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Data, Design and Government

Hikaru Kashida
October 11, 2023

Data, Design and Government

日本のデジタル社会実現の司令塔として、デジタル庁は政府内において、データと根拠に基づいた政策判断・効果の可視化の推進を先導する役割を担っていきます。その一環として、政策に関わるデータを「政策データダッシュボード」として公開しています。本プロジェクトを主管しているファクト&データユニット長の樫田とデザイナーの志水が政策に関わるデータを公開する意図やダッシュボードの開発プロセスを紹介します。

政策データダッシュボード: https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard

Hikaru Kashida

October 11, 2023
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  1. 3 Hikaru Kashida 早稲⽥⼤学理⼯学研究科を修了後、外資系戦略コンサルティング会社やデータ分析 専⾨会社などを経て、株式会社メルカリに参画。上場前後の成⻑戦略やプロダクト 改善をデータ分析チームの責任者として⽀える。2022年よりデジタル庁。 2022 ‒ 現在:⽇本政府デジタル庁 -

    Head of Fact & Data 2016 ‒ 2020:株式会社メルカリ - Head of Data Analyst 2008 ‒ 2016:外資戦略コンサル / データ分析専⾨会社 など Arata Shimizu 東京都⽴⼤学修⼠課程中にデジタル福祉機器のスタートアップを経験。卒業後、⼤ ⼿IT企業やDXコンサルティング会社で新規事業の企画やデザインに従事。Parsons DESIS Labで客員研究員を務め、NPO法⼈PolicyGarageの理事として活動中。 2022 ‒ 現在:⽇本政府デジタル庁 - Product Designer 2021 ‒ 現在:NPO法⼈PolicyGarage - Board Member 2014 ‒ 2023:デジタル福祉機器スタートアップ/⼤⼿IT企業 / DXコンサル / ⼤学など 1. はじめに
  2. 4 デジタル⼤⾂ デジタル監 デジタル審議官 Fact & Data Unit Service Design

    Unit CPO CTO CA ‧‧‧ Unit Unit Unit Unit Unit ⺠間専⾨⼈材 Kashida Shimizu 組織戦略G 国⺠向け サービスG 共通機能G 省庁G Unit Unit 1. はじめに
  3. ⽬次 1. はじめに 2. データと⾏政
 3. 第⼀歩としてのダッシュボード 4. デザインと⾏政 5.

    ダッシュボードのデザインと開発 6. 今後の展開 5 3 6 17 30 33 44
  4. 8 1 データは戦略と実⾏の⼀致をはかるもの 参考: 戦略と実行をつなぐデータ (Kashida, 2023 Speakerdeckより) Q:なぜこの考え⽅が必要か? A:事業や政策の最⼤の課題は「戦略が正しく実⾏されないこと」、そして「ズレを補正できずに間違った⽅向へ進んでしまうこと」だと考えるから。

    ⼀致を図る ⼀致を測る データ(数値)を元に 戦略が実⾏に⼀致することを図る データ(数値)を元に 実⾏が戦略に⼀致していることを測る 戦略(理想) 実⾏(現実) データ (数値) 2. データと⾏政
  5. 10 現状の把握 分解と差異の把握 原因の把握 • 現在の売上合計がわかる • 過去からの売上推移がわかる • 数値を分解し、どのセグメントで

    売上が⼤きく変化したのかがわかる • なぜ売上が変化したかの要因がわかる • 要因が変化に与えた影響度がわかる • ある施策(介⼊)を⾏ったときに、 • 売上にどのような影響を及すかがわかる 効果的な介⼊の⽅法が特定される 3 データでできることのレベル感を意識する Lv.1 Lv.2 Lv.3 Lv.4 対応⽅法の把握 (介⼊効果) 関係者の認識の⼀致 状況の透明性の確保 課題および注力点の明確化 責任の所在の明⽰ 具体的な施策の⽴案 説明⼒の向上 再現性のある施策の実施 投資等への説明責任の担保 Q:なぜこの考え⽅が必要か? A:上位レベルを⾏うのは難易度が⾼い。状況にあったレベルから着実に積み上げないとデータ活⽤は失敗する。 2. データと⾏政
  6. 12 デジタル社会の実現に向けた重点計画 (2023.6.9閣議決定)*1 *1 https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program(デジタル庁 HP) 政府は “EBPM” を推進していく 誰⼀⼈取り残されないデジタル社会の実現に向けた上記

    の各取組の実効性を確保するため、デジタル化による利 便性向上や利活⽤の実態等をできる限り可視化するとと もに、EBPM(Evidence Based Policy Making)の考 え⽅に基づき定量的な費⽤対効果の測定⽅法等を検討 し、適時適切に不断の⾒直しを⾏う。 2. データと⾏政
  7. 出典 EBPMに関する定義 内閣府 *1 EBPM(証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエ ピソードに頼るのではなく、 政策目的を明確化したうえで合理的根拠 (エビデンス)に基づくものとすること です。 経済産業研究所

    *2 個々の政策に実質的な 効果があるかどうかを可能な限り厳密に検証 して、実質的な効果があるという証拠があるものを優先的に実施しよ うとする態度 厚生労働省 *3 (EBPMでは)以下の3つが明示されていることが重要 ① 政策立案の前提となる事実認識 ② 立案された政策とその効果を結びつけるロジック ③ 政策のコストと効果の関係 *1 内閣府 EBPMの概要(内閣府HP) *2 RIETI EBPMとはなにか(独立行政法人経済産業研究所 HP) *3 厚生労働省 EBPMの取組みの概要 (厚生労働省) Lv.2 Lv.3 Lv.4 Lv.4 Lv.1 Lv.2 Lv.3 Lv.4 Lv.1 Lv.2 Lv.3 Lv.1 「EBPM」の扱う範囲は解釈に幅がある 13 2. データと⾏政
  8. 活動 Activities 結果 Output 成果 Outcome 社会的な影響 Impact 実際のアクションと求められる効果に常に距離がある (例)

    デジタル環境の整備 ・マイナンバーカードを社会に普及させる ・デジタル手続きができる場所を増やす ・ICT教育を推進する (例) デジタルの活用 ・オンライン申請が増える ・ICT教育を取り入れる学校が増える (例) ポジティブな効果 ・手続きに使う手間の短縮 ・教育の質の向上/ 教員の時間の使い方の変化 14 活動 Activities 結果 Output 成果 Outcome 社会的な影響 Impact ⾏政が主に介⼊する範囲 最終的に期待されること Q:なぜこの理解が必要か? A:この構図が政策運営の難しさの⼀部の要因となっている。この構造を踏まえ、データの価値を適応していく領域を整理する必要がある。 2. データと⾏政
  9. 活動 Activities 結果 Output 成果 Outcome 社会的な影響 Impact データによって、政策運営に伴う難しさを解決しうる 15

    難しい点 ① 時間軸と範囲の⼤きさ 1 難しい点 ① 因果関係の遠さ 2 難しい点 ① 効果を問われる 3    前提を整えるだけで長い時間がかかる    本当に良い影響を起こすかが明示的でない 進捗状況を正しくモニタリング・開示 (解決タイプ1) 因果の検証・証明 (解決タイプ2)    効果は活動の費用に対して妥当だったのか? 経済効果などの妥当な効果数値に換算 (解決タイプ3) 1 2 3 ⾏政のプロジェクトの難しい点 データの⼒による解決の⽅法(3つのタイプ) 2. データと⾏政
  10. 21 Gov.uk climate change イギリス‧GOV.UK Singapore Department of Statistics シンガポール‧通商産業省

    GSA Data to Decisions: D2D アメリカ合衆国‧⽶連邦政府⼀般調達局 英国気候変動統計ポータルは、気候変動に関わる 6つの指標を公開しています。政策⽴案者や市⺠ は、英国の気候変動、温室効果ガス排出量、排出 量と国際貿易の関係について知ることができます シンガポール通商産業省は、データの提供や可視 化など、意思決定を⽀援する統計サービスを提供 しています。公的機関、⼀般市⺠などの幅広い関 係者によって、様々な⽬的のための重要な情報と して使⽤されています。 ⽶連邦政府⼀般調達局は、政府機関職員がデータ に基づく意思決定をするため、連邦政府のオープ ンデータ、コロナ関連、不動産登記関連等の幅広 いデータと、分析‧活⽤のために必要な機能を提 供しています。 参考:Singapore Department of Statistics‧GSA Data to Decisions: D2D‧Gov.uk climate change 各政府も政策のデータによる⾒える化を推進 3. 第⼀歩としてのダッシュボード
  11. Principleに沿って考える(最初の着⼿領域の選定) 22 活動 Activities 結果 Output 成果 Outcome 成果を出すための前提を整える領域に注⼒ 状況を見える化し、愚直に進捗をきちんと追いかけていくことが重要

    サービスを受けられる 対象者を増やす 例)マイナンバーカードの交付数 利用シーンを増やす 例)自治体のオンライン手続き 使いやすさ 前提となる条件(法令・規制) 例)デジタル化を阻害するアナログ規制 *1 サービスの 利用が増える 例)マイナンバーカードを 用いた各種の行政手続きなど *1 アナログ規制見直しの取り組み (デジタル庁 HP) 実際の 社会インパクト 最初に注⼒する領域 principle❸ レベル感を意識する 3. 第⼀歩としてのダッシュボード
  12. 23 フォーマットの課題 (Excel / PDFでの公開) 更新性 情報設計 指標設計の課題 直感的に伝わるデザイン principle❷

    ヒト中⼼で考える これまでの政府 政策ダッシュボードの設計思想 参考: 自治体での子育て・介護関係の 26手続のオンライン化取組状況に関するダッシュボード (デジタル庁 HP) Principleに沿って考える(設計の中⼼思想) 現状の進捗と課題をわかりやすく principle❶ 戦略と実⾏の⼀致をはかる 3. 第⼀歩としてのダッシュボード
  13. 24 2022/12 2022/8 2023/3 2023/9 デジタル庁内で試験的に ダッシュボードを公開 最初のダッシュボードを ウェブサイトで⼀般公開 (マイナンバーカード普及ダッシュボード)

    参考:マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ (第8回, 2023/3/29 開催) デジタル庁主催の外部会議 *1 にて、 政策データの定期的な モニタリングの必要性を提⾔ 3つのダッシュボードを 同時に公開 (規制⾒直し‧⾃治体の取り組みなど) 政策データダッシュボードプロジェクト 2022- 3. 第⼀歩としてのダッシュボード
  14. 26 政策の進捗が可視化される素晴らしい 取り組み。今までの霞が関では躊躇し てしまうことも、⺠間が混ざることで 新しい⽂化が⽣まれることは良いこと わかりやすい&おもしろいな。アナロ グ規制⾒直し対象の条項って1万件弱 もあるのね。 数千規模の条項の改正合理化を進めて いるのも知らなかったけど素晴らし。

    これはスゴイ。わかりやすい。 そして、東京都の⼦育て‧介護関係の ⼿続オンライン化の取り組み状況が関 東県内で下から2番⽬の約30%という のは驚き。 住⺠や関係者の皆さんから⾊々なデー タを求められるので、提⽰する際に活 ⽤させて頂いてます。まとめてくれる のとてもありがたいです。 代議⼠ 国⺠ 国⺠ ⾃治体職員 課題と現状のわかりやすい⾒える化に好感の声が多い 3. 第⼀歩としてのダッシュボード
  15. 27 これは素敵。可視化はとても必要で重 要だと思うし、施策⽴案〜決議経緯〜 予算消化状況〜効果確認まで⼀気通貫 で⾒れるようなダッシュボードも欲し い。 デジタル庁の政策進捗や⾏政サービス の利⽤実績に関するダッシュボード (中略) 〇〇区でもこういうのあったら⾊々⾏

    政に関⼼をもってもらえそうです 元⾏政の⾝としては嬉しい取り組み! データを知れると⼈の⾏動が変わりそ う。⽬に⾒えてなかったものをわかり やすく可視化して物事を動かす⼒がデ ザインにはあるのだよなと感じた。 こういった、完了まで確実に追う姿勢 を各⽅⾯に展開してほしいです。 予算の使い⽅とかもすべて。 国⺠ 元⾏政職員 区議会議員 国⺠ 課題と現状のわかりやすい⾒える化に好感の声が多い 3. 第⼀歩としてのダッシュボード
  16. 31 Hikaru Kashida 早稲⽥⼤学理⼯学研究科を修了後、外資系戦略コンサルティング会社やデータ分析 専⾨会社などを経て、株式会社メルカリに参画。上場前後の成⻑戦略やプロダクト 改善をデータ分析チームの責任者として⽀える。2022年よりデジタル庁。 2022 ‒ 現在:⽇本政府デジタル庁 -

    Head of Fact & Data 2016 ‒ 2020:株式会社メルカリ - Head of Data Analyst 2008 ‒ 2016:外資戦略コンサル / データ分析専⾨会社 など Arata Shimizu 東京都⽴⼤学修⼠課程中にデジタル福祉機器のスタートアップを経験。卒業後、⼤ ⼿IT企業やDXコンサルティング会社で新規事業の企画やデザインに従事。Parsons DESIS Labで客員研究員を務め、NPO法⼈PolicyGarageの理事として活動中。 2022 ‒ 現在:⽇本政府デジタル庁 - Product Designer 2021 ‒ 現在:NPO法⼈PolicyGarage - Board Member 2014 ‒ 2023:デジタル福祉機器スタートアップ/⼤⼿IT企業 / DXコンサル / ⼤学など 1. はじめに
  17. 33 デザインの対象は国⺠の体験から政策まで 国⺠が触れる部分のデザイン ⾏政サービスのデザイン 政策のデザイン マイナポータル実証版 マイナポータルでは、体験を⾒直し、⼀部機能や画 ⾯から実証ベータ版として提供しています。公⾦受 取⼝座の登録や健康保険証との紐付け状況を簡単に 確認できます。また、医療費の記録を簡単にふりか

    えったり、お住まいの⾃治体の⼿続きを知ることが できます。 Visit Japan Web ⼊国⼿続き「検疫」、「⼊国審査」、「税関申 告」、「免税購⼊」をウェブで⾏うことができる サービスです。海外から⼊国される⽅のほか、⽇本 に帰国される⽅もご利⽤頂くことができます。 Oslo City Bike オスロ市内を移動する最も効率的な⽅法は⾃転⾞で す。短距離の移動や公共交通機関の補助として利⽤ されています。オスロ市では約10万⼈がシティサイ クルを利⽤しており、2018年には270万⼈以上が⾃ 転⾞で移動しています。*1 *1 https://oslobysykkel.no/en/about(Oslo City Bike) 4. デザインと⾏政
  18. 35 5. ダッシュボードのデザインと開発 Fact & Data Team マーケティング 担当原課 関係省庁

    ディレクター デザイナー データエンジニア PM ⾏政官 ⾏政官 広報担当 約3 - 4ヶ⽉でダッシュボードを設計開発 データの収集‧整備‧ダッシュボードの設計‧機能開発 コミュニケーション設計‧デジタル庁内外の関係者との調整までを⼀括して⾏う
  19. 36 理想的な状態から関係者と議論を重ね、 現実解に落とし込む データ収集& ヒアリング データの整備 要件整理 理想の設計 関係者と 擦り合わせ

    専⾨家 レビュー デザインを 最終化 ダッシュボード の開発 リリース 理想 現実解 多様な専⾨家との 改善のサイクル こんな感じ? ソウゾウ 5. ダッシュボードのデザインと開発
  20. 42 ⼀般の⽅も専⾨家もわかりやすい情報設計 全体感を把握するための シングルナンバー シンプルに保つための データ‧インク⽐ データは基本的に「全体」から 「そのサブセット(場所別‧属性別等)」と流 れる。例えば「⽇本の全体⼈⼝」→ 「地域別の⼈⼝」「男⼥別の⼈⼝」という

    ふうに情報がブレークダウンされていくのが⼀般的である。⾒る⼈が全体とし ての数値を⾒失わないようにするために、全体に関わる情報をシングルナン バーとして配置する。 データ‧インク⽐を⾼くすること。重要なメッセージへのフォーカスを⾼める ために、不必要な情報や付加価値のない要素をすべてビジュアライゼーション から取り除くことで、コンテンツの内容を理解してもらうのを容易にする。 Less is moreの考え⽅と同じく、引き算で情報設計を⾏う。 5. ダッシュボードのデザインと開発
  21. 43 ユーザビリティとウェブアクセシビリティへの配慮 概要版と 詳細版の配置 デザインシステムに準拠した カラーパレット スクリーンリーダーによる 読み上げ順の設定 マルチデバイスで公開しているダッシュボードや データが⾒られることを考慮する。情報量が多く、

    操作が必要になるダッシュボードの場合でもスマホ ユーザーが情報にアクセスできるように概要版を⽤ 意する。 デジタル庁で公開されているデザインシステムのカ ラーパレットに準拠してチャートを配⾊。 ※今後も、⾊覚多様性の⽅への配慮やコントラスト ⽐の調整などで視認性を⾼めることが必要。 視覚障がいの⽅のために、ダッシュボードの情報に アクセスするための代替⼿段を提供する。エクセル データの提供やスクリーンリーダーで読み上げても 情報が理解できるように設定する。画像の場合は、 ALT(画像の代わりとなるテキスト情報)を追加す る。 5. ダッシュボードのデザインと開発