Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
カーネルコードの歩き方
Search
Sponsored
·
Ship Features Fearlessly
Turn features on and off without deploys. Used by thousands of Ruby developers.
→
Satoru Takeuchi
PRO
May 24, 2023
Technology
4
4.2k
カーネルコードの歩き方
以下イベントのセッションスライドです。
https://techfeed.io/events/techfeed-experts-night-19
Satoru Takeuchi
PRO
May 24, 2023
Tweet
Share
More Decks by Satoru Takeuchi
See All by Satoru Takeuchi
書籍執筆での生成AIの活用
sat
PRO
1
290
ChatGPTに従って体調管理2026
sat
PRO
0
150
eBPF
sat
PRO
1
110
waruiBPF
sat
PRO
0
110
eBPFとwaruiBPF
sat
PRO
5
3.8k
Pythonのコードの気になる行でスタックトレースを出す
sat
PRO
1
100
ソースコードを読むときの思考プロセスの例 ~markdownのレンダリング方法を知りたかった2 markdownパッケージ~
sat
PRO
0
200
様々なファイルシステム
sat
PRO
0
340
ソースを読む時の思考プロセスの例-MkDocs
sat
PRO
1
430
Other Decks in Technology
See All in Technology
Cosmos World Foundation Model Platform for Physical AI
takmin
0
930
AI駆動開発を事業のコアに置く
tasukuonizawa
1
250
Codex 5.3 と Opus 4.6 にコーポレートサイトを作らせてみた / Codex 5.3 vs Opus 4.6
ama_ch
0
170
Introduction to Sansan, inc / Sansan Global Development Center, Inc.
sansan33
PRO
0
3k
AWS Network Firewall Proxyを触ってみた
nagisa53
1
240
What happened to RubyGems and what can we learn?
mikemcquaid
0
300
フルカイテン株式会社 エンジニア向け採用資料
fullkaiten
0
10k
Red Hat OpenStack Services on OpenShift
tamemiya
0
110
ClickHouseはどのように大規模データを活用したAIエージェントを全社展開しているのか
mikimatsumoto
0
260
外部キー制約の知っておいて欲しいこと - RDBMSを正しく使うために必要なこと / FOREIGN KEY Night
soudai
PRO
12
5.5k
Oracle Base Database Service 技術詳細
oracle4engineer
PRO
15
93k
小さく始めるBCP ― 多プロダクト環境で始める最初の一歩
kekke_n
1
440
Featured
See All Featured
Groundhog Day: Seeking Process in Gaming for Health
codingconduct
0
94
Building Adaptive Systems
keathley
44
2.9k
Winning Ecommerce Organic Search in an AI Era - #searchnstuff2025
aleyda
1
1.9k
What's in a price? How to price your products and services
michaelherold
247
13k
ピンチをチャンスに:未来をつくるプロダクトロードマップ #pmconf2020
aki_iinuma
128
55k
The Spectacular Lies of Maps
axbom
PRO
1
520
The Illustrated Children's Guide to Kubernetes
chrisshort
51
51k
How to Align SEO within the Product Triangle To Get Buy-In & Support - #RIMC
aleyda
1
1.4k
Digital Ethics as a Driver of Design Innovation
axbom
PRO
1
180
技術選定の審美眼(2025年版) / Understanding the Spiral of Technologies 2025 edition
twada
PRO
117
110k
A better future with KSS
kneath
240
18k
From Legacy to Launchpad: Building Startup-Ready Communities
dugsong
0
140
Transcript
カーネルコードの歩き方 May. 24, 2023 Satoru Takeuchi twitter: satoru_takeuchi 1
はじめに • 著者 ◦ 社会人一年生から15年くらいカーネル開発 /サポートをやってきた ◦ 今も必要に応じてカーネルソースを見ている • 本LTで学べること
◦ Linuxのカーネルソースの読み方についての勘所 ◦ 汎用的な、あらゆるソースコードの読み方についても同様の知識 • 前提知識 ◦ なんらかのプログラミング経験がある ◦ Gitが使える 2
Linuxカーネルソースの規模感 • V6.3時点で > 3,000万行 • バージョン間の変化: v6.2 -> v6.3(リリース間隔は約2か月)
◦ コミット数: > 15,000 ◦ 増加した行数: > 47,000 3
Linuxカーネルソースの規模感 • V6.3時点で > 3,000万行 • バージョン間の変化: v6.2 -> v6.3(リリース間隔は約2か月)
◦ コミット数: > 15,000 ◦ 増加した行数: > 47,000 • 目的を定めずに「とりあえず読んでみるか」はかな り厳しい! 4
読むコツ • 明確、かつ、小さめの目標を立てる ◦ 「カーネルを完全に理解したい」 => つらい(3000万行) ◦ 「この機能でこのオプションを使ったときの挙動を知りたい」 =>
それならなんとか(1000行) • gitなどのツールを駆使して読まなければならないコード量を減らす • 読むだけでなく実際に動かしてみる • 本やWeb記事を読んで前提知識を適宜身に着ける(スライド末尾の付録参照) ◦ OSカーネルの専門知識 ◦ Linuxカーネルの独自用語 5
実例 • きっかけ ◦ 出版した書籍で言及していた /proc/sys/kernel/sched_latency_nsというファイルが存在しないと読 者に突っ込まれた ▪ https://zenn.dev/satoru_takeuchi/articles/cec2160c6b1b13 ◦
実機検証はしたはずだが …なぜだ!? • 問題のスコープ ◦ 読者のカーネル(v5.15)でファイルがなくなっているのかを確認 ◦ 本当になくなっていたのであれば、いつなくなったかの確認 6
まずやること • v5.15のソースをチェックアウトして読む 7
まずやること • V5.15のソースをチェックアウトして読む…のはめんどくさいので、まずは 実機で確認 • 読まなくても動かせばわかることがいっぱいある! 8
実機検証 • やること ◦ 特定のカーネルでブートしたシステムにログインして /proc/sys/kernel/sched_latency_nsファイルが あるかどうか確認 • 結果 ◦
自分の環境のカーネルバージョン (v5.4) ▪ ファイルはあった ◦ 読者のカーネルバージョン (v5.15) ▪ ファイルはなかった 9
どこのバージョンで変化があったか確認 • V5.4, v5.5, v5.6…と、カーネルバージョンを一個づつ変えて動作確認 10
どこのバージョンで変化があったか確認 • V5.4, v5.5, v5.6…と、カーネルバージョンを一個づつ変えて動作確認…は、め んどくさそうなので以下のようなことをした 1. V5.4のソース上でsched_latency_nsをgrepで検索して、このファイ ルを作っている処理を見つける 2.
V5.15のソース上で上記処理が存在していないことを確認 3. 上記処理がいつ無くなったかを、ソースコードのバイナリサーチ(後述) によって確認 11
ソースコードのバイナリサーチ 1. v5.4とv5.15の中間のv5.9をチェックアウトして、処理があることを確認 2. V5.9とv5.15の中間のv5.12をチェックアウトして、処理があることを確認 3. v5.12とv5.15の中間の…というのを繰り返す 4. 最終的にv5.13において処理が無くなったことを特定 12
大事なこと • 実はソースをあんまり読んでいない • 一見ソースを読まなければならないようなときも、読む前にかなりの絞り込みができ る • 「どこで読み始めるか」という最適解は無い ◦ 考えられる選択肢のうち「なんとなく一番たくさん楽できそう」なものから順番に試してみるのがヨシ
◦ 「なんとなく一番楽できそう」なものを推測するのは経験を積むほどうまくなる ◦ 最初から最善を求めると身動きできなくなるので、とにかく回数をこなすとよい 13
おわりに • Linuxカーネルはものすごく大規模 • まともに挑むと道に迷うだけ • 目的を明確化した上で読むべき場所を減らしていく • 読むための基礎知識をWebや書籍で適宜得る必要がある •
経験がものをいう • Happy Hacking! 14
参考書籍 • 詳解Linuxカーネル ◦ https://amzn.to/3IvCneV ◦ 昔の本だが概念の理解には役立つ。実装の説明は流し読みかスルーでいい • Linux Kernel
Development 3rd edition ◦ https://amzn.to/439tW0y ◦ これまた古い本だが概念の理解に役立つ。詳解 Linuxカーネルよりだいぶ読みやすい • Linuxのしくみ 増補改訂版 ◦ https://amzn.to/45keroj ◦ 概念の理解に役立つ。この中ではいちばんやさしい。ソースは出てこない • Linux Kernel Programming ◦ https://amzn.to/41USNnV ◦ いまのところ一番新しい本。 11月に第二版が出るらしい 15
参考サイト • Linux Kernel Newbies ◦ https://kernelnewbies.org/ ◦ カーネル関連用語解説や、どのバージョンでどんな機能が入ったかなどが書いている •
LWN.net ◦ https://lwn.net/ ◦ Linux Kernelのホットなトピックを扱うニュースサイト 16