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* 2025年8月18日古代寺院3DGIS科研研究集会「遺跡地図GISの現在地」コメント

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Toshikazu SETO

August 18, 2025
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  1. 遺跡地図GISの現在地 1/16 2025/8/18 駒澤⼤学⽂学部地理学科・准教授 東京⼤学空間情報科学研究センター(CSIS)・特任准教授 https://tossetolab.github.io/ [email protected] 「遺跡地図GISの現在地」へのコメント (「地理空間情報」分野の近況報告も兼ねて) 瀬⼾

    寿⼀ A02 KOMAZAWA UNIVERSITY Visual Identity Guidelines Ϋʴ࿨จϩΰλΠϓ ,ϚʔΫʴ࿨จϩΰλΠϓͷ૊Έ߹Θͤ ͸ɺ ࠨͷछͰ͢ɻ ԣ جຊܗͱ͠ɺ ༏ઌతʹ࢖༻͠·͢ɻ ԣ ϫϯϙΠϯτͳͲɺ ʮԣʯ ͕഑ஔ͠ʹ͍͘ ৔߹ʹ࢖༻͠·͢ɻ ॎ ॎܕαΠϯͳͲɺ ࡉ௕͍഑ஔʹ࢖༻͠·͢ɻ ඞͣϚελʔσʔλΛ࢖༻͍ͯͩ͘͠͞ɻ ࠨهҎ֎ͷ૊Έ߹ΘͤΛ࡞੒͠ͳ͍Ͱ ͍ͩ͘͞ɻ ܗʣ ϙΠϯτ౳ʣ ॎ
  2. 遺跡地図GISの現在地 2/16 2025/8/18 メディアとしての「地図(化)」 • 地図は現実の写しではない – 地図の製作者によって取捨選択された必要事項のみ が描かれていることが前提。地表に存在しないもの でも必要があれば書き加えられることもある(⾏政

    区画や等⾼線など)。縮尺に応じた測量誤差もある • 地図には⽬的がある – ⼀般図と主題図︓⼀般図も⼟地利⽤や交通、都市の 成り⽴ちなど何らかの⽬的を持って利⽤される • 地図は記号のシステムである – 空中写真には記号がないが、地図記号を通してその 建物や⼟地利⽤がどのようなものかを把握できる • 地図を読むには予備知識が必要である – 地図を解釈すること「=読図」を伴う。 杉浦章介ほか編著 2010.『ジオ・メディアの系譜︓進化する地表象の世界』慶應義塾⼤学出版会.
  3. 遺跡地図GISの現在地 3/16 2025/8/18 遺跡地図GISの整備状況(野⼝・武内報告から⽰唆) webGIS」に収録されている「周知の埋蔵文化財包蔵地の範囲」が、国土地理院DEMデータにもとづく立体地形の上に 表示されるほか、古墳や城跡、発掘された遺構、文化財建造物などが公開されている。  以上、2023年12月時点では、デジタル化された「遺跡地図」関連データ、コンテンツとして、以下が利用可能であ る。 注1:「全国文化財情報デジタルツインプラットフォーム」では3D地図上に表示されるが地形データの表面にあわ せて表示されるもので3Dデータではない

    注2:「文化財総覧webGIS」上の平城宮跡のほか、埼玉県ふじみ野市が公開する「埼玉県ふじみ野市文化財情 報」サイト(注6)では、立会、試掘、本発掘調査範囲が表示される。 2.遺跡地図と3Dデータ  「遺跡地図」のデジタル化については自治体間の格差が大きく、その解消が進まない段階で3Dデータを取り扱うこ との是非を問う声も聞かれる。一方で、埋蔵文化財保護行政において、3Dデータは実務上必須である。  ここで言う3Dデータとは、3D点群やメッシュデータだけを指すものではない。平面で図化される地図上では車掌さ れる高さ(深度)情報を含むデータ全てを指す。このうち点群、メッシュは地物の形状に沿った詳細な高さ情報が記 録されており、再現することが可能である。一方、点データは、ある特定の地点における高さまたは深度だけが示さ れる。一つの平面的なポリゴンに対して一つの高さ(深度)が与えられると、一様の高さまたは深度をもつ直方体 (3Dポリゴン)が描画される。平面ポリゴンを分割しそれぞれに高さ(深度)を与えると、複数の直方体の組み合わ せ=多面体としての3Dポリゴンが描画できる。 野⼝淳「遺跡地図GISの3D化︓課題と展望」『デジタル技術による⽂化財情報の記録と利活⽤6』奈良⽂化財研究所 https://sitereports.nabunken.go.jp/cultural-data-repository/41 • ここで⾔う3Dデータとは、3D点群やメッシュデータだけを指すものでは ない。平⾯で図化される地図上では捨象される⾼さ(深度)情報を含む データ全てを指す。このうち点群、メッシュは地物の形状に沿った詳細な ⾼さ情報が記録されており、再現することが可能である。 • 埋蔵⽂化財保護において、開発⼯事等に伴う「周知の埋蔵⽂化財包蔵地」 での掘削(発掘)⾏為が埋蔵⽂化財に与える影響への対処が最も重要であ る(⽂化財保護法93〜96条)。⽂化庁(2022)によると、令和2年の周知 の埋蔵⽂化財包蔵地における⼟⽊⼯事の届け出(法93、94条)は全国で 70,498件と調査開始以降、ほぼ毎年増加している。 +寺前報告︓基準点のずれ・測量誤差(1/2500図で1.75m換算の許容誤差) 形式のうち形状を ⽰すもので、デー タフォーマットに ついても要検討
  4. 遺跡地図GISの現在地 6/16 2025/8/18 ベース・レジストリ(公的基礎情報データベース) • 公的機関等で登録・公開され、様々な場⾯で参照される、 ⼈・法⼈・⼟地・建物・資格等の社会の基本データ • ⾏政⼿続きの簡素化(ワンスオンリー化)や⺠間のデータ 利活⽤を促進し、正確性や最新性が確保されたデジタル社

    会の基盤を構築すること – ☑整備済︓法⼈番号、法令、⽂字情報基盤など – ❏整備中・改善を⾏っているもの ① 法⼈ベース・レジストリ(商業・法⼈登記関係データベース) ② 不動産ベース・レジストリ(不動産登記関係データベース) ③ アドレス・ベース・レジストリ(住所・所在地関係データベース) ④ 基盤地図情報、電⼦国⼟基本図(地図情報・オルソ画像) ⑤ 郵便番号 デジタル庁「ベース・レジストリ」 https://www.digital.go.jp/policies/base_registry
  5. 遺跡地図GISの現在地 7/16 2025/8/18 ベース・レジストリ未指定だが標準化が進んでいる領域 国⼟交通省:Project PLATEAU(3D都市モデルの整備・活⽤・オープン化) →国交省では、「建築・都市のDX」の重点分野として重視されるように • https://www.mlit.go.jp/plateau/ •

    Seto, T., Furuhashi, T. and Uchiyama, Y.: The Role of 3D City Model Data as an Open Digital Commons: A Case Study of Openness in Japan's Digital Twin "Project PLATEAU”, https://doi.org/10.5194/isprs-archives-XLVIII-4-W7-2023-201-2023
  6. 遺跡地図GISの現在地 10/16 2025/8/18 Project PLATEUの「3D都市モデル」とフォーマット • CityGML: 位置&形状(ジオメトリ)・属性情報(セマン ティクス)の両⽅を持った単⼀のフォーマットとして整備 –

    ビューワーに加え100都市以上を「オープンデータ」として提供 – PLATEAUは建物モデルだけでなく,道路・⼟地利⽤・植⽣など多様な 情報も包括的に提供している。 – 直接読み込めるアプリケーションは少ないが中間フォーマットである ため,GIS以外にBlenderやUnity(SDKで提供)などでも利⽤可能 https://www.mlit.go.jp/plateau/learning/
  7. 遺跡地図GISの現在地 11/16 2025/8/18 都市の⾼度な分析/GIS分析等 ・都市の可視化・現状分析 ・都市計画・政策の3次元分析 FGDB/.gpkg/GeoTIFF/ .las等 LOD1〜4 ・ブラウザ上で3D可視化

    ・ストーリー・テリング 3Dtiles/MBTiles/MVT LOD1〜4 ・都市施設等の設計や管理 ・環境シミュレーション .dxf/.dwg等 LOD3〜4 ・BIM/CIMによる施設の 設計・⼯程管理 IFC/.rvt/.rva等 LOD4 ・モデリングソフトによる 都市や建物CG作成 ・シミュレーション⽤モデル⽣成 .obj/.3Ds等 LOD2〜4 ・XRによる将来像体験 ・モデル製作ワークショップ .fbx/.stl/.3mf等 LOD2〜4 ・ブラウザ上で3D可視化 ・空間集計・空間抽出 .geojson/CityJSON等 LOD1〜3 ・GoogleEarth・都市構 造可視化計画ツールで の可視化 .kml等 LOD1〜3 都 市 の 可 視 化 / 市 ⺠ 向 け 情 報 発 信 / オ 0 プ ン 化 体験型の都市情報発信 都 市 施 設 の 設 計 ・ 管 理 ・ 各 種 シ ミ = レ 0 シ ? ン 相互変換 瀬⼾寿⼀ (2023) 空間メディアとしての地理空間情報と3D都市モデル,新都市,77(1),pp.78-84.
  8. 遺跡地図GISの現在地 12/16 2025/8/18 林野庁︓⾼精度な森林資源情報等のオープン化 →多様な形状で整備される基盤データの公開形式を明⽰ 種類 属性情報 イメージ図 公開形式 森林資源量

    集計メッシュ ・代表樹種 ・立木本数 ・平均樹高 ・材積 ・傾斜 等 ・ジオパッケージ (.gpkg) ・ベクタタイル (URL) 樹種ポリゴン ・樹種 ・樹種ID 等 ・ジオパッケージ (.gpkg) ・ベクタタイル (URL) レーザ林相図 RGB値 (樹種・樹冠 形状を色で 表現) ・ラスタタイル (URL) DCHM (数値樹冠高 モデル) 樹冠高 (m) ・TIFFファイル (.tif) 公開データの概要 種類 属性情報 イメージ図 公開形式 DEM (数値標高 モデル) 標高(m) ・TIFFファイル (.tif) ・ラスタタイル (URL) 微地形図 RGB値 (地形の特 徴を色で表 現) ・ラスタタイル (URL) 傾斜区分図 RGB値 (傾斜区分 を色で表現) ・ラスタタイル (URL) 赤 尾根(凸地) 青 谷(凹地) 明 緩傾斜 暗 急傾斜 0-15° 15-30° 30-40° 40-45° 45°- 赤系 スギ 黄系 ヒノキ 青系 マツ類 緑系 広葉樹 スギ ヒノキ マツ類 その他 3D表示 25m- 20-25m 15-20m -15m スギ ヒノキ 広葉樹 https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/keikaku/attach/pdf/231004-1.pdf
  9. 遺跡地図GISの現在地 14/16 2025/8/18 国⼟交通省 LINKS Veda • 保有する⾏政情報を データ化し、庁内の EBPMに寄与するため

    • 様々なアプリケーショ ンでの可視化を実現す るデータ管理システム としてOSS化 • ⾮構造化データの⾃動 正規化や集計・加⼯化 • 可視化アプリケーショ ンまで https://www.mlit.go.jp/links/
  10. 遺跡地図GISの現在地 15/16 2025/8/18 「遺跡地図」3D-GIS化の可能性と課題 • 課題として、時代・時期・調査⾯の上⾯・ 下⾯の標⾼値が、遺跡・調査区内で⼀致す るとは限らない場合の対応がある。 • 後述のLOD2遺跡深度詳細モデルとして定

    義できない場合は、地表(GL)からの相 対深度情報を与えた上で、地形データに追 随して個別範囲の深度を再現表⽰する⽅法 を検討すべきであろう。 野⼝淳「遺跡地図GISの3D化︓課題と展望」『デジタル技術 による⽂化財情報の記録と利活⽤6』奈良⽂化財研究所 https://sitereports.nabunken.go.jp/cultural-data-repository/41
  11. 遺跡地図GISの現在地 16/16 2025/8/18 遺跡地図GIS整備・普及をめぐる課題と展望 • ベース・レジストリ(≒ 標準化) を⽬指す必要性 – ⾏政DX(博物館DX)を⽀える公共財としての役割

    – 誰が(主体)、どのように(プラットフォーム・連携基盤)管理するか︖ – 「デジタル化のみ」が⽬的になってはならない点に注意(村野、2024) • 遺跡地図GISとしての整備と活⽤ – ミクロ〜マクロのマルチスケール/2〜3次元へ • LoDの概念が妥当と考えるが、同じような空間データを扱う、建築と地図 業界で⼤きな乖離も – 遺跡地図GISの整備・管理・利⽤の各ステイクホルダーのニーズの相違をどう 乗り越えるのか︖ • 空間データであることを契機に様々な組織間の参加と対話が必要 • GISデータ整備から公開の効率化(⾃動化)も合わせてやりたい – CityGMLが前提で良いのか︖ • CityGMLはモデル化のためのモデル • PLATEAU「3D都市モデル標準製品仕様書」873ページ • ADE(拡張)するという考え⽅も︓i-URやCHADEなど – 「現在」の空間データ(GIS)と重ねる意義 • ⽂化財実務としても必要 • 過去の地形・⾃然環境の精緻な復原もセットで考える必要 野⼝淳・村野正景編 (2024)『博物館DXと次世代考古学』雄⼭閣.
  12. 遺跡地図GISの現在地 17/16 2025/8/18 透明性 利⽤ 新たな要求・ 要件定義 標準化 参加型によるデータインフラ・デザイン •

    「透明性」を重視したデー タ活⽤の要素が必然 – 誰のために何のためにデー タやインフラが作られる︖ – どのような情報が公開され ると良いか問い続けること • データ利⽤だけでなく収 集・構造化・公開の各プロ セスにおける(再)設計に 市⺠参加が出来るかが重要 – 参加できなければ市⺠は客 体になることを懸念 – データ・アーカイブは使わ れることで価値が⾼まる データ インフラストラクチャ ⾏政内部 市⺠&利害関係者 データ Willis, K.S., & Aurigi, A. (Eds.). (2020). The Routledge Companion to Smart Cities. Routledge. の図を基に作成