Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

10Xに技術的負債をもたらした「2つの境界の歪み」その構造と解消への営み

Avatar for 10xinc 10xinc
September 15, 2026

 10Xに技術的負債をもたらした「2つの境界の歪み」その構造と解消への営み

Avatar for 10xinc

10xinc

September 15, 2026

More Decks by 10xinc

Other Decks in Technology

Transcript

  1. チームの責務境界 Before: 顧客単位で開発チームを組成 • • • 10X, Inc. ALL RIGHTS

    RESERVED 当時は、個々のパートナーの 質問や要望にタイムリーに答 えることが特に重要だった。 着手までのリードタイムを減ら すために顧客単位でチームを 組成した。 将来的にプラットフォーム的な チームの組成を予定してい た。 16
  2. チームの責務境界 実際どうだったか? 良かった点: • パートナーに寄り添った意思決定/開発ができた。 • ビジネスサイドと開発チームが密にコミュニケーションしパートナーの 課題を柔軟に解決することができた。 • 実際に調査や要望に答えるスピードは上がった。

    課題となった点: • 短期的に要望に答えるため、時に保守や長期的な観点を欠いた機能開発 が行われた。 • 対象とする業務の知識が開発チームに蓄積されない。 • 開発した機能のオーナーシップを持ちきれない状態になった。 10X, Inc. ALL RIGHTS RESERVED 17
  3. チームの責務境界 オーナーシップを持ちきれない、とは? • • • • ある機能を作った開発チームがそれをリリース後に運用し続けるわけで はない。 「運用でツケを払うのが開発したチーム自身」という構造になっていな かった。

    長期的に機能としてどうあるべきかを考えた上でNoを言うことが難し い。結果、局所最適な実装が多くなる。 業務の理解よりも、目の前の課題を解くことにフォーカスする。 10X, Inc. ALL RIGHTS RESERVED 18
  4. チームの責務境界 After: ドメイン別に開発チームを組成 • • • 10X, Inc. ALL RIGHTS

    RESERVED 業務ドメインの単位で開発 チームを再構築。 要望に答える速度よりも、長 期的にプロダクトが良いコン ディションを保てることを重 視。 ドメインごとに開発チームが オーナーシップを持って運用 する。 20
  5. チームの責務境界 チームの構造によってすべてが解決したのか? • • • • No。構造は問題を解決しやすくする方向づけをするが、それによって 解決するわけではない。 各開発チームがソフトウェアの保守性を下げる要素を整理したり言語化 し、1つずつ向き合って解決してきた。

    その改善に時間を割く、という組織としての意思決定は必要。 また、期待する開発に時間を割くことができる状況かのヘルスチェック も定期的に実施する必要がある。 10X, Inc. ALL RIGHTS RESERVED 23
  6. チームの責務境界 顧客別のチーム構造の再考余地 • • • 10X, Inc. ALL RIGHTS RESERVED

    この形も当然事業や組織の状 況によって成立し得る。 ただし、組織やソフトウェア上 に境界/ガードレールがない と、容易に個別性がプラット フォームを侵食する。 プラットフォームの外側と内側 の境界をソフトウェア上でも明 示的に設計し、 IFや契約を介 して個別性を外側に配置でき るなら成り立つと考える。 25
  7. 顧客との責務境界 何に時間を割いていたのか? • • 機能の改修や開発以外の保守に、多くの時間を割いていることがわかっ た。 イレギュラーな調査やオペレーション(イレギュラーといいつつ、実際 には定常的な業務になっている)。 イレギュラーな作業の例 •

    • • 一定の頻度で必要となる手動オペレーション。 コード内にハードコーディングされた設定値の変更。 内部データを確認する必要がある調査依頼。 10X, Inc. ALL RIGHTS RESERVED 29
  8. 顧客との責務境界 レギュラーなイレギュラー作業 • • • • • アプリケーションの仕様やコードで表現されていない業務。 アプリケーション上でガードレールを設計できず事故りやすい。 想定しなかったステータスやデータの状態になりかねない。

    アプリケーションで担うべき業務がアプリケーションで表現されていない、 というモデリングの負債とも言える。 (アプリケーションで担うべきではない業務を持っているが故の負債、もあ る。) 10X, Inc. ALL RIGHTS RESERVED 30
  9. 顧客との責務境界 歪みを正すために - 責務の境界を再設計する • • • 10X, Inc. ALL

    RIGHTS RESERVED アプリケーションの利用者とアプリ ケーションの責務の境界を改めて明 らかにする。 そのために、イレギュラーだと捉え ていた業務を改めて理解した上で、 ソフトウェア上にモデリングする。 技術的な修正だけではなく、仕様や アプリケーションの利用方法を含め た線引きの調整が必要になる。 32
  10. 顧客との責務境界 言葉の発明 - 運営自律性 • • • 「ネットスーパーの運営を小売企業で完結させるための機能が揃ってい るか?」を意味する言葉。 保守性に向き合うタイミングで誕生し、社内では浸透している。

    この「運営自律性」という言葉があることによって、仕様や設計の時点 でその運営まで含めて正しい責務を設計できてるか?を意識しやすく なっている。 10X, Inc. ALL RIGHTS RESERVED 38
  11. おわりに 生成AIと境界の課題 • • • • ここまで話したような境界の課題は、生成AIで開発コストが下がる世界 では課題とならないのでは? 初期的にはYes。ただし、構造が誤っていれば結局コストは増え続け る。

    コストは無くなったわけではない。トークンという形で支払うことにな る。 ある意味、初期にサインが見えづらくなるので、より注意深くなる必要 があるのではないか。 10X, Inc. ALL RIGHTS RESERVED 41