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Word of Mouth

Word of Mouth

クチコミの影響力と効果測定

Takumi Kato

September 26, 2022
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  1. 位置付け 顧客管理と効果測定 戦略と実⾏ 価値づくりの考え⽅ 調査による客観的な状況把握 #01 マーケティング #02 ブランドマネジメント #04

    市場調査 #07 科学的検証 #08 感性⼯学 #05 消費者⾏動 #03 ロイヤルティとCRM #10 クチコミ #09 戦略と組織能⼒ 仮説⽴案 具現化 検証 #06 知覚品質
  2. 最も拡散⼒があるEarned Mediaは,ブランドの向上にも毀損にもなる 3つのメディア Paid Media Owned Media Earned Media 費⽤を払って利⽤するメディア

    他者発信で獲得したメディア 企業が保有するメディア • 企業Webサイト • 企業公式SNS • パンフレット • SNS • クチコミサイト, 掲⽰板 • インターネット記事 • Web広告 • テレビ広告
  3. クチコミとは何か︖ 1: Arndt, J. (1967). Word of mouth advertising: A

    review of the literature. Advertising Research Foundation. 商業的意図をずに交わされる 商品・サービスに関する 対⾯の⼝頭コミュニケーション1 近年は,インターネット上で交わされる 記述形式のコミュニケーション をeクチコミ(e-word-of-mouth)と呼ぶ
  4. マーケターは,消費者のクチコミだけでなく,多様な声を⾒るべき時代 VoCからVoSへ 研究 業界団体 新卒者・転職者 シンクタンク 格付会社 メディア 消費者 従業員

    株主・投資家 TV 従業員 意識調査 サービスレポート リコール情報 特許 コールセンター 店頭 SNS・ブログ ⼝コミサイト Youtube 市場調査 インターネット記事 新聞 雑誌 投資家ブログ 格付けレポート 株主総会議事録 報告書・⽇報 販売店レポート 転職クチコミ 新卒クチコミ 決算資料 調査 論⽂ 書籍 専⾨誌 産業レポート 業界新聞 Voice of Stakeholder アナリストレポート ⾦融機関Webサイト 株主通信 有価証券報告書 ニュースレター
  5. Attention Interest Search Action Share AISAS • 興味を持った商品は,すぐにインターネットで検索して購⼊⾏動する • ⾏動は購⼊で終わらず,クチコミをインターネット上で共有する

    基本的な消費者⾏動モデル Attention Interest Desire Memory Action AIDMA • 認知(Attention)→感情(Interest, Desire, Memory)→⾏動(Action) • 購⼊⾏動を起こすには,記憶してもらう必要がある
  6. クチコミは,商品・サービスの市場投⼊後の重要な結果指標の1つである クチコミの位置付け 商品企画の 材料 市場投⼊後 の結果確認 クチコミ 商品を購⼊・経験した消費者の声から ・コンセプトに価値を感じているか︖ ・コンセプトは具現化されているか︖

    を確認し,重視すべき不満は迅速に改善する 企画の材料として要素を抽出する⽬的が多い. しかし,クチコミは短⽂で批評されているものである. 件数が多いからと⾔って,その機能を強化すれば もっと売れるわけではない. 価値を考える作業はマーケターの仕事である. ◦ △
  7. 新しい商品・サービスが普及していく過程では,5つの異なる集団の意思決定を経る Rogers, E. M. (2003). Diffusion of innovations. 5, Free

    Press. イノベーションの普及過程 (1)新しいものを誰よりも早く使うことに執念を持ち,最初期段階で冒険的に採⽤する (2)新しいものを思慮深く判断して初期段階で採⽤し,意⾒を発信して周囲に影響を与える (3)普及率が半数を超える前に,品質と価格が成熟したことを確認して採⽤する (4)多数派が採⽤したことを確認し,周囲の圧⼒を受けながら慎重に採⽤する (5) 最も保守的であり,広く普及した後に,確実に良いことがわかったうえで採⽤する (1) Innovators 2.5% (2) Early Adopters 13.5% (3) Early Majority 34% (4) Late Majority 34% (5) Laggards 16% Market Share
  8. 商品/サービスが世の中に浸透していくためには,越えなければならない溝がある Moore, G. A., McKenna, R. (1999). Crossing the Chasm:

    Marketing and Selling High-Tech Products to Mainstream Customers. HarperPB. 商品/サービスの成否の分かれ道 Innovators 2.5% Early Adopters 13.5% Early Majority 34% Late Majority 34% Laggards 16% Market Share Chasm 新しい商品が普及するには,アーリーマジョリティが採⽤することが必要 品質が成熟したことを確認したうえで, 論理的・感情的に価値を判断して採⽤する
  9. 増加し続けるクチコミの量 1: Domo. Data Never Sleeps 6.0. https://www.domo.com/learn/data-never-sleeps-6 (2020/4/1アクセス) 2:

    Facebook. Facebookのミッション. https://about.fb.com/ja/company-info/ (2020/4/1アクセス) • Googleでは,毎分387万回の検索が実⾏される1 • Twitterでは,毎分47万件ツイートされる1 • Instagramでは,毎分5万枚の写真が投稿される1 • Facebookでは,1⽇1,000億回以上メッセージが送信される2
  10. Amazon.comの書籍において, クチコミの内容が改善されることで, 売り上げに影響を与える1 Yahoo映画サイトのクチコミは, 公開初週にアクセスが最も活発になり, その量は興⾏収⼊に影響を与える2 ⾞のeクチコミは,ブランドイメージ とブランドの購⼊意向に影響を与える 最も効果的な要因の1つである3 レストランのクチコミサイトにおいて,

    専⾨の編集者よりも⼀般の消費者の⽅ がサイトの⼈気に影響⼒がある4 1: Chevalier, J. A., Mayzlin, D. (2006). The effect of word of mouth on sales: Online book reviews. Journal of marketing research, 43(3), 345-354. 2: Liu, Y. (2006). Word of mouth for movies: Its dynamics and impact on box office revenue. Journal of marketing, 70(3), 74-89. 3: Jalilvand, M. R., & Samiei, N. (2012). The effect of electronic word of mouth on brand image and purchase intention. Marketing Intelligence & Planning. 4: Zhang, Z., Ye, Q., Law, R., Li, Y. (2010). The impact of e-word-of-mouth on the online popularity of restaurants: A comparison of consumer reviews and editor reviews. International Journal of Hospitality Management, 29(4), 694-700. 多様な業界で実証されるeクチコミの影響⼒
  11. 「消費者が情報をコントロールする時代の到来」とさえ⾔われるほど,影響⼒が増⼤ Bloom. (2007). HOW AND WHY WE PICKED THE CONSUMER

    AS AGENCY OF THE YEAR. January 8, https://adage.com/article/news/picked-consumer-agency-year/114153 Grossman, L. (2006). You ̶ Yes, You ̶ Are TIME's Person of the Year. TIME. December 25, http://content.time.com/time/magazine/article/0,9171,1570810,00.html 消費者の影響⼒の増加 2006年にAd AgeがAgency of the Year に”The Consumer”, TIMEがPerson of the Yearに”You”を選定. Image from Advertising Age Image from Time
  12. Dichter, E. (1966). How word-of-mouth advertising works. Harvard business review,

    44, 147-166. 内容 動機 製品関与 経験から得た情報を伝えたい欲求 1 ⾃⼰関与 情報を発信することでステー タスを誇⽰したい欲求 2 他者関与 情報を伝えることで相⼿の役に⽴ちたい欲求 3 メッセージ関与 ⾃⾝の体験は伴わないが,興味を抱いた広告等の メッセージを発信したい欲求 4 クチコミの動機 クチコミの投稿は,商品を売ることが⽬的ではなく,個⼈的な欲求がある
  13. クチコミは消費者の実体験から⽣み出されており,信頼を得やすい クチコミの信頼性の⾼さ 0% 20% 40% 60% 80% 100% 北⽶ 欧州

    アジア・太平洋 中東・アフリカ 中南⽶ 知⼈からの推奨 インターネット上の⼝コミ 企業Webサイト 新聞記事 テレビ広告 各国消費者の媒体に対する信頼 Nielsen. (2013). 「広告やブランドメッセージに対する信頼」グローバル調査. https://www.nielsen.com/wp- content/uploads/sites/3/2019/05/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88-nielsen- global-trust-in-advertising-report-september-2013.pdf
  14. 消費者視点から「やらせ」と認識されると,企業の信⽤を失うリスクが⼤きい 裏切りであるステマ (ステルスマーケティング) 1: 福井健策. (2020). 『アナ雪2』も失敗 SNSの「仕込み」「ステマ」はどこまでOK︖. ⽇経XTREND, 1/7,

    https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/skillup/00009/00082/ 2: ⽇本経済新聞. (2012). 「⾷べログ」やらせ投稿、景表法に抵触 消費者庁が指針発表. 5/9, https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0904S_Z00C12A5CR8000/ Case 1: アナと雪の⼥王2 広告代理店から依頼を受けたウェブ漫画家が映画を絶賛する漫画を PR表記なしでツイートした結果,ステマと批判され,漫画家とウォ ルトディズニー・ジャパンが謝罪するに⾄った1 Case 2: ⾷べログ 好意的なクチコミ投稿を請け負う不正業者に飲⾷事業者が依頼して いたことが発覚した2
  15. 6⼈介せば誰とでも繋がる 1: Milgram, S. (1967). The small world problem. Psychology

    today, 2(1), 60-67. 2: Bhagat, S. (2016). Three and a half degrees of separation. February 4, https://research.fb.com/blog/2016/02/three-and-a-half-degrees-of-separation/ 3: GREE. GREE(グリー)の始まり. https://corp.gree.net/jp/ja/corporate/origin/ (2020/4/1アクセス) • Stanley Milgramが1967年に提唱した,「平均して知り合いを6⼈介すると, 世界中の⼈々と繋がることができる」という仮説1 • Facebookがアクティブユーザー約16億⼈を対象に調査した結果,平均して 3.57⼈を介すれば誰とでも繋がっている状態であることを明らかにした2 6次の隔たり(Six Degrees of Separation) ※GREEという社名は,Six De“gree”s of Separationが由来となっている3
  16. Coca-Colaの戦略転換 1: Gourville. J., Fisher, N. (2013). Coca-Cola: Liquid and

    Linked. Harvard Business School Case 514-024 2: ⼩⻄圭介. (2013). ソーシャル時代の ブランドコミュニティ戦略: つながる, 発信する, 共に創るためのプラットフォーム構築法. ダイヤモンド社. メディアの多様化が進み,消費者のネットワークが台頭していることを踏まえ, 多様なメディアをリンクさせながら,ブランドメッセージを消費者がコンテンツ化 できるようインターネットに流し,個⼈の情報発信⼒を借りて広めてもらう狙い1,2 Liquid & Linked マスメディア 多様なメディア メディア ブランドからの発信 消費者間の拡散 浸透 広告表⽰回数(インプレッション) 消費者の発信数(エクスプレッション) 指標 ブランドがコンテンツ制作 消費者が⾃らコンテンツ制作 コンテンツ Before After
  17. 商品の経験をいかに投稿してもらうかは,企業が考慮すべき優先事項になっている 共有機能の商品への組み込み 1: Aral, S., & Walker, D. (2011). Forget

    Viral Marketing-Make the Product Itself Viral. Harvard Business Review, 89, 34-35. 商品に「共有」ボタンを加えることで, クチコミが購⼊に与える影響が4倍になる1
  18. 5つ星よりも1つ星 1: Chevalier, J. A., & Mayzlin, D. (2006). The

    effect of word of mouth on sales: Online book reviews. Journal of marketing research, 43(3), 345-354. Amazon.comの書籍において, 1つ星のレビューの影響は5つ星よりも⼤きい1
  19. 否定的なクチコミの拡散 1: Richins, M. L. (1983). Negative word-of-mouth by dissatisfied

    consumers: A pilot study. Journal of marketing, 47(1), 68-78. 2: Schellekens, G. A., Verlegh, P. W., Smidts, A. (2010). Language abstraction in word of mouth. Journal of Consumer Research, 37(2), 207-223. 3: Desatnick, R. L. (1987). Managing to keep the customer: How to achieve and maintain superior customer service throughout the organization. Jossey-Bass. 4: Ferguson, B. (2006). Black buzz and red ink: the financial impact of negative consumer comments on US airlines. Connected marketing. 5: Williams, M., Buttle, F. (2014). Managing negative word-of-mouth: an exploratory study. Journal of marketing management, 30(13-14), 1423-1447. • 否定的な⼝コミは,肯定的なクチコミよりも,多くの⼈に伝達されている1 • 新しい商品・サービスの利⽤経験は,悪い内容ほど⼈に伝えたくなる2-4 企業は肯定的なクチコミを促進するよりも, はるかに多くのリソースを否定的なクチコミの管理に費やしている5
  20. ブランドマネジメントとは ブランドマネジメント = コンセプト + ⼀貫した具現化 コンセプト ⼀貫した具現化 実⽤的+⼼理的な問題を解決する 時代によらない価値の定義

    定義したコンセプトを ⼀貫して具現化・訴求 Concept ZMOT (Zero Moment of Truth) Webサイトや⼝コミを⾒たとき FMOT (First Moment of Truth) 店頭で商品を⾒たとき SMOT (Second Moment of Truth) 商品・サービスを利⽤したとき 流⾏ 性能・技術 デザイン・UX 本質的な 価値 Who What How どんな困っている⼈に? どんな価値を︖ どうやって提供するか︖ 狙いどころ
  21. クチコミのユースケース クチコミ マーケティング R&D 品質 プロモーション 販売 カスタマーケア ⽣産 ⼈事

    法務 不満の抽出,コンセプト⾔及率の確認,ブランド毀損リスク検知 開発へのフィードバック,他社⽐較 品質問題の早期検知 プロモーション効果測定,メディア評価 顧客クレームの販売店へのフィードバック 不満・不備に対するマニュアル更新,誤った情報を流布する顧客への対応 需要予測の精度向上による⽣産計画最適化 新卒・中採の⼊社・退社理由の把握 偽情報の検知と対策,訴訟リスクの検知, 他社事例の収集
  22. CRMの適切な体制 失敗する企業の傾向 • ⽬的︓有名企業が導⼊した最先端CRMシステムの導⼊ • 課題︓バラバラなデータの統合・可視化 パーソナライズしたプロモーション など • 体制︓販売部⾨が要件定義,IT部⾨が開発・運⽤

    成功する企業の傾向 • ⽬的︓⻑期的に顧客ロイヤリティを築き上げ,利益の改善を図る • 課題︓顧客のロイヤルティを下げる要因の改善 顧客のロイヤルティを向上する施策の実施 • 体制︓研究開発・マーケティング・販売部⾨を横断し, 商品・サービスを常に改善するプロセス(指標・体制・報酬)を整備
  23. レポート クチコミに基づく対応 企業 収集 除去 分析 商品の アップデート 訴求 サービス

    リカバリー 市場に存在するクチコミのうち,⼤部分はゴミであり, 価値ある情報を抽出し,意思決定に届ける仕組みが不可⽋
  24. レポート 収集したクチコミのレポート例 ⼤量のクチコミから,価値ある情報を迅速に抽出する収集・分析の体系化を⾏う コンセプト デザイン ⾛⾏性能 安全性能 快適性能 過去の類似ケースの対応と結果 コンセプトには共感があるものの,Yの要素の具現化が

    不⼗分な部分があり,改善が必要である. まとめ 事象 ▪事象は何か︖ YYYY/MM/DDに,はじめて顧客が問題Xに⾔及し, MM/DDから急速に同様な声が拡散している. 重要度と対象部⾨ ★ 重要度 緊急度 ▪重⼤さの程度は︖ ▪関係する部⾨はどこか︖ 時系列 影響範囲 消費者の声 ▪消費者はどう受け⽌めているか︖ ・コンセプトに共感して購⼊したが,期待外れだった ・⽅向性はいいのに,使ってみたら全然ダメだった... 研究 開発 デザイン 製造 品質 マーケ ティング 販売 サービス ▪どんな推移をしているか︖ ▪他の市場の反応は︖ ▪過去・他社の類似ケースの対応⽅法と結果は︖ ▪事実と分析結果を踏まえて,どうすべきか︖
  25. クチコミのユースケース クチコミ マーケティング R&D 品質 プロモーション 販売 カスタマーケア ⽣産 ⼈事

    法務 不満の抽出,コンセプト⾔及率の確認,ブランド毀損リスク検知 開発へのフィードバック,他社⽐較 品質問題の早期検知 プロモーション効果測定,メディア評価 顧客クレームの販売店へのフィードバック 不満・不備に対するマニュアル更新,誤った情報を流布する顧客への対応 需要予測の精度向上による⽣産計画最適化 新卒・中採の⼊社・退社理由の把握 偽情報の検知と対策,訴訟リスクの検知, 他社事例の収集
  26. 著名⼈・企業の信⽤失墜を⽬的とした,感情的内容を含む偽情報 フェイクニュースとは • 嘘 • デマ • 誤情報 • 偽情報

    • 陰謀 • プロパガンダ • 扇情的ゴシップ • 偽画像・偽動画 etc 1: 総務省. (2019). 特集︓ 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0. 情報通信⽩書. https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/n1400000.pdf 偽の情報がインターネット上を拡散して 現実世界に負の影響をもたらす現象. 必ずしも偽ではないものも含まれ, 嘘か真実かは主観で変わる可能性もある.1 designed by Freepik
  27. フェイクニュースの脅威 1: ⽊内登英. (2019). ⽶⼤統領選挙でのフェイクニュース拡散を検証. NRI, https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2019/fis/kiuchi/0115 2: 前嶋和弘ら. (2019).現代アメリカ政治とメディア.東洋経済新報社.

    3: BuzzFeed. (2016).⽶⼤統領選の終盤、Facebook上では偽ニュースが本物を逆転した. https://www.buzzfeed.com/jp/bfjapan/fakenews-facebook 4: Allcott, H., & Gentzkow, M. (2017). Social media and fake news in the 2016 election. Journal of economic perspectives, 31(2), 211-36. 2016年 アメリカ⼤統領選挙 • Facebookの性格診断アプリを利⽤し,学術⽬的として最⼤8,700万⼈分の個⼈ データを収集した企業がトランプ陣営に雇われ,有権者の嗜好や政治的⽅向性 を把握て,トランプ候補に有利な情報とクリントン⽒に不利な情報を流した1 • 「ローマ法王がトランプ⽀持」といった虚偽情報がソーシャルメディアで拡散2 • 主要メディアのニュースより,偽のニュースの⽅がFacebook上で話題に3 • 選挙前3ヶ⽉間で,トランプ有利なフェイクニュースは3,000万回,クリントン 不利なフェイクニュースは800万回もシェアされている4
  28. 失敗後のサービスリカバリー パラドックスの存在が指摘されるほど,リカバリーは成功すれば効果が⼤きい 1:Maxham III, J. G., Netemeyer, R. G. (2002).

    Modeling customer perceptions of complaint handling over time: the effects of perceived justice on satisfaction and intent. Journal of retailing, 78(4), 239-252. 2: De Matos, C. A., Henrique, J. L., Alberto Vargas Rossi, C. (2007). Service recovery paradox: a meta-analysis. Journal of service research, 10(1), 60-77. • サービスリカバリーの公正性は,肯定的なクチコミを発⽣させる1 • 効果的なサービスリカバリーを経験した顧客は,失敗を経験しなかった顧客 よりも,結果として⾼い満⾜度を持つ「サービスリカバリーパラドックス」もある2 失敗なし 失敗あり 購⼊ 満⾜ 不満⾜ リカバリー 満⾜ >
  29. 「プロセス」か「結果」か︖ 結果重視 レストランでハンバーガーを注⽂したにもかかわらず, 店員はピザを持ってきたため,あなたは注⽂した ものと違うことを伝えた. 店員は何も⾔わずピザを下げ,その後厨房から 戻ってくると,ハンバーガーを切らしてしまったといい, 次回無料券を⼿渡してきた. プロセス重視 レストランでハンバーガーを注⽂したにもかかわらず,

    店員はピザを持ってきたため,あなたは注⽂した ものと違うことを伝えた. 店員は丁寧に謝りピザを下げ,その後店⻑が来て 深く謝罪し,ハンバーガーを切らしてしまったといい, 代わりのものを注⽂してもらえないかと頼んできた. ⽇本⼈消費者は,結果よりもプロセスを重視したサービスリカバリーを⾼く評価する Q. 以下のレストランの対応をどのくらい肯定的・否定的に感じるか︖ 鈴⽊智⼦, ⽵村幸祐, 浜村武. (2018). 結果またはプロセス重視のサービス・リカバリーに対する評価と⾏為同定の関係. 流通研究, 21(1), 67-75..
  30. インターネット広告に抜かれたテレビ広告 株式会社電通. (2020). 2019年⽇本の広告費. https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/ ⽇本における媒体別の広告費推移 (億円) 0 5,000 10,000

    15,000 20,000 25,000 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 広告費(億円) インターネット テレビメディア 新聞 雑誌 ラジオ ※総広告費︓約7兆円
  31. 消費者の広告回避 1︓Kotler, P. (2008). Foreword. Kellogg on Advertising & Media,

    pp. vii-viii. “ 消費者は広告を回避する傾向を強めている “ 1
  32. 映っていても⾒ていない (1990年代でさえ)テレビ広告が⾒られる割合は視聴率よりも低く,注視割合はさらに低い 1︓Abernethy, A. M. (1991). Television exposure: Programs vs.

    advertising. Current Issues and Research in Advertising, 13(1-2), 61-77. 2: Capocasa, A., Denon, L., & Lucchi, R. (1985). Understanding audiences of TV commercial breaks: What people do, how they react, how much they recall. In European Society for Marketing Research Conference. Designed by Freepik • テレビがついている時間の18%は部屋に誰もいない • テレビ広告の間には,22%の⼈が他のことをしている1 • テレビ広告の間には, 20%の⼈はザッピングする2
  33. 1:Bruner, J.: Actual minds, possible worlds, Harvard University Press, 1986.

    2: Green, M. C. and Brock, T. C.: The role of transportation in the persuasiveness of public narratives. Journal of Personality and Social Psychology, 79(5), pp.701-721, 2000. 3: 今井秀之, ⼭岡俊樹︓⽇⽤品市場における新製品売上予測モデルの構築. ⽇本感性⼯学会論⽂誌, 10(2), pp.63-71, 2011. 共感の効果 共感は,理解度を深め1,説得効果を⾼め2,購⼊を促進する3
  34. International Olympic Committee.: P&G promotes love over bias, with latest

    “Thank You, Mom” campaign. International Olympic Committee, November 2, 2017, https://www.olympic.org/news/p-g-promotes-love-over-bias-with-latest-thank-you-mom-campaign-1 Thank You, Mom by P&G P&Gのメインターゲットである⺟親に対する感謝を想起し,共感を創出
  35. 1: Till, B. D.: Using celebrity endorsers effectively: lessons from

    associative learning. Journal of Product & Brand Management, 7(5), pp.400-409, 1998. 2: Aw, E. C. X., & Labrecque, L. I. (2022). Celebrities As Brand Shields: The Role of Parasocial Relationships in Dampening Negative Consequences from Brand Transgressions. J. Advert., 1–19. 3: Agrawal, J. and Kamakura, W. A.: The economic worth of celebrity endorsers: An event study analysis. Journal of Marketing, 59(3), pp.56-62, 1995. 4: Chung, K. Y., Derdenger, T. P. and Srinivasan, K.: Economic value of celebrity endorsements: Tiger Woods' impact on sales of Nike golf balls. Marketing Science, 32(2), pp.271-293, 2013. 例︓Nikeのゴルフボール Tiger Woodsの起⽤によって 約2.5%の価格プレミアムを獲得 Image from Reuters 著名⼈モデルの効果 著名⼈の起⽤は,消費者の注⽬を引き付け1,商品への信頼を⽣み2, 経済的効果を創出することができるため3,多くの企業で重宝している
  36. あるべき商品とモデルの関係 共感にはリアリティが必要であり1,2, 商品コンセプトを体現するモデルの選定が鍵となる 1: Busselle, R., and Bilandzic, H.: Fictionality

    and perceived realism in experiencing stories: A model of narrative comprehension and engagement. Communication Theory, 18(2), pp.255-280, 2008. 2: Argo, J. J., Zhu, R., and Dahl, D. W.: Fact or fiction: An investigation of empathy differences in response to emotional melodramatic entertainment. Journal of Consumer Research, 34(5), pp.614-623, 2008.
  37. 商品とモデルの関係 著名⼈の 商品に関する専⾨知識1,2 商品と著名⼈の イメージの合致3,4 1: Pan, P. L., &

    Meng, J. (2018). Are they celebrity followers? Examining the third-person perception of celebrity-endorsed advertising. Journal of Promotion Management, 24(2), 233­250. 2: Thomas, T., & Johnson, J. (2017). The impact of celebrity expertise on advertising effectiveness: The mediating role of celebrity brand fit. Vision, 21(4), 367–374. 3: Lee, J. G., & Thorson, E. (2008). The impact of celebrity-product incongruence on the effectiveness of product endorsement. Journal of Advertising Research, 48(3), 433–449. 4: Paul, J., & Bhakar, S. (2018). Does celebrity image congruence influences brand attitude and purchase intention? Journal of Promotion Management, 24(2), 153–177. 両者の関係が近いほど,消費者は商品のコンセプト・便益を理解しやすい
  38. ⽇本のテレビ広告はなぜ著名⼈を起⽤するのか︖ コンセプトが曖昧なため • 伝えたい内容が曖昧なため,認知と好感度の向上が⽬的に • コンセプトがなく,著名⼈もいないと,⾔うことがなくなる 広告成果を好感度ランキングで⾒る習慣 • 本来あるべき評価は売上への効果だが,⽇本では好感度が定着 •

    好感度を⼿っ取り早く⾼めるなら,好感度の⾼い著名⼈を起⽤ 広告代理店の売上・受賞の獲得 • 著名⼈を起⽤すると,広告代理店の契約⾦が⾼くなる • 著名⼈が起⽤された広告の⽅が話題になり,広告賞を取りやすい
  39. 著名⼈モデルのリスク 著名⼈の信頼が商品の信頼に直結するため1, 不祥事が起きた場合は広告主の企業は経済的な損失を受ける2 1: Hussain, S., Melewar, T. C., Priporas,

    C. V., Foroudi, P. and Dennis, C.: Examining the effects of celebrity trust on advertising credibility, brand credibility and corporate credibility. Journal of Business Research, 109, pp.472-488, 2020. 2: Carrillat, F. A. and dʼAstous, A.: Power imbalance issues in athlete sponsorship versus endorsement in the context of a scandal. European Journal of Marketing, 48(5/6), pp.1070-1091, 2014. 著名⼈を起⽤すると,⾃社だけでは管理できないリスクがある
  40. Kato, T. (2022). Brand storytelling on websites: The role of

    empathy on repurchase intentions for PCs and smartphones. Journal of Promotion Management. 広告モデルが実⽣活で商品を使⽤している共感が⽣む効果 商品と関連づかないモデルが⽬⽴ってしまう広告ではなく, 「モデルが実⽣活で商品を使⽤している共感」が得られる広告が効果的 Apple MacBook Fujitsu FMV Lenovo ThinkPad Apple iPhone Samsung Galaxy Sony Xperia 58% 35% 30% 40% 32% 68%
  41. END