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Google Cloudサービスの生成AI関連サービス

Google Cloudサービスの生成AI関連サービス

2025年8月7日(木)、日本生成AIユーザ会 で「Google Cloudサービスの生成AI関連サービス」について発表しました。
https://genai-users.connpass.com/event/361798/

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Shu Kobuchi

August 07, 2025
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Transcript

  1. 2 自己紹介 • 小渕 周(Shu Kobuchi)こぶシュー • https://x.com/shu_kob @shu_kob •

    システムエンジニア → ブロックチェーン業界 • 2023年12月スリーシェイク入社 ◦ Sreake 事業部 ◦ アプリケーション開発支援チーム エンジニア ◦ 生成 AI アプリケーション開発等 ◦ Gemini、Google Cloudを使用 ◦ 2025年1月 マネージャー
  2. 3 アジェンダ • Google Cloud 生成AIサービスの全体像 ◦ 1: 生成AIの基礎とMLライフサイクル ◦

    2: Google Cloud 生成AIエコシステム ◦ 3: 主要サービスとツールの選択 ◦ 4: 応用技術と責任あるAI • Recap: Google Cloud Next Tokyo 2025 Day 2 ◦ 5: AI時代を支える次世代インフラ ◦ 6: 生成AIの進化と開発者体験の革新 ◦ 7: AI Agentの台頭と未来のビジョン
  3. 5 1.1. AIのランドスケープ:知能の階層 • 人工知能 (AI) ◦ 人間の知能を必要とするタスクを実行できる機械を構築する広範 な分野 •

    機械学習 (ML) ◦ AIのサブフィールド。データから学習し特定のタスクを実行 ◦ 教師あり学習: ラベル付きデータで学習し、予測(例:顧客の離 反予測) ◦ 教師なし学習: ラベルなしデータからパターンを発見(例:顧客 セグメンテーション) ◦ 強化学習: 報酬と罰を通じて試行錯誤で学習(例:ゲームAI)
  4. 6 1.1. AIのランドスケープ:知能の階層 • 生成AI (Generative AI) ◦ MLの応用分野。新しいコンテンツ(テキスト、画像、コード) の「作成」に特化

    ◦ 予測ML(売上予測)と生成AI(スローガン作成)は共にMLの傘 下 • 基盤モデル (Foundation Model) / 大規模言語モデル (LLM) ◦ 膨大なデータで事前学習された、多様なタスクに適応可能な大規 模モデル
  5. 7 1.2. MLライフサイクル: アイデアから価値創出までの道のり • AIソリューション開発の4ステップ • 1. データ収集と準備 (Data

    Ingestion and Preparation) ◦ 生データを収集、クレンジング、変換するプロセス ◦ 多くの場合、最も時間とリソースを要する重要な初期段階 • 2. モデルトレーニング (Model Training) ◦ 準備されたデータを用いてMLモデルを構築するプロセス • 3. モデルデプロイ (Model Deployment) ◦ トレーニング済みモデルをAPIなどを通じて利用可能にするプロ セス • 4. モデル管理 (Model Management) ◦ デプロイ後のモデルのパフォーマンスを継続的に監視、維持、再 トレーニングするプロセス
  6. 8 1.3. データ品質:生成AIの成否を分ける生命線 • AIモデルの性能はデータ品質に根本的に依存 • データ品質の4つの主要特性 ◦ 関連性 (Relevance)

    ▪ タスクの目的に合致したデータであること ▪ 例:新製品のチャットボットに、その製品情報を含まない過去のログを学習 させても、的外れな回答しか生成できない ◦ 完全性 (Completeness) ▪ 必要なデータ項目が欠落していないこと ▪ 例:顧客プロファイルの「国」情報が多数欠落している状態 ◦ 一貫性 (Consistency) ▪ データが矛盾なく、統一された形式であること ◦ 可用性 (Availability) ▪ データへのアクセスが容易であること ▪ 例:データが複数のレガシーシステムに分散し、アクセスに多大な統合作業 と予算が必要な場合、可用性がプロジェクトの制約となる
  7. 10 2.1. 生成AIの階層構造:5層スタック • 技術要素を構造的に理解するためのフレームワーク • インフラストラクチャ (Infrastructure) ◦ TPU、GPU、サーバーなどのコアとなる計算リソース

    ◦ GoogleのカスタムTPUやAI Hypercomputerが差別化要因 • モデル (Models) ◦ Gemini、Imagen、Gemmaなどのアルゴリズムそのもの • プラットフォーム (Platform) ◦ 開発とデプロイを簡素化するツール群(Vertex AIなど) • エージェント (Agent) ◦ 目標達成のために自律的にツールを使い、行動するソフトウェア • アプリケーション (Application) ◦ ユーザーが直接触れるUI(モバイルアプリ、チャット画面など)
  8. 11 2.2. Google Cloudの戦略的優位性 • AI-Firstカンパニー ◦ GoogleのAI研究への長年の投資が、クラウドサービスに最先端のイノベ ーションとして反映 •

    エンタープライズ対応プラットフォーム ◦ 金融や医療などの規制が厳しい業界の要件を満たす、セキュリティ、プ ライバシー、スケーラビリティ、信頼性 ◦ 顧客データはGoogleの汎用モデルの学習には使用されないという強力な データ分離ポリシー • 統合されたエコシステム ◦ 生成AI機能がGoogle WorkspaceやGCP全体に組み込まれ、既存のデー タやワークフローとシームレスに連携 • オープンなアプローチ ◦ オープンソースのモデルやフレームワークをサポートし、ベンダーロッ クインを回避する柔軟性を提供
  9. 13 3.1. Vertex AI:統合MLOpsプラットフォーム • Model Garden ◦ Google製、サードパーティ製、OSSの事前学習済みモデルを発見・利用 するための出発点

    • AutoML ◦ ML専門知識が限られたチームでも、自社データを用いて高品質な「カ スタム」モデルを自動でトレーニング • Vertex AI Search ◦ 企業の製品カタログや社内文書など、独自データに対するエンタープラ イズ検索エンジンを構築 ◦ 事前構築済みのRAG機能を持ち、根拠のあるチャットボットを迅速に開 発可能 • Vertex AI Agent Builder ◦ 外部APIと連携するような、ツールを使用する高度な会話型エージェン トを構築するための包括的プラットフォーム
  10. 14 3.2. ユースケース別ツールの選択フレームワーク • プロトタイピング vs 本番開発 ◦ Google AI

    Studio: 迅速かつ低コストな実験・試作に最適 ◦ Vertex AI Studio: MLOpsと統合された、堅牢でスケーラブルな本番ア プリケーション開発に利用 • ノーコード vs プロコード ◦ AppSheet: 非技術者が業務アプリ(例:プロジェクト管理ツール)を構 築 ◦ Cloud Run / Cloud Functions: 開発者がコンテナ化されたツールや関数 をデプロイ • モデルの選択 ◦ Gemini: 最先端のマルチモーダルな推論が必要な場合 ◦ Gemma: 軽量で、ローカルPCでも実行可能なオープンモデルが必要な 場合 ◦ Imagen: テキストからの高精細な「画像」生成 ◦ Veo: テキストからの高品質な「動画」生成
  11. 15 3.3. Gemini Everywhere:統合されたAIアシスタント • Gemini for Google Workspace ◦

    Gmail、Meet、Docsなどの既存業務フローの中に直接AI機能を提 供 ◦ 例:会議の自動要約、メール文面のドラフト作成 • Gemini for Google Cloud ◦ クラウド専門家向けのAIアシスタント ◦ Gemini Code Assist: IDE内でコード補完や解説を行うAIペアプロ グラマー ◦ Gemini in BigQuery: SQL生成やデータ探索を自然言語で支援 ◦ Gemini in Security: セキュリティ脅威の分析や対応を支援
  12. 16 表: Google Cloud AIサービス選択マトリクス ビジネスニーズ ユーザーペルソナ 推奨サービス 主な選択基準 最新モデルで迅速にアイデアを試し

    たい 開発者、PM Google AI Studio 開発環境のセットアップ不要、低コストでの迅速なプロ トタイピング MLOpsパイプラインを含む本番ア プリを構築したい MLエンジニア Vertex AI Studio スケーラビリティとGCPサービスとの完全な統合 社内文書に基づいたFAQチャットボ ットを構築したい ビジネスユーザー Vertex AI Search 事前構築済みのRAG機能による最短での価値実現 航空券予約など外部システム連携が 必要なエージェントを構築したい 開発者 Vertex AI Agent Builder 外部APIを「ツール」として利用する高度な制御性 独自の表形式データでカスタムの予 測モデルを構築したい データアナリスト AutoML MLの専門知識が少なくてもカスタムモデルを構築できる 自動化機能 コードを書かずに業務アプリ(例: タスク管理)を作成したい 部門マネージャー AppSheet ノーコードでの迅速なアプリケーション開発と Workspace連携
  13. 18 4.1. モデルの性能を最大限に引き出す技術 • プロンプトエンジニアリング ◦ モデルへの指示を工夫し、出力品質を向上させる実践技術 ◦ Chain-of-Thought (CoT):

    複雑な問題に対し、「ステップバイス テップで考えて」と促し、推論の精度を向上 ◦ ReAct (Reason and Act): モデルが「思考」し、APIなどの「ツ ール」を使って情報を収集し、「行動」するサイクル ◦ ロールプロンプティング: 「あなたは専門家です」と役割を与え、 出力の質とスタイルを制御 • グラウンディング (RAG) ◦ ハルシネーション(もっともらしい嘘)を防ぐ最重要技術 ◦ 回答を社内文書などの信頼できる情報源に「根拠付け」させる
  14. 19 4.1. モデルの性能を最大限に引き出す技術 • ファインチューニング ◦ 事前学習済みモデルを、法律文などの専門領域のデータで追加学 習させ、特化させる技術 • Human-in-the-Loop

    (HITL) ◦ AIのワークフローに人間の専門家によるレビュー・承認を組み込 むプロセス ◦ 金融アドバイスや医療診断など、リスクの高い領域では不可欠な 安全対策
  15. 21 4.2. リーダーのためのビジネス戦略と責任あるAI • 責任あるAIの3つの柱 ◦ 公平性 (Fairness): 訓練データに潜むバイアスが、AIによって増 幅・再生産されることを防ぐ

    ◦ 説明責任と説明可能性 (Accountability & Explainability): AIの判 断根拠を人間が理解でき、その結果に責任を持つ体制の構築。 Vertex Explainable AIなどのツール活用 ◦ セキュリティ (Security): データ汚染、プロンプトインジェクシ ョン、モデル窃取などの脅威からAIシステム全体を保護。 GoogleのSecure AI Framework (SAIF)がガバナンスモデルを提 供
  16. 23 5.1. 爆発的需要に応えるハードウェアの進化 • AIコンピューティング需要の急増 ◦ 過去8年間で1億倍に達した需要へのGoogleの包括的対応 • GoogleのAI Hypercomputer構想

    ◦ TPU Ironwood: Podあたり9,000チップ、エネルギー効率29倍改善の次 世代TPU ◦ 最新GPUポートフォリオ: NVIDIA B200/GB200、および新GPU「Vera Rubin」の市場への早期投入 ◦ 高性能ストレージ: Hyperdisk Exapools、Rapid Storageによるデータ供 給の高速化 • AIワークロードに最適化されたプラットフォーム ◦ GKEの機能強化: GKE AutopilotのStandardへの機能拡張、GKE Inference Gatewayによる推論基盤の強化 ◦ Cloud Run with GPU: サーバーレス環境でのリアルタイムLLM推論を1 クリックでデプロイ可能に
  17. 25 6.1. データとAIでリアルタイムに更新される世界 • データ基盤の進化がAI活用を加速 ◦ BigQueryを中核としたデータ基盤の重要性 ◦ AI対応マルチモーダル検索: テキスト、画像など複数のデータ形

    式を横断した高度な検索の実現 ◦ Spannerカラム型エンジン: 分析クエリの高速化 ◦ BigLake Iceberg: オープンなデータレイクハウス基盤のサポート
  18. 26 6.2. 開発者を支援するAI Agentの進化 • Gemini CLI: 自然言語による開発ワークフローの自動化 ◦ 「このプロジェクトをローカルで起動して」といった自然言語の

    指示で、環境設定からGitHub連携までを実行するデモ ◦ 大規模なContext Windowを活用し、READMEの生成やコード行 数の調査も可能 • AIペアプログラマーとしてのGemini ◦ VSCodeなどのIDEに統合され、ソースコードの読み取り、修正 案の提示、最適化提案(例:Cloud Loggingの内容に基づくCloud Runの最適化)を実行
  19. 27 6.3. クリエイターを支援するAI Agentの進化 • 放送業界のユースケース (日テレ "ZIP!") ◦ 400人規模の制作チームのネタ探しや企画業務を支援

    ◦ 単なる「時短」ではなく、創造性を引き出す「情熱」を支援する パートナーとしてのAI Agent • 広告業界のユースケース (博報堂DY) ◦ ImagenとVeoを活用したCM制作システム ◦ キャラクターの一貫性担保や著作権チェックなど、制作現場の実 用的な課題を解決 ◦ AIによる制作で、従来数百万円かかっていた広告制作コストと工 数を大幅に削減
  20. Recap: Google Cloud Next Tokyo 2025 Day 2 7: AI

    Agentの台頭と未来のビジョン 28
  21. 29 7.1. AI Agentの進化とエコシステム • AI Agentの定義: 単なるツールではなく、目標達成のために自律的に 行動するシステム •

    自律性の核となる「推論ループ」: 観察、思考、行動の反復サイクル により、複雑なタスクを遂行 • エージェント開発を支えるエコシステム: ◦ Vertex AI Agent Builder: 高度なエージェントを構築するための 統合プラットフォーム ◦ Agent Development Kit (ADK): 再利用可能なエージェントコン ポーネントを開発するためのフレームワーク ◦ Agent Engine: 開発したエージェントを本番環境で大規模に展 開・管理するためのフルマネージドサービス • 未来のビジョン: 個々のエージェントが連携し合う「マイクロサービ ス的エコシステム」の実現。専門エージェント同士が協調し、より 高度な問題解決へ
  22. 30 7.2. AIがAIを守る:自律型セキュリティの実現 • 増大するセキュリティ脅威 ◦ 脆弱性の悪用、ゼロデイ攻撃、巧妙化するフィッシング詐欺への 対応 • Googleのビジョン:AI

    for Defense ◦ AIエージェントが自律的にセキュリティインシデントを調査・分 析・報告 • 自律型セキュリティエージェントのデモ ◦ 不正なトンネル作成インシデントを検知 ◦ エージェントが攻撃者の端末を特定し、自然言語で調査結果を提 示 ◦ アラート対応を自動化し、人間のセキュリティアナリストを高度 な業務に集中させる未来
  23. 31 まとめ • Google Cloud 生成AIサービスの全体像 ◦ 生成AIの成功は、技術選定だけでなく、データ品質、MLライフサイク ル全体の管理、そして責任あるAIの原則に基づいた戦略的アプローチに かかっている。

    ◦ Google Cloudは、インフラからアプリケーションまで、統合されたオー プンなエコシステムを提供し、多様なユースケースに対応する選択肢を 用意。 • Recap: Google Cloud Next Tokyo 2025 ◦ Google Cloudは、AIの爆発的な需要を支える次世代インフラへの投資を 加速。 ◦ データ基盤の進化がAI活用を支え、開発者やクリエイターの体験を革新 している。 ◦ AIの活用は、コンテンツ生成ツールから、複雑なワークフローを自律的 に実行する「AI Agent」へと進化。セキュリティ分野においても、AIに よる自律防御が新たな標準となる。
  24. 32 今後のGoogle Cloud 生成AI系カンファレンス • Google Cloud AI Agent Summit

    '25 Fall ◦ 2025 年 10 月 30 日(木)、31 日(金) ◦ ベルサール渋谷ガーデン / オンライン配信 ◦ 初日はビジネス リーダー向け ◦ 二日目はデベロッパー向けにお届け ◦ https://cloud.google.com/blog/ja/products/ai-machine-learning/ai- agent-summit-25-fall • Google Cloud Next Tokyo '26 ◦ 2026年 7 月 30 日(木)、31 日(金) ◦ 東京ビッグサイト 南展示棟