2020/12/2 Blockchain GIG#7でしゃべった内容 2020年のエンタープライズブロックチェーンのビジネス&ユースケース、技術&コミュニティのふたつの面での振り返り
2020Blockchain GIG#8中村 岳日本オラクル株式会社テクノロジー事業戦略統括2020年12月2日
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中村 岳Twitter @gakumuraはてなブログ @gakumura…主にHyperledger Fabric関連• 現職:ソリューションエンジニア@日本オラクル• 担当:Oracle Blockchain Platform、Blockchain Table• 前職:金融決済系SIerでパッケージ開発• 好きなOS:AIX• 最近おすすめのマンガ:チェンソーマンCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates2
エンタープライズブロックチェーンの2020年を振り返る• Blockchain GIG#6での2019年振り返りに引き続き、年末なので振り返り• ビジネス&ユースケース編と技術&コミュニティ編で分けてお話Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates3写真…散歩していたら見つけた野菜の自動販売機
Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates4ビジネス&ユースケース編
• グローバルでは「ブロックチェーンは本当に使えるのか」といった検討段階はとうに過ぎ、商用稼働/社会実装も着実に進んでいる• 有力ユースケースは固まりつつある or 既に固まっている• 国内でも投資の増加、市場の拡大が見込まれており、ユーザー企業、システム開発企業双方の関心も高まってきている• 国内でも有力ユースケースについての認識が醸成されつつある• 「どのようにコンソーシアムを組成し、運営し、拡大していけばいいのか」が重要なポイントになるが、国内におけるノウハウは限定的でチャレンジング昨年末こんなことを喋っていました…エンプラブロックチェーン2019年振り返りでのビジネス編まとめCopyright © 2019 Oracle and/or its affiliates5from Blockchain GIG#6
• 2020年を通じて、エンタープライズブロックチェーン領域での「全く目新しいユースケース」「斬新なアイディア」というように感じる事例はあまり(あるいは全く)見当たらなかった• ブロックチェーンを用いて解ける/解くべき課題のパターンは既に十分に見出されており、それに対応するテーマ、ユースケースはほぼ出揃っているのでは• もちろんディティールが新しいものはある(例:COVID-19関連)が、既出のパターン/テーマの応用と新しい要素の組み合わせである• もはや取り扱う課題やテーマのアイディア勝負といった段階ではなく、如何に利害関係を調整しながらコンソーシアムを組成、運営するかのビジネス実務面での推進力や、プラットフォームを適切に開発、運営するかのテクニカルな能力が肝になっている• 新奇、先端、アピール ⇨ 地味、実用、粛々ユースケースのバラエティは既に出揃った感Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates6
エンタープライズでのブロックチェーン/DLTの適用領域例Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates7公共• 投票システム• 土地や資格の管理• 行政記録管理、市民サービス自動車• サプライチェーン効率化• 偽装品対策、原産地証明• 所有権証明通信• ローミング決済• メディア、ゲーム• セキュリティと不正対策小売• トレーサビリティーとリコール対応• 製品認証、ブランド証明• ワランティ管理教育/研究機関• 学歴履歴• デジタル著作権管理• 教育コンテンツマーケットプレイスメディア/エンターテイメント• ロイヤリティポイント• C2C/P2P コンテンツ共有• デジタル著作権管理ハイテク/製造• サプライチェーン効率化• トレーサビリティー、偽装対策• IP、著作権管理ヘルスケア• 医薬品のトレーサビリティー• 医療費管理• 資格管理金融• 国際間決済、送金• 認証管理、KYC• 取引管理企業間データ共有/ワークフロー基盤• 契約、請求支払、会計、リコンサイル• 在庫、受発注、取引エンタープライズでのブロックチェーン/DLTの適用領域例
【国内】• 証券PF、セキュリティトークン…複数のサービス商用提供開始• 外国為替ポストトレード…国産商用プロダクト提供開始• スマート保険…複数の実証実験実施• 決済…国産サービスローンチ間近• その他:銀行間リコンサイル、証券ポストトレード、DID利用によるKYC効率化など様々な実証実験が実施【海外】• CBDC(中央銀行デジタル通貨)…カンボジア「バコン」の運用開始、ローンチ間近と言われるものも複数• Diem(f.k.a. Libra)…紆余曲折ありピボット/縮小しつつも近々ローンチ• その他:サプライチェーンファイナンス、貿易金融など多数の商用化金融領域での商用化へのスピードは想定以上Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates8
• グローバルでは商用、実稼働での利用が粛々と進行• もはや専門ニュースサイト毎日見ていても追いきれない• (2019年までは商用稼働している大きめの事例は把握できている感覚があった)• Deloitte Global Blockchain Survey 2020より:• 「既にブロックチェーンを商用利用している」と答えた企業の割合:2019年調査時 23% ⇨ 2020年調査時 39%• 国、地域による差がある…中国59%、APAC53% ⇔ US31%• “簡単に言えば、過去にはテクノロジーの実験として扱われていたブロックチェーンが、今では本当に組織全体の変革を後押しする媒介となっているということだ”その他の領域でもPoC/実証実験を越えて社会実装へCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates9from Deloitte Global Blockchain Surveyhttps://www2.deloitte.com/content/dam/insights/us/articles/6608_2020-global-blockchain-survey/DI_CIR%202020%20global%20blockchain%20survey.pdf
テクノロジーとその市場での利用、定着段階Copyright © 2020, Oracle and/or its affiliates10メインストリームニッチexperimental幅広い業界、業種での多様なユースケース企業の規模、技術レベルを問わず活用一定程度限定された領域ではあるものの少数の確立したユースケースが定着ごく限定された(また、実験的な)ユースケースにごく一部の企業が使用エンプラBCってもうこのへんまで来てるのでは?
• NEXCHAIN(企業間情報連携推進コンソーシアム)• 企業間の安全で効率的な情報連携によるイノベーション創出を狙い、コンソーシアム運営~プラットフォーム提供までを担う• 多数の業種の有力企業が続々参加(発足時18社⇨2020/12/1時点で32社)• ワンストップ引っ越しを皮切りに、今後複数のテーマを扱う• TradeWaltz• 2017年からブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」の開発、検証が進められてきた• NTTデータなど業界横断で7社が共同出資したトレードワルツ社がプラットフォームの運営・開発・管理を担う• 国内外の事例がまとめて解説されているオススメの動画“ブロックチェーンはどのような価値をもたらすのか 〜2020年上半期の国内外取組動向・技術トピック動向から振り返る〜”(https://www.youtube.com/watch?v=PH6ymoFAdas)国内でもコンソーシアム型の商用化(目前)事例が続々登場(ごく一部を紹介)Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates11
参加者は誰なのか?• グループ企業• 異業種企業• 同業/競合企業• 金融機関• 監督機関/監査企業ガバナンス/運営は?• 業界団体/運営事務局• ジョイントベンチャー• 創始1社主導• ベンダー主導• 専制的 or 民主的プロセス参加者のメリットは?• 紙、手作業の置き換えによるコスト削減• リアルタイムデータ共有による業務効率化• エコシステム囲い込み• 共有データ利用による新たな価値• インセンティブポイント「コンソーシアム」と一口に言っても千差万別Copyright © 2019 Oracle and/or its affiliates12from Blockchain GIG#6
• 既に実稼働しているネットワークでは、1社が主導して立ち上げている事例が多い• 立ち上げからコンソーシアムで協働してリードしている例は(意外にも?)少数派• 先行している事例での割合であることには注意が必要…1社が強力に主導するアプローチのほうが協働アプローチよりも素早い(が、拡大していけるかはまた別の話)• ネットワークが組成、拡大していくに従って1社主導→コンソーシアム協働とアプローチが移ることはままある誰がコンソーシアムを先導しているのか~2019年前半時点で実稼働していたエンプラBCプラットフォームのグローバルサーベイからCopyright © 2019 Oracle and/or its affiliates13From: 2nd Global Enterprise Blockchain Study / Cambridge Univ.https://www.jbs.cam.ac.uk/fileadmin/user_upload/research/centres/alternative-finance/downloads/2019-ccaf-second-global-enterprise-blockchain-report.pdffrom Blockchain GIG#6日本だと最初から民主的にコンソーシアムが協働したうえでプラットフォームが立ち上がる例が多い印象
「どのようなテーマのコンソーシアムか」「どのような課題に対してのソリューションか」だけでなく• どういう建て付け、ガバナンスのコンソーシアムか• ジョイントベンチャー、運営事務局、業界団体• 規約や運営などはどう決めているか• どういうメンバーが集まっているか• 単一業界、業界横断• 同業/競合の参加有無• 金融機関、監督機関、監査法人• それぞれどういうメリットやインセンティブがあるか• プラットフォーム運用は共同か分散か• 運用コスト負担はどうなっているかなどなども併せてチェック、考察していくと気づきが多いのでは先行事例から多くを学ぶにはCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates14
Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates15技術&コミュニティ編
• 各ブロックチェーン基盤についての基本的な情報の充実化、共有が進んでいる。また、基盤自体の成熟やBaaSの登場により、「とりあえず触ってみる、使ってみる、作ってみる」までのハードルは劇的に下がった。• 一方でコントラクト、アプリケーション、そしてネットワーク全体のシステムアーキテクチャのあり方を、どのように考えるべきかの指針やベストプラクティスは共有されておらず、手探り状態• インターオペラビリティやオラクルなど、応用レベルの話題のキャッチアップもそろそろ必要昨年末こんなことを喋っていました…エンプラブロックチェーン2019年振り返りでの技術編まとめCopyright © 2019 Oracle and/or its affiliates16from Blockchain GIG#6このへんは情報共有が依然不足かも…(今後やっていきたい)エンジニアの裾野は2020年通じて確実に拡がった
• どのブロ:どのブロックチェーン使ったらいいの?• エンタープライズブロックチェーン基盤の比較、検討に使える情報• 2020年後半に急速に展開、共有が進んだ• スマートコントラクト言語やコンセンサスアルゴリズムなどの形式的な比較はそれまでにもあった⇨ユースケースを意識したより実用的な観点での比較情報が共有されるようになった• オンチェーンでの検索能力• データ共有範囲制御やその他のプライバシー強化機能(Privacy Enhancement Technology)• 実践上でのパフォーマンス• 得意なユースケースやアプリケーション実装のパターン/苦手なパターンコミュニティではどのブロ関連の情報の共有が進んだCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates17
• Blockchain GIG#7( https://oracle-code-tokyo-dev.connpass.com/event/172122/ )• 参加社:Accenture、NTTデータ、LayerX、日本オラクル• 比較検討や選定の観点、すすめ方からFabric 、Corda、Quorumの具体的な比較まで• TIS × INTEC Blockchain Night(https://www.tis.co.jp/seminar/event/blockchain_night_20200527.html)• 参加社: TIS、INTEC、日本IBM、SBI R3• Sierとしての視点でCorda、Fabricそれぞれの使用感、良い点、課題などを整理• 独自フレームワークLEAFによる基盤比較レポート(基本編) by LayerX( https://layerx.co.jp/publications/leaf_basic/ )• Fabric、Corda、Quorumについて独自の観点でフローや機能を整理し、リスクや優位性、向き不向きを評価• ブロックチェーン基盤評価 by Toyota Blockchain Lab(https://github.com/Toyota-Blockchain-Lab/PlatformEvaluation)• ユースケースでの基盤選定にあたって利用できる評価軸をまずは公開どのブロ:比較観点や評価についての資料の例Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates18
• 「で、結局どれがいいの?」→ユースケースによる!!!!• 「なんにでも最適なオールマイティな最強の基盤」はない• 基盤によってコンソーシアム形態~実装時の細かい部分まで得意不得意がある• 自分のユースケースは得意を活かせるか、不得意を回避できるか• 「まずユースケースが存在→それに合った基盤はどれか比較検討」の順番を忘れない• 「hogehogeをやりたいのですがfugafugaの基盤で実現できますか?」• がんばれば(リソースを大量にかければ)だいたいのことはどれでもできる• ただし選んだ基盤によってhogehogeがやりやすかったりむずかしかったりする• 基盤ごとに得意なこと(handyに実現できること)を理解しておくとベター比較情報に触れるうえで抑えておきたいことCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates19
• 異種あるいは同種のブロックチェーン基盤のふたつ(あるいはそれ以上)のネットワーク間で互いの整合性を維持しつつデータを共有したりアセットを移転、交換したりする技術• パブリックブロックチェーン(暗号資産)ではアトミックスワップなど先行して発展InteroperabilityCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates20
• Hyperledger Cactus by Accenture & Fujitsu• Fabric、Corda、Quorum、Besu• 国内でも…• Cordage by LayerX(Corda、Ethereum系)• Cross Framework by Datachain(Fabric、Tendermint)• 一方でInteroperabilityを含んだ商用稼動事例の話は海外含めて聞こえてこない• 聞こえてこないだけかも(技術的なディティールの話なのでそもそも明かされない)• PoC/実証実験したという話は少数聞く(方式までは不明)• 国内ではPoC/実証実験での適用を含めてもまだまだ利用は少数?• エンジニアのキャッチアップも含め、本格的&広範に使われるようになるには少々時間が必要か代表的エンタープライズブロックチェーン基盤をターゲットにしたInteroperabilityフレームワークが続々登場Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates21
• Corda、Hyperledger Fabric、Enterprise Ethereum(Hyperledger BESU、Quorum)の2020年中のアップデートをそれぞれかんたんに紹介• いずれも商用稼動を含む実績多数の代表的なエンタープライズブロックチェーン基盤だが、アップデートの内容や大きさ、開発/サポートを巡る状況は案外大きく様相が異なるエンプラブロックチェーン基盤のアップデートCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates22
• v4.4(2020年3月)、v4.5(6月)、v4.6(9月)と定期的に新バージョンがリリースされている• Corda OSはFlowの安定性や安全性、および部分的なパフォーマンスを向上する改善が中心• やや苦手としていた複数の相手にメッセージを送るようなFlowが、v4.5で追加されたsendAllのAPIによってより良いパフォーマンスで実行できるように• Corda EEはパフォーマンス向上やセキュリティや耐障害性周りの開発、運用補助系のツールなど様々CordaCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates23
• メジャーアップデート版であるv2.0が2020年1月にリリース• Chaincode(スマートコントラクト)のライフサイクルガバナンスの分権化、Chaincode実行環境の外部化、Implicit Private Data Collectionの導入など複数の大きめの変更• v2.2がv2.x系でのLTS(Long Time Support)版としてリリース• v2.2.0(7月)、v2.2.1(9月)• v1.x系でのLTS版であるv1.4.xのアップデートも継続されている• v1.4.6(2月)、v1.4.7(5月)、v1.4.8(7月)、v1.4.9(9月)• 最新の機能が使えるバージョンは現在v2.3(11月)• Ledger Snapshot機能の追加Hyperledger FabricCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates24
• 2019年12月:Enterprise Ethereum実装のHyperledger BESUがGAに• Hyperledger配下のOSSとしてConsensys中心で開発(旧称Pantheon)• Javaでのスクラッチ実装、Apache 2.0ライセンス• Public / Permissionedネットワーク両方に対応• グループ指定でのPrivate TxがBESUの特徴( Quorumとの違い)• 2020年8月:Quorum(GoQuorum)がJ.P. MorganからConsensysに譲渡• 譲渡後初回のリリース(v20.10.0)でPrivate Txの安全性改善に関する大きめの変更が入っている• 個人的には、依然Private Tx周りの仕様はBESUのほうが行き届いている印象• Consensysでは「Consensys Quorum」プロジェクトの配下でGoQuorum、BESUそれぞれの開発、メンテ、サポートを続けていくとのことEnterprise EthereumCopyright © 2020 Oracle and/or its affiliates25
Copyright © 2020 Oracle and/or its affiliates26Photo by Mika Baumeister on Unsplashare we ready to...?
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