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数式ゼロのオークション理論入門

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August 21, 2026

 数式ゼロのオークション理論入門

2026.07 社内LT会 発表資料

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August 21, 2026

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Transcript

  1. オークションの地図:形式は 4つ 第2価格オークション 第1価格オークション 公開型(動的) 封印型(静的) イギリス式(せり上げ)セル ヴィックリー式 カ・美術品・魚市場 セルカ自動入札・eBay

    ダッチ式(せり下げ) ファーストプライス封印 アムステルダムの花市場 公共工事の入札 セルカは左上 (手動のせり上げ)。自動入札を使うと、実質は右上 中古車・美術品・魚……まるで違う財が、なぜか同じ左上に集まる(理由は後半で) → 形式によって売上は変わるのか? 5
  2. 売り物の「価値」には 2種類ある プライベートバリュー 共通価値 定義 人によって価値が本質的に違う 真の価値は全員共通、でも誰も正確には知らない 例 思い出の品、在庫の穴を埋める1台 油田の埋蔵量、転売価値

    中古車は 混合 である 「うちの店はハイエースなら客が付く」 → プライベート 「この型の再販相場・輸出相場」 → 共通 → 共通価値が混ざると罠が⽣まれる 7
  3. ② コイン瓶 いま起きたこと:勝者の呪い 01 全員の推定の平均は、 だいたい正しかった(はず) 「勝つ」という仕組みが、 そのまま選抜バイアスになる 02 でも落札するのは、

    一番楽観的な推定をした人 03 「勝った」という事実そのものが、 「過大評価していた」ことの証拠になる REAL STORY / 実話 メキシコ湾の油田採掘権オークションで、落札した石油会社は軒並み期 待外れに終わった。 1971年、この現象を分析した石油技術者たちが "Winner's Curse"(勝 者の呪い) と命名した。 →プロは、この呪いにどう対処しているのか? 9
  4. ② コイン瓶 プロの防衛術:シェーディング 01 BASIC RULE / 基本ルール 目的は「勝つこと」ではなく、 「勝ったときに儲かること」

    自分の推定額から、 割り引いて 入札する 02 割り引いた分だけ落札は減る。 それでいい。呪われた勝利はいらない BUYER REALITY / バイヤーの実態 セルカのバイヤーはプロ。この割引(シェーディング)は、入札額にす でに織り込まれている。 03 参加者が多いほど、割引は大きくすべき (右端はより極端になるから) → この割引は、常に固定なのか? それとも動かせるのか? 10
  5. ④ セルカ 割引幅は、固定ではない SOLUTION / 私たちのプロダクト設計 CONCEPT / 不確実性と割引 01

    査定情報の表示粒度 シェーディングの大きさ = バイヤーから見た 不確実性 の大きさ (修復歴・傷の位置・機関の状態) 02 写真の枚数と規格 不確実性を減らせば、割引(シェーディング)は縮む。そして 不確実性の量を決めているのは —— (外装・内装・下回り) 03 検査の品質 (均一で信頼性の高い査定フロー) 本日の持ち帰り:情報設計は、シェーディング幅を動かすレバー → さっきの地図の謎に戻ります 11
  6. ④ セルカ だから左上に集まる CONCEPT / 途中情報の可視化 TARGETS / 共通価値を持つ多様な財 せり上げは、途中で

    「誰が、いくらで降りたか」 が見える 中古車・美術品・魚 ・共通価値がある財ほど、その途中情報が効く 一見まったく異なるこれらの財が、同じ「イギリス式オークション (せり上げ)」に集まる。その大きな理由のひとつが、この途中情 報の持つ力にある。 ・不確実性が下がり、シェーディング(割引)が縮む → 情報が出ると割引が解ける。悪い情報でも? (隠された不確実性を排除するプロセスの探求へ) 12
  7. ④ セルカ 逆説:悪い情報の開示も、割引を解く CONCEPT / 悪い情報と割引の極小化 CORE VALUE / 情報設計の本質

    最悪ケースの想定を排除する “情報開示は、 必ずしもゼロサムではない ・隠された不確実性には、バイヤー側で「最悪のケース」を想定し た厳しい割引が課される。 ・たとえ悪い情報であっても、事前に 確定 させて開示する方が、 不確実性による割引総額は小さく抑えられる。 不確実性を適切にコントロールし排除するプロセスそのものが、 取引の総価値を最大化させ、売り手と買い手の双方にプラスの利 益をもたらします。 共通価値の比重が大きいほど効きやすい(はず) → この確度を高めるため、自社の保有データを用いて検証したい中核仮説 13
  8. プラットフォーマーとしての仮説 情報が出る → 不確実性↓ → シェーディング↓ → 落札↑ 中核仮説 出品者の手取りは、車両の「真の価値」だけでなく

    ディーラーの不確実性(=シェーディング幅)で決まる。 プラットフォームは、その不確実性を設計できる 。 答えは理論の外、自分たちのプロダクトとデータの中 にある! 14
  9. ③ ノーベル賞 今日話した因果には、名前がある 連結原理 2020年 ノーベル経済学賞 受賞 Linkage Principle このオークション理論群の発展により、MilgromとWilsonの両氏が受賞しま

    した。 Milgrom & Weber, 1982 01 情報開示 情報が出るほど  02 不確実性の低下 不確実性が下がり  03 シェーディング縮小 シェーディングが縮み  04 落札額の上昇 落札額が上がる 1515
  10. ④ セルカ プロダクト設計は、不確実性を動かすレバー NEGATIVE APPROACH CORE LENS 単なる「良い・悪い」の評価 「不確実性がどう動くか」で見る バイヤーにとって単純に「良い仕様か、悪い施策か」という

    平面的な二元論だけでプロダクトを評価してもしつらえるべ き本質は見えてきません。 設計された情報がディーラーの抱く不確実性をどのように変化 させ、結果として意思決定を動かしていくのか。その動的なメカ ニズムを捉える必要があります。 仕様・施策がこのレンズを通して見えたら最高かなと → すべての設計判断に「不確実性の制御」という一貫した軸を通す 1616
  11. ⑤ 参考文献 参考文献 01 Milgrom & Weber (1982) "A Theory

    of Auctions 02 Klemperer (2004) Auctions: Theory and and Competitive Bidding" Practice — 連結原理 — 入門に最適 03 坂井豊貴『マーケットデザイン』 (ちくま新書 ) 04 ケン・スティグリッツ『オークションの人間行動学』 — 日本語の入門書 — 最新理論からネットオークション必勝法まで 1717