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20250629デザイン学会_連続的に活動を生み出すリビングラボプラットフォームのメカニズム

 20250629デザイン学会_連続的に活動を生み出すリビングラボプラットフォームのメカニズム

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Kimura Atsunobu

June 29, 2025
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  1. 1 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 2025年6月28日 木村

    篤信 連続的に活動を生み出す リビングラボプラットフォームのメカニズム ~豊かな共創プロジェクトを生み出し続ける神山つなぐ公社を事例として~ 2025.6.28 日本デザイン学会第72回春季研究発表大会
  2. 2 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは Carayannis,

    E.G., Campbell, D.F.J., 2009. “Mode 3″ and “Quadruple Helix”: toward a 21st century fractal innovation ecosystem. Int. J. Technol. Manag 46, 201. 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model モノ・コトをつくるときに 生活者と行政・企業・大学が共に 暮らしの場(リビング)において 試行錯誤(ラボ)をする活動・場 (人口減少時代の社会課題解決に必要な方法論 ≒コレクティブ・インパクト) デンマークのスマートシ ティ研究者とともに、日 本初のリビングラボ書籍 (教科書)を刊行。全国 30カ所で対話イベント実 施予定。 千葉工業大学(情報学部・デザイン学部) 関西学院大学(イノベーション研究会) 官民共創HUB×東京大学(産官学民関係者) 徳島県神山町(地域創生関係者)
  3. 4 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 発表の構成 •連続的に活動を生み出す共創プラットフォームの必要性

    •関連研究 •神山つなぐ公社/「まちを将来世代につなぐ」プロジェクトの分析 •共創プラットフォームのメカニズム仮説
  4. 5 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 連続的に活動を生み出す共創プラットフォーム 共創プラットフォームの価値を理解することは、地域でほんとうに心を尽くしてま

    ちをよくしていこうと思っている人たち・組織における共通の課題なのでは? (科研基盤研究(C)「地域の共創基盤としてのリビングラボのアウトカムを評価する標準フレームワークの構築」) プロジェクトは成果がわかり やすく、評価・投資のサイク ルがまわる プラットフォーム/中間支援 組織は見えづらい、理解され づらい活動のため、メカニズ ムの認識がなく、プラット フォームの評価・投資のサイ クルが回らない 共創活動 総体的・連続的 に深める問い 主体的に 動き出せる土壌 やってみる どうあるべきか のんびりする やってみる ※木村ら(2021)持続的な活動/持続的な変化に向けたリビングラボ概念の拡張,第68回 日本デザイン学会 春季研究発表大会 成果・報告・形式知の領域
  5. 6 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 関連研究 葉や果実に関する研究はある

    LL-PF組織を評価する研究 [6,7]は主にPJ推 進のためのPF機能 森全体に関する研究はある 共創PJが地域に与える長期的な成果を評価 する手法[8,9,10] 太陽・幹や根・土壌に関する 研究もあるが、内実は不明確 成功事例分析より要因を抽出して定量指 標化しているが、メカニズムの分析に 至っていない [11,12]
  6. 8 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 徳島県神山町 ~人口5000

    人の小さな町はなぜ進化し続けるのか? ※大南(2021)徳島県神山町~人口5000 人の小さな町はなぜ進化し続けるのか?,宮崎県総合計画審議会. https://www.pref.miyazaki.lg.jp/documents/66504/66504_20220104155628-1.pdf 2015~ まちを将来世代につなぐ プロジェクト(つなプロ) &神山つなぐ公社 神山で大事にされてきた メカニズムを、仕組み・ 組織として体現したのが つなプロ&つなぐ公社
  7. 9 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs まちを将来世代につなぐプロジェクト(つなプロ) 概要:

    「よく出来た計画書をつくっても、実行出来なければ意味があ りません」という文章で始まる神山町の創生戦略、人口ビジョ ンの計画書。実行するための計画を作るために、「2020年に神 山分校が廃校に」「バスが廃線になる」「2040年には小中学校 も廃校に」などの「なりゆきの未来」を共有した上での対話の プロセスが重視され、地域から実行する人がでてきた事業を計 画にする、というアプローチが取られた。その結果、町民や役 場職員を主体としたプロジェクトが生まれ、まちを将来世代に つなぐための循環が生まれている。 主体:一般社団法人 神山つなぐ公社、神山町 (2015~) 活動: 「神山の食と農をつなぐ」フードハブプロジェクト 大埜地の集合住宅「鮎喰川コモン」 徳島県立城西高等学校「神山創造学」 県外遠方生向けの町営寮「あゆハウス」 地域との関わり方: 神山つなぐ公社が民間の立ち位置で、行政では為しえない柔軟 な発想や手法で、必要な施策推進を迅速に手がけている。開か れた活動拠点を持ち、町職員と住民、町内外の人々がかかわり 合うプロジェクト群を黒子のように支援している。意志のある 実行主体の発見に至らない要推進事項についてはみずから牽引 し、事業化の過程で主体を見出し、上記のようなな活動を立ち 上げてきた。
  8. 10 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 「神山の食と農をつなぐ」フードハブプロジェクト 2016年4月に神山町役場と神山つなぐ公社、㈱モノサスが共同で設立した「神山の農業を次世代につな

    ぐためにできた農業法人」。中山間地域の農業者の高齢化、後継者不足、耕作放棄地の増加、鳥獣害の 被害などを少量生産と少量消費をつなぐことで解決することをめざしている。 https://foodhub.co.jp/about/work/
  9. 11 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 大埜地の集合住宅「鮎喰川コモン」 新たに家を建てる土地や借りられる家を見つけづらい状況で、子育て・働き盛りを中心に、将来世代に繋がる人々が人

    生のある時期を暮らし、新しい兄弟関係や隣人としての関係性を育み合える場を、町の賃貸住宅として整備した。住宅 開発だけでなく、町産材・町内業者、地域の高校生などとの連携により、人が育ち、これまで離れ離れにあった地域資 源をつなぎ直す、多義的な建設プロジェクトとなっている。 神山で育った樹木で景色を育てる 大埜地住宅の庭の高木や生垣には、神山で育った樹木を調達し ています。2016(平成28)年から、城西高校神山校の生徒らと、 神山の山から種とりや挿し木をして、町産の苗木を増やし育て る取り組みも進めています。 学校で学びながら、まちの景観をつくり、それを育くんでゆく 過程を、田瀬理夫さん(ランドスケープ設計者)を水先案内人 に進めてきました。 https://www.town.kamiyama.lg.jp/co-housing/green.html https://www.town.kamiyama.lg.jp/co-housing/building.html 神山の木で、まちの人が作る 町産材の杉・ヒノキを構造や内外装に使用しています。木材は 伐採から200年間強度を高めていく耐用年数の長い建材で、調 湿効果や香り、抗菌作用等の効用も有します。近くの山の木を 使うことで、森の手入れが進み、経済も循環します。(中略) 通常、大規模な建設工事はその発注規模から町外の大手工務店 に頼る形となりやすく、それは町の大工さん等が自分たちの町 をつくる事業に参画しにくい状況を生み出します。そこでこの 開発では、分棟型の木造建築として設計し、かつ開発を4年間 にわたらせることで、町内の大工さん等が腕を振るいながら少 しずつ完成させてきました。これは人材育成の機会でもあり、 町のお金を町外に流さずに、地域内経済循環性を高めることに もつながります。 https://www.town.kamiyama.lg.jp/co-housing/wood.html https://www.town.kamiyama.lg.jp/co-housing/building.html
  10. 13 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 調査・分析手法 探索的・動的に目的が変化する流動的な評価指標が必要と考え、社会イノベーションの分野で「流動的で前進的な対象

    を評価するための評価のやり方」と定義されているDevelopment al Evaluation(DE:発展的評価)[14]を基盤とし, 調査を設計した。 1.2015年の状態分析 神山町役場・公社の既存資料の調査,公社の既存の事業内 容調査,神山町役場・公社の内部関係者インタビュー,外部関 係者インタビュー等 2.成功の姿/行動原理の確認 まちを将来世代につなぐプロジェクトにおける「つなぐ」の概念整理 3.2024年の状態分析 公社の内部関係者による、対話によって活動の成果を視覚化し ていくIOOワークショップ 4.分析・評価 2015年と2024年(ビフォー/ナウ)のアクター/アクティビティ の比較と事業のナラティブ分析 インタビューから抽出する公社(つなプロPF)の役割とアウトカム つなプロのメカニズム分析
  11. 14 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 2015年の状態分析 2015年時点の神山町も、グリーンバレーが中心となり、十数年続いてきたArtist

    in Residence(KAIR)や、特に東 日本大震災後に増えたIT企業などのサテライトオフィスの動きが、「創造的過疎」という大南さんの言葉とともに注目されて いた。一方で、その担い手や取り組みの分野などは限られていた。
  12. 15 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 成功の姿/行動原理の確認 「つなぐ」の多義性

    具体的には,将来世代である子 どもにまちの文化をつなぐとい う時間軸概念に加えて,単なる “現状の維持ではなく、必要に 応じみずから変わってゆくこ と”,能動性、協調性による新 たなコモンズを醸成すること, 垂直的な世代だけでなく水平的 に多様な立場の人とつながるこ と,人間だけでなく森や川など の自然もアクターとして捉える ことなどが含まれていた。
  13. 19 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 分析・評価 インタビューに際しては、研究の目的と調査の進め方、データの取扱いについてあらかじめ説明を行い、同意書(次頁)に

    て協力意思を確認した上で調査を実施した。5回分の音声データをもとに逐語録を作成し、M-GTAの方法に則りコーディ ングを行ったうえで、コードマトリクスを作成し、公社/つなプロ関係者に対する調査の大南さんのデータを重ね合わせて概 念整理を行った。
  14. 23 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 地域の種火(資源) 役場

    大工 まちの大工さんの 仕事をつくりたい 子育て世代向けの 住宅の整備 現象面
  15. 24 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 地域の種火(資源) 役場

    大工 発注方法の工夫 子育て世代向けの 住宅の整備 現象面
  16. 27 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 地域の種火(資源) 子育て世代向けの

    住宅の整備 大工 現場常駐の 設計管理者 役場 現象面
  17. 28 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 地域の種火(資源) 子育て世代向けの

    住宅の整備 役場 大工 まちの大工さんの 仕事が続く 現象面
  18. 29 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 地域の種火(資源) 役場

    町産材の 活用 現象面 子育て世代向けの 住宅の整備
  19. 30 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 地域の種火(資源) 役場

    地域性種苗の 育成 現象面 子育て世代向けの 住宅の整備
  20. 31 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 地域の種火(資源) 役場

    鮎喰川 コモン 現象面 子育て世代向けの 住宅の整備
  21. 32 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 現象面 地域性種苗

    鮎喰川コモン 子育て世代向けの 住宅の整備 大工の継業 町産材の活用 地域の種火(資源)
  22. 34 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs プラットフォームが「ないとき」 実現方法の検討

    将来像 →見えない 種火 →生まれてこない 活動 →途切れて現象面に現れない ビジョン面 潜在的資源 顕在的資源 (種火) PJ (活動) 将来像 現象面 リソース面 中断・挫折 もうだめだー 中断・挫折 どうすればい いかわからな い
  23. 35 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs プラットフォームが「あるとき」 実現方法の検討

    将来像 →体現したり対話したりす ることで身体的に連帯を生 み出す 種火 →潜在的な資源をあたためて 徐々に孵化させていく 活動 →あの手この手を打ってなんとか 現象面につなげる(時には待つ) ビジョン面 潜在的資源 顕在的資源 (種火) PJ (活動) 将来像 現象面 リソース面 実現 できた!
  24. 36 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs プラットフォームのメカニズム1: 住民のリアリティと地域の未来を見据えて問い続ける

    実現方法の検討 ビジョン面 潜在的資源 顕在的資源 (種火) PJ (活動) 将来像 現象面 リソース面 1.対話の場づくり(1期WG、成り行きの未来) 多義的な成果 継続 実現 2.活動がビジョンを体現 (幹となる自主事業) 地域外の事例・経験の獲得 地域外の人・組織との仲間づくり 3-2.地域外関係づくり (イン神山、視察&報告会、 企業版ふるさと納税) 町民の理解醸成 想いを掘り起こす 3-1.地域内関係づくり (集合住宅だより、バ スツアー、つなプロ報 告会)
  25. 37 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs プラットフォームのメカニズム2: 地域内外の多様なつながりを豊かにし種火を生み出す

    実現方法の検討 ビジョン面 潜在的資源 顕在的資源 (種火) PJ (活動) 将来像 現象面 リソース面 2.つながる場づくり 多義的な成果 継続 実現 町民の理解醸成 想いを掘り起こす 地域外の事例・経験の獲得 地域外の人・組織との仲間づくり 1-1.地域内関係づくり (集合住宅だより、バ スツアー、つなプロ報 告会) 3.意欲のあたたまり (近接的関わり、WG、 報告会) 1-2.地域外関係づくり (イン神山、視察&報告 会、企業版ふるさと納税) 2.つながる場づくり
  26. 38 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs プラットフォームの機能3: 多様なリソースとともに問いに向けた実現にコミットする

    実現方法の検討 ビジョン面 潜在的資源 顕在的資源 (種火) PJ (活動) 将来像 現象面 リソース面 つながる場づくり 多義的な成果 継続 実現 1. あたたまっている種火 メンバーとの対話 2. 多様なリソースととも に実現にコミットみ出す 3.活動がビジョンを体現 (幹となる自主事業)
  27. 40 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 連続的に活動を生み出す共創プラットフォームのメカニズム仮説 1-1.問いがないと、単発的なプ

    ロジェクトになる 1-2.地域のリアリティを捉えて いないと、抽象的な問いになる プラットフォームがない場合 2-1.組織を超えた共創ではコ ミットする人がいないと停滞する 2-2.予算の確保がなくなるとプ ロジェクトが中断する 3-1.既存の狭い関係性に閉じて 新しい活動が生まれない 3-2.役割だけの関わりになり、 役割のはざまの問題が対象化しな い 特徴3: 地域内外の人と多様な関係性 をつくり、意欲を引き出す 特徴2: 問いに向けて責任を持って 実行にコミットする 特徴1: 住民のリアリティと 地域の未来を捉えて問い続ける
  28. 41 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 今後の予定 ・この見えづらいメカニズム仮説を、他の地域・団体において検証しながら、ブラッシュアッ

    プをしていきたい(同じ悩みをお持ちの方、ご一緒させてください) ・また、このメカニズムを可視化・評価し、共創プラットフォームの投資のサイクルを回すた めの仕組みを検討したい 特徴3: 地域内外の人と多様な関係性をつくり、 意欲を引き出す 特徴2: 問いに向けて責任を持って 実行にコミットする 特徴1: 住民のリアリティと 地域の未来を捉えて問い続ける