教師・教育支援者のための情報セキュリティ第七回

教師・教育支援者のための情報セキュリティ第七回：匿名性といじめ園田道夫

匿名性 • 名前を知らせない、公表しないままで活動する • インターネットでは匿名になりやすい • 追いかける手間との戦い、せめぎ合い
2

匿名のライトサイド • 社会的立場や背景、倫理観を離れて発言、活動できる • 不正の告発 • 正直ベース、本音のアドバイス、発言、活動 3

「不祥事」の背景 • 企業の不正の多くは内部告発から露見する –人は誰しも不正行為に荷担したくはない • 内部告発には人生、社会生活がかかっている •
公益通報者保護法は実名を要求＆刑事罰は科せられない 4

「不祥事」の性質 • 組織ぐるみ • 権限を持つ「エライ人」の暴走 • →組織内での生殺与奪 • グローバル経済以降の社会的変化の激しさ＝経営基盤の不安定さ
の増大 5

「告発」の代償 • 公益通報者保護法に「イカン」と定められていること –解雇、派遣契約の解除 –降格、減給その他の不利益な取り扱い • 職場から浮いてしまう • パワーハラスメントや嫌がらせ
• 「会社のため」を裏切るストレス 6

ジレンマを解消する匿名 • 三菱自動車：運輸省への匿名電話 • 日本フード：近畿農政局に対する内部者からの電子メール • 不二家：マスコミへの内部告発 • 雪印食品：倉庫業者の告発（実
名）業界で孤立したが、地道な努力で名誉回復中 7

質問：真の意味での「保護」？ • 告発者の社会生活に影響しない保護の有りよう？ • 情報の正しさ？ • 中傷、風評被害を回避するには？ •
人生の不利を回避するには？ 8

匿名のダークサイド • 社会的立場や背景、倫理観を離れて発言、活動できる →誹謗中傷 • 攻撃性の増幅 • 成りすまし、一人複数役 9

攻撃性の増幅 • 日本人？は攻撃性を発揮することへの心理的なハードルが高い？ • 攻撃性≒個人主義 • 「みんなで仲良く」という文化的抑圧
• お祭り体質 • 没個性化 10

没個性化 • 集団・群集状況では個人状況と異なり，平生は抑制されていた行動，特に非合理的，刹那的，攻撃的，反社会的な行動が起きやすくなるという現象を扱った概念 • ただし、必ずしも悪い方向に行くだけではない。一般的に考えても非常な親切心を発揮することもある
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ネットにおける「闘争」 • 掲示板での論争、誹謗中傷 –学校裏サイト • 荒らし、煽り • ストーキング • 暴露
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掲示板が荒れる閾値 • トラフィックの半分以上を酷い発言が占めるようになると荒れてくる • 主要メンバーが割合を減らす努力をすれば沈静化する –スルー –流れを切る –話題を他に振る
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一般的な掲示板対策 • 相手を見極める • ジサクジエンを見極める • 荒らしはスルー＆ジサクジエンで荒らし認定 • プロバイダーへの通報
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類型化と見極め • 煽り粘着 • メンヘル • 荒らし • ジサクジエン 15

煽り粘着 • 複数プロキシを使い分ける • 落とす→誉めるのサイクルで鎮静化 • ファン（笑）にすることも可能 16

メンヘル • いつもネットに居る • 普通の人が書き込めない時間にも居る • 攻撃性を伴う過度の正義感 • 強く友情を求める
• 境界型も 17

荒らしとジサクジエン • 場が荒れれば良い（お祭り体質） • 投稿間隔、ID、IPアドレスなどで推定可能 18

先生への愚痴の裏サイト 19

20 http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0708/01/news071.htmlより引用

書き込み内容 • 「不適切な書き込み内容の内訳は、飲酒や喫煙の告白、虐待や暴力行為などの不適切な行為に関するものがもっとも多く 31件。続いて、電話番号や携帯のメールアドレスなど自分の個人情報を公開するものが27件、誹謗中傷が26件だった」 • http://news.mynavi.jp/news/2013/04
/16/198/index.html 21

書き込み内容（東京都） • 「裏サイトにおいて不適切な書き込みと認められたのは1万772件で、前年度の1万1,438件から666件減少。このうち、事件性・緊急性が低く、学校が定期的に指導する必要性のある「レベル低」の書き込みは1万670件(99.1%)で、前年度より768件少なくなった。一方、事件性は低いが、学校がすぐに指導する必要性の高い「レベル中」は102件(0.9%)で、前年度より
15件増加し、悪質な書き込みが多くなったことが判明。なお、事件性が極めて高く、警察への通報を要する「レベル高」の書き込みは今回確認されなかった。」 22

裏サイト対策 • 削除依頼 • 掲示板閉鎖 • 利用規約ベースなら応じる可能性 • 「見ている」ことが重要
23

プロバイダーの利用規約サービスの利用：掲示板サービスにおいては、日本国および米国の法律、法令、条例に反する内容はもちろん、他人への誹謗中傷、いやがらせ、他人の知的所有権の侵害、プライバシーの侵害、公序良俗に反する内容が掲載されてしまった場合、すみやかに削除する管理義務を会員に担っていただきます。また、当ルールを徹底させるため、会員は自己が管理している掲示板上に必要に応じてユーザーに対してルールを表示するものとします。禁止行為： (4)詐欺や脅迫、侮辱、名誉毀損、信用毀損または猥褻物陳列などの犯罪
に結びつく行為。 (5)児童ポルノ、児童虐待または児童売（買）春、未成年者間の異性交際および未成年者を対象としての異性交際もしくは性的接触の誘引等にあたる画像、文章などを送信、掲載する行為。 (6)ストーカー行為等の規制等に関する法律に違反する行為。詐欺や脅迫、侮辱、名誉毀損、信用毀損 24

連携力、情報共有で対抗 • 学校裏サイトチェッカー – http://schecker.jp/ • 先生たちの情報 • 検索 25

そのひと個人を守る • 親が誹謗中傷に直レス • 誹謗中傷は止んだ • 飛び火先を検索、誹謗中傷を止めるよう依頼 • 終息
• http://blogs.itmedia.co.jp/kenjir o/2008/05/post-9a63.html 26

リスク対策として教える • ケーススタディ –モデレート演習 –参加者演習 –参加者（多数役）演習 • 「闘争」技術を「見える化」し、過大評価を是正する 27

ジサクジエンの活用 • 普段と異なるID、アクセス方法で別人格から鎮静化を狙う • 反対意見、同調 • 逆の煽り • 冷静な判断
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学校裏サイトから身元を調べる • 掲示板へのアクセス時間 • IDなどで「寄せる」 • ネットカフェ、漫画喫茶のアクセス – 利用者リスト（会員情報） •
学校からのアクセス – 学校の教室利用者リスト、記録 • 自宅、携帯からのアクセス • プロバイダーへの情報開示請求 29

誹謗中傷への対策 • 最悪は法的手段に訴える • プライバシー侵害 • 名誉毀損 • 相手不特定の場合、サービス提供者を訴える
–法的には決着していない • 止めるよう頼む 30

誹謗中傷することのリスク • 匿名は匿名ではない • →本当にそうか？ • 匿名の活動のリスク？ 31

LINEいじめ • ＬＩＮＥに「こ・ろ・す・ぞしね」いじめ被害で私立中１男子退学「重大事態」と学校側判断札幌 –
http://www.sankei.com/affairs/news/1511 18/afr1511180003-n1.html – 「学校によると、いじめは６月ごろ始まった。男子生徒はＬＩＮＥのメッセージのほか、たたかれる暴力を受けた。男子生徒は９月中旬から不登校となり、保護者から申し出を受けた学校は、いじめ対策委員会を設置。生徒や担任への聞き取り調査でいじめを確認した。いじめた側の中心とみられる生徒を１週間の自宅謹慎処分とし、ほかの生徒も注意した。」 • 体験：http://linelog.jpn.org/ 32

いじめ状態のわかりにくさ • コミュニケーションが閉じている • 外に対しては装っている • 証拠は消されてしまう –サーバーに残るとか、利用者の不随意で残る記録が無い •
コミュニティから外されることへの恐怖感から、被害を口に出来ない • LINEに限ったことでは無い 33

質問：LINEいじめへの対策 • 気づくためには？ • いじめさせないためには？ 34

ライフスキル • 公開授業：「ＬＩＮＥいじめ対処」学ぶ姫路・東光中／兵庫 • 「２年２組はスマホの無料通信アプリ「ＬＩＮＥ」で出た悪口がテーマ。「悪口に同意を求められた」場合の対処法をグループで話し合い、「悪
口をやめようと送信して、グループを離れる」「かばう発言をする」「それぞれを仲良くさせる」などの具体策を分類し、一番いい方法とその理由を発表した。指導にあたった教諭は「平和的に解決しようとする人が多かった。解決にはいろいろな方法があり、立ち向かえることを覚えておいてほしい」と呼びかけた。」 • http://mainichi.jp/edu/news/20151116ddlk2 8100301000c.html 35

いじめに繋がりそうなものを検知 36 子どものプライバシー？ https://www.filii.net/より引用

誹謗中傷、いじめへの対策 • 「場の重み」を変えてしまう、軽くする – スルー – 場そのものや「名前」を変える – 適切なトラフィックを増やす •
そもそも鳴かなければ雉は撃たれない – 「鳴かない」ことへの強迫観念 • 人間関係の構築 • 適切な個人情報管理 37

モラル、マナーを教える • 道徳、倫理として説いても聞く耳を持たない • 自分にふりかかってくる危険を避けるための手段＝リスクヘッジ • 文字だけのデジタルコミュニケーションでは、モラル、マナーを文字
で表現することが重要 38

最初が肝心リテラシー • http://www.soumu.go.jp/menu_news/s- news/01kiban08_02000193.html • 「インターネットを使い始めた時に、その使い方を「保護者」に教わった青少年のリテラシーが高いため、家庭等においてインターネットの使い方を教える環境づくりが重要」
• あなたは大丈夫？考えよう！インターネットと人権＜改訂版＞ – http://www.moj.go.jp/content/001163308. pdf 39

ガイドラインを味方にする • 文部科学省いじめの防止等のための基本的な方針」の改定及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」 – http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/s eitoshidou/1400142.htm • 注意をしただけで終わりではない、と終
息定義の改訂→実効性？ 40

（LINE）いじめへの対応 • 担任→教頭校長レベル→教育委員会→法務局・人権擁護委員会 • 被害者の救済とは？ • 第三者を巻き込む – https://www.mag2.
com/p/news/357489 – →は上記記事より引用 • 親が戦う事例： https://toyokeizai.net/ articles/-/179419 41

「匿名」と戦う • まとめサイト「保守速報」訴えた裁判 200 万円の賠償命令が確定 – http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1812/1 2/news120.html • 「訴訟はフリーライターの李信恵さんが
2014年8月、人種差別発言により名誉を傷つけられたとして「在日特権を許さない市民の会（在特会）」と、その発言をまとめた「保守速報」を相手取って起こしたもの。一審で保守速報管理人に200万円の賠償を命じる判決が下され、“転載”や“まとめ” 行為に対し、実際に損害賠償請求が認められた初のケースとなりました。」 42

「匿名」と戦う • なぜ起きた？弁護士への大量懲戒請求 – https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4200/ • 「ネットを通じ弁護士に大量の懲戒請求を行った市民が、弁護士に訴えられるという異例の裁判が各地で行われている。きっかけは、弁護士会が出した朝鮮学校への補助金交付を
めぐる声明に対し、あるブログが、弁護士資格のはく奪などを求める懲戒請求を行うことを読者に呼びかけ、およそ１０００人が応じたことだった。」 • https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiry o/20181102-00102673/ 43

「匿名」と戦う • スマイリーキクチ中傷被害事件 – https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9 %E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AA%E3 %83%BC%E3%82%AD%E3%82%AF%E3%83 %81%E4%B8%AD%E5%82%B7%E8%A2%AB %E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6 –
「突然、僕は殺人犯にされた」 • https://www.amazon.co.jp/dp/B07FFV5LP1/ 44

「匿名」と戦う • 炎上弁護士が実名告白「私に殺害予告が来るまで」 – https://gendai.ismedia.jp/articles/- /53594 • 炎上弁護士、「死ね」と言ってきた少年たちに会いに行く
– https://gendai.ismedia.jp/articles/- /53595 45

匿名性のダークサイド • ダークウェブ – 匿名通信ブラウザを用いたネットワーク • 犯罪者のコミュニティ • 違法な取引、ロンダリングなど何でもアリ •
マルウェア作成キット、攻撃ツール、ランサムウェアパッケージ、個人情報 46

まとめ • 匿名の功罪 • 回避するには場の重みを軽減する • 法的手段も考慮 • たのみこむ •
個人情報管理 • ケーススタディ • LINE？ – 自分が知らないシステムでのいじめ？ 47

終わり

教師・教育支援者のための情報セキュリティ第七回

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