Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
ついに来る!TypeScript5.0の新機能
Search
uhyo
January 18, 2023
Technology
21
16k
ついに来る!TypeScript5.0の新機能
TechFeed Experts Night#11 「ついに来る!TypeScript5.0の新機能」
uhyo
January 18, 2023
Tweet
Share
More Decks by uhyo
See All by uhyo
React 19 + Jotaiを試して気づいた注意点
uhyo
8
2.3k
TypeScriptの次なる大進化なるか!? 条件型を返り値とする関数の型推論
uhyo
3
2k
tsconfig.jsonの最近の新機能 ファイルパス編
uhyo
7
2.6k
非同期処理を活用しながらRust製wasmとJSを連携する方法(wasm-bindgenを使いたくない人向け)
uhyo
4
3.8k
tsconfig.jsonの設定を見直そう!フロントエンド向け 2024夏
uhyo
26
9.4k
React 19を概念から理解する
uhyo
22
10k
require(ESM)とECMAScript仕様
uhyo
7
2k
TypeScript Quiz (Encraft #12 Frontend Quiz Night)
uhyo
8
1.7k
Shadow DOMとCSSの現状
uhyo
11
7.5k
Other Decks in Technology
See All in Technology
プロダクト開発を加速させるためのQA文化の築き方 / How to build QA culture to accelerate product development
mii3king
1
270
社外コミュニティで学び社内に活かす共に学ぶプロジェクトの実践/backlogworld2024
nishiuma
0
270
祝!Iceberg祭開幕!re:Invent 2024データレイク関連アップデート10分総ざらい
kniino
3
320
オプトインカメラ:UWB測位を応用したオプトイン型のカメラ計測
matthewlujp
0
180
1等無人航空機操縦士一発試験 合格までの道のり ドローンミートアップ@大阪 2024/12/18
excdinc
0
170
多領域インシデントマネジメントへの挑戦:ハードウェアとソフトウェアの融合が生む課題/Challenge to multidisciplinary incident management: Issues created by the fusion of hardware and software
bitkey
PRO
2
110
Snykで始めるセキュリティ担当者とSREと開発者が楽になる脆弱性対応 / Getting started with Snyk Vulnerability Response
yamaguchitk333
2
190
10個のフィルタをAXI4-Streamでつなげてみた
marsee101
0
170
事業貢献を考えるための技術改善の目標設計と改善実績 / Targeted design of technical improvements to consider business contribution and improvement performance
oomatomo
0
100
AWS re:Invent 2024で発表された コードを書く開発者向け機能について
maruto
0
200
ブラックフライデーで購入したPixel9で、Gemini Nanoを動かしてみた
marchin1989
1
540
Wantedly での Datadog 活用事例
bgpat
1
530
Featured
See All Featured
実際に使うSQLの書き方 徹底解説 / pgcon21j-tutorial
soudai
169
50k
Optimising Largest Contentful Paint
csswizardry
33
3k
Why You Should Never Use an ORM
jnunemaker
PRO
54
9.1k
Fantastic passwords and where to find them - at NoRuKo
philnash
50
2.9k
Keith and Marios Guide to Fast Websites
keithpitt
410
22k
It's Worth the Effort
3n
183
28k
Docker and Python
trallard
42
3.1k
Save Time (by Creating Custom Rails Generators)
garrettdimon
PRO
28
900
Building Your Own Lightsaber
phodgson
103
6.1k
Git: the NoSQL Database
bkeepers
PRO
427
64k
Practical Orchestrator
shlominoach
186
10k
Embracing the Ebb and Flow
colly
84
4.5k
Transcript
ついに来る! TypeScript 5.0の新機能 TechFeed Experts Night#11 uhyo (株式会社バベル プリンシパルエンジニア)
おさらい: TypeScriptのリリースサイクル 3ヶ月に1回のリリースサイクル (4.9と5.0が4ヶ月空いているのは年末休みのため?) TypeScript 4.8 TypeScript 4.9 TypeScript 5.0
2022年8月公開 2022年11月公開 2023年3月公開(予定)
おさらい: TypeScriptのリリースサイクル TypeScriptはsemantics versioningを採用していないので、 5.0は他に比べて特別なリリースというわけではない。 TypeScript 4.8 TypeScript 4.9 TypeScript
5.0 2022年8月公開 2022年11月公開 2023年3月公開(予定)
TypeScript 5.0概観 • デコレータが実装! • あとはオプションの追加・変更が多く、バンドラ関連のサポー トが充実
①Stage 3 デコレータ実装 デコレータのプロポーザルがStage 3になり安定したため、 TypeScriptに実装される。 これまでの古い仕様に基づいた実装はLegacy Decoratorsとし てサポート継続 https://github.com/microsoft/TypeScript/pull/50820
experimentalDecorators: false experimentalDecorators: true ~TS 4.9 無 Legacy Decorators TS 5.0~ Stage3 Decorators Legacy Decorators ※発表時点でまだPRがマージされていないため、TS 5.1以降にずれる可能性もあります。
② 古いオプションの非推奨化が始まる TypeScriptには多くのコンパイラオプションがあるが、 エコシステムの変化や型システムの進化によりユースケースが 消滅したオプションもあるので廃止が始まる。 TypeScript 5.0: 廃止対象のオプションに対するwarningの表示 TypeScript 5.5:
オプションのnoop化 TypeScript 6.0: 廃止(指定するとエラーが発生) https://github.com/microsoft/TypeScript/issues/51000
廃止対象オプション 使われないオプションの中でもかなり古いものが選ばれた印象。 もう需要が無い系 • charset • noImplicitStrict • out 型システムの進化で必要が無くなった系
• keyofStringsOnly • noStrictGenericChecks 移行期間さすがに終わりだよ系 • suppressExcessPropertyErrors • suppressImplicitAnyIndexErrors TypeScriptの型チェックが厳しく なる際に後方互換性のために追加 されたが、 さすがにもう移行終わってそうな やつ
③ .tsによるimportが解禁 新オプションallowImportingTsExtensions: true を設定するこ とで、import { … } from
“./foo.ts” が可能になる。 制約: noEmit: true または emitDeclarationOnly: true と併用が必要。 (JavaScriptにトランスパイルしない設定の場合のみ許可される)
.tsによるimport解禁の背景 これまでTypeScriptは import “./foo.ts” の実装を拒んでいた。 理由: トランスパイル後は “foo.js” に直す必要があるが、ランタイムの 挙動を変えることになるのでTypeScriptとしてはやりたくない。
バンドラなら.jsに直さなくてもバンドルができるので解禁された。 (モジュール解決のホストであるバンドラが.tsの解決をサポートしている ので、.tsでimportするコードを妥当なTypeScriptコードとして扱うこと が正当化される)
④ モジュール解決に関する設定の追加 TypeScriptは独自にモジュール解決(import先の決定・読み込み) を行っているが、その挙動を調整するオプションが新たに追加され る。 TypeScript 5.0で追加される見込みのオプション: • moduleResolution: “bundler”
― バンドラと相性がいい設定 • 付随する新オプションたち: resolvePackageJsonExports, resolvePackageJsonImports, customConditions https://github.com/microsoft/TypeScript/pull/51669
バンドラ向けモジュール解決の概要 バンドラの特徴: • TypeScriptファイル間で直接import/exportできる。 (中間表現としてのJavaScriptを出力する必要がない) • package.jsonの imports/exportsを解釈できる。 (もともとnode.jsの機能だが、バンドラにもサポートされている) moduleResolution:
“bundler” の機能: • .tsでのimportや拡張子なしのimportも可能。 • package.jsonのimports/exportsを解釈する。
変更の背景 package.jsonのimports/exportsフィールドのサポート: 特にexportsフィールドは “my-package/foo”のようなサブパス のimportの挙動が制御できるのでとても便利だが、 従来はmoduleResolution: “node16” 下でのみのサポートだっ た。 理由:
そもそもpackage.jsonがNode.jsの機能なので、デフォルトでサポー トするのは妥当ではない。
変更の背景② 最近のバンドラはpackage.json関連の機能をサポートしている ので、それに合わせてmoduleResolution: “bundler” でも package.json関連の機能が有効化される。 嬉しい点: moduleResolution: “node16”はimportに拡張子が必須になるため バンドラ環境で使うのが難しかったが、今回の機能追加によりバンドラでも
package.jsonの機能が使えるようになった。 また、バンドラの多様性が反映され、細かい挙動が調整可能になった。 (オプション4つ新設)
⑤ 任意の拡張子をimportするオプション TypeScript 5.0で追加される allowArbitraryExtensions: true を使用すると、 import “./foo.css” など任意の拡張子をimportでき
るようになる。 https://github.com/microsoft/TypeScript/pull/51435
⑤ 任意の拡張子をimportするオプション TypeScript 5.0で追加される allowArbitraryExtensions: true を使用すると、 import “./foo.css” など任意の拡張子をimportでき
るようになる。 Q. 前からできたのでは? https://github.com/microsoft/TypeScript/pull/51435
⑤ 任意の拡張子をimportするオプション TypeScript 5.0で追加される allowArbitraryExtensions: true を使用すると、 import “./foo.css” など任意の拡張子をimportでき
るようになる。 Q. 前からできたのでは? A. moduleResolution: “node16” だとできなかった。 Node.jsではimport時に .js という拡張子が必要なので、それ以外の拡張子 は許可されていなかった。 https://github.com/microsoft/TypeScript/pull/51435
CommonJS時代の型定義ファイル解決 従来、require(“./foo.css”) に対する型定義ファイルは foo.css.d.ts として用意できた。 ただし、実はfoo.css.d.tsはfoo.css.js に対する定義ファイル。 require(“./foo.css”) ↓CommonJS的解釈 foo.css.js
←型定義 foo.css.d.ts
Node.jsのES Modulesだと…… Node.jsのESMだと拡張子を省略できない。 import “./foo.css” ←型定義 ??? ↓別物↑ import “./foo.css.js”
←型定義 foo.css.d.ts
Node.jsのES Modulesだと…… Node.jsのESMだと拡張子を省略できない。 import “./foo.css” ←型定義 foo.d.css.ts ↓別物 import “./foo.css.js”
←型定義 foo.css.d.ts TypeScript 5.0で .d.ext.ts が導入される。 CommonJS時代には真剣に考慮する必要がなかった拡張子に 関するサポートを拡張した結果生まれた。
総評 TypeScriptはこれまでモジュール解決をむやみに拡張可能にする のではなく、現実のユースケースに合致することを重視してきた。 今回もその流れは変わらず、Node.jsでの非JSファイル読み込み やバンドラという具体的なユースケースを念頭においた機能追加 だった。 昔の独自路線(enumとか)を反省してか、TypeScriptは独自の 仕様を作ったり普及させたりしないようにかなり気を付けている ように見える。
所感 フロントエンド開発でpackage.jsonのexportsを使いたい際に ネックになるのがTypeScriptだったので、5.0でそこが解消され るのはとても嬉しい。 デコレータも正式版が実装されたら設計に取り入れたい。 おわり