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チームと一緒に育つために考えたこと - 属人性・期日・関係性のバランスと向き合う
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shibe23
August 11, 2025
Technology
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チームと一緒に育つために考えたこと - 属人性・期日・関係性のバランスと向き合う
DevLove関西 - 現場から始める──変化・負債・拡大に向き合うチームの実践知
https://devkan.connpass.com/event/364829/
shibe23
August 11, 2025
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Transcript
チームと一緒に育つために考えたこと 属人性・期日・関係性のバランスと向き合う さくらインターネット株式会社 澁谷 哲也
自己紹介 名前: 澁谷 哲也 役割: さくらのクラウド マネージャー 複数あるバックエンドチームのひとつでマネージャーを務めています X: shibe_23
経歴 ゲーム会社QA Kubell ( 旧:Chatwork) 2024 年10 月からさくらインターネット入社
さくらのクラウドについて
さくらのクラウドについて 2011 年11 月15 日リリース システムとしては15 年近く動いているレジェンドコード 2025 年度末のガバメントクラウド本認定に向けて開発中 現在は条件付き認定
さくらのクラウドについて ガバメントクラウド本認定達成のため、 採用を強化し組織規模を拡大 2024 年頃からさくらのクラウドに関わる人数が急増 期日のあるプロジェクトを推進しながら、 組織としての基盤も強化する必要がある
チームの状況について
チームに所属したきっかけ 入社2 ヶ月ほどであるチームのサポートに入って欲しいという相談 チーム外から見てかなり苦戦しているように見える アラートも挙がっており、 6 月末のマイルストーンが危ぶまれる状況 メンバーとの1 on 1
やプロジェクト状況のヒアリングを経て、 2025 年1 月から参画 することに
チームの状況 - 「属人性」 の観点から 全部で7 名 プロジェクトを進めているのは2 名 残りの5 名は入社または異動によってチームへ参画したばかり
メンバーの大半がオンボーディング中の状態
チームの状況 - 「属人性」 の観点から 歴史が長いシステムで全体像の把握が難しく、 既存メンバーも当時システムを開 発していた方に都度質問しながら進めている プロジェクトを進める上での属人性が高く、 既存メンバーに負荷がかかっている
チームの状況 - 「期日」 の観点から 全社的なプロジェクトであり、 期日に対するコミットメントが非常に強い メンバーの数は揃っているが、 キャッチアップに時間がかかる 安易に人を増やせば解決するわけではない ガバメントクラウド本認定の達成はあくまでスタートライン
プロジェクトをただ完遂するだけではなく、 中長期な成長に目を向けられるチー ムになることが求められる
チームの状況 - 「関係性」 の観点から 入社したての人間がいきなりチームに介入するのは難しい 組織として 「チームでの協働」 への転換期 急激に人が増えたことで新しいやり方に不安や抵抗を感じるメンバーも当然いる はず
マネージャーがチームへの解像度が低いまま、 無理にやり方を変えてもうまくいか ない チームへ働きかける必要性と、 ハレーションへの懸念の双方のバランスを考える必 要がある
チームの状況 - まとめ 属人性が高く、 チームとしてすぐにはスケールが難しい状況 マネージャーとして、 まだ信頼関係の構築ができておらず関係性に配慮が必要 期日までにプロジェクトを完遂し、 かつチームとしても成長しなくてはならない
チーム参加後の取り組み
まずは観察 新規メンバーはオンボーディングタスクを実施 週1 回個々人の進捗を確認 朝会をしておらず、 メンバー間で相談がしづらそうにも見える 差込タスクが多く、 期日に対しての見通しを立てづらい
定点観測と場づくり コミュニケーション頻度を増やし、 ファシリテートしながら話しやすい場をつくる 見積もり -> 状況確認 -> 振り返り の流れを1 週間で繰り返し、
起きた問題を把握 しやすくした 合宿も実施し、 メンバー同士で相談しやすい場ができてきた Before After 朝会なし 朝会で毎日のコンディション確認 振り返りなし 振り返りの実施 週次で進捗確認 週次で進捗確認・タスクの見積もり
技術的な見通しを立てることの難しさ 見積もりをする際に、 タスクの分解で詰まり始める タスクが大きいままで細分化できない 入社後まもなく前提知識が足りない & 歴史が長く、 レガシーなコードを読み解き ながら進める必要がある 振り返りでも
「進捗を出せないのは心苦しいが、 進めば進むほどやることが増えて 見通しが立てづらい」 という声が挙がる
プロジェクトを止めるべき? 実質プロジェクトを進めることができるのは2 人 チームの中でやることが分解できない状況を改善する必要があった プロジェクト以外の差し込み対応も優先順位が高くなりがち 現状でプロジェクトに手を入れても改善される手応えを持つことができなかった 結果として、 明確な解決策が見出せないまま 「既存メンバーがプロジェクトを進め、 差込タスクを新規メンバーが担うことでキャッ
チアップをする」 という形に
うまくいかなかった 同時にタスクを進行すると知識伝搬が必要になるため、 コミュニケーション負荷が 上がる 既存のプロジェクトをこなしながら、 次のプロジェクトを新規メンバーで担ってもら うために準備が必要 新規メンバーのキャッチアップするスピードもあまり伸びなかった 既存メンバーの負荷も高いまま
エキスパートの支援と参画 経験豊富なメンバーにサポートをお願いすることに 既存メンバーの知識 + エキスパートの経験で、 全体の見通しを立てることができ た ガバメントクラウド対応については実装方針を精査すれば見通しをたてること ができそう 同時並行しているタスクは優先順位を下げることができそう
見通しが立ったことで大掛かりな体制変更ができるように
大掛かりな体制変更 同時に進めるプロジェクトを3 人 x 2 チームの2 ラインに 横断的な支援チームの結成 既存のシステムに詳しいメンバーを集約 横断チームでプロダクトバックログを作成し、
各チームでスプリントバックログ を作成
大掛かりな体制変更 エキスパートは社内でのモブプロ経験があり、 チームビルディングにも造詣が深い ため、 方針決定から導入までが非常にスムーズだった スクラムイベントの精緻化、 モブプロ、 バーンダウンチャートの導入
状況が劇的に改善し始めた 個人でタスクを受け持っていた時よりも明らかに進捗が出始めた 既存メンバーで実装方針の大枠を決めたことで、 新規メンバー主体で開発ができ るように モブプロによってキャッチアップの質も大きく改善された 開発中に挙がった改善点は支援チームで実装 例: 自動シナリオテストの導入
マイルストーンを達成 チームの努力もあり、 当初懸念されていた6 月末のマイルストーンは無事達成 Pull Request が大きいために両チームでコンフリクトする、 など今後に繋がる学び を得ることもできた 現在は次のマイルストーンに向けてプロジェクトを推進中
マネージャーの視点から うまくいったことと反省点
うまくいったこと 状況の見通しを立てることが難しい状況の中で、 一つずつ絡まり合った糸が解けて 課題の軸が移っていった チームとしての場づくり 見積もり ~ 実装までの技術的な支援 今回はここが転換点だった 中長期的な方向性づくり
短いスパンで振り返り、 課題を深掘りしていったことで改善を進めることができた
マネージャーとしての反省 エキスパートからの質問 「知識が足りていない状況なのに、 どうしてみんなバラバラのタスクをやってい るんですか?」 優先順位づけの判断が自分自身でもできていなかった もう少し早くチーム外へ助けを求めることができたかも知れない プロジェクトマネジメントのスキル不足
マネージャーとしての反省 マネジメントは常に時間軸を意識しなくてはならない この期日までに、 これだけの課題を解決できるチームになる必要がある メンバーの成長を促しながら、 どの程度介入する必要があるかの見極めはとても難 しい 期日までにチームにとって必要なケイパビリティをもたらすために、 あらゆる手段を 用意しておくべき
チームとしての成長 半年足らずでメンバーは仕事のやり方を大きく変えることになった 一人一人と会話することで、 変化に対してポジティブに捉えてくれたことも実感で きた モブプロ導入後も 「モブプロ楽しい」 と言ってくれたり チームとしての成長も日々実感できている 最初はタスクにフォーカスしていたふりかえりも、
チームの仕事について振り返 る機会が増えた まだまだ越えなければならないハードルはあるが、 チームで前に進んでいける手応え を持つことができた
まとめ 外側から状況が見えないところからスタートしたチームは、 一つ一つ壁を乗り越え て成長することができている 期日・属人性・関係性のバランスに悩みながらも、 マネージャーができることは、 コ ミュニケーションの基盤を整理し、 必要な能力を獲得するための支援をし、 メンバ
ーが活躍できる状態に改善し続けること
まとめ 状況が見通せない中で改善のサイクルを回すためには、 アジャイルの価値観やプラ クティスは効果的 それだけで実現が難しい部分は、 チーム外に働きかけることも含め、 マネージャー としてできる支援を駆使してチームに成果をもたらしていくことが重要 一番大事なのは、 自分自身も学び続け、
チームとして成長していくこと
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