Lock in $30 Savings on PRO—Offer Ends Soon! ⏳

20251217リビングラボ・トークin尼崎(尼崎おせっかい会議&オトナテラコヤ)

Avatar for Kimura Atsunobu Kimura Atsunobu
December 17, 2025

 20251217リビングラボ・トークin尼崎(尼崎おせっかい会議&オトナテラコヤ)

Avatar for Kimura Atsunobu

Kimura Atsunobu

December 17, 2025
Tweet

More Decks by Kimura Atsunobu

Other Decks in Design

Transcript

  1. 1 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 木村 篤信

    日本リビングラボネットワーク 代表理事 地域創生Coデザイン研究所 ポリフォニックパートナー 東京理科大学 客員准教授 自分たちの地域をみんなでつくる 2025/12/17 リビングラボ・トーク in 尼崎
  2. 2 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 木村 篤信

    (Kimura Atsunobu) Profile 地域創生Coデザイン研究所(NTTグループ) ポリフォニックパートナー 日本リビングラボネットワーク 代表理事 東京理科大学 客員准教授 東京電機大学/東京都市大学/大阪樟蔭女子大学(予定) 非常勤講師 生駒市「緑の基本計画改定懇話会」 有識者(リビングラボ) デジタル庁 認定Well-beingファシリテーター 総務省 経営・財務マネジメント強化事業 アドバイザー JST RISTEX「ケアが根づく社会システム」 領域アドバイザー 日本デザイン学会 情報デザイン研究部会 幹事 大牟田未来共創センター パーソンセンタードリサーチャー 京都大学デザインイノベーションコンソーシアム/ソーシャルビジネスネットワーク フェロー 横浜市PTA連絡協議会 理事 実践:社会課題解決/ソーシャルビジネス開発 研究:共創/リビングラボ/社会システムデザイン 教育:サービスデザイン/ソーシャルデザイン ⑧ ⑨ ⑩ 地域経営主体(中間支援団体)運営/伴走 地域共創拠点構築・運営 事業開発,政策立案,コミュニティ開発 学術論文・書籍 メディア・書籍取材 (人手不足、ウェルビーイング、民主主義、自律共生等) 大牟田市、奈良市, 岡崎市,生駒市, 八丈町,神山町, 天川村,佐渡市, 小松市、尼崎市 浦添市など 教育機関 非営利活動
  3. 4 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは『セクターを超えた共創活動』 Steen,

    K. & Bueren, E. (2017). The Defining Characteristics of Urban Living Labs. Technology Innovation Management Review, 7(7), 21–33. 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本 における構造的課題、(調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局
  4. 5 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 協働と共創:いずれもセクターを超えた共創の方法論 「Co-Procuction:協働」

    (行政学・社会学用語) 1977年~ 米インディアナ大の政治学者ヴィンセント・オストロムが、「地 域住民と自治体職員とが協働して自治体政府の役割を果 たしてゆくこと」の意味を一語で表現するために造語したもの。 (Comparing Urban Service Delivery Systems, 1977) 日本では、荒木昭次郎がCo-Procuctionを「協働」と訳し、 「地域住民と自治体職員とが、心を合わせ、力を合わせ、助 け合って、地域住民の福祉の向上に有用であると自治体政 府が住民の意思に基づいて判断した公共的性質をもつ財 やサービスを生産し、供給してゆく活動体系である」と定義 (参加と協働:新しい市民=行政関係の創造, ぎょうせい, 1990) 「Co-Creation:共創」 (経営学・マーケティング学用語) 2004年~ 米ミシガン大ビジネススクール教授コインバトール・K・プラハ ラードとベンカト・ラマスワミが提起した「企業が、様々なステー クホルダーと協働して共に新たな価値を創造する」という概念。 (The Future of Competition: Co-Creating Unique Value With Customers,2004) これからの時代、顧客と一緒になって価値を生みださなけれ ば企業は競争に生き残れないと説き、「企業主体の価値創 造」から「顧客中心の価値共創」の時代へという新しいパラダ イムを提示した。
  5. 6 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは Carayannis,

    E.G., Campbell, D.F.J., 2009. “Mode 3″ and “Quadruple Helix”: toward a 21st century fractal innovation ecosystem. Int. J. Technol. Manag 46, 201. 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model モノ・コトをつくるときに 生活者と行政・企業・大学が共に 暮らしの場(リビング)において 試行錯誤(ラボ)をする活動・場 (人口減少時代の社会課題解決に必要な方法論 ≒コレクティブ・インパクト) デンマークのスマートシティ研 究者とともに、日本初のリビン グラボ書籍(教科書)を刊 行。全国30カ所で対話イベ ント実施予定。 千葉工業大学(情報学部・デザイン学部) 関西学院大学(イノベーション研究会) 官民共創HUB×東京大学(産官学民関係者) 徳島県神山町(地域創生関係者)
  6. 8 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 世界のリビングラボの分布(ENoLL過去登録済みリビングラボ 500+@40か国,ENoLL,

    2024) ※ENoLLとは 欧州で2006年に立ち上がったリビングラボの 国際的ネットワーク。欧州委員会の資金提 供プロジェクトを活用しながら、EUの政策提 言や、リビングラボの推進に取り組んでいる。 出典:https://enoll.org/
  7. 9 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs アンドラ公国で開催されたリビングラボ国際会議 アンドラはフランスとスペインの国境にあるピレネー山脈の

    山中の国家。外部の大国に支配されないよう、伝統的 なフランス大統領とスペインの司教による共同統治国 (コ・プリンシパリティ)の形式を続けているが、実態は 議会民主主義で運営。 今回の国際会議には、5大陸から300人以上が参加。 基調講演は南アフリカのビジネススクール教員が行うな ど、コ・デザインの活動が世界的に広がっていることが 示唆された。 ランチタイムは、ワーキンググループごとのセッションなども 実施され、テーマについてのより深い対話が行われた。 書籍「はじめてのリビングラボ」についても関心が高く、 海外でのカンファレンスの登壇依頼あり。 欧州リビングラボネットワークの議長からは、Open Living Lab Daysの日本での開催について相談あり。
  8. 10 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボで扱われる様々なテーマ building

    mobility dormitory & office gastronom y water children agriculture smart city handicap
  9. 12 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボが活用される場面 欧州をはじめとしてさまざまなプロジェクトが取り組まれており(440+)※1日本では経産省・厚労省が活用し

    始めている(100+)※2また、大きくは以下の4種の場面で活用されている※3 ②行政サービス改善 (enabler-driven) -住民・NPOと自治体の関係性構築 -陳情や自治体の政策エビデンス獲得 -地域としての政策イノベーション by自治体・住民/NPO etc. ①サービス・技術開発 (utilizer-driven) -サービス検証 -サービスイノベーション創出 by民間企業・大学etc. ③地域活性化 (user-driven) -地域関係者のつながり形成 -地域のにぎわいづくり(イベント) -持続的な住民生活の問題解決・価値向上 by住民/NPO・デベロッパー・ 自治体 etc. ※1:European Network of Living Labs (ENoLL) 5大陸35カ国から151組織のアクティブメンバー(過去の登録メンバーは全 世界で500組織以上)(2023.04) ※2:木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における構造的課題、(調査資料 2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局 ※3:Leminen, S., Westerlund, M., & Nystrom, A. G.(2012).Living Labs as open open-innovation networks, Technology Innovation Management Review Review. ④方法論研究 (provider-driven) -方法論の実践 -方法論の体系化と展開 By大学・研究機関 etc. 松本ヘルスラボ ME-BYOリビングラボ 丹後リビングラボ 佐渡島自然共生ラボ イノベーション神戸 Turinリビングラボ ・・・ 鎌倉リビングラボ みんラボ フューチャー・リビ ング・ラボ(日立) ノボ ノルディスク エーザイ韓国 ・・・ おやまちリビングラボ 寿リビングラボ WISEリビングラボ デルフト工科大 ・・・ 東大 KDDI研 NTT研 i-mec Public- intelligence ・・・
  10. 13 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs さまざまな種類のリビングラボが日本にも増えてきている 政策イノベーションのためのリビングラボ

    (教育、介護予防、雇用、 移動交通、テクノロジー etc.) (大牟田、佐渡、会津、松本、神奈川MI-BYO・・・) 産業・ビジネス開発のためのリビングラボ (デスラボ、鎌倉リビングラボ、ナスコンバレー、つくばみんラボ・・・) 地方創生のためのリビングラボ (神山つなぐ公社、三豊, 丹後・・・) 公共施設開発・エリマネのためのリビングラボ (小千谷、小松、おやまち、たまプラーザ・・・)
  11. 14 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 日本のリビングラボの年表と分布 2005.03

    仙台フィンランド健康福祉センター 2006.09 Lions Living Labo 2010.01-2014.03 湘南リビングラボ 2010.11 経産省 情報政策課 リビングラボ紹介 「情報政策の要諦ー新成長戦略におけるIT・エレクトロニクス政策の方向性」 2011.10 みんなの使いやすさラボ(みんラボ) 2011.12 BABAラボ 2012.08 富士通総研 リビングラボ研究レポート 2012.10 おたがいさまコミュニティ 2013.02 Living Lab Tokyo 2013.07 Virtual Living Lab 2014.12 松本ヘルスラボ 2015.01 三浦リビングラボラトリー 2015.04 子育てママリビングラボ 2015.09 Cyber Living Lab 2016.01 第5期科学技術基本計画(Society5.0) 2016.01 八千代リビングラボ 2016.06 みなまきラボ 2016.07 産総研スマートリビングラボ 2016.07 東急WISE Living Lab 2016.11 鎌倉リビング・ラボ ほか5件 2017.01 井土ヶ谷アーバンデザインセンター(井土ヶ谷リビングラボ) 2017.05 ともに育むサービスラボ(はぐラボ) 2017.06 福岡ヘルス・ラボ 2017.09 経産省 ヴィンテージ・ソサエティ構築実証事業(リビングラボ4 件) 2017.09 神奈川ME-BYOリビングラボ 2017.10 高石・僥倖リビング・ラボ 2017.12 ドリームハイツ ヘルスケア リビングラボ(とつかリビングラボ) ほか9件 2018.02 大牟田リビングラボ 2018.03 横浜リビングラボ創生会議 2018.04 第一回リビングラボネットワーク会議 2018.04 こまつしまリビングラボ 2018.07 経産省 「未来の教室」実証事業(大牟田リビングラボ含む4件) 2018.10 サイクル・リビングラボ 2018.11 地域共創リビングラボ ほか10件 2019.02 Well Being リビングラボ 2019.03 第二回リビングラボネットワーク会議 2019.10 岡山リビングラボ ほか3件 2020.07 関内リビングラボ 2020.08 厚労省 「介護ロボットの開発実証普及のプラットフォーム事業」 (リビングラボ6件) 2020.03 経産省 リビングラボにおける革新的な社会課題解決サービスの 創出に係る調査「リビングラボ導入ガイドブック」 2020.10 おやまちリビングラボ 2020.11 奈良リビングラボ ほか8件 凡例) オレンジ色:日本全体の動き 黒色:他の日本での取り組み ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における構造的課題、 (調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局を元に作成 日本のリビングラボデータベース (100件以上のリビングラボが存在) ※日本リビングラボネットワーク 実践事例部会調べ ( 2023/04 時点 ) 佐渡自然共生ラボ 大牟田LL おやまちLL 丹後LL 鎌倉LL 未来LL 磯子杉田LL みんなのまちづくり スタジオ ふじみ野LL はぐラボ むlabo TEN no KUNI Folke LLs Academy
  12. 15 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 日本リビングラボネットワーク(JNoLL)の活動概要 日本において共創やリビングラボの実践がさらに活性化し、普及することを目指して、設立。多様なステークホルダーが立場

    を超えてフラットにつながり、実践知や課題を共有し合うことで、さらなる実践や成果をもたらす場や機会をつくり出している。 また、リビングラボのポータルサイトでの情報発信や、支援サービスの提供も行っている。 ❸リビングラボ運営者支援サービス ❶リビングラボ実践者/ 研究者ネットワーク ❷実践を支えるフレームワークの 研究開発 チーム組成& ビジョン形成 計画立案・共有 予算・ 契約 具体的な 共創 価値の振返 り・発信 国内実践者・研究者と共に、事例対話の分析を通じて 実践支援の核となるフレームワーク等を研究開発 25地域を超える実践者が集い、コアチームを組成し、 実践者による実践者のためのコミュニティを運営。 1000名を超えるリビングラボ関心層に発信可能なネットワーク (企業7割,自治体2割,研究者1割) 研究開発の知見を核に、体系化されたリビ ングラボ運営者支援メニューを開発・提供 リビングラボML
  13. 16 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs ❶日本のリビングラボ実践者ネットワーク&実践知対話会 Over

    300 participants in Living Labs conference 2023 https://note.com/jnoll/n/nabdc8b09ffde
  14. 19 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs ❷実践を支えるフレームワークの研究開発 JNoLL共創プラットフォーム評価部会

    ▼文部科学省 科研基盤研究(C) 「地域の共創基盤としてのリビングラボのアウト カムを評価する標準フレームワークの構築」 ※パートナー坂倉氏によるPJ(2024-27) ▼徳島県神山つなぐ公社 共同研究 「地域創生事業組織のプラットフォームとしての 間接的アウトカムの特定に関する研究」 ※パートナー坂倉氏・代表理事木村氏・理事 長島氏・原口氏によるPJ(2024) 連続的に共創活動のための リビングラボプラットフォーム の再帰的メカニズム 共創プラットフォームのもつ複 雑なメカニズムの一旦を、ビ ジョン、コネクション、アクティビ ティの観点で整理し、持続的 なプラットフォーム運営の示唆 を提案。 第72回日本デザ イン学会 春季研 究発表大会【左】 Open Living Lab Days2025 【右】
  15. 21 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 日本のリビングラボに関連する国内政策 第6期科学技術・イノベーション基本計画

    内閣府 COI-NEXT、地域大学振興 文部科学省 産業開発・イノベーション政策 経済産業省 介護ロボット開発・実証 厚生労働省
  16. 23 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 共創における「問いと土壌の循環モデル」 共創活動

    総体的・連続的 に深める問い 主体的に 動き出せる土壌 やってみる どうあるべきか のんびりする やってみる ※木村ら(2021)持続的な活動/持続的な変化に向けたリビングラボ概念の拡張, 第68回 日本デザイン学会 春季研究発表大会 成果・報告・形式知の領域 持続的な共創プラットフォームとしてのリビングラボには、共創活動(プロジェクト)だけで はなく、「主体的に動き出せる土壌」や「総体的・連続的に深める問い」が重視されている。 プロジェクト プラットフォーム
  17. 24 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボプロジェクトのプロセス Planner

    / Operator (Company) User (Citizen) Facilitator (Univ. / Designer) ①相互理解・対話 ②課題設定 ③アイデア創出 ④プロトタイピング ⑤テスト ⑥社会実装 Planner / Operator (Local admin.) 相互理解 (チームビルド) 暮らしの課題設定 Coデザイン 社会実装 共感・理解 (一方的なユーザ理解) (PJの)課題設定 デザイン 一般 リビングラボ 木村, 赤坂(2018)「社会課題解決に向けたリビングラボの効果と課題」『サービソロジー』5 巻, 3 号, p.4-11.
  18. 25 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボの3つの系譜 系譜1:現場で学びを得る科学へ

    系譜2:みんなに開いてつくる文化へ 系譜3:使うものを自らつくる権利へ
  19. 26 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 系譜1:シチズンサイエンス(現場で学びを得る科学へ) ※川喜田(1967)発想法―創造性開発のために,

    中央公論社. 1990年代から実験科学・市民科学の分野でLiving Labと名前の付い た活動が行われている • “The Living Lab is a pilot program teaching estuarine issues to junior and senior high school students.” (Short, 1992) • “The program has a room in the residence quarters of the YMCA called the ‘’Living Lab.” This laboratory is an opportunity for a youth to gain practical experience living on his or her own while receiving support from staff, DYFS and other agencies.” (State of New Jersey, 1993) • “From using the environment as a living lab to enhance your science and math studies to using it to help inspire your students to create poetry, there are many innovative ways to promote outdoor experiences with your students.” (Wood et. al., 1993) 実験科学[Lewin,1946;Kawakita,1967;Neisser,1978]や市民 科学[Short,1992;Wood,1993]の分野では、限定的な環境での試 行実験の限界に対して、アクションリサーチ、野外科学、PBLなどの実環 境での実践や検証が重要視された。リビングラボの概念の提唱者として 知られるWilliam J. Mitchellは建築分野でこの取り組みを行った人物 である[Mulvenna;2011]。 特徴 • 実環境下(real-life setting) • 生徒の巻き込み(student involvement) • エンパワーメント(empowerment)
  20. 27 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 系譜2:オープンイノベーション(みんなに開いてつくる文化へ) ※D.A.

    Norman, (1990)誰のためのデザイン?,新曜社. Human Computer Intaraciton(HCI)の分野では、ジョージア工科大学の Aware Home Projectが1999年にLiving Laboratoryという概念を取り上げ て研究を行った(Cory et al.1999) 欧州委員会は2013年のダブリン宣言で、オープンイノベーション2.0をオープンイノ ベーションの新たなパラダイムとして考え、欧州全体で推進していくこと ・ 世界に発信し ていくことが決議され、「Open Innovation 2.0 Yearbook」では、Living Lab が多く取り上げられている 1980年代にパーソナルコンピューターが普及したとき、人としての使いやすさに焦点を当てた ユーザ中心設計Norman(1986)が提唱された。これは限定的な関係者による設計の 限界に対して、実際のユーザの巻き込むアプローチであり、その後サービスデザイン [Stickdorn;2012]などに拡張されていった。また、企業イノベーションにおけるオープンイノ ベーション[Chesbrough;2003]や行政運営における市民参加の梯子 [Arnstein;1969]など、さまざまなセクターのモノづくり(コトづくり)においても、関係者に 開いてつくる文化(デザインの民主化)へのシフトが志向されている。 特徴 • ユーザの巻き込み(user involvement) • 共創(co-creation) • 価値協創(joint-value) • ガバナンス(governance)
  21. 28 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 系譜3:参加型デザイン(使うものを自らつくる権利へ) ※S.

    Bodker et al. (2021) Participatory Design, Springer. 職場の生産性を高めるために技術システムを導入したい経営者と、自分たちの 労働の現場に技術システムを入れることに不満を持つ労働者との対立に対して、 第3の道として、民主主義的な方法で問題解決を図ったのが参加型デザイン ノルウェー鉄・金属労組の技術プロジェクト(1970年~) スウェーデンのDEMOSプロジェクト(1975~1979年) デンマークのプロジェクトDUE(1977~1980年)など 北欧リビングラボの源流と言われる参加型デザイン[Nygaard,1975]は、社会民 主主義的な理念を持ち、生活者やユーザの権利として、自らが身の回りにある組 織構造やプロセス(社会技術システム:Socio-technical system[Trist,1951])に対して主体的に関わっていくことが基本的な考え方と なっている。形を持つ製品から、形を持たないサービス、さらには組織や社会につい てまで、それを設計・運用することに主体的に関わる活動が展開されてきた。 特徴 • エンパワーメント(empowerment) • 自発性(Spontaneity) • ガバナンス(governance) • ラピッドプロトタイピングと評価(rapid prototyping & testing )
  22. 29 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 系譜3:使うものを自らつくる権利へ 経営者

    テクノロジーの 活用 労働者 現場にいる アクター リビングラボ 実生活環境に おける実験 意思決定に関わる権利や働き甲斐を主張 労働運動の標語 ”8時間の労働・8時間の自由・8時間の休息” 経営者は職場の生産性を向上を推進 オートメーション化する 電子機器の発展と導入
  23. 30 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボが示すパラダイムの変化 みんなと

    現場で 自らつくる 系譜1:現場で学びを得る 系譜2:みんなと開いてつくる 系譜3:使うものを自らつくる権利
  24. 31 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは『セクターを超えた共創活動』 Steen,

    K. & Bueren, E. (2017). The Defining Characteristics of Urban Living Labs. Technology Innovation Management Review, 7(7), 21–33. 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本 における構造的課題、(調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局
  25. 32 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは『自分(たち)ごととして都市や生活をつくること』 ・自分の役割で部分的にしか社会に関われない・・・

    ・いつもの役割から外れ、自分(たち)ごととして関わる ・実生活(現場・当時者)で試行錯誤する [リビング] [ラボ] ・どう実現できるかを役割も活用して考える Steen, K. & Bueren, E. (2017). The Defining Characteristics of Urban Living Labs. Technology Innovation Management Review, 7(7), 21–33. 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model
  26. 33 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs フェアな価値創出を促すCoデザイン/リビングラボのパラダイム 提供者

    (企業/行政) 客体的な関係性 (サービス提供/利用) フェアなパートナー関係 共に主体的な関係性 (学び合い相互に変容) 利用者 (市民) C o デ ザ イ ン リ ビ ン グ ラ ボ 一 般 的 な サ ー ビ ス デ ザ イ ン 価値創出のパラダイムシフト 一方的な提供者-利用者関係 提供者 (企業/行政) 利用者 (市民) 協働をしても、セクターの枠組みに縛られ 部分的な問題解決になりやすい セクターを超えて本質的な 価値を探索できる枠組み 答えがみえた時代 ・人口ボーナス期 = 拡大・成長期 ・潤沢な供給リソース と需要 ・官僚組織による計画 的マネジメント ※広井(2019)人口減少社会の デザイン, 東洋経済新報社. 答えのみえない時代 ・人口オーナス = 定常期※ ・ひっ迫した供給リソー スと減らない需要 ・共創によるアジャイ ル・ガバナンス (デジタル活用、プラットフォー ムビルダー化) 社会構造の変化 市民のアップデート 政策のアップデート Techのアップデート
  27. 34 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボのアプローチが有効な活動領域 企業の組織論において、ハーバード・ケネディ・スクールのロナルド・ハイフェッツは「技術的問題」と「適応課

    題」を区別して論じている。客体的に外部から知識や方法で解決するのではなく、市民も企業も行政も大 学も問題の当事者になり、問題を生み出さない社会(システム)に向けて、自らが変容することも含めた価 値の共創が求められる。 R. Heifetz et al.(2009) The Practice of Adaptive Leadership: Tools and Tactics for Changing Your Organization and the World. Harvard Business Review Press. ※宇田川元一(2019)他者と働く-「わかりあえなさ」から始める組織論.
  28. 35 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボのアプローチが有効な活動領域 企業がサービスを一方的に提供するだけでなく、それを利用・運用する人・団体が一体的

    に変容する必要がある領域において、Coデザイン/リビングラボのアプローチが有効 地域銀行・インフラ会社・自治体等 地域事業者と一緒に 地域経営を考える 中央官庁・自治体・デベロッパー等 生活者・当事者と一緒に 政策や官民協働プロジェクトを考える (プロセスエコノミー等) サービス・プラットフォーム提供者等 (CtoCマーケットプレイス、製薬会社) 利用者と一緒に プラットフォーム利用体験を考える 社会的インパクトを志向する研究者・開発者 生活者・自治体・企業と一緒に 研究の社会実装を考える (現場の統合的な課題把握)
  29. 37 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:自分たちで空き家を改修しながら活動拠点をつくる 概要:

    横浜市の最初のリビングラボは、井土ヶ谷リビングラボで、南区を拠点とする リビングラボとして、空き家を活用して、「教育を地域で考える」をテーマに、 子供や若者が安心して過ごせる居場所づくりなどに取り組んだ。その活動 が徐々に広がり、介護や教育などそれぞれの地区ならではの課題に沿った リビングラボが展開されてきた。増えてきた各地のリビングラボ運営の手助け をするため、YOKOHAMAリビングラボサポートオフィスが設立され、所属す るリビングラボは各々のテーマは掲げているものの、共通テーマとして「サー キュラーエコノミーPlus」を設定し、地域循環型経済を実現するまちづくりを 目指している。 主体:横浜市内の13地区のリビングラボから構成(SDGs横浜金澤LL、 磯子杉田LL、とつかLL、さかえ横浜会議、都筑リビングラボ、瀬谷ハチミツ リビングラボ、みどり Well-beinGood!LL、つるみヤングケアラーラボ、障害 者・高齢者福祉イノベーションリビングラボ、ひとりでも住み続けられる横浜リ ビングラボ、すすき野団地リビングラボ、みどりオリーブリビングラボ、シェアご飯 リビングラボ AOBA)(2017~) 活動: 空き家を拠点とした地域課題活動・つながり形成 循環型農業と地産地消商品開発 生きづらさを抱える当事者がいきいきと学び働ける環境づくり 養蜂を通じた SDGs 推進と花と緑が溢れるまちづくり スポーツを通した健康への取り組み ヤングケアラーの支援 持続循環する団地コミュニティ 等 ②行政サービス改善 ①サービス・技術開発 ③地域活性化
  30. 38 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:商店街の関係者が自発的にプロジェクトをつくる 概要:

    地域でのワークショップをきっかけに「つながり」と「学び」をキーワードとした多 様な人が地域づくりに携わる場が構築された。商店街内の空き店舗を借 りてメンバーがやりたかったことを期間限定で実現する「おやまちベース」や、 子どもたちが記者になってまちの魅力を伝える新聞を作る「おやまち新聞プ ロジェクト」など、課題解決より楽しさ、つながりを優先したプラットフォームと したことで、自発的なプロジェクトが創発され、地域の事業所との協働プロ ジェクトや企業との共同研究が生まれている。 主体:一般社団法人おやまちプロジェクト (2019~) 活動: 尾山台の未来を考えるワークショップ「おやまちデザインプロジェクト」 「ホコ天プロジェクト」「Bar おやまち」「おやまちカレー食堂」 チャイルドケアコモンズ研究 コーポラティブハウスのコミュニティデザイン アクティブモラルラーニング おやまち暮らしの保健室 地域との関わり方: 商店街の理事、地域の大学教授、小学校の校長など、地域に形式的に 関わりうるキーマンたちが、個人として出会い、対話する中で、それぞれの 目的は異なるものの、まずは『街のなかで人と人とがつながり、何かを学べる 場をつくる』のことを共通の目的として、「おやまちプロジェクト」が設立された。 この課題解決や価値創出そのものではなく、その土壌となるプラットフォー ム・人のつながりのインフラを豊かにしようとする目的設定がおやまちプロジェ クトの特徴といえる。 ③地域活性化 ④方法論研究
  31. 39 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:日々の暮らしで使うものを自分たちでつくる 概要:

    デンマークのエグモント・ホイスコーレとは、障害者と健常者が共に助け合い ながら学び、生活する全寮制の学校。学校でありながら、同時に、障がい 者の日々の問題を解決するリビングラボとしての役割も持ち、地域や産業 界と連携の中で新しい価値を生み出している点が注目されている。 主体:Egmont Højskolen (How, Denmark) 活動: 車いすでも楽しめるスイミングプールVandhalla (ヴァンダラ)の企画・開 発。障がい者と健常者の生徒がチームを作り、初期 から設計に携わった 特設プールで、プール専用の車いすに乗り換えがしやすい更衣室や車いす のままプールに入れるスロープだけでなく、車いすの人やストレッチャーに乗っ た人でも滑ることができる全長 90m のウォータースライダーも備えている。 全身麻痺の障害者が校内を自由に行き来するために、視線入力インタ フェースを備えたタブレット端末で操作ができる電動車いすが開発された。 地域との関わり方: エグモント・ホイスコーレやヴァンダラは地域に開かれた形で運営されており、 地域の住民が利用することができる。また、全寮制の学校であるため、障 害者と健常者の日々の暮らしそのものが、リビングラボの対象となる開かれ た生活空間となっている。 ①サービス・技術開発 ③地域活性化
  32. 40 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:自らの人生やコミュニティにポジティブな変化をつくる 概要:

    英ブリストル南部の公営住宅がほとんどの郊外ニュータウン「ノウェルウエスト」を拠点として「コミュニティ・ ハブ」「デジタルものづくり拠点」「リビングラボ」の機能を持って活動している。独立慈善団体としての取り 組みから始まり、現在では、様々なジャンルのクリエイター(映像、音楽、デジタルアート、ファブリケーショ ンなど)をサポートするほか、住民参加型の社会変革プロジェクトや、地域の課題(住宅、気候/環 境、デジタル包摂など)のプロジェクトなど、人々と地域が自らの人生やコミュニティにポジティブな変化を 起こすプロジェクトを生み出している。ミッションは、「アート、テック、ケアでともにより公正な未来を形づく る」。 主体:Knowle West Media Centre(KWMC)/ Bristol Living Lab (Bristol, UK) 活動: ・コミュニティ主導の住宅「We Can Make」:地域住民30名と建築家、デザイナーが協働しながら、 低炭素・低コスト住宅を共同設計した、単なる住居供給ではなく、コミュニティ再生成、環境配慮、住 民のエンパワーメントを同時に進める「社会のインフラづくり」の試み ・コミュニティ・メイカースペース「The Factory」&若者のためのクリエイティブ産業キャリア育成プロジェク ト「Maker City」:低い職業満足度や雇用機会を改善するため、 3Dプリンターなどの機材や教育プ ログラムにより、住民・学生・アーティスト・ビジネスマンへ、スキル獲得やクリエイティブ活動、起業の場を 提供。 ・「Soundwave」:若者のエンパワーメントを重視した、音楽制作・録音・ミックス・音響表現の支援プ ログラム。制作・パフォーマンスを通して、若者が自信を育み、居場所づくりにも効果があるとともに、就 業・進学先にもつながった。 地域との関わり方: 貧困と社会的排除が課題となっている地域であるが、行政サービスの受け手として扱うのではなく、地 域課題の当事者・担い手・クリエイターと位置づけて関わってきた。そして、住民の声を市役所や企業に 「翻訳」し、政策や実装に接続する役割を担っている。 ②行政サービス改善 ③地域活性化
  33. 41 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:地域のバイブス・多様性を重視してコミュニティをつくる 概要:

    貨物駅再開発までの一時的なプロジェクトとして、地元のクリエイティブエー ジェンシーが借用し活動開始した、オーフスの創造的ビジネスが生まれる中 心地&市民が自由に出入りできるコミュニティエリア。カルチャーセンター建 築後も、活動規模が大きくなり無視できない経済・ブランド効果をもたらし ている 主体:Institute for (X)(2009~) エリアの経済効果 約3.5億円/年 活動: 50人以上のクリエイター(デザイン/建築/音楽/革/美容等)が3万円弱 でここのコンテナや小屋を使って活動 音楽イベント含め年間200イベント ランチシステム(周辺のスーパーやレストランからの廃棄食材を集め、共用 キッチンで入居者達が毎日交代で) 敷地内にあるキオスクは容器レス・パッケージレス 隣接カルチャーセンターは無償・格安で利用できるカフェ、ワークスペース、 巨大なファブスタジオ 地域との関わり方: 起業家だけでなく市民の誰もが非公式に集まれる場所 規制するのではなく「一時的」であることを条件に合法化する過程としてい る。前例のない=法律が行き届かない活動が発足するたびに、入居者と 市が対話を重ねて問題を解決することを繰り返してきた。 大事にしていること ・「バイブスを殺さないこと」(入居希望者はプロジェクトの面 白さや事業性の観点から厳正な審査) ・「マイノリティープリンシプル」(「いまこの場にないもの」をもつ 人々に優先して場所を貸す) ・「ルール・ゼロ」(ルールをつくってはいけないというルール) ③地域活性化
  34. 42 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:これからのまちのモデルを地域の現場でつくる 概要:

    1世紀にわたる造船業によって荒廃し土壌汚染していた造船所跡地を改善す るため、アムステルダム市が民間公募して生まれた循環型都市開発のためのリ ビングラボ。アムステルダム北部に位置する敷地面積1250m²の小さなエリアで、 地域のエネルギー、栄養素、廃棄物サイクルの「ループを閉じる」完全なリサイク ルを実現する再生技術の開発や実証に、建築家、芸術家、起業家、研究者、 ボランティアなど多様な組織が協力して取り組んでいる。アムステルダム市からの 補助金(€250,000)と市の保証による銀行融資(€200,000)を受けて 資金を調達している。14隻の貸し出しハウスボード、ラボ&コミュニティ施設、レ セプションスペース、カフェ・レストランから構成され、文化的およびコミュニティのハ ブとなっている。サーキュラー・エコノミー 賞(2014) を受賞。 主体:Metabolic社 (2014~2024)(De Ceuvel) 活動: ハウスボートは廃船をアップサイクル利用し、根を通して汚染物質を吸収して分 解する特殊な植物で覆う「ファイトレメディエーション」を開発 再生可能エネルギーの地域生産と交換を促進するため、ブロックチェーン技術を 用いた仮想通貨のJouliette(ジュリエット)を導入 温室で育てた植物、海藻バーガー、キノコで作ったミートボールなどを敷地内レ ストランで提供 地域との関わり方: 毎年35,000人を超える訪問者(Covid-19前)。 作り手として関わるイベント(土壌を回復させる植物を植える、カフェやハウス ボートオフィスなどのテーブルなどに釘を打つ、オフィスのデザイン等) ②行政サービス改善 ①サービス・技術開発 ③地域活性化
  35. 43 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:自分たちでまちの活動計画をつくる 概要:

    「よく出来た計画書をつくっても、実行出来なければ意味がありません」とい う文章で始まる神山町の創生戦略、人口ビジョンの計画書。実行するた めの計画を作るために、「2020年に神山分校が廃校に」「バスが廃線にな る」「2040年には小中学校も廃校に」などの「なりゆきの未来」を共有した 上での対話のプロセスが重視され、地域から実行する人がでてきた事業を 計画にする、というアプローチが取られた。その結果、町民や役場職員を主 体としたプロジェクトが生まれ、まちを将来世代につなぐための循環が生まれ ている。 主体:一般社団法人 神山つなぐ公社、神山町 (2016~) 活動: 「神山の食と農をつなぐ」フードハブプロジェクト 大埜地の集合住宅「鮎喰川コモン」 徳島県立城西高等学校「神山創造学」 県外遠方生向けの町営寮「あゆハウス」 地域との関わり方: 神山つなぐ公社が民間の立ち位置で、行政では為しえない柔軟な発想や 手法で、必要な施策推進を迅速に手がけている。開かれた活動拠点を持 ち、町職員と住民、町内外の人々がかかわり合うプロジェクト群を黒子のよ うに支援している。意志のある実行主体の発見に至らない要推進事項に ついてはみずから牽引し、事業化の過程で主体を見出し、上記のようなな 活動を立ち上げてきた。 ②行政サービス改善 ③地域活性化
  36. 44 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 事例:市民と行政が相互理解を深めるプロセスをつくる 概要:

    地方自治体の裁量権を大幅に拡張し、住民参加の重要性を強調した地方自治法(1995) を法的根拠とした市民参加型予算のためのプラットフォーム。目標は ①市民の影響力を高める、 ②公平性を促進する、③市民の理解を高めることとしている。市民が自治体への理解を深める とともに、自治体としても地域課題の意見を得られ、相互に学習するプロセスとなっている。 2023年10月2日~15日には、「OmaStadi 2023-24」でアイデアを募集された。予算は14億円。 主体:ヘルシンキ市(2018~)市民参加型予算オンラインプラットフォームOmaStadi 提案内容: ヴァトゥニエミ小学校および休み時間での野外活動の機会の開発@レクリエーション ホームレスや疎外された人々のためのアートセラピー@幸福 非営利映画制作のためのプロ仕様の撮影機材@文化 ヘルネサーリとヤトカサリ間の交通の便に関するレポート@構築された環境 ヴァンハー・ヴオサーリの街路樹木園@公園と自然 小学校の勉強と平和の教育@共同体意識 地域との関わり方: OmaStadi2.0では、以下のプロセスで市民・市役所・専門家が共創し、アイデアが実装された。 ①市民が、市の予算の使途に関するアイデアを提案する ②市役所が、実現可能性を評価する ③市民が、アイデアを組み合わせ提案する ④市民と市役所が、提案について議論する共創WSを行う ⑤専門家が、提案について見積もり作成する ⑥市民が、提案に対して投票する ⑦市役所が、得票数の高い提案を議論し、詳細を決定する ⑧社会に実装する ②行政サービス改善 ③地域活性化
  37. 46 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs デンマーク: 幸福度の高い国、人間中心の都市・社会づくり

    社会保障制度と流動的な労働市場: 失業時の社会保障や教育訓練プログラ ムと共に、柔軟な労働市場政策をとる。 マレーヌ・ライダル(2015) デンマーク 人が世界で一番幸せな10の理由. ワークライフバランス:1890年代の労 働運動を経て、”8時間の労働・8時間 の自由・8時間の休息”を担保している 幸福度が高い: 人生を選択する自由 が高く、寛容性も高く、世界幸福度ラ ンキングで上位に位置している。 所得格差が低い:高福祉で税率 が高く、ジニ係数は国際的に低い
  38. 47 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs デンマークにおけるリビングラボのメカニズム 主体的な共創実践の活動は、その土壌となる社会システムや、そこから形成される人々のマイ

    ンドセットによって支えられている ①共創実践の場 =リビングラボ ②人々の特性 (マインドセット) ③社会システム フォイ―ニング フレキシキュリティ ホイスコーレ 主体性 冒険性 対等性 ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日 本における構造的課題、(調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局 ▪市民参加システム: フォイーニング(Forening) 公共施設の優先的な利用や公的支援が 得られる.ボランティア中心に運営. ▪教育システム ホイスコーレ(hojskole) 生涯学び続けることができる民衆の民 衆による民衆のための成人教育機関 ▪就労・社会保障システム フレキシキュリティ(flexicurity) 流動的な経済における労働市場の融通性と 労働者社会保障を組み合わせた政策
  39. 48 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 徳島県神山町: 人口5000

    人の小さな町はなぜ進化し続けるのか? ※大南(2021)徳島県神山町~人口5000 人の小さな町はなぜ進化し続けるのか?,宮崎県総合計画審議会. https://www.pref.miyazaki.lg.jp/documents/66504/66504_20220104155628-1.pdf 2015~ まちを将来世代につなぐプ ロジェクト(つなプロ)&神 山つなぐ公社 神山で大事にされてきたメ カニズムを、仕組み・組織と して体現したのがつなプロ &つなぐ公社
  40. 49 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 神山町における連続的な共創を生み出すメカニズム 「森の生態系モデル」

    メカニズム2 根のようなつながり 地域内外の人や自然と つながりを育み、力を引き出す メカニズム3 幹のような活動支援 問いに向けて責任を持って 活動の実行にコミットする メカニズム1 太陽のような問い 住民のリアリティと 地域の未来を捉えて問い続ける ※Atsunobu Kimura et al.(2025) The reflexive mechanism of a Living Lab platform for self- sustaining co-creation activities. In Proc. of Open Living Lab Days 2025.
  41. 50 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 行政政策: 健康福祉総合計画策定・運用等

    人の意欲が発揮され人手不 足を解消するムーブメントを 生み出す「労働供給制約社 会・大牟田」 人の力を引き出 す職場づくり「超 短時間雇用」PJ ×東大等 みんなが自然と元 気になるまちPJ w/ モデル事業 ×NTTデータ等 Well-being な住まいPJ ×有明高専等 社会の本質に迫る 問いと対話のメディア 「湯リイカ」 ×SMBC等 「わたし」として扱われる場があたたまりを生む 公営住宅モデルルームと住みこなしに必要な家具DIY 対話を通じて住民の主体性 があたたまる定期イベント 「ぐるぐるダイアログ」 主体的なデジタル活用をサ ポートする人材 「インフォナビゲーター」養成 講座 高齢者の主体性を引き出す デジタル体験 「VRを活用した未来の福祉 プロジェクト」 ×東大等 多様な市民や内外の関係者がが集うイベント 対話を通じて未来について考える仲間が集う 生産性と多様性 の両立する地域 企業への伴走支 援PJ 住民があたたまり地域内のキーパーソン同士がつながる場 大牟田から未来をのぞき見る、 対話・体験・テクノロジー 「NINGEN Societal Festival」 産官学民の共創プラットフォームを推進する主体: 大牟田未来共創センター(大牟田市との連携協定) 地域共創拠点: うずうずマイン(コワーキング,イベントスペース,チャレンジショップ等) ・・・ 健康福祉総合計画策定・運用 ❶人がのんびりと 動き出せる土壌 ❷未来にむけた 問いを深める対話 ❸システム転換を 志向する実践 福岡県大牟田市: 「人々が主体的に共創できる社会」のモデルづくり
  42. 51 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 主体的な人たち・共創活動・問いが持続的に生まれるメカニズム 共創活動

    総体的・連続的に 深める問い 主体的に 動き出せる土壌 やってみる どうあるべきか のんびりする やってみる 何もないよう に見える状態 関わりの中でも やもや/うずう ずし始める状態 ムーブメント (活動)が生ま れる状態 どんな人も存在を大切にされ,主体的に動き出すま での過程を待つ仕組み 個人の ムーブメント 社会的 ムーブメント 互いに問い・示唆・ ファクトを深めて,社 会をより良くする変化 を生む活動ができる仕 組み ※木村ら(2021)持続的な活動/持続的な変化に向けたリビングラボ概念の拡張,第68回 日本デザイン学会 春季研究発表大会.
  43. 52 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 「主体的に動き出せる土壌」のメカニズム 実践における体験価値とソーシャルワークにおける「エンパワーメント」理論※

    を踏まえた 「存在肯定」「意欲醸成」「伴走支援」という段階的な機能要件を特定 ただし、日本の社会システムはこの段階を阻害しやすい構造となっている。 関わりを生みづらい社会システム 主体的な関わりを生む社会システム みんなの活動 (閉じられている・委ねてしまう) ・ ・ ・ ・ ・ ・ わたしの活動 (自己の発露しづらさ・私的幸福追求と公共の福祉の乖離) みんなの活動 (開かれている・自分も関わりうる) ・ ・ わたしの活動 (個人の尊重、表現の自由) ・活動に寄り添って伴走される(伴走支援) ・うずうずが引き出される(意欲醸成) ・安心・自由を感じていられる(存在肯定) あいだがつながらない (空気社会・お上意識) ※植戸貴子(2003)「エンパワメントの概念整理とエンパワメント実践のための具体的 指針に関する一考察」『社会福祉士』第10号、社団法人日本社会福祉士会
  44. 53 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 個人のマインドセットの変化と組織・地域の構造変化の関係性 ミッション志向

    (社会の目的) タスク志向 (組織の目的) かたい構造 (組織・地域) ゆるい構造 (第3の場所) ミッション 志向の構造 タスク 志向の構造 ミッション 志向の構造 タスク 志向の構造 のんびり (解除化) うずうず (主体化) わくわく (環境調整※3)
  45. 55 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 共創における「問いと土壌の循環モデル」 共創活動

    総体的・連続的 に深める問い 主体的に 動き出せる土壌 やってみる どうあるべきか のんびりする やってみる ※木村ら(2021)持続的な活動/持続的な変化に向けたリビングラボ概念の拡張, 第68回 日本デザイン学会 春季研究発表大会 成果・報告・形式知の領域 持続的な共創プラットフォームとしてのリビングラボには、共創活動(プロジェクト)だけで はなく、「主体的に動き出せる土壌」や「総体的・連続的に深める問い」が重視されている。 プロジェクト プラットフォーム
  46. 56 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボにおけるアクターと役割 プロジェクトレイヤー

    役割:プロジェクトマネジメント 効果:価値共創 関連手法: Coデザイン ビジョンレイヤー 役割:ビジョニング・インパクト評価 関連手法:トランジションマネジメント・システミックデザイン インフォーマルコミュニティレイヤー 役割:エンパワメント・エンゲージメント 関連手法: コミュニティマネジメント リビングラボマネージャー Provider 資金提供者 Enabler (Government, Foundation, Companies,,, ) リビングラボ利用者 Utilizer 地域内外の関係者 Stakeholders (User, Citizen, Companies,,,) コミュニティマネージャー (Panel Manager) Provider プロジェクトマネージャー Provider 運営側 参加側
  47. 57 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボの持続的運営に関する視点 ▼プロジェクトを無理に継続しない

    地域やテーマに関して、主体的に取り組む人が少ないのであれば、無理に継続せずに、次に活動するタイミングをのんびりまつという戦略もある ▼プロジェクトを継続する/新たに立ち上げる 地域やテーマのビジョンを念頭に置きながら、取り組みたいプロジェクトを実施するために、都度、予算を取りに行く ▼プラットフォームとして運営を継続する 1.リソースのある範囲で運営を継続する(産官学民) 2.新しい取り組みを研究プロジェクトとして位置づけ継続する(学) 3.行政の政策に位置付ける(官) ・共創プラットフォーム運営や人材育成の予算を活用する ・個別の施策(ヘルスケア、生涯学習、、産業振興、施設建設等)と紐づける 4.ビジネスモデルを開発する ・空き家を防災拠点と地域課題解決のプラットフォームとして活用する(Solar Crew) ・公園・緑地を共同運営し、学びや癒しの場として活用する(Comoris) ・地域に開きながらコワーキングスペースを運営し、社会人と地域の共創プラットフォームとして活用する(JCCO) ・企業のリサーチ支援(サービス探索)/実証実験支援(サービス検証)を行う(会津暮らしの研究室、大牟田未来共創センター等)
  48. 58 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs 暮らしの時間 ・主体的、生成的、多様

    ・歴史的な絆、人間、世間 e.g. 自立共生的、生活世界 暮らしの質感・自然との共生をとりこぼさない共創アプローチ ボトムアップからの自生的な実践は増えてきているが、本質的に社会が変わっていくため に、それらの実践をしやすくする環境(政策、テクノロジー、ビジネスなど)の転換に対する 注目が高まっている システムの時間 ・客体的、計画的、均質 ・政策的経緯、公論 e.g.操作的、システム 市民活動 行政 スタートアップ 企業 質的に“暮らしのリアリティ”を 捉えた実践 質的な実践を生み出しやすくす るシステムへのハッキング
  49. 59 Copyright 2025 Japanese Network of Living Labs リビングラボ・トーク シリーズ

    組織や役割を超えた共創について対話したい人はぜひご登録ください ▼12月以降の予定 ・12/17(水) ここにある 藤本遼さん共催 in 尼崎 ・1/20(火) NTTドコモ・ 榎本さん共催 in 沖縄 ・1/28(水) ミラツク/エッセンス 西村勇也さん共催 in京都 ▼その他の予定 ・BIOTOPE 山田和雅さん共催 in霞が関 ・PYNT 吉備 友理恵さん共催 in飯田橋 ・北海道大学 土井將義さん共催 in北海道 等多数企画中 デンマークのスマートシティ 研究者とともに、日本初の リビングラボ書籍(教科 書)を刊行。全国30カ所 で対話イベント実施予定。 リビングラボML トーク含めた国内のLLイベント情報 『はじめてのリビングラボ』NL 書籍の中身やトークに関するつぶやき Muture Podcast(5/28 ~) 山田崇ラジオ(7/7 ~) 渋谷でDeathラジ オ(8/22~) 等も公開中!