2023年8月8日に実施された日本ブロックチェーン協会(JBA)の定例会にて行った「ブロックチェーンインターオペラビリティとエンタープライズユースケース」という講演の登壇スライドです。
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Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.JBA定例会ブロックチェーンインターオペラビリティとエンタープライズユースケース株式会社Datachain 鳥海 晋
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CONFIDENTIAL Copyright © 2021 Datachain, Inc. All Rights Reserved.本資料の内容は、現時点での情報に基づく不確定な要素を含んでおり、当社がその実現を約束するものではありません。● 導入:ブロックチェーンインターオペラビリティとは● 課題:インターオペラビリティの難しさ● ソリューション:インターオペラビリティの実現方式とDatachainの取り組み● ユースケース● 今後の展開本日の内容(流れは多少前後します)2
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIALまとめ ● 複数のブロックチェーンをまたいで情報をやりとりして、連携させることを「インターオペラビリティ」と呼ぶ。ブロックチェーン同士をつなぐことは、(案外)難しい。参加者同士が「正しい」合意に至ることが難しいというブロックチェーンが解こうとする問題と同じ構造がある● トークン移転やスワップをブロックチェーンをまたいで実行しようとすると「インターオペラビリティ」の仕組みが必要になる。パブリックブロックチェーンでは、千億円単位の多大なハックが起きていて、インターオペラビリティPJは必須のインフラとして注目されている● 安全な仕組みとして相互検証方式が挙げられ、Progmatなどでも利用の検討が進んでいる。エンタープライズ領域では金融ユースケースが先行するが、多数のブロックチェーンを支えるインフラとして、今後継続して重要であると考えられる3
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIALブロックチェーンのインターオペラビリティとはブロックチェーンの「インターオペラビリティ」とは、複数のブロックチェーンをまたいで情報を共有し、連携する仕組みブロックチェーンA(例、支払チェーン)ブロックチェーンB(例、NFTチェーン)“チェーンAで安達さんが井上さんに100トークン送った”(例えば、BチェーンでNFTを逆向きに取引する 等)4
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIALインターオペラビリティ実現の難しさブロックチェーン自体が「不特定多数の参加者間に信頼を持ち込む」仕組みだが、ブロックチェーンをつなぐ際にも同じ問題が存在ブロックチェーンB(例、NFTチェーン)“チェーンAで安達さんが井上さんに100トークン送った”(ので、チェーンBで安達さんにNFTを渡して)真実嘘!(実際は送ってない)ブロックチェーンは「参加者間」で一つの真実を作り出す仕組みであり外からの情報についてはなんとも言えない誰からその情報を聞けば良いのか?(例、チェーンAの代表者?)5
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL(参考)ブロックチェーンの意義ブロックチェーンでは無条件に他者の台帳を信用するのでは無く、(相互)検証によって信頼を作っているチェーンATx情報の受理…各ノードでTx/スマートコントラクトを実行し、新たな台帳を得る(実行)PoS等の仕組みでチェーンとして合意に至る(コンセンサス)なお、フルノード実行にはそれなりのスペックが必要(Go Ethereumの場合)- 4 Core CPU- 16GB memory- 2TB SSD- 25Mbpsの通信帯域6
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIALインターオペラビリティが必要となるシナリオ基本的には、ブロックチェーンのユースケースから派生する形で、インターオペラビリティ/ブリッジがブロックチェーン間で使われているアプリユースケースクロスチェーンユースケースDEX(取引所)Lending(担保・貸出)Market Place(NFT取引)…異なる通貨を流動性を使って交換ある資産を預け入れて別の資産を借りるNFTをP2Pで取引チェーンを跨いで通貨を送金・交換担保資産と別のチェーンで資産を振り出すNFTを他チェーンと取引、決済7
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIALインターオペラビリティの重要性ブロックチェーンで扱われる資産規模の拡大にあわせてブリッジの経済的価値は拡大。ハッカーによる攻撃対象としても重要性を増しているOrganisation Chains Lost (USD) Recovered (USD)Ronin Bridge Ronin sidechain $624M $30MPoly Network BridgeEthereum, BSC,Polygon and others$611M Nearly allBSC Bridge Binance $566M ~$455MFTX(SBF/Alameda Research)Tether/Ethereum $477M $100M frozenWormhole Bridge Solana $326M Reportedly allEuler Bridge Ethereum, Bitcoin $197M -22年単年で$2Bn+FTX Collapseよりもはるかに大きい被害がブリッジのハックによって発生Design Approaches to Bridge-Agnostic Crosschain Messaging Solutions - https://youtu.be/OmDDX_QJ2H8 (Ethereum Engineering Group June ‘23)8
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL実現の類型化インターオペラビリティの実現方法とその性質には濃淡がある。一般的には効率性とセキュリティがトレードオフの関係性にあり、現状はややトラステッド(信頼仮定が大きい)な手法が主流か注)直感的理解を優先しており、細部の議論を捨象した類型ですフルノード検証 ライトクライアント検証 トラステッドセキュリティコスト種々のPJ概要 すべてのトランザクションを検証主にブロックヘッダーを検証検証をしないorほとんどしない(情報ソースを信頼)(Harmonia/Vicarious Trust)TOKI/Datachain LayerZero Axelar WormholeChainlinkCantonZK-basedBridgesOptimisticBridgesノード運営の前提あり9
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL(参考)トラストレス・トラステッド「トラストレス・システム(Trustless System)」は「信頼できないシステム」では無いTrustless(トラストレス) 【形】〔人が〕信頼できない《コ》〔ブロックチェーン技術において〕管理者が存在しない、管理者による承認を必要としない信じようとしない、疑い深いTrusted(トラステッド) ブロックチェーンなどでは、誰かがHonest(誠実)に振る舞うと信頼することを示す例、Trusted Relayer:正しく情報を伝達することが期待されるRelayer10
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL具体的なインターオペラビリティPJいわゆるL1並の重要性が認識されており、LayerZeroやAxelarをはじめとして、大きなPJが存在(DefiLlamaのBridgeやCrosschainカテゴリ)概要対応チェーンLayerZero Axelar WormholePJ規模…Oracle/Relayerモデル 中間チェーン Guardian(トラステッド)モデル(19ノード)Ethereum、Polygon、Arbitrumなど31チェーンCosmos系やEVMを中心に40+チェーンEVMを中心にSolanaなど30チェーン評価額:3B$(23/Apr)月間Tx量:2-3B$Stargate TVL:~400M$*評価額:1B$(22/Feb) Portal TVL:~400M$*過去に300M$規模のHackが発生するもJumpなどに救済(*) DefiLlama11
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL(参考)Axelarブリッジを行うチェーンを導入し、経済的インセンティブにより正しい連携を行うことを図るアプリ層L1(ブロックチェーン)AxelarNetwork(ブロックチェーン)● 基本的にはL1チェーンの参加者がAxelar Networkにも情報を連携(『チェーンAからチェーンBに、ある情報を送りたい』)● 多数決の仕組みで、AxelarNetworkがその情報に合意→チェーンBにAからの情報を書き込み● 分散化とインセンティブがセキュリティを支える○ 75バリデータ○ 総ステーク量:700MAXL(~= 300M$)12
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL(参考)LayerZero現状では、オラクル(Oracle)と呼ばれる情報の提供者を強く信頼するシステムを採用オラクル(ブロックヘッダ提出)リレーヤー(Tx証明提出)● ブロックヘッダとTx証明を割符の様に利用してインターオペラビリティを実現○ 正しいブロックヘッダとTx証明を組み合わせると、送信元チェーンであるTxが合ったことを軽量で検証可能● デフォルト設定では下記のような運営体制(利用アプリが設定可能)○ オラクル: Industry TSS Oracle(Polygon, Sequoia)○ リレーヤー: LayerZero Labs● オラクルとリレーヤーが結託しないことをセキュリティの根拠とする○ i.e., 結託すれば任意のTxを提出可能13
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL相互検証型のインターオペラビリティライトクライアント(Light Client)と呼ばれる相互検証方式が、一般的には最も安全なインターオペラビリティ実現手段と考えられている(Cosmos IBCはゼロロス)Datachainでも、ライトクライアント方式に準ずる、できる限りトラストレスな方式を提供チェーンA チェーンBリレーヤー(ブロックヘッダ/Tx証明提出)オンチェーン・ライトクライアント(スマートコントラクトとしてすべてのノードで実行)● 提出されたヘッダが正当であることを検証する○ バリデータセットの署名 等● Tx証明を用いて、Txが正当であることを検証○ Merkle証明 等チェーンB内で他から独立して検証*チェーンAのバリデータセットが結託すると任意の攻撃が可能受理棄却14
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIALエンタープライズ領域での取り組み参加者が極めて限定的なプライベートチェーン同士では(現実的に)相互検証は不要という前提を置くことも多い。一方で、プライベート・パブリックの連携パターンも今後増加していく可能性日付 主体 概要 類型6/30 世界経済フォーラム グローバルCBDCのインターオペラビリティ指針を公開● 各国のCBDCの取り組みをレビューした上で、指針を提示-6/27 MUFG/Datachain デジタルアセットPFであるProgmatの中心企業であるMUFGがDatachainに出資ライトクライアント(TOKI/Datachain)6/14 R3/Adhara Fnality(決済PF)とHQLAx(債券PF)のDvPについてHyperledger Harmoniaとして公開フルノード6/6 Swift Chainlinkの仕組みを用いて、Ethereumなどのチェーン間の取引の実証を開始トラステッド(分散オラクル)5/24 Swift 二つの船荷証券PFをまたがる取引の実証を開始トラステッド(Swiftトラスト?)5/9 Goldman Sachsなど Digital Asset社のCanton Networkを用いた実証を30の金融機関で実施予定フルノードニュースサイトLedgerInsightより、「Interoperability」にて抽出(直近3ヶ月)15
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL(事例)Hyperledger Lab: Harmonia実用的な発想を元に、(強い前提は必要だが)FnalityとHQLAx間でのDvP取引を実現Fnality(決済/EVM)HQLAx(債券/Corda)Aliceの世界Bobの世界債券ロックAliceの債券ロック送金ロック送金受領(ロックのProof提出)12342つのプライベートチェーンで各金融機関が両方のノードを持つことを利用● 大量のネットワークや不特定多数の参加者を仮定しない割り切りHarmonia内では、ライトクライアントなどの検証方式についても考察● 責任所在やソフトウェアアップデートなどの要因● 左記のセットアップ自体が問題をシンプルに解決可能であった○ 例)Bobが仮に誤送金した場合、Bobの責任と言える16
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL(事例)Swiftのパブリックブロックチェーンでの実証分散オラクルであるChainlinkを用いて、パブリック・プライベート 等の接続を実証する取り組みをスタート17● 分散オラクル(i.e., トラステッドなノードが多数いる)を用いてチェーン間の連携を行う● オラクルにLayerZeroのように複数の役割を与え、単一の偽装が難しくしている○ Oracle/RelayerのようにCommitting DON /Executing DONを分離。さらに監督の層(ARM)を導入● Axelarと同様に、分散化とLINKトークンによるインセンティブが肝
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL(事例)Progmatでのインターオペラビリティ事例オンチェーン・ライトクライアントを補助するエンクレーブ・ライトクライアントを用いてDvPを実現今後は、パブリックブロックチェーンでのステーブルコインユースケースなどにも利用Progmat(Permissioned)ST Platform(Permissioned)エンクレーブ(プロセッサ内の安全隔離領域)Ethereum(Public)18エンクレーブからの情報を検証エンクレーブからの情報を検証ライトクライアント検証を実施ホールセール決済メリット:速い・(比較的)安い、ハブモデルが採れるデメリット:エンクレーブ(i.e., Intel)を信頼する独立したオフチェーンプロセス
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL将来的なインターオペラビリティ層の必要性エンタープライズ領域においては、金融から徐々にユースケースが広がりつつあることや、パブリックチェーン利用(ステーブルコイン 等)が要因となって、インターオペラビリティは更に重要に。ユースケースが広がるにつれ、第三者に頼らないインフラの重要性が増すと考えられるエンタープライズPF(貿易/サプライチェーン、グリーン、地域通貨 等)第三者に頼らない(限りなくトラストレスな)インターオペラビリティ基盤19セキュリティトークン 等NobleStablecoin証書・環境債・地域通貨 等NFT 等…
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIAL今後の展望トピックインターオペラビリティ実現においても「ゼロ知識証明」はホットトピック。一方で、主たる性質である計算コストの増加は導入へのハードルとしてまだ残っているJBA定例会「イーサリアムコミュニティとゼロ知識証明の発展」INTMAX/日置玲於奈氏https://youtu.be/7NVb07bYDoYスケーラビリティ ~= ブリッジ● L2での結果をL1に伝えるのと同様の構造がブリッジにも存在Optimistic(楽観的)方式ZK(ゼロ知識証明)方式 ←日進月歩!Across Synapse20
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIALまとめ(再掲)21● 複数のブロックチェーンをまたいで情報をやりとりして、連携させることを「インターオペラビリティ」と呼ぶ。ブロックチェーン同士をつなぐことは、(案外)難しい。参加者同士が「正しい」合意に至ることが難しいというブロックチェーンが解こうとする問題と同じ構造がある● トークン移転やスワップをブロックチェーンをまたいで実行しようとすると「インターオペラビリティ」の仕組みが必要になる。パブリックブロックチェーンでは、千億円単位の多大なハックが起きていて、インターオペラビリティPJは必須のインフラとして注目されている● 安全な仕組みとして相互検証方式が挙げられ、Progmatなどでも利用の検討が進んでいる。エンタープライズ領域では金融ユースケースが先行するが、多数のブロックチェーンを支えるインフラとして、今後継続して重要であると考えられる
Copyright © 2020 Datachain, Inc. All Rights Reserved.CONFIDENTIALより詳しくは…https://medium.com/@datachain_jphttps://twitter.com/datachain_jp● CosmosのIBCはブロックチェーン間のインターオペラビリティをどのように実現するのか● 安全・高効率のクロスチェーンブリッジを支えるミドルウェア「LCP」ブリッジプロジェクト TOKIhttps://medium.com/@tokifinancehttps://twitter.com/tokifinance● How TOKI and LCP BridgeCosmos and Ethereum via IBC(ZK方式との比較など)鳥のようにチェーン間を自由に行き来するインフラを提供することを目指す22