「人工知能」が指す技術は時代により異なる • 以前は郵便局の手書き郵便番号認識が「高度」だと 思われていたが… 機械学習(machine learning): • データから機械的に規則を学習する技術 • 人間が行う帰納推論を模倣 79
  47. 情報技術の変遷: 生成AIについての学習 生成AI(generative AI): 生成モデルに基づく機械学習手法により 実装されたサービス(人工知能) (一度にまとめて扱うと見通しはいいが、効率は悪い) 80 事項 内容の例

    対応する科目・内容 意義・ 活用場面 「壁打ち」・例示・ 校正 情報I: 第1章項目ウ 情報II: 第1章 注意点 著作権・情報モラル・ メディアリテラシー 情報I: 第1章項目イ 情報II: 第1章 機械学習 の原理 教師あり学習 教師なし学習 情報I: 第1章項目ウ 情報I: 第4章項目ウ 情報II: 第3章 (参考) 文科省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」(2024) https://www.mext.go.jp/a_menu/other/mext_02412.html
  48. 情報技術の変遷: 生成AIの活用場面 生成AIの活用は情報科の文脈で行う • 単に「使ってみる」だけなら、専門の教科がある • 文章生成: 国語科・英語科 • 画像・音楽・動画生成:

    芸術科 • 生成AIの使いすぎで目標を見失わないよう注意 81 単元 活用場面の例 注意点 問題解決 アイデア出し・例示・ヒントを 得る 出力されたものがオリジナルの アイデア・例でない可能性 情報 デザイン イメージ図・プロトタイプの 作成、文章の構造化 出力されたものの著作権・品質 (精密なデザインは困難) プログラ ミング コード作成、不具合の原因 究明 出力されたコードを実運用に取 り込むことに伴う責任 データの 活用 データ分析の観点を得る、 ダミーデータ作成 入力するデータがアップロード してよいものかの確認
  49. 情報社会の発展: 人間に求められる役割 人間と機械の関係を考える活動が必要 • 機械が単純作業をやってくれるようになるので、 人間はもっと創造的な活動を…とは限らない • 技術の高度化に社会の変化が追いつかない (学校のニーズ: トイレ・エアコン・校舎の補修)

    • 技術は意外と高価、電力消費が大きいことも (全体コストだと人間を雇う方が安いことも) • エッセンシャルワーカーやブルーカラーの需要は 増える一方で、移民で補う方向性も (インフラの保守要員をどう確保するか?) • ホワイトワーカーの方が需要が細り始めている (尤も、減っているのは中間的な職種の需要) 83 (参考) 武善(2024)「「人間」と「機械」の関係性を探求する授業実践」情報処理, Vol.66, No.2, p.68-73, doi:10.20729/00241943
  50. Turing test (A.Turing, 1950) 機械が知能をもつといえるかを検証する方法 • 人間が生成したものと機械が生成したものを区 別する問題に対して、判定者が確実な区別をでき なくなれば、その機械は知的だ(知能をもつ)とい える

    • Turingが考案 • 判定者ではなく機械の性能を検証する方法 • 「知能とは何か・機械とは何か」を直接問わずに、 機械が人間と同等以上といえるか判断する方法 • 人間の生成物と生成AIの生成物を区別できる? 85 (参考) A.Turing(1950)「Computing Machinery and Intelligence」, Mind, Vol.59, No.236, doi:10.1093/mind/LIX.236.433 『コンピュータ理論の起源[1]: チューリング』(近代科学社)所収
  51. (参考) Alan M. Turing (チューリング) • 1912-1954 • 第二次大戦中にドイ ツ軍が使用していた

    Enigma暗号を解読 • コンピュータの理論的 モデルとなるTuring machineを考案 • 機械の知能を判定す るTuring testを考 案 86 (出典) National Portrait Gallery「NPG x27078; Alan Turing」(1951 by Elliott & Fry) https://www.npg.org.uk/collections/search/portrait/mw165875 (CC-BY-NC-ND)
  52. 「中国語の部屋」(J.Searle, 1980) Turing testに対する反論: • 「機械」による生成物が第三者による完全な指示 の下に生成されるという場面を仮定する • つまり、機械は課題の意味を何も理解しておらず、 データを指示通りに右から左へ処理するだけ

    • このとき、たとえ判定者が機械と人間を区別でき なくても、機械は人間と同じとはいえないのでは? • 問題は、機械が課題として書かれた記号と実際 の世界にある対象物を対応付けられていないこと • 「そもそも外部からの助力を仮定する時点で反論 が破綻しているのでは?」との指摘はあるが… 87 (参考) J.Searle(1980)「Minds, brains, and programs」, Behavioral and Brain Sciences, Vol.3, No.3, p.417-424, doi:10.1017/S0140525X00005756
  53. 記号接地問題 (S.Harnad, 1990) 記号接地問題(symbol grounding problem): どのようにして記号を、実際の世界にある対象物と 対応付けて認識するか 88 (参考)

    S.Harnad(1990)「The Symbol Grounding Problem」, Physica D, Vol.42, Issues 1-3, p.335-346, doi:10.1016/0167-2789(90)90087-6 表現 内容 「ネコ」 対象物
  54. 参考文献 • 情報処理学会「コンピュータ博物館」 https://museum.ipsj.or.jp • JPNIC「インターネット歴史年表」 https://www.nic.ad.jp/timeline/ • 上山『Webで学ぶ情報処理概論』 http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/

    • 人工知能学会「What's AI」 https://www.ai-gakkai.or.jp/whatsai/ • 総務省(2025)『情報通信白書令和7年版』 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/w hitepaper/r07.html • 久木田「過去の講義ノート、スライド」 https://www.is.nagoya-u.ac.jp/dep- ss/phil/kukita/others.html 90