Ver.6フライングチュートリアル!
KiCadで雑に基板を作って基板製造業サービスに 発注するためのチュートリアルです。 短めのスライドにする予定でしたが、 一通り必要なモノ入れたら結構なボリュームになりました。
KiCadで雑に基板を作るチュートリアルTokita, HiroshiVer 5.992021/3/6Ver 6.x 予習版以前のバージョンはこちらからhttps://www.slideshare.net/soburi/kicad-53622272
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2 書いた人● 某イベントUnix島で技術ネタサークルやってます– Twitter https://twitter.com/crs– GitHub https://github.com/soburi● Recent works– TWE-LiteをArduinoIDEで使うhttp://qiita.com/soburi/items/0b0aa3d0c4332a5e7a4c
3 本チュートリアルの対象・目的● 対象– KiCadの使い方を把握したい人– Elecrow/FusionPCB/PCBGogoなどの個人向けプリント基板製造サービスを利用したい人● 目的(基礎編)– KiCadの最低限必要な機能の使い方を理解する– KiCadで基板を作って製造サービスに発注する作業の流れを理解する● 目的(応用編)– 電子工作レベル(両面基板、表面実装なし程度)の基板作成に必要なKiCadの機能を理解する● 本チュートリアルで扱わない事項– 回路設計については本チュートリアルでは扱わない
4 目次1. KiCadとは2. KiCadを起動する3. 回路図エディターで回路図を作る4. 回路図データとPCBエディターの連携5. PCBエディターで基板を作る6. 発注用データの出力7. 発注する8. KiCadのワークフロー9. シンボルを作る10. フットプリントを作る11. 複雑な回路図を管理する12. 配置・配線の効率化13. 面付け14. まとめ基礎編 実践編
5 基礎編
6 KiCadとは● オープンソースのプリント基板CAD● 商用ソフトにありがちな、フリー版の機能制限がない● 現在CERNが積極的に開発を進めている● 国内情報も充実● ユーザーも増えてきたので、情報が集めやすい。
7 【追記】kicad.jp,安定のエゴサ力www● お墨付き、貰いました!– SlideShareにアップロード後、90分でkicad_jpに捕捉される– 通知tweet流さなかったんだが…– Version6追記: kicad.jp管理人さん、国内KiCad普及の黎明期には比類なきエゴサ能力でKiCad言及Tweetを遍く探し出し、KiCadの普及に大きく貢献されておりました。お元気でしょうか…
8 KiCadを起動する● 最新バージョン 6.0 まだリリースされていません。(次頁参照)● https://kicad.org/download/ からダウンロード。● 特に考えずにインストーラーを実行する● メニューに登録されたアイコンからKiCadを起動する
9 nightly buildで人柱になる● KiCad Version6はまだ開発中。現時点では開発者向けのnightly buildが使える。● いわば人柱版。転んでも泣かない。● リリース候補版(Release Candicate=rc)がそろそろ出るはず。https://gitlab.com/kicad/code/kicad/-/milestones/82021年2月末の予定だったが、スケジュール遅延。本スライドも適宜アップデート予定。● Windowshttps://kicad-downloads.s3.cern.ch/index.html?prefix=windows/nightly/● MacOSXhttps://kicad-downloads.s3.cern.ch/index.html?prefix=osx/nightly/● Linux (Ubuntuのaptリポジトリに登録)https://launchpad.net/~js-reynaud/+archive/ubuntu/kicad-dev-nightly特別ページ: Ver6もリリース間近
10 なれる!コントリビューター #1特別ページ: Ver6もリリース間近● KiCadは「みんなで作る基板CAD」なので、OSS活動にも参加してみよう。● ほっとくとスルーされる細かいバグも多いので、気づいたらバグ報告をしよう。● https://gitlab.com/kicad/code/kicad/-/issuesからissueを作成して報告する。● typo修正はコントリビューターの登竜門# Description ( 概要 )( 必要ならスクショ貼って説明 )# Step to reprocduce ( 再現手順 )1. …2. …# KiCad Version ([ ヘルプ ]→[KiCad について ]→[ バージョン情報をコピー ])このような内容を書いて、バグを報告する。ヨーロッパの大陸側の人が多いので、英語が下手なのは多少大目に見てもらえる?!
11 なれる!コントリビューター #2● まだまだメッセージの改善は継続中。● メッセージが修正されると、表示が英文に戻る。(不定期に更新実施)● Weblateのサイトで簡単に翻訳を修正できる。(ソース履歴にも名が残る!)● https://hosted.weblate.org/projects/kicad/master-source/ja/特別ページ: Ver6もリリース間近訳文を書いて、「保存」するだけ!自身のないひとは提案からはじめよう。
12 新規プロジェクト● 初回の起動の場合、設定パスの確認画面が表示されるので、「デフォルト設定を使って開始する」を選択。● 開いたウィンドウの[ファイル]→[新規プロジェクト...]を選択して、プロジェクトのファイルを作成。● データを保存するフォルダーを選択して基板の作成を開始する
13 プロジェクト マネージャー画面● KiCadは電子設計自動化(EDA)ソフトのセットになっている● よく使うのは回路図エディターとPCBエディター(PCB=Printed CircuitBoard, プリント基板のこと)● 他のツールは特に触らなくても何とかなる● まずは回路図エディターを立ち上げる● 一応回路図エディターにはEEschema、PCBエディターにはPcbnewという名前がついている。最近はこの名前使わずに基板/PCBエディターで呼ぶことが多いが、時々この名前が出てくる。
14 一番シンプルな回路を作る● LEDの足で電池挟んだアレ● 部品は LEDとボタン電池だけ● これだと基板にならないから電池BOXとLEDを直結● こんな感じに● (賢明な読者諸賢は既にお気づきかと思われるが、電流制限抵抗がなくて「雑な」回路。シツレイなのは承知の上であるが、問題の単純化のためご寛恕願う次第である。)
15 回路図エディターで回路図を作る● 右側のツールボックスに基本機能が入っている● 最低限のサバイバルナイフは2つ– 部品を選択する[シンボルを追加]– 部品同士を配線する[ワイヤーを追加]● 正しく回路図が描けたら作業完了
16 部品の配置● [シンボルを追加]を選択し、回路図シートをクリックすると、[シンボルの選択]のダイアログが表示される。● [フィルター]に探す部品名を打ち込む● ダイアログから使いたい部品(LEDと電池)を選択して、回路図シート上に配置する
17 KiCadの部品ライブラリー● よく使うもの– Device 基本的なデバイス (ディスクリート部品)● C=コンデンサー、D=ダイオード、R=抵抗、INDUCTOR=コイル– Connector, Connector_Generic コネクター類– Transistor_BJT バイポーラ・トランジスタ(2SC~など)● 汎用的な部品はDeviceのライブラリーを探す● ICは型番やキーワードで絞り込むと見つかる
18 部品の配置● 部品を右クリックすると、部品の移動、回転、反転ができる。● 配線しやすいよう、回路が理解しやすいように配置する● ホットキーのM(移動),R(回転)は覚えておくと便利。
19 配線する● [配線]を選択して、回路図シート上で配線を行う● 部品の足と足とを線でつなぐ
20 ジャンクション● 配線が交差しているところはつながっていない。[ジャンクション]で接続する● T字状に配線する場合、自動的にジャンクションで接続されるつながっていないつながっている
21 作例 #1● シンプルに電池とLEDをつなぐ
22 電源シンボル● 回路の電源やGNDを示す記号(電源シンボル)は、[電源を追加]で配置できる。● 電源シンボルは部品ではなく、電源、GNDを示すだけ。● この回路だと電池のマイナス側をGND、プラス側を電源とする。こちらをGNDこちらを電源
23 作例 #2● 電池のマイナス側にGNDの電源シンボルを接続● プラス側に「電池の電源」を示す電源シンボルの+BATTを接続
24 回路図のエラーチェック #1● 回路が描けたら、エラーチェック機能(ERC:Electrical Rule Checker)で不具合をチェックする● まず、回路図上のシンボルに番号を割り振る[回路図のアノテーション]を実行● そのまま[アノテーション]のボタンを押せばOK.● シンボルの番号の’?’に数字が入る。押す
25 回路図のエラーチェック #2● 続けて[エレクトリカル ルール チェック(ERC)]で回路図のエラーチェックを行う● 設定はそのまま、ダイアログの[ERCを実行]のボタンを押す。● エラーが出なければOK.● 後述のPCBエディターと情報を対応づけるので、アノテーションをクリアしてはいけない0ならOK 極力減らす
26 ERCエラーの対処方法 #1ピン未接続● 単純に配線されていない● 接続が無い場合は[空き端子フラグ]で、配線しないことを明示するNG
27 ERCエラーの対処方法 #2電源入力ピンが電源出力ピンによって駆動されていない● KiCadでは回路の電源は電源シンボルの[PWR_FLAG]で明示的に示さなければならない。● 「回路の電源」とは、電池やACアダプタなどから電源供給を受ける配線 と考えると良い。● [PWR_FLAG]を電源とGNDに接続することで解消するNG
28 ERCエラーの対処方法 #3入力ピンが出力ピンによって駆動されていないピンのタイプ ~ と ~ が接続されています● 出力と出力など、接続できない端子を接続している。● 単純に間違いなので配線を修正する● (右は説明のための作為的な例)NGQ: 出力DIS: 入力なのでERC 的には OKDIS: 入力、THR: 入力なので入力元がない。
29 作例 #3● GNDと+BATTにそれぞれPWR_FLAGを接続して、電源であることを明示してERCのエラーを解消した
30 回路図データとPCBエディターの連携● 回路図エディターとPCBエディターはそれぞれ独立したアプリだが、KiCadの”プロジェクト”としてデータを共有して、相互に連携している● PCBエディターは作成した回路図から情報を引き継いで、基板に反映する– 回路図の部品と基板に置かれるフットプリントの対応情報– 部品同士の結線情報● 回路図の部品(シンボル)に、基板エディターで使う”フットプリント”を割り当てる。
31 部品とフットプリントの割り当て● KiCadでは、部品は、回路図での電気的な意味を示す回路図記号(シンボル)と、基板上での物理的な形状を分離して扱っている● そのため、基板をレイアウトをはじめる前に回路図上のシンボルに、部品の形状(フットプリント)を関連付ける必要がある。● この作業が[フットプリントの割り当て]● 回路図上の記号に対応する部品のデータを対応づける。● 困ったらピンヘッダあたりを割り当てておくと、とりあえず基板は作れる。(これだと部品が刺さらないので、フットプリントを作成する。後述。)
32 フットプリントを割り当てる● 中央のリストの部品に対して、右のリストからフットプリントを割り当てる。● フットプリント ビューアーの表示で縮尺、部品のサイズに注意LED● フットプリントは数が多くて探すのが大変。フィルターをうまく使う。– 足の数指定は基本的に有効にしておく– シンボルの持つキーワードで絞りこみ。使えそうなものは、これでだいたい見つかる。– これでも駄目なら、フィルターを外して文字列で検索– 最後は、左のライブラリー一覧を一つ一つ漁る(面倒!)
33 作例 #4● 標準的な5mmのLEDを指定● 電源は電池ボックスからのリード線を接続するため、2pinのピンヘッダを指定(ピンヘッダを実装せずに配線用の穴として使う)
34 回路図の完成● フットプリントの割り当てが終わったら、回路図エディターでの作業は終了。● ERCは問題ないよね?● 回路図ができたら、この回路図をもとにして基板の作成を始める● 回路図エディターの[PCBエディターに切り替え]でPCBエディターを起動する
35 基板の作成● プリント基板の配線(パターン)を作る● サバイバルナイフは1つだけ。– 部品同士を配線する[単線(シングル)をインタラクティブ配線]● 回路図で書いたすべての結線がプリント基板上で配線できたら作業完了
36 回路図のデータの取り込み● まず、[回路図から基板を更新]を実行● ダイアログの設定は変えずに[基板を更新]を実行● シンボルに割り当てた部品(フットプリント)が現れる。● クリックして、とりあえずどこかに置く。
37 フットプリントを配置する● 部品を右クリックして、適当な場所に移動する。● 部品の配置は、とにかく自分で考えるしかない。● 考え方の一例– 配置に制約がある部品を先に並べる(スイッチ、コネクタなど操作上の制約、筐体サイズの制約)– 配線が集まるICなどあれば、できるだけ中央に置く– 平行した配線になるところは並べる
38 配線する● 未配線の端子にラッツネスト(白い線)が表示される● 配線して端子がつながるとラッツネストが消える● [単線(シングル)をインタラクティブ配線]で線を引いて全てのラッツネストが消えたら作業完了
39 ビアを使った配線● 描いている配線はプリント基板のパターンなので、同一レイヤー上で交差できない● 交差するところは、ビア(穴)を作って配線を裏に通す● 配線中に右クリックして、コンテクストメニューから[貫通ビアの配置]を実行する
40 基板のサイズを決める● Pcbnewのレイヤー選択リストから[Edge.Cuts]を選択する● [線を描画]で、長方形の枠を描く。● この長方形が切り出される基板のサイズになる。● このレイヤーは、「基板外形レイヤー」とか「メカニカルレイヤー」とも呼ばれる
41 GND ベタ #1● これをやると「まともな基板」っぽく見える。(本来はノイズ対策)● [塗り潰しゾーンの追加]を実行して、基板の外枠と同じサイズの塗りつぶし領域を作る● ダイアログのレイヤーは[F.Cu]と[B.Cu]をチェック、[ネット]は[GND]を指定する。(両面にGNDベタを作る設定)● GND以外はあまり使わない
42 GND ベタ #2● ゾーンを作ったら、作成したゾーンを選択、右クリックで[全て塗り潰し]を実行する。● これで、ゾーン中の配線にあわせて塗りつぶしが行われる。● 配線変えたら、[塗り潰しを全て削除]→[全て塗り潰し]を再実行すること。
43 作例 #5● ビアを使って表面に配線を通して交差させる● 両面にGNDベタを設定
44 基板デザインのチェック● 基板製造サービスの設備によって、パターンの密度が高いと製造ができない場合がある。● 製造可能な配線の間隔、ドリル穴のサイズをチェック用データとして設定して、パターンに不備がないかをチェックする。● 発注の前には必ずチェックする。
45 基板セットアップ #1 制約● ツールバーの[基板セットアップ]を選択● [デザインルール]→[制約]でドリル穴や配線の製造可能な最小値を設定する● マイクロビアは使わないので設定不要(値は何でもいい)● Elecrow/FusionPCB/PCBgogo向け(最大公約数的かつ余裕ある設定)– 最小 配線幅/クリアランス/アニュラー幅 0.2mm[0.1524mm(6mil)以上]– 最小ビア径 0.8mm[ビアドリル径+ アニュラー幅 x 2=0.7mm]– 導体-穴クリアランス 0.4 mm– 導体-基板端クリアランス 0.7 mm– 最小スルーホール径 0.3 mm– 穴-穴 クリアランス 0.5 mm
46 基板セットアップ #2 default値● 実際の配線に使う値を[ネットクラス]→[ネットクラス]のdefaultに設定する。● クリアランス/配線幅は最小6mil、ドリル穴は最小3mmが格安基板製造の標準的なスペック。● uViaサイズ、uVia穴は今回使わないので、ビア サイズ、ビア穴と同じ値に。● DP幅、DPギャップも今回使わないので、配線幅、クリアランスと同じ値に。● これはかなりマージン持たせた値● 表面実装ICを使うような場合はもっと細くする。● 大電流を流すような場合はもっと太くする。● uVia=micro via、DP=Differential Pair(差動ペア)
47 DRCのエラーの対処方法● DRCのエラーのほとんどは、– 未配線– 配線が~に近すぎる● 頑張って引き直す。● 基本は配線する前に制約を設定する– 配線のエラーは配線時にチェックされる。– エラーになるのはだいたい配線後にルールを変えた場合。
48 発注用データの出力● 基板製造サービスに渡す最終生成物のガーバーファイル、ドリルファイルを出力する● 基板製造サービスのデータ仕様に合わせてファイルを修正が必要。● 確認が終わったら発注する。
49 実装ファイルの原点の設定● [ドリル/配置ファイル用の原点を設定]で基板外形の左下に原点を置く
50 ● [プロット...]で製造ファイル出力のダイアログを開く。● [出力フォーマット]はガーバー、[出力ディレクトリー]を適当に指定する● [レイヤー]はF.Cu, B.Cu, F.SilkScreen, B.SilkScreen, F.Mask, B.Mask, Edge.Cutsの7つを選択● [ドリル/配置ファイルの原点を仕様]、[Protelの拡張子を使用]、[シルクをレジストで抜く]をチェック● ここがDRCを実行する最後のチャンス● 設定したら[製造ファイル出力]を実行● ドリルのデータは別に作る必要があるので、続けて[ドリルファイルの生成]を実行ガーバーファイルの出力
51 ドリルファイルの出力● [製造ファイルの出力]のときと同じディレクトリを指定● ドリル原点も[製造ファイルの出力]の設定と合わせる● FusionPCBの場合は[PTHとNPTHを一つのファイルにマージ]をチェック● 製造サービスからの指示がある場合はマップファイルも作る
52 基板製造サービスの仕様に合わせる● Elecrow/FusionPCB/PCBGogoのいずれも以下の手順1. 拡張子を除いたファイル名本体をすべて同じにする。(e.g. sample-B_Cu.gbl → sample.gbl)2. ドリルファイルの拡張子.driを.txtに変更する3. zipで固める● 基板製造サービスの仕様に変更があるかもしれないので、発注の際に確認すること
53 ガーバーファイルを確認する● KiCadのガーバー ビューアーよりもgerbv[ http://gerbv.geda-project.org/ ]がおすすめ– 色がデフォルトで中間色なので見やすい– レイヤーを重ねて印刷できる– レイヤーごとに透明度が設定できるVer6追記: Gerber Viewerも半透明表示や中間色になって、かなり改善されたが、レイヤーの入れ替えなど、まだちょっと面倒。
54 確認のポイント● ERC/DRCでチェックできないところを見る– 間違ったフットプリントを使っていないか?– 部品がぶつかるような高密度パターン描いていない?– ベタ塗りつぶしはちゃんと更新されているか?– シルクの情報はわかりやすいか?– ハンダ付け作業はやりやすいか?● 原寸で印刷して、実物の部品を刺して確認する● 確認を怠るものは地獄に堕ちる
55 画面で確認● [File]→[Open layer(s)...]で全てのGerberファイルとドリルファイルを開く● 実際のプリント基板の構造に合わせて並べて不備をチェックする– ベタ塗りの更新忘れでパターンがくっついていないか?– シルクの情報はわかりやすいか?表面裏面シルク印刷ハンダ マスク(レジスト)銅箔銅箔ハンダ マスク(レジスト)シルク印刷
56 印刷して確認● 表面のレイヤーとドリル穴を選択して原寸で印刷する● 印刷したパターンのドリル穴に針で穴を開けて、実際に部品を挿してみる– 部品がくっつきすぎていないか?– 作業のしやすさも考える– KiCadの3Dビューワーでは気づかない問題もある
57 ネットプリントで原寸印刷● [Microsoft Print to PDF]の仮想プリンタで印刷するとPDFファイルができる● PDFファイルをセブンイレブンのネットプリント(https://www.printing.ne.jp/index_p.html)で原寸印刷する– [ちょっと小さめ]にしない– セブンイレブンのマルチコピー機で印刷(1枚20円)
58 作例 #6● 表面のレイヤーと裏面のレイヤーをそれぞれ重ねて表示
59 発注する● ElecrowもFusionPCBもPCBgogoも「ガーバーファイルとドリルファイルをZIPで固めてWebフォームから送るだけ」で、発注処理が完了する● 発注した直後に不具合が見つかる(経験則)→深夜の勢いで発注せず、冷静になってからオーダーする● 改めて最後に「DRC忘れてないか?」● まずは君が落ち着け。
60 ガーバーデータ入稿時のファイル名仕様Elecrow FusionPCB PCBGogo表面導体層 [基板名].GTL [基板名].GTL (KiCad出力そのままでOK)表面ハンダマスク(レジスト) [基板名].GTS [基板名].GTS (KiCad出力そのままでOK)表面シルクスクリーン [基板名].GTO [基板名].GTO (KiCad出力そのままでOK)裏面導体層 [基板名].GBL [基板名].GBL (KiCad出力そのままでOK)裏面ハンダマスク(レジスト) [基板名].GBS [基板名].GBS (KiCad出力そのままでOK)裏面シルクスクリーン [基板名].GBO [基板名].GBO (KiCad出力そのままでOK)外形レイヤー [基板名].GML [基板名].GML/GKO (KiCad出力そのままでOK)ドリル(PTH, メッキ穴) [基板名].TXT [基板名].TXT/DRL (KiCad出力そのままでOK)ドリル(NPTH, メッキなし穴) [基板名]-NPTH.txt - (KiCad出力そのままでOK)● 各社の仕様にあわせてファイル名を変更。● zipに固めて、Webのフォームから送信する。● 実際には、ファイル名が違ってても何とかなる感じだが、とりあえず仕様にあわせてデータを作成する。● FusionPCBはPTH, NPTHをマージしたデータを受け付けるので注意。
61 Elecrowの場合2層, 100x100(mm)5枚~が最安コース基本的に1 (面付けしない)標準的でない厚さは高くなる紫、マット系は高いデフォルトのままで配送先を選択表面実装に使うメタルマスク
62 FusionPCBの場合FR-4, 2層,100x100(mm)10枚~が最安コース基本的に1 (面付けしない)標準的でない厚さは高くなる6mil/0.3mmが基本。細くすると高くなる。デフォルトのままで。やらない。
63 PCBGogoの場合2層, 100x100(mm)5枚~が最安コース板材はFR-4(ガラスエポキシ)FR4-TGは耐熱温度デフォルトのままで。特殊なやつを使うと高くなる。6mil/0.3mmが基本。細くすると高くなる。やらない。
64 発送● 安い発送だと郵便扱いで2週間程度● 深圳から出てくるので、国際郵便のtrackingを見ながら気長に待つ● 郵便だと時間外窓口が使えるので受け取りやすい● ANA系のOCSは安くて早い。● FedEx, DHLならPUDOステーションを使うのも便利● UPSはヤマト運輸さんに引き継いでもらうと受け取りやすい● Good Luck!
65 実践編
66 KiCad のワークフロー● KiCadで回路図・基板デザインを修正するときは、原則、回路図まで戻って修正してPCBエディターに反映する、という流れで作業を行う● PCBエディターで回路図にないフットプリントを置くのは避ける。(回路図で基板を更新するときに無くなる。置くならロックする。)● アノテーションの対応付けが崩れると、このサイクルが回らなくなるので消してはいけないフットプリントの割り当て回路図結線情報基板デザイン 製造ファイル回路図まで戻って修正
67 LED 明滅回路● キャンドル IC CDT-3460-20 で LED が明滅する回路http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-08752/● 電源はボタン電池を使用し、電子ホルダー CH26-2032LF を基板に実装するhttp://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-08963/● 作例ではデータシートの例で簡単な駆動回路を作る● この作例を通じて、実際の基板作成で使う KiCad の機能を見ていくこんな基板を作る
68 シンボル エディター● KiCadのライブラリーには多数の部品のデータが収録されているが、もちろん無いものもある。● シンボル エディターを使って、ライブラリーにない新しいシンボルを作る手順を紹介する
69 シンボル ライブラリーを作る● [ファイル]→[新規ライブラリー...]でシンボルを格納するライブラリーを作成。● ライブラリー テーブルは[プロジェクト]を選択。● プロジェクトのフォルダーの中に、適当な名前でファイルを作る。● 画面左のライブラリー一覧に作成したライブラリーが追加される。(アルファベット順に表示)
70 シンボルを作る #1● 一覧からライブラリー名を左クリックして、[新規シンボル...]でシンボルを作成する。● ダイアログは[シンボル名]だけ入力。● 他の項目はあとで設定できる。
71 シンボルを作る #2● [ピンを追加]でピンを適当に配置。(場所は後で直す)● データシートにある全てのピンのピン番号とピン名を入力。● エレクトリック タイプは[フリー]にしておく。(エラーが出なくなる)
72 シンボルを作る #3● [矩形の追加]で、適当はハコを描いて、プロパティで[ボディ背景色で塗り潰し]● ハコとピンと文字の位置を調整して、良い感じに整えて完成。● 保存はライブラリー毎。複数のシンボルを同時に作業してるときは注意。作成途中
73 作例 #7● キャンドル IC CDT3460-02 のシンボルを作成● CDT3460-02 のデータシートをストレートに落とし込んだ
74 フットプリント ライブラリー● シンボルと同様、フットプリントについてもKiCad自体に含まれていない部品については自分で作成する必要がある● フットプリント エディターで新しい部品のフットプリントを作成する手順を紹介する
75 フットプリント ライブラリーを作る● シンボル ライブラリーの時と同じ手順。● 同様に[ファイル]→[新規ライブラリー...]を実行● 同様にライブラリー テーブルは[プロジェクト]を選択。● 同様にプロジェクトのフォルダーの中に適当な名前でライブラリーを作成。● フットプリント ライブラリーの場合は[ライブラリー名].prettyのフォルダーが作られる● 同様に画面左のライブラリー一覧に作成したライブラリーが追加される。
76 フットプリントを作る #1● 端子となる[パッド]を配置する● 普通のスルーホールを置くのであれば、デフォルト設定でOK.● データシートの寸法に合わせて正確に配置する● インチ/メートルの違いに注意する● 1番ピンを明示するような場合には角型のパッドに設定する
77 フットプリントを作る #2● 部品の形状や向き、極性がわかるように、シルク印刷を描く● 配置したときのサイズを意識して描くと部品の衝突防止に役立つ● 特に電気的な意味はないので、わかりやすいように「お絵かき」する
78 フットプリントを作る #3● パッドの位置さえ合っていれば、あとはただの飾り。● まずは正確にパッドの位置を決める。● とはいえ、シルクスクリーンの印刷情報は実装ミスの軽減に役に立つ。● はじめはハコで十分、少しずつ丁寧に仕上げてく。作成途中
79 作例 #8● CR2032電池ホルダー CH26-2032LFのフットプリント– プラスとマイナスの2つのスルーホールを作成– 電池のコンポーネントに合わせて1がプラス,2がマイナス– マイナス(GND)を角型のランドにした– シルク印刷で部品の形状を原寸通り表示している– 左右に位置固定用のポッチがあるので機構穴を開ける。
80 複雑な回路を管理する● ある程度の規模の回路図では、大まかな機能を構成する部分ごと分割して回路図を描く● 分割したそれぞれの部分の間は線をつなげて描かない切れた線に接続先を記載して示す● [ラベル]を使って、部分ごとに回路図を分けて描く
81 単純なラベル● 同じ名前の[ラベル]がついている配線は互いにつながっているものとして扱われる。● ラベルの接続先は複数あってもよい● 配線を右クリックして、コンテクスト・メニューから[ラベルの追加]ができるので、ラベル名を入力する同じ同じ同じ
82 シートの階層化● KiCadでは、回路の一部を別シートに分割する「シートの階層化」が行える● 「電源部」のような回路を一部をモジュール化して、分割した回路図として作成できる。● 単純に「回路図を分ける」ではなくて、論理的な「モジュールに分割」する機能● モジュールごと、まるっとコピペして再利用もできる。Advanced topic
83 階層化シートの作成● [階層シート]を選択し、回路図シート上で枠線を引くと階層シートを作成する。● [シートのプロパティ]でサブの階層シートのファイル名を指定。● シートの枠線を右クリックすると[シートに入る]の項目が現れるので、選択するとサブの階層シートに表示が切り替わる。(もしくは枠内をダブルクリック)● サブの階層シートで右クリックして、[シートから抜ける]項目を選択すると元のシート(親シート)に戻るAdvanced topic
84 階層ラベル● 階層シートから、上位の階層シートに見せる端子が[階層ラベル]● ラベルというよりは「インターフェース」として捉えた方がよい。● サブの階層で[階層ラベルを追加]を行って、配置する● 上位の階層シートに戻って、[シートピンのインポート]を選択して階層シートの枠内をクリックすると、サブの階層で配置した[階層ラベル]に対応するシートピンが枠線内に現れる● シートピンを介してサブの階層シートと接続するAdvanced topic階層ラベル シートピン
85 グローバル ラベル● 全ての階層シートで共有されるラベルが[グローバル ラベル]● 階層シートの概念が理解できれば自ずと理解できるはず● 階層シートを使わないなら必要ないAdvanced topic
86 作例 #9● ラベルを使って電源回路部とLED点灯部を分けて(多少)わかりやすく。● LEDは調整用の抵抗を入れられるようにした。● On/Offできるようにスイッチをつけた。
87 FreeRoutingによる自動配線● 規模が大きかったり基板自体が小さい場合だと、端子間を衝突なく配線することが非常に難しくなる● 自動配線ツールのFreeRoutingを使うと多少無茶なレイアウトで面倒な配線でも、自動で配線をやってくれるAdvanced topic
88 FreeRoutingで自動配線する #1● 配布元からバイナリをダウンロード、インストールする。– https://github.com/freerouting/freerouting/releases● KiCadとは基板データのエクスポート(.dsn)と、自動配線の出力ファイル(.ses)のインポートで連携する● 配線と塗りつぶしゾーンを一旦すべて削除する– 既に配線されているところは保持される● [ファイル]→[エクスポート]→[Specctra DSN...]でFreeRoutingが使う.dsnファイルを出力する。Advanced topic
89 FreeRoutingで自動配線する #2● FreeRoutingを起動して、エクスポートした.dsnファイルを開く。[AutoRouter]を押すと自動配線が始まる。● (ここで、過去に自動配線を実施していた場合にはrulesファイルの処置を選択するダイアログが出るかもしれない。その場合、Noを選択)Advanced topic
90 FreeRoutingで自動配線する #3● 自動配線が完了したら、[File]→[Export Specctra Session File]で、.sesファイルを出力する(同一ディレクトリに出力される)● KiCadに戻って、[ファイル]→[インポート]→[Specctra セッション...]で.sesファイルを取り込む● 取り込んだら、自動配線の結果が反映されるので、とりあえずDRCを実行Advanced topic
91 作例 #10● FreeRoutingで自動配線させた● 基板データとしてはこれで完成配線前 FreeRoutingの自動配線結果自動配線を反映GNDベタを入れるガーバーデータ(表・裏)
92 面付け● 小さなサイズの基板の場合、発注するサイズの中で複数枚の基板が収まる場合がある● 複数枚基板を並べてレイアウトすることを「面付け」という(元々の語義は製本の工程で、裁断前の大きな紙に本の体裁となるようページを並べる作業が「面付け」)● 基板を分割する溝(Vカット)を作るための追加料金がかかる場合が多いが、枚数を増やすよりコスト削減になるAdvanced topic
93 面付けした基板レイアウトの作成● スタートメニューから Pcbnew を直接立ち上げる● [ ファイル ]→[ 基板の追加 ] で、作成したボードのデータ (~.kicad_pcb) を読み込む● 面付けする枚数分読み込みを繰り返して、配置する( 要は「コピペ」。 )● 外形レイヤの線を削除してボードの形状を作り直す● V カットの線を外形レイヤに引く● ガーバーファイルの出力は通常の基板と同様に行う● 回路図データとは関連づかない基板になるので、別のディレクトリに置いた方が管理しやすいかもしれない● V カットに関する製造サービスの仕様を良く確認するAdvanced topic
94 作例 #11● 10cm × 10cm から 8 枚基板が取れるように面付けAdvanced topic
95 まとめ● ここまでの内容で電子工作で使う程度の回路であれば基板製造サービスに発注することが可能なはず● このチュートリアル自体は結構なボリュームがあるが、読むより実際使って慣れた方が早い● KiCad の癖やハマる箇所についてはそれぞれ注釈しているので、参考にしていただければ幸い
96 おさらい #1● EEschema の基本的な使い方– シンボルの配置・配線– ERC のエラーチェック– フットプリントの関連付け● Pcbnew の基本的な使い方– 回路図の反映– 配線– DRC のエラーチェック– 製造ファイルの出力● 製造サービスへの発注– ちゃんと確認したか?
97 おさらい #2● ワークフロー– アノテーションを消さずに回路図作成→基板レイアウトのサイクルを繰り返す● シンボル、フットプリントの作成– 難しくはないが、保存先の「現在のライブラリ」を確認する● ラベルによる回路図の分割– ラベルを使って、ブロックごとに分けて回路図を描く。より大規模な回路は「階層化」する● FreeRoutingによる自動配線– .dsnファイルと.sesファイルをエクスポート/インポートして外部ツールで自動配線を行う● 面付け– Pcbnewを個別で立ち上げて基板を「コピペ」する