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情報学の基礎概念: 記号
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May 19, 2025
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情報学の基礎概念: 記号
saireya
May 19, 2025
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Transcript
情報学の基礎概念 (第1回) 表現・内容と恣意性
はじめに: この講座について 情報学における「中核的な概念」だと考えられる、 情報・コミュニケーション・メディアについて扱います • 各回、約50分の講義と事後アンケートを実施 (できるだけアンケートにご協力ください) • 各回自由参加ですが、 後の回の内容は前の回の内容が前提となります
• 授業ではないので、課題・単位認定はありません 2 (参考) 大西「情報学基礎 補助資料」 https://info-programming.github.io/informatics/ 日時 トピック 用語・キーワード 補助資料の章 4/23 13:00- 科学理論・記号 表現・内容・恣意性 第2章 5/7 13:00- 情報 生命情報・社会情報・機械情報 第3章 5/21 13:00- コミュニケーション 符号化・復号・変換 第2章・第4章 5/28 13:00- メディア 伝播メディア・成果メディア 第5章 6/4 13:00- デザイン 意図 第10章
はじめに: この講座について • この講座で扱うのは、 情報学の概念に関するモデルの一つです • 先行研究に基づく部分もありますが、 オリジナルな部分もあります • この講座はオリジナルな部分も含め、
妥当性を検証するために実施するものです • 内容に関して違和感・反例が浮かんだときは、 今後の参考にしますので、ぜひお伝えください • 資料のPDFはTeamsチームで共有します 3
本日の内容・目標 情報学の理論を学ぶ前提となる、 • 「科学理論の構成」 • 「表現・内容と恣意性」 …を学ぶ 4
本日の内容・目標 情報学の理論を学ぶ前提となる、 • 「科学理論の構成」 • 「表現・内容と恣意性」 …を学ぶ 5
科学的な理論の構築 科学的に理論を構築する前提として、 まず無定義語と公理を用意する • 無定義語: 定義なしに使う用語 • 公理: 証明なしに使う命題 無定義語と公理を組み合わせ、
さまざまな用語を定義したり、 さまざまな定理を証明したりする 6 定理 定義語 無定義語 公理 (参考) B.Pascal「幾何学的精神について」(1728, 1844) (『メナール版パスカル全集 第1巻』(1993, 白水社)所収, p.394-400, 417-422)
科学的な理論の例: Euclid幾何学 定義: 1. 点とは部分をもたな いものである。 2. 線とは幅のない長さ である。 3.
線の端は点である。 4. 直線とはその上にあ る点について一様に 横たわる線である。 … 公準: 1. 任意の点から任意の 点へ直線を引くこと。 2. 有限直線を連続して 一直線に延長するこ と。 … 公理: 1. 同じものに等しいもの はまた互いに等しい。 … 7 (参考) Euclid(2011)『ユークリッド原論 追補版』(中村ら訳) p.1-5
科学的な理論の例: Euclid幾何学 定義: 1. 点とは部分をもたな いものである。 2. 線とは幅のない長さ である。 3.
線の端は点である。 4. 直線とはその上にあ る点について一様に 横たわる線である。 … 赤:定義語, 青:無定義語 公準: 1. 任意の点から任意の 点へ直線を引くこと。 2. 有限直線を連続して 一直線に延長するこ と。 … 公理: 1. 同じものに等しいもの はまた互いに等しい。 … 8 (参考) Euclid(2011)『ユークリッド原論 追補版』(中村ら訳) p.1-5
科学的な理論の例: Euclid幾何学 定理: 1. 与えられた有限な直 線(線分)の上に等辺 三角形をつくること。 2. 与えられた点におい て与えられた線分に
等しい線分をつくるこ と。 … • 証明の途中で公準、 公理、証明済の定理 を使用 • 現代的な視点では不 十分な部分もあるが、 理論の構成方法は現 代とほぼ同じ • 公準5を除いた理論 体系は、曲面上の幾 何学である非Euclid 幾何学として知られる 9 (参考) Euclid(2011)『ユークリッド原論 追補版』(中村ら訳) p.1-5
「情報」の理論を考えるにあたって • 「情報」について考える・扱う・学ぶなら、 「情報」という概念に何らかの定義を与えたい ⇒ 「情報」を無定義語にすることはできない • 「情報」を定義するときには、別の語が必要 • 「情報」の定義に用いる語をさらに定義する
ことはできるが、どこかで無定義語が出現する • ここでは、「表現」と「内容」を無定義語、 「恣意性」を公理とする 10
本日の内容・目標 情報学の理論を学ぶ前提となる、 • 「科学理論の構成」 • 「表現・内容と恣意性」 …を学ぶ 11
表現と内容: 直感的な説明 「表現」と「内容」は無定義語として扱う • 直感的な説明としては、次のようなイメージ • 表現(expression): 多くの生命が直接に知覚(perceive)できるもの • 内容(content):
多くの生命が直接に知覚(perceive)できないもの • 補足 • 「生命」は「人間以外も含む一般の生物」のこと • 「直接に」は「測定機器などを通さずに」ということ • 「知覚できる」は「五感で感知できる」のこと • 「五感」は「視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚」のこと (生物種や個体により使用できる五感には差があるが、 深入りしない。主に視覚・聴覚・触覚を想定) 12
表現と内容: 具体例 表現の例: • 文字 (「数字」など) • 図・絵・音 • 模様・凹凸・パターン
内容の例: • 概念 (「数」など) • イメージ • 印象・感情 13
記号 記号(sign): 表現と内容の組(対応関係) • 「[表現]は[内容]を意味(mean)する」という • 例: (ネコ, )という記号では、 「ネコ」という文字は「
」という意味 14 表現 内容 「ネコ」 「イヌ」 (参考) Hjelmslev『言語理論序説』ゆまに書房(1998), p.32-37 (林訳)
(参考) Augustinusによる記号と意図の著述 Augustinus(アウグスティヌス, 354-430): 古代ローマのキリスト教神学者・哲学者 • 「しるしとはそれが諸感覚に持ち込む像の外に、 なにかそれとことなるものを、それ自身によって思 惟の中へともたらすものである」 •
「意志的なしるしとは、すべて生命をもったもの が、感覚したことにせよ、理解したことにせよ、心 の動きをできる限り表現するために、たがいに与 えあうもののことである。われわれにとって意志表 示する、つまりしるしを与えるとは、しるしを発信す る人が心に抱いていることをとり出して、他者の心 の中に移し入れることに他ならない」 15 (参考) Augustinus『キリスト教の教え』教文館(1988) 加藤訳, p.79-81
(参考) Ferdinand de Saussure (ソシュール) • 1857-1913 • 記号学の提唱者 •
記号をシニフィアンと シニフィエの組と定義 • シニフィアンとシニフィ エの関係性における 恣意性を提唱 • 『一般言語学講義』 16 (出典) Wikimedia「File:Ferdinand de Saussure by Jullien Restored.png」(2024/12時点) https://en.wikipedia.org/wiki/File:Ferdinand_de_Saussure_by_Jullien_Restored.png ソシュール の用語 用語の読み 伝統的 な訳語 現代的 な訳語 signifiant シニフィアン 能記 記号表現 signifié シニフィエ 所記 記号内容
(参考) L.Hjelmslev (イェルムスレウ) • 1899-1965 • Saussureの記号学 を発展させて精緻化 • シニフィアンに表現、
シニフィエに内容とい う用語を充てた • 「記号とは表現と内容 との間の連関によって 生じた実体である」 • 『言語理論序説』 17 (出典) The Deleuze Seminars「Louis Hjelmslev Archives」(2024/12時点) https://deleuze.cla.purdue.edu/people/louis-hjelmslev/
恣意性 恣意性: 表現と内容の対応関係には、必然性はない • 記号においては、ある表現とある内容が1:1に 対応付けられるわけではない • 辞書や単語帳に書かれるような、 「”word”の意味は”単語”」というような、 表現と内容が単純に対応する関係はない
(表現と内容の対応は、客観的には決まらない) • 表現と内容の対応関係は、客観的に決まるわけ ではなく、そのときの場面や話の文脈、心理状態 などにも影響される、主体の主観が反映される 18 (参考) Ferdinand de Saussure『一般言語学講義』研究社(2016) (町田訳) p.102-104
恣意性: 具体例 • ある表現をどんな内容だと解釈するかは、 解釈する主体である生命の主観による • 例: 京都の飲食店での「ぶぶ漬けでもどうどすか?」 は、京言葉を知っている人は「そろそろ退店してほし い」という内容だと解釈するが、京言葉を知らない人
は「お茶漬けを注文するかどうか」を考えてしまう • ある内容にどんな表現を使うかは、 表現する主体である生命の主観による • 例1: という内容を「ネコ」という表現にするのも 「にゃんこ」という表現にするのも、表現する人の自由 • 例2: 「 の鳴き方」という内容を伝えるために、 日本人は「コケコッコー」という表現を使うが、 欧米人は「cock-a-doodle-doo」という表現を使う 19
情報の定義: 「記号」と「情報」の違い 「記号」といえないものが「情報」とされることがある • 「内容」がない「表現」だけのもの: 数値・ビット列などの「データ(data)」 • 「表現」がない「内容」だけのもの: 生命の内部にある信号・記憶など •
これらは、記号学では「記号」とみなされない • 「表現のない内容はなく、内容のない表現はない」 (Hjelmslev『言語理論序説』p.36) ⇒ これらも含められるように、「記号」の概念を拡張 20 (参考) 大西「コミュニケーション/メディア概念と関連付けた情報概念の形式化」(2017) https://www.scribd.com/doc/385336249
本日の内容・目標 情報学の理論を学ぶ前提となる、 • 「科学理論の構成」 • 「表現・内容と恣意性」 …を学ぶ 21
次回の内容・目標 情報学の中核的な概念となる、 • 「情報の定義」 • 「情報の分類」 …を学ぶ 22
本日の課題 (任意) 1. 身近にある語の定義・由来を調べてみましょう 2. 身近な記号の例を挙げ、表現と内容にあたる 部分の違いがどこにあるか、考えてみましょう 3. 恣意性を説明できる事例(表現と内容の対応に 自由度がある事例)を挙げてみましょう
23 ※この講座では、課題の提出やフィードバックなどを行う予定はありません。
アンケート アンケートへの回答は任意ですが、研究データ収集 のため、できるだけご協力いただけますとありがたい です 24
参考文献 • 大西「情報学基礎 補助資料」第2章 https://info-programming.github.io/ informatics/ • D.Chandler「初心者のための記号論」(田沼訳) http://www.visual-memory.co.uk/daniel/ Documents/S4B/japanese/
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