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20251122DialogueforChange2025広島

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November 22, 2025

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  1. 1 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 木村 篤信

    地域創生Coデザイン研究所(NTTグループ) ポリフォニックパートナー 東京理科大学 客員准教授 日本リビングラボネットワーク 代表理事 社会システム転換に向けた NTTグループの取り組み 2025/11/22 Social Innovators Gathering for Next Hiroshima 「Dialogue for Change 2025」
  2. 2 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 学術領域紹介 情報科学

    (キーワード:情報デザイン、ヒューマンインタフェース、 インタラクション,CSCW,VR) デザイン学 (キーワード:サービスデザイン,デザイン態度, コ・デザイン、参加型デザイン,リビングラボ, ソーシャルデザイン) システムデザイン理論 (キーワード:社会システム,トランジション(転換), ウェルビーイング,公共政策,地域社会、 ソーシャルイノベーション) 学会活動 日本デザイン学会,ヒューマンインターフェイス学会,情報処理学会,電子通信情報学会,サービス学会,共創学会,人間中心設計推進機構等 人と人がコミュニケーションし,関係を築いていく暮らしを, より面白く,豊かに,効果的にするためには,情報デザ イン、ヒューマンインタフェース、インタラクション,CSCW、 VR/ARなどの情報技術の研究が必要になります. 新しいメディア体験を創出するために,遠隔コミュニケー ションを活性化するための五感フィードバックに関する研究 や,日常的な会話や出会いの場を支援するコミュニケー ションメディアの研究を行ってきました. 社会に意味のある価値を探索し、社会実装するためには, 既存の社会の枠組みや役割に囚われない,セクターを 超えた共創のデザイン方法論が必要になります. 企業・行政・市民活動において,誰もがデザインに取り 組むために必要な手法や環境設計の方法論を研究し, ガイドブック・ツール等を開発するとともに,企業のビジネス 開発,行政の計画策定,地域のコミュニティづくりの実 践を行ってきました. ウェルビーイングな社会を実現するためには,現象的な問 題だけに取り組むのではなく、問題の構造(社会システ ムのエラー)を捉え,また一方で生活者のリアルなナラ ティヴを捉え,システム世界と生活世界の両面をハッキン グしながら転換する第三のデザイン(システムデザイン理 論)が必要になります. 福岡県大牟田市などで団体を立ち上げ,システム転換 を志向する統合的な実践と社会システムデザイン方法論 の提案を行うとともに,愛知県、奈良県、東京都など他 地域での展開を行っています。 NTT研究所 地域創生Coデザイン研究所(NTTグループ) 東京理科大学等 (一社)日本リビングラボネットワーク
  3. 3 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 協働と共創:いずれもセクターを超えた共創の方法論 「Co-Procuction:協働」

    (行政学・社会学用語) 1977年~ 米インディアナ大の政治学者ヴィンセント・オストロムが、「地 域住民と自治体職員とが協働して自治体政府の役割を果 たしてゆくこと」の意味を一語で表現するために造語したもの。 (Comparing Urban Service Delivery Systems, 1977) 日本では、荒木昭次郎がCo-Procuctionを「協働」と訳し、 「地域住民と自治体職員とが、心を合わせ、力を合わせ、助 け合って、地域住民の福祉の向上に有用であると自治体政 府が住民の意思に基づいて判断した公共的性質をもつ財 やサービスを生産し、供給してゆく活動体系である」と定義 (参加と協働:新しい市民=行政関係の創造, ぎょうせい, 1990) 「Co-Creation:共創」 (経営学・マーケティング学用語) 2004年~ 米ミシガン大ビジネススクール教授コインバトール・K・プラハ ラードとベンカト・ラマスワミが提起した「企業が、様々なステー クホルダーと協働して共に新たな価値を創造する」という概念。 (The Future of Competition: Co-Creating Unique Value With Customers,2004) これからの時代、顧客と一緒になって価値を生みださなけれ ば企業は競争に生き残れないと説き、「企業主体の価値創 造」から「顧客中心の価値共創」の時代へという新しいパラダ イムを提示した。
  4. 4 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは Carayannis,

    E.G., Campbell, D.F.J., 2009. “Mode 3″ and “Quadruple Helix”: toward a 21st century fractal innovation ecosystem. Int. J. Technol. Manag 46, 201. 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model モノ・コトをつくるときに 生活者と行政・企業・大学が共に 暮らしの場(リビング)において 試行錯誤(ラボ)をする活動・場 (人口減少時代の社会課題解決に必要な 方法論 ≒コレクティブ・インパクト) デンマークのスマートシティ研 究者とともに、日本初のリビ ングラボ書籍(教科書)を 刊行。全国30カ所で対話イ ベント実施予定。 千葉工業大学(情報学部・デザイン学部) 関西学院大学(イノベーション研究会) 官民共創HUB×東京大学(産官学民関係者) 徳島県神山町(地域創生関係者) リビングラボML トーク含めたLLイベント情報
  5. 5 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 世界のリビングラボの分布(ENoLL過去登録済みリビングラボ 500+@40か国,ENoLL,

    2024) ※ENoLLとは 欧州で2006年に立ち上がったリビングラボの 国際的ネットワーク。欧州委員会の資金提 供プロジェクトを活用しながら、EUの政策提 言や、リビングラボの推進に取り組んでいる。 出典:https://enoll.org/
  6. 6 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボで扱われる様々なテーマ building

    mobility dormitory & office gastronom y water children agriculture smart city handicap
  7. 7 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボが活用される場面 欧州をはじめとしてさまざまなプロジェクトが取り組まれており(440+)※1日本では経産省・厚労省が活用し

    始めている(100+)※2また、大きくは以下の4種の場面で活用されている※3 ②行政サービス改善 (enabler-driven) -住民・NPOと自治体の関係性構築 -陳情や自治体の政策エビデンス獲得 -地域としての政策イノベーション by自治体・住民/NPO etc. ①サービス・技術開発 (utilizer-driven) -サービス検証 -サービスイノベーション創出 by民間企業・大学etc. ③地域活性化 (user-driven) -地域関係者のつながり形成 -地域のにぎわいづくり(イベント) -持続的な住民生活の問題解決・価値向上 by住民/NPO・デベロッパー・ 自治体 etc. ※1:European Network of Living Labs (ENoLL) 5大陸35カ国から151組織のアクティブメンバー(過去の登録メンバーは全 世界で500組織以上)(2023.04) ※2:木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における構造的課題、(調査資料 2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局 ※3:Leminen, S., Westerlund, M., & Nystrom, A. G.(2012).Living Labs as open open-innovation networks, Technology Innovation Management Review Review. ④方法論研究 (provider-driven) -方法論の実践 -方法論の体系化と展開 By大学・研究機関 etc. 松本ヘルスラボ ME-BYOリビングラボ 丹後リビングラボ 佐渡島自然共生ラボ イノベーション神戸 Turinリビングラボ ・・・ 鎌倉リビングラボ みんラボ フューチャー・リビ ング・ラボ(日立) ノボ ノルディスク エーザイ韓国 ・・・ おやまちリビングラボ 寿リビングラボ WISEリビングラボ デルフト工科大 ・・・ 東大 KDDI研 NTT研 i-mec Public- intelligence ・・・
  8. 8 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:循環型都市を開発していくための実験室 De

    Ceuvel 概要: 1世紀にわたる造船業によって荒廃し土壌汚染していた造船所跡地を改 善するため、アムステルダム市が民間公募して生まれた循環型都市開発 のためのリビングラボ。アムステルダム北部に位置する敷地面積1250m² の小さなエリアで、地域のエネルギー、栄養素、廃棄物サイクルの「ループを 閉じる」完全なリサイクルを実現する再生技術の開発や実証に、建築家、 芸術家、起業家、研究者、ボランティアなど多様な組織が協力して取り組 んでいる。アムステルダム市からの補助金(€250,000)と市の保証によ る銀行融資(€200,000)を受けて資金を調達している。14隻の貸し 出しハウスボード、ラボ&コミュニティ施設、レセプションスペース、カフェ・レス トランから構成され、文化的およびコミュニティのハブとなっている。 主体:Metabolic社 (2014~2024) 活動: ハウスボートは廃船をアップサイクル利用し、根を通して汚染物質を吸収し て分解する特殊な植物で覆う「分散型葉緑素ろ過のシステム」を開発 再生可能エネルギーの地域生産と交換を促進するため、ブロックチェーン 技術を用いた仮想通貨のJouliette(ジュリエット)を導入 温室で育てた植物、海藻バーガー、キノコで作ったミートボールなどを敷地 内レストランで提供 地域との関わり方: 毎年35,000人を超える訪問者(Covid-19前)。 作り手として関わるイベント(土壌を回復させる植物を植える、カフェやハウ スボートオフィスなどのテーブルなどに釘を打つ、オフィスのデザイン等) ②行政サービス改善 ①サービス・技術開発 ③地域活性化
  9. 9 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:行政・専門家に閉じないみんなで創っていくプロセス 概要:

    旧小千谷総合病院の統合移転に伴う跡地整備の計画として、図書館を 核とした複合施設を整備し、中心市街地の活性化を図る事業が起点に なったプロジェクト。その根幹には、リビングラボの思想と重なり、新しい公共、 新しい公共空間をみんなで創っていくプロセスが大事にされた。そして、「つく る」「つかう・参加する」「見つけ・動かす」などにフェーズを区切りながら、まち や公共施設における市民の関わり代を生み出していった。2020年12月の プレイベントより始まったこのプロジェクトを経て、2024年9月に施設「ひと・ま ち・文化共創拠点 ホントカ。」がオープンし、市民が関わる多数の活動が 行われている。 主体:小千谷市役所 (2020~) 活動: 市民参加プラットフォームを育てるためのシンポジウム 第1~16回小千谷リビングラボ「まちと公共施設の未来をともに創造する」 小千谷リビングラボ(仮称)愛称市民投票 出張at!おぢや(ふるさと夢づくり教育) 新潟工科大学連携プログラム 共にある 共に創る暮らし「鰯新聞」(いわしんぶん) 地域との関わり方: 従来は行政と委託事業者だけで進めていたプロセスを、市民に開き、市民 がみんなで創っていくプロセスとなるように事業が設計された。また、施設の 設計においてもハード中心ではなく、その後の活動が中心となるように、地 域の若者、子育て世帯、高齢者など多様な人が活動しやすくする仕掛け を埋め込んでいる。 ②行政サービス改善 ③地域活性化
  10. 11 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 日本のリビングラボに関連する国内政策 第6期科学技術・イノベーション基本計画

    内閣府 COI-NEXT、地域大学振興 文部科学省 産業開発・イノベーション政策 経済産業省 介護ロボット開発・実証 厚生労働省
  11. 12 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 共創0.0:仮説検証(フィールド検証) 企業が地域で

    ソリューションを検討し提供する 提供者 (企業) 地域 企業のソリューション提供が主題であ り、共に価値を考えるプロセスがない 企業にとって意義 ・市民/地域のニーズを把握・検証できる ・市民/地域にトライアルとしてサービス提供できる (仮説検証リビングラボ) ・共創というよりは、検証(実証実験)・営業・プロモーションの効果 地域にとっての意義 ・無償提供期間は企業のリソースを活用できる ・自治体の産業振興課などは実績作り・PRになる ・ただし、地域に共創で取り組みたい地域像がない場合が多く、参画 した他部署・地域関係者にメリットがあるかは不明(実証の多い地 域では、実証疲れ)
  12. 13 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボプロジェクトの事例 生活者・自治体・企業が地域/現場で課題探索や社会実装の試行錯誤を重ねることで,

    社会課題解決をするサービスを開発し,展開する事例が増えている 子 ど も の 成 長 ( 妊 娠 週 数 や 生 ま れ て か ら の 月 日 ) が 一 目 で わ か り 、 予防接種スケジューリング機能がキラーコンテンツとなった【母子モ】 B t o G t o C な の で 、 ユ ー ザ と 自 治 体 の 、 双 方 が よ り 便 利 で 使 い や す い サ ー ビ ス に し て い く 必 要 が あ っ た . た と え ば 、 紙 の 母 子 健 康 手 帳 の 内 容 の 中 か ら 、 電 子 化 す る べ き 項 目 を 取 捨 選 択 す る こ と に も 悩 ん だ が , 実 際 に 子 育 て し て い る 人 へ の ヒ ア リ ン グ や 、 母 子 健 康 手 帳 を 何 度 も 読 み 込 み な が ら 開 発 を 行 っ た . 2 0 2 5 年 6 月 現 在 、 全 国 7 3 0 以 上 の 自治体で導入 され て い る . 高 齢 者 サ ー ビ ス に 民 間 の 力 を 使 う こ と で 、 介 護 保 険 給 付 や 税 金 の 支出を減らせる乗り合い送迎サービス【チョイソコ】 未 要 介 護 認 定 高 齢 者 へ の 調 査 で「 徒 歩 移 動 が つ ら い ・ き つ い 」 「 バ ス の 本 数 が 少 な い 、 時 間 が 合 わ な い 」 な ど 不 安 や 不 便 を 感 じ る 声 を 掴 ん だ 自 治 体 の 福 祉 担 当 ・ 公 共 交 通 担 当 , ア イ シ ン は , 大 量 輸 送 で は な い 「 少 数 輸 送 」 の サ ー ビ ス が 地 域 に 必 要 と い う 目 的 意 識 を 共 有 し 、 バ ス と タ ク シ ー の 特 徴 を い い と こ 取 り し た サ ー ビ ス を 開 発 し た . 現 在 , 全 国 3 0 地域に展開さ れて い る .
  13. 14 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 共創1.0:仮説探索(フィールドリサーチ) 地域(生活者)とともに

    地域の問題を探索し実装する 企業にとって意義 ・市民/地域の現象的な問題を探索できる ・新しいモデル事業・体験設計を開発できる ・市民/地域とトライアルができる 地域にとっての意義 ・解決のために企業のリソースを活用できる ・ただ、企業主導の活動になり、地域にとっては部分的な問題である 場合が多い ・重要でない問題を扱う場合、活動自体が無意味なものになる(一 部の人がヒアリングされ、他の人にとって重要かわからないプロジェクト が立上る=実証に距離をとる) 地域の産官学民の関係者 提供者 (企業) 生活者とともに、問題を探索し、 解決手段を創出する。
  14. 15 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs ビジョン :人々が主体的に共創できる社会へ

    ミッション:生活者とその暮らしの目線に立ち、生活者やパートナーが 主体性を発揮できる対話的関係・環境を重視し、 ともに持続可能な社会づくりに向けた価値を探索し生み出しつづける 人々が 主体的に共創できる社会 ②地域の人々とともに 社会課題を解決する事業創出 ①本質的なサービス・政策創出の基盤となる 新しい地域の仕組み(社会システム)の構築 地域の内部に入り込み、 中立的・統合的な立場でビジョン策定 地域経営(政策×ビジネス)のアプローチで 課題探索・解決を主体的に実施 真の暮らしの価値の理解 ビジネス価値追求 ねらい・ゴール 地域のビタミン 地域の体質改善 (=新しい社会システム探索) ③社会課題解決サービス・ 地域経営を変革するPF等の デジタルツールの構築 地域創生Coデザイン研究所のビジョン・ミッション Coデザのミッション
  15. 16 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 共創2.0:トランジション(システム転換) 地域(ステークホルダー)とともに

    社会・地域の新たなシステムを探索し転換する 提供者 (企業) 地域の関係者とともに、構造的な問題 を探索し、新たなシステムを実現する。 地域の産官学民の関係者 地域にとっての意義 ・地域の持続や地域が変わっていくために向き合いたい問題の構造を 探索できる ・探索のために企業のリソースも活用できる ・新しいシステムに変わっていける(ウェルビーイングなシステム、サス ティナブルなシステム等) 企業にとって意義 ・市民/地域のニーズを探索できる ・新しいモデル事業・体験設計を開発できる ・市民/地域とトライアルができる ・新しいビジネス領域を発見できる
  16. 19 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 社会システムの性質 •コミュニケーションのシステム(個人間の相互作用、

    組織、法、経済、政治、宗教、科学、教育などの社会の機能シ ステム) •複雑性に選択を加えて営為を一定範囲 のパターンに制限する構造により,不確 実性のリスクを抑制 •内と外を区別し,境界を維持するための 内的秩序が存在 •内的秩序は原理に基づいて構成 ※ニクラス・ルーマン, 1992, 『公式組織の機能とその派生的問題(上巻)』, 新泉社. 【例】 ▼経済システム(原理=支払える/支払えない) あなたがAmazonで本を買うとき、個人の善意でも文化 の影響でもなく「支払可能か否か」で処理される顧客が 良い人でも、お金を払えなければ取引は成立しない ▼法システム(原理=合法/違法) 同じ行為(例えば道路への落書き)であっても、美術 的評価ではなく、「違法か合法か」で判断される ▼科学システム(原理=真/偽) ワクチンの安全性は、政治的判断でも宗教的信念でも なく、科学論文による「真/偽」の判定で決まる
  17. 20 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 社会システムの性質 【例】

    ▼交通システム ・社会に信号機が置いてあるだけはシステムは機能しない ・個人が「赤信号では止まる」という交通ルールを守ることで機能する(内面化) 図:交通システムにおける相互関係の例 社会システム(サービス・制度・組 織等)は、個人の外側にある社 会システム単独では成り立たず、 個人が社会システムのルールを内 面化することではじめて成り立つ (相互関係の構造)。 そのため、外形的にサービス・制 度・組織等を変えるだけでなく、そ れに関わる個人の内面も同時に 変容していく必要がある。
  18. 21 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs アプローチ1: 個人の支配的な価値観から新たな価値観への変容

    個人・コミュニティの価値観が変容していくメカニズムの分析モデル:Two Loop Model (“トップダウンだけでは社会(システム)が変わらない”というスタンスの人たちの環世界) Wheatley, Margaret and Frieze, D. (2011). Walk Out Walk On: A Learning Journey into Communities Daring to Live the Future. Berrett-Koehler Publishers.
  19. 22 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:トランジションタウン活動(2005~) 概要:

    2005年、化石燃料・気候変動・経済ショックへの対応として、地域の「レジリエンス」「リローカリ ゼーション」を掲げ、Rob Hopkinsら主導して住民主体で行われた変革運動。 自治体は、資金・場所・制度の支援という形で 外部環境を整備する役割を担っていた。 6-8 世帯ごとに各家庭に集まり、個人レベルまたはコミュニティ レベルで実行できる実践的な行動を 検討し、コミュニティ果樹園、コミュニティシネマ、子どもたちが家の外で安全に遊べるプレイスト リートセッション、交通渋滞のない路上であらゆる年齢の人が交流したりパーティーをしたりできる セッションなどを実施している(Transition Street)。また、住民主体の社会的起業も生まれて いる。特徴としては、団体や組織をつくることが目的ではなく、それぞれの人が自発的に取り組ん でいくムーブメントとして展開された点である。 主体:Transition Town Totnes (2009~)など 活動: ・エネルギー削減行動計画(Energy Descent Action Plan)を地域で作成・実行 ・市民主導で、食/エネルギー/交通施策などの地元消費プロジェクトを展開し、地域通貨、 スキル共有などを実施。 Transition Streetのほかにも以下がある。 ・Incredible Edible:コミュニティによる食料栽培の取り組み。 ・REconomy Centre:人々が繋がり、スキルや知識を共有できるコワーキングスペース。 ・Inner Transition:気候変動による不安や燃え尽き症候群を軽減するために、ボランティ アに精神的かつ包括的なサポートを提供するグループ。 その後の展開: 2011年には気候変動対策に貢献する取り組みを表彰する世界有数の賞の一つであるアシュ デン賞を受賞。また、トランジションタウンの取り組みは世界43か国に広がり、1000以上のイニ シアティブがあると言われている。(日本では、2008年以降、旧藤野町、葉山町、東京都小 金井市など)
  20. 23 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs アプローチ2: 現行の社会システムから新たな社会システムへの組み替え

    社会システムが変容していくメカニズムの分析モデル:Multi-level Perspective (“ボトムアップだけでは社会(システム)は変わらない”というスタンスの人たちの環世界) ①ニッチがボトムアップ から複数立ち上がる ②一部が社会技術 レジームに組み込まれる Geels, F. and Schot, J.(2007)Typology of Sociotechnical Transition Pathways, Research Policy,36(3),pp.399-417. 人々はしばしば、システム内のプレイ ヤーを変えることが変化をもたらす方法 だと考えがちだが、真の梃子(レバレッ ジポイント)はプレイヤーを変えること ではない。それはルール、情報の流れ、 目標、そして特にシステムを生み出す 思考様式にある。 Donella H. Meadows(2008), Thinking in Systems: A Primer, Chelsea Green Publishing. (邦題:世界はシステムで動く)
  21. 24 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs アプローチ2: 現行の社会システムから新たな社会システムへの組み替え

    社会システムが変容していくメカニズムの分析モデル:Multi-level Perspective Geels, F. and Schot, J.(2007)Typology of Sociotechnical Transition Pathways, Research Policy,36(3),pp.399-417. MLPモデルの要諦は、直 接変えづらいマクロ (Landscape)と、一 見変えられないと思われて いるが直接変えうるメゾ (Socio-technical regime)を分けて理解 する視座 直接変えづらい対象 •長期人口動態 •気候変動・自然災害 •国際地政学 •グローバル経済トレンド •社会の価値観の変化 •・・・ 直接変えうる対象 •電力市場制度・規制 •サプライチェーン •企業間の業界標準・ルール •大規模発電・電力網インフラ •消費者の使い方 •・・・
  22. 25 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:ドイツの電力転換(1986-2022) Geels,

    F. and Schot, J.(2007)Typology of Sociotechnical Transition Pathways, Research Policy,36(3),pp.399-417. 1986:チェルノブイリ → 原発撤 廃機運→市民、農家、反核活動家 (ランドスケープ圧力の一部) 1991–2000:ドイツ再統 一の混乱の中、再エネ政策整備 (小売価格90%での買取義務 化)と初期ニッチの育成、導入促進 2000:再エネ法(固定価格20 年間買取)導入 → 急速な太陽光 /風力発電導入 2011:福島を受けて原発フェー ズアウト決定(2022終了目標) 2010–2022:再エネ比率 急増、4大電力企業の純利益減少 1980:石油危機後の研究開発 (風力タービン/太陽光発電)→低性 能・高コストで限定的 1997:既存電力会社によるロ ビー活動・政府がFIT引下げ提案→ 再エネ推進派の抗議活動の結果、ド イツ議会否決 促 進 促 進 https://www.irena.org/Data/View-data-by- topic/Capacity-and-Generation/Country-Rankings 2020:太陽光発電、陸上・洋 上風力発電にかかるコストが、化石 燃料とほぼ同等程度に低下 再エネ法EEGをトリガーとした国内普 及・市場形成は成功 中国大規模生産・価格支配によりモ ジュール製造の展開は失敗
  23. 26 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 暮らしの時間 ・主体的、生成的、多様

    ・歴史的な絆、人間、世間 e.g. 自立共生的、生活世界 トランジション研究・実践のフォーカス: 暮らしの質感・自然との共生をとりこぼさない社会システムデザイン ・ボトムアップからの自生的な実践は増えてきているが、真の転換を起こすためには、実践環境(政策、テ クノロジー、ビジネスなど)の転換に企業や行政が取り組むことが求められる システムの時間 ・客体的、計画的、均質 ・政策的経緯、公論 e.g.操作的、システム 「人間の能力を拡張し生産性 を拡大させる(個人が責任を 取れる)道具」を経て、「人間 を操作し依存させ主体性を 奪ってしまう道具」へ 市民活動 行政 スタートアップ 企業
  24. 27 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 福祉政策起点で新しい人間観にもとづく まちづくり(パーソンセンタードシティ)を

    目指す(福岡県大牟田市) 産業政策起点で日本的サスティナビリティに もとづく持続可能な地域や社会が うまれるまちを目指す(奈良県奈良市) 地域住民 自治体 企業 地域のソーシャル ワーカー等 大牟田 リビングラボ 真に解くべき課題を 探索・設定できる主体 ・奈良市在住の就業者の 約50% が市外で勤務 ・ベッドタウンとしての魅力+働く人の創造性を引き出す 文化財や自然が豊富にある特性を生かした多様な ワークプレイス(サテライトオフィス)がある地域をめざす ・子育て世代の支援 抜本的な公共私連携による解決策の創出 ・高齢化率(65歳以上人口) 36.8% ※全国高齢化率 28.6% ・10万人以上の都市では全国で2番目に高い 高齢化率※ ・日本の中でも20年先をいく超高齢社会モデル都市 (一般社団法人) (一般社団法人) 地域住民 自治体 企業 奈良 リビングラボ 真に解くべき課題を 探索・設定できる主体 NTT/地域創生Coデザイン研究所にて取り組んできたリビングラボ
  25. 28 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボの3つの系譜 系譜1:現場で学びを得る科学へ

    系譜2:みんなに開いてつくる文化へ 系譜3:使うものを自らつくる権利へ
  26. 29 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 系譜1:シチズンサイエンス(現場で学びを得る科学へ) ※川喜田(1967)発想法―創造性開発のために,

    中央公論社. 1990年代から実験科学・市民科学の分野でLiving Labと名前の付い た活動が行われている • “The Living Lab is a pilot program teaching estuarine issues to junior and senior high school students.” (Short, 1992) • “The program has a room in the residence quarters of the YMCA called the ‘’Living Lab.” This laboratory is an opportunity for a youth to gain practical experience living on his or her own while receiving support from staff, DYFS and other agencies.” (State of New Jersey, 1993) • “From using the environment as a living lab to enhance your science and math studies to using it to help inspire your students to create poetry, there are many innovative ways to promote outdoor experiences with your students.” (Wood et. al., 1993) 実験科学[Lewin,1946;Kawakita,1967;Neisser,1978]や市民 科学[Short,1992;Wood,1993]の分野では、限定的な環境での試 行実験の限界に対して、アクションリサーチ、野外科学、PBLなどの実環 境での実践や検証が重要視された。リビングラボの概念の提唱者として 知られるWilliam J. Mitchellは建築分野でこの取り組みを行った人物 である[Mulvenna;2011]。 特徴 • 実環境下(real-life setting) • 生徒の巻き込み(student involvement) • エンパワーメント(empowerment)
  27. 30 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 系譜2:オープンイノベーション(みんなに開いてつくる文化へ) ※D.A.

    Norman, (1990)誰のためのデザイン?,新曜社. Human Computer Intaraciton(HCI)の分野では、ジョージア工科大学の Aware Home Projectが1999年にLiving Laboratoryという概念を取り上げ て研究を行った(Cory et al.1999) 欧州委員会は2013年のダブリン宣言で、オープンイノベーション2.0をオープンイノ ベーションの新たなパラダイムとして考え、欧州全体で推進していくこと ・ 世界に発信し ていくことが決議され、「Open Innovation 2.0 Yearbook」では、Living Lab が多く取り上げられている 1980年代にパーソナルコンピューターが普及したとき、人としての使いやすさに焦点を当てた ユーザ中心設計Norman(1986)が提唱された。これは限定的な関係者による設計の 限界に対して、実際のユーザの巻き込むアプローチであり、その後サービスデザイン [Stickdorn;2012]などに拡張されていった。また、企業イノベーションにおけるオープンイノ ベーション[Chesbrough;2003]や行政運営における市民参加の梯子 [Arnstein;1969]など、さまざまなセクターのモノづくり(コトづくり)においても、関係者に 開いてつくる文化(デザインの民主化)へのシフトが志向されている。 特徴 • ユーザの巻き込み(user involvement) • 共創(co-creation) • 価値協創(joint-value) • ガバナンス(governance)
  28. 31 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 系譜3:参加型デザイン(使うものを自らつくる権利へ) ※S.

    Bodker et al. (2021) Participatory Design, Springer. 職場の生産性を高めるために技術システムを導入したい経営者と、自分たちの 労働の現場に技術システムを入れることに不満を持つ労働者との対立に対して、 第3の道として、民主主義的な方法で問題解決を図ったのが参加型デザイン ノルウェー鉄・金属労組の技術プロジェクト(1970年~) スウェーデンのDEMOSプロジェクト(1975~1979年) デンマークのプロジェクトDUE(1977~1980年)など 北欧リビングラボの源流と言われる参加型デザイン[Nygaard,1975]は、社会民 主主義的な理念を持ち、生活者やユーザの権利として、自らが身の回りにある組 織構造やプロセス(社会技術システム:Socio-technical system[Trist,1951])に対して主体的に関わっていくことが基本的な考え方と なっている。形を持つ製品から、形を持たないサービス、さらには組織や社会につい てまで、それを設計・運用することに主体的に関わる活動が展開されてきた。 特徴 • エンパワーメント(empowerment) • 自発性(Spontaneity) • ガバナンス(governance) • ラピッドプロトタイピングと評価(rapid prototyping & testing )
  29. 32 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボの3つの系譜 みんなと

    現場で 自らつくる 系譜1:現場で学びを得る 系譜2:みんなと開いてつくる 系譜3:使うものを自らつくる権利
  30. 33 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs Swiss Cheese

    Model ※James Reason (2000)Human error: models and management. 320. pp. 768–770.