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新型コロナウイルスによるデジタルメディアへの影響 / Impact of COVID-19 on Digital Media

新型コロナウイルスによるデジタルメディアへの影響 / Impact of COVID-19 on Digital Media

▼サマリー
・新型コロナウイルスによる外出禁止・自粛により、世界的にデジタルメディアのトラフィックは30%、コンテンツ消費量は60%増加した。これはコロナ禍における一時的なトレンドではなく、オンラインでの購買を急速に普及させ、人々のソーシャルメディア消費を変容させる可能性を持っている。具体的には、ビデオチャットなど動画や音声のコミュニケーションが増加し、ネットスーパーなどオンラインショッピングを急速に普及させ、ビジネスシーンにおいてはリモートでのオンライン会議が当たり前の光景になるかもしれない。

・一方、トラフィックが増加したわりには、消費者の購買意欲は複数セクターで急落した。消費の低迷により、広告もパフォーマンス型からブランド広告にシフトして、広告代理店の収益は2020年に平均6%減少するという見方もある。ニュースメディアは記録的なトラフィックを集めつつも、広告収益への懸念からリストラに至る企業も増えている。

・企業にとっては、オンラインでの存在感やデジタルチャネルでのつながりがますます重要になり、そのインフラとしてビジネスアプリの重要性が増していく。この変化はセキュリティなど新たなリスクをもたらすが、動画やコミュニティ・マネージメントによるマーケティング、顧客とのリレーションはより重視されていく。

・コロナ禍以前からの流れではあるが、ローカルな情報や信頼できるニュースへの期待が引き続き高まる。あわせて、在宅勤務などによる隙間時間の増加が、同期型コミュニケーションSNSなど新たなサービスを生み出す可能性もある。

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  1. 2 • 新型コロナウイルスによる外出禁⽌・⾃粛により、世界的にデジタルメディアのトラ フィックは30%、コンテンツ消費量は60%増加した。これはコロナ禍における⼀時的 なトレンドではなく、オンラインでの購買を急速に普及させ、⼈々のソーシャルメデ ィア消費を変容させる可能性を持っている。具体的には、ビデオチャットなど動画や ⾳声のコミュニケーションが増加し、ネットスーパーなどオンラインショッピングを 急速に普及させ、ビジネスシーンにおいてはリモートでのオンライン会議が当たり前 の光景になるかもしれない。 •

    ⼀⽅、トラフィックが増加したわりには、消費者の購買意欲は複数セクターで急落し た。消費の低迷により、広告もパフォーマンス型からブランド広告にシフトして、広 告代理店の収益は2020年に平均6%減少するという⾒⽅もある。ニュースメディアは記 録的なトラフィックを集めつつも、広告収益への懸念からリストラに⾄る企業も増え ている。 • 企業にとっては、オンラインでの存在感やデジタルチャネルでのつながりがますます 重要になり、そのインフラとしてビジネスアプリの重要性が増していく。この変化は セキュリティなど新たなリスクをもたらすが、動画やコミュニティ・マネージメント によるマーケティング、顧客とのリレーションはより重視されていく。 • コロナ禍以前からの流れではあるが、ローカルな情報や信頼できるニュースへの期待 が引き続き⾼まる。あわせて、在宅勤務などによる隙間時間の増加が、同期型コミュ ニケーションSNSなど新たなサービスを⽣み出す可能性もある。 エグゼクティブ・サマリー
  2. ⽬次 3 今後の動向 1. リベンジ消費でも広告やデジタルメ ディアは苦境 2. ビジネスアプリやメディアがますま す重要に 3.

    隙間を埋める新たな同期型コミュニ ケーションSNSが台頭 4. ローカルな信頼できる情報に価値 企業とデジタルメディア 1. トラフィックは増加だが追加コストも 2. オンライン会議が普及、ビジネスアプ リはインフラに 3. セキュリティ・新たなリスクの顕在化 4. オンラインでのエンゲージメント・デ ジタルのチャネルが重要 5. イベントもデジタル化へ 市況・全体的なトレンド 1. デジタルメディアへの接触増加 2. セクター別でトラフィックに変化 3. 広告業界はネガティブな⾒通し 4. ニュース・メディア業界はますま す苦境に 5. インフルエンサーや企業のSNSア カウントにも影響 消費者の態度変容 1. コンテンツ消費量が60%増加 2. セクター別で購買に明暗 3. 動画・ゲームなど⼀部ソーシャル メディアが急進 4. 多くのサービスが在宅機能を追加 5. SNSのエンゲージメントに変化 6. 情報への信頼意識が⾼まる 7. 過剰な情報摂取はストレスに
  3. 1-1. デジタルメディアへの接触増加 5 • コロナ禍によって、オンラインにおけるトラフィックやデジタルメディアへの接触機 会は劇的に増加している。 • CONTENTSQUAREによれば、コロナ前よりもトラフィックは約30%増、コンバージョ ンレートは15%増、中でもトランザクションが40%増と劇的に増えている。 •

    コロナへの不安によるメディアを通じた情報収集だけでなく、⽣活必需品の購⼊や在 宅でのエンターテイメント、友⼈などとのオンラインでのコミュニケーションなど⽣ 活の中⼼がオンラインへと急激にシフト。 「Coronavirus impact on online traffic worldwide in week ending April 19, 2020」https://www.statista.com/statistics/1105495/coronavirus- traffic-impact/, 「The COVID-19 eCommerce Impact Data Hub」https://contentsquare.com/coronavirus-ecommerce/ • トランザクションの急増からは、コロナ に関する情報収集や暇つぶしだけでなく、 実際の購買がオンラインにシフトしたこ とを⽰している。(図1) • 特にロックダウンをおこなった都市では、 ネットスーパーやフード・デリバリーの 需要が急速に⾼まり、⼈々は強制的にオ ンラインでの⽇⽤品の購⼊を余儀なくさ れた。 図1.コロナウイルスが世界のトラフィックにもたらした変化
  4. 1-2. セクター別でトラフィックに変化 6 「Coronavirus pandemic and online media consumption: settling

    into the New Normal」 https://www.comscore.com/jpn/Insights/Blog/Coronavirus-pandemic-and-online-media-consumption-settling-into-the-New-Normal , 「Keeping Our Services Stable and Reliable During the COVID-19 Outbreak 」https://about.fb.com/news/2020/03/keeping-our-apps-stable-during-covid-19/ • ⼀時的に伸びたトラフィックは、セクター別に異なる動きを⽰している • ニュースサイトは「コロナ・バンプ」と呼ばれるほどトラフィックや購読者が増加。 現状でもその流れは続いているが、コロナ禍の落ち着きとともに読者が離脱していく 可能性も指摘されている。 • Facebookによれば、同社のWhatsAppやMessengerなどプライベートメッセージング アプリで、2⽉のメッセージ総数が前⽉⽐50%以上の増加。⾳声通話やビデオ通話、3 ⼈以上のグループ通話も被害が⼤きい国で特に急増した。
  5. 7 「Coronavirus pandemic and online media consumption: settling into the

    New Normal」 https://www.comscore.com/jpn/Insights/Blog/Coronavirus-pandemic-and-online-media-consumption-settling-into-the-New-Normal , 「The COVID-19 pandemic has changed education forever. This is how 」 https://www.weforum.org/agenda/2020/04/coronavirus-education-global- covid19-online-digital-learning/ 「 4 In 10 U.S. Teens Say They Haven't Done Online Learning Since Schools Closed 」 https://www.npr.org/sections/coronavirus-live-updates/2020/04/08/829618124/4-in-10-u-s-teens-say-they-havent-done-online-learning-since- schools-closed • 世界で186か国・12億⼈を超える⼦供が学校閉鎖の影響を受けていると指摘されており、 オンライン・ラーニングや教育サイトのトラフィックが増加。ただしコンピューター やネット環境が整っていない家庭との格差が各国で問題視されている。 • ⾷料品・⽇⽤品サイトなどのトラフィックは全体的に増加傾向にあるが、詳細なセク ターにより違いがある(2-1を参照) 1-2. セクター別でトラフィックに変化
  6. 1-3. 広告業界はネガティブな⾒通し 8 「Dentsu Aegis Network Cuts Employee Salaries By

    10% 」https://www.adexchanger.com/advertiser/one-quarter-of-brands-are-pausing-all- spend-for-q1-and-q2/, Digital ad market is avoiding coronavirus disaster, say tech giants https://www.reuters.com/article/us-health- coronavirus-digital-ads/digital-ad-market-is-avoiding-coronavirus-disaster-say-tech-giants-idUSKBN22C3FW, https://www.businessinsider.com/all-five-major-ad-holding-companies-move-strengthen-balance-sheets-2020-3 • JPMorganは、代理店の収益は平均で約6%減少すると予測。 • IPG、WPP、およびPublicisは、年間収益予想を撤回。 WPPとPublicisはグローバル採 ⽤の凍結を発表した他、 WPPは役員の給与を20%引き下げるなど追加の措置を講じた。 電通は、今後の⾒通しが明らかになった時点で収益予想を提⽰すると発表。 • 4⽉中旬、電通の国際部⾨である電通イージス・ネットワークは、コロナウイルスのパ ンデミックの経済的影響に対応して、全従業員の給与を10%削減すると発表。 • UBSによる予測では、広告におけるデジタル⽀出は全体的に少なくとも10-15%減少す る。 ブランド主に変化 • IBAによれば、ブランドの24%はQ1・Q2の広告費をすべて⼀時停⽌。46%が残りの広告 費を調整。 • 消費者の消費意欲が低下しているため、ブランドメッセージにも変化。パフォーマンス 型広告から、ブランド広告やミッションベースの広告、コーズマーケティング(社会貢 献を訴える販促キャンペーン)などに移⾏している。 エージェンシーに影響
  7. 1-3. 広告業界はネガティブな⾒通し 9 「Coronavirus pandemic and online media consumption: settling

    into the New Normal」 https://www.adexchanger.com/agencies/dentsu-aegis-network-cuts-employee-salaries-by-10/, https://www.adexchanger.com/advertiser/one- quarter-of-brands-are-pausing-all-spend-for-q1-and-q2/, Digital ad market is avoiding coronavirus disaster, say tech giants https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-digital-ads/digital-ad-market-is-avoiding-coronavirus-disaster-say-tech-giants- idUSKBN22C3FW テック企業は限定的? • GoogleやFacebookの第1四半期は前年同期⽐10%台の成⻑(図2, 3)。ダイレクトレ スポンス広告やDL・クーポン関連の広告に⽀出。 • 巣ごもり需要によりゲームやアプリなどのダウンロード数は急増しており、こうした セクターのパフォーマンス型広告に強みをもつテック企業にとっては、追い⾵になっ た側⾯もある。 図2.Facebookの2020年第1四半期決算 • ただしYouTubeはブランド広告が減少、イ ベント関連などリアルタイム性が⾼い広告 に強みを持つTwitterは減収。 • Facebookのように第1四半期には限定的な 影響だった企業でも、第2四半期以降の⾒ 通しは不透明だとしている。
  8. 1-4. ニュース・メディア業界には既に悪影響 10 「Coronavirus presents existential threat for news media」

    https://www.axios.com/coronavirus-news-media-advertising-layoffs-3bdc8547-4977- 4338-a6af-e53fb14d64cd.html • 広告業界の落ち込みが予想される中、すでにメディア業界ではコスト削減がはじまっ ている。 • 下記はコロナ禍の時期にリストラ・削減、業績悪化などを発表したメディア⼀覧。コ ロナによる直接的な影響を明⾔していない企業も含まれる。 媒体名 国・地域 内容 Vice Media 北⽶など 300⼈以上の解雇の可能性(現時点で155⼈が解雇) BuzzFeed 英国・オーストラリア ニュース部⾨の削減、解雇 New York Times ⽶国など 今四半期の世界的な広告収⼊ Condé Nast (Wired, VOGUE, The New Yorker) ⽶国など 100⼈程度のレイオフ、100⼈程度の休業 Quartz(NewsPicksを運営するUzabase) ⽶国 80⼈の解雇 The Economist 英国 90⼈の解雇 Gannett(USA Todayなど) ⽶国 従業員・経営陣の報酬カット・⾃宅待機 KADOKAWA(東京ウォーカー) ⽇本 休刊
  9. 1-5. インフルエンサーや企業のSNSアカウントにも影響 11 「Instagram Live Usage Skyrockets as People Stay

    Home During Coronavirus Pandemic 」 https://www.thewrap.com/instagram-live-big- increase-coronavirus/, Coronavirus (COVID-19) Marketing & Ad Spend Impact: Report + Statistics https://influencermarketinghub.com/coronavirus-marketing-ad-spend-report/ • 企業のマーケティング費⽤の削減は、インフルエンサーにも影響を与えている。 YouTubeやInstagramerは、案件が中⽌になったほか、外出やロケでの撮影中⽌を余儀 なくされており、家庭でできる企画にシフトせざるを得なくなった。 • しかしコンテンツの需要⾃体は⾼まっており、Instagram Liveの利⽤者は2⽉と ⽐較して、3⽉中旬から後半にかけて70%急増した。 • インフルエンサーによるコロナ関連投稿は増えており、2⽉の英語圏では、80万 を超えるインフルエンサーの投稿により290万のエンゲージメントが発⽣してい る。またクリエイターによるソーシャル・グッドに関する投稿も48万件を超えた。 • ⼀⽅、企業アカウントの74%はコロナ禍においてSNSへの投稿を減らしており、 顧客と⼗分にコミュニケーションが取れているわけではなく、インフルエンサー など個⼈の発信に期待が集まっている。 • またソーシャルメディアにおいてはTwitterが⼈気を集めており、ニュースを求め てInstagramよりもTwitterを利⽤するようになったユーザーは34%だった
  10. 2-1. コンテンツ消費量が60%増加 13 • コロナ禍によって、消費者が視聴するコンテンツ量は約60%増加。⽶国のコンテンツ 消費量はすでに歴史的な⽔準にあり(図2)、それを超えるレベルに達する。 • 特に激しいパンデミックが⽣じた国では、TVの視聴時間が増える傾向も確認されてい る。 「STAYING

    PUT: CONSUMERS FORCED INDOORS DURING CRISIS SPEND MORE TIME ON MEDIA 」 https://www.nielsen.com/us/en/insights/article/2020/staying-put-consumers-forced-indoors-during-crisis-spend-more-time-on-media/ 図3. 消費者のメディア接触時間(パンデミック以前) • またリモートワークがメディア接触の時間 を増加させることも⽰唆されている。 Nielsenによれば、⽉曜⽇から⾦曜⽇の勤務 スケジュール中にリモートで作業する従業 員が、⾮リモートワーカーよりも毎週3時間 以上、テレビに接触していることが⽰唆さ れている。 • コロナに関連した情報収集に限らず、通勤 時間の減少や常時デバイスに接続されてい ることで、今後コンテンツ消費量がますま す増えていく可能性もある。
  11. 2-2. セクター別で購買に明暗 14 • ⽇⽤品の購⼊に際して、デジタルの⽴ち位置は利便性から必要性へと変化。 • スーパーマーケットや銀⾏、DIYなどは伸びているが、ラグジュアリーやジュエリ ーなど嗜好品についてはトラフィックが減退しており、業界ごとに明暗(図4)。 • ⼈々は⾷料や消耗品などに加え、部屋の装飾や快適なホームオフィスを構築する

    ために購買をはじめている。 「 Impact of Coronavirus on eCommerce: Transactions Peak as Digital Becomes the Only Store (Update 6) 」 https://contentsquare.com/gb-en/blog/impact-of-coronavirus-on-ecommerce-transactions-peak-as-digital-becomes-the-only- store/ 図4.コロナウイルスが世界のトラフィックにもたらした変化 • ただし落ち込みが激しいラグ ジュアリー部⾨であっても、 パンデミックの収束とともに わずかに回復傾向が⾒える。 • 中国ではリベンジ消費と呼ば れるトレンドも⽣まれている が、旅⾏・イベント業界につ いては依然として厳しい状況。
  12. 2-3. 動画・ゲームなど⼀部のソーシャルメディアが急進 15 「The Virus Changed the Way We Internet」

    https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/07/technology/coronavirus-internet-use.html, 「 Gaming sees explosive growth in social video as people stay home 」https://venturebeat.com/2020/04/30/gaming-sees-explosive-growth-in- social-video-as-people-stay-home/ • 従来のソーシャルメディアは成⻑。ただし社会的距離や外出禁⽌によって、メッ セージやテキストを介したコネクションだけでなく、動画や⾳声などでのコミュ ニケーションが増加。Googleのビデオ・チャット・アプリケーションDuoや Housepartyなどが⼤きく成⻑。 2016年に⼤⼿VCのSequoia Capitalから 資⾦調達をしたHousepartyは、2017年 ころにピークを迎えたものの、その後 失速。Epic Gamesに買収されていた。 ゲームストリーミングもコロナによって急 増。TwitchやYouTube上のゲームストリー ミングは、再び⼈気コンテンツとして勢い を増した。
  13. 2-4. 様々なサービスが在宅機能を追加 16 「The Virus Changed the Way We Internet」

    https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/07/technology/coronavirus-internet-use.html, 「 Gaming sees explosive growth in social video as people stay home 」https://venturebeat.com/2020/04/30/gaming-sees-explosive-growth-in- social-video-as-people-stay-home/ • マッチングアプリPairsは、オンラインデート機能を搭載。Tinderは⼀部有料機能を無 料提供。 • コロナ関連の情報をいち早く提供したニュースアプリのNewsDigestは、ダウンロード 数が急増。 • Uber Eats、アプリ内経由で300万ドル(約3億2000万円)をレストランに寄付。 • 2020年第1四半期のアプリは記 録的なダウンロード数に。 • TikTokやTinder、YouTube以外 には、NetflixやiQIYIなどの動画 ストリーミングサービスが消費 者⽀出の上位にランクイン。 (図5) 図5. 2020年第1四半期のアプリランキング
  14. 2-5. SNSのエンゲージメントに変化 17 「 The Impact of Coronavirus on Social

    Media Engagement for Brands 」 https://www.rivaliq.com/blog/coronavirus-on-social-media-engagement-for- brands/ • Instagramは、FacebookやTwitterに⽐べて⾼いエンゲージメントを誇っていたもの の、コロナ禍によって低下。インフルエンサーなどのコンテンツ量は増えているが、 ⼈々の関⼼が情報収集や友⼈・家族との会話に移⾏したことが原因か。 図6. 主要SNSのエンゲージメント • セクター別に⾒ると、家に いる時間が増えたことでア ルコール業界のエンゲージ メントが⾼まった他、⾼等 教育機関は⾼い数値を保っ ている。 • ⼀⽅で、試合などが中断さ れているスポーツ業界は⼤ きく低下、インフルエンサ ーやホテル・旅⾏業界も低 下している。 • この変化は、全てのSNSで 共通した傾向が⾒られる。
  15. 2-6. 情報の信頼への意識が⾼まる 18 「Shaky Trust in the Age of the

    Coronavirus ‒ Who Do Americans Trust for COVID- 19 Facts?」 https://www.healthpopuli.com/2020/03/19/shaky-trust-in-the-age-of- the-coronavirus-who-do-americans-trust-for-covid-19-facts/ • コロナがパンデミックに達していない時期から、 WHOはインフォデミックへの注意喚 起をおこなった。実際、コロナ禍に際しては根拠のない憶測やデマが⾶び交い、ファ クトチェックが⼤⼿メディアによって⽇々おこなわれる事態となった。 • フェイクニュースという⾔葉が⼈⼝に膾炙して以来、情報の信憑性は世界的な問題に なっていたが、コロナによってますますその傾向は強まっている。 • ⽶国では、CDCやWHOによるコロナ関連情報は 信⽤するものの、⼤統領などの政治家、新聞や TVなどの伝統メディアへの信⽤は⼤きく低下し ており、ソーシャルメディアに関しては殆どの ⼈が信⽤していないことがわかる(図7) • これはデジタルメディアへの接触が著しく増加 していることと対象的であり、コンテンツ消費 量は増えているものの、そこで得ている情報は 信⽤できないというパラドキシカルな状況に陥 っていることを⽰している。 図7. 信⽤する情報ソース
  16. 2-7. 過剰な情報摂取はストレスに、適切な摂取が課題 19 「Reddit, Facebook, Twitter Worst For Mental Health

    Post-Coronavirus; YouTube Best」 https://www.forbes.com/sites/johnkoetsier/2020/04/26/reddit-worst-for-mental-health-for-covid-19-news-consumption-survey-says/#10de3ef331cf • コロナ禍に際して、WHOなどは⻑期間の外出禁⽌によるメンタルヘルスの問題に繰り 返し注意を促した。その中でも、過度な情報摂取がメンタルに悪影響を与えることも ⽰されており、2-4で⽰した情報への信頼が低下する中で、ますます⼈々は情報の摂取 の⽅法に再考を迫られている。 • Forbesによれば、コロナ関連のニュース源で、メンタルヘルスに悪影響を与えている 割合が少なかったのはYouTubeである。反対に、悪影響を与えているのは⽶国などで 主要な掲⽰板となっているRedditである。(図8) 図8. メディア別、メンタルヘルスへの影響 • プラットフォーマーに限らず、どのよ うに情報を発信することが消費者のス トレスにならないか、あるいは過度に 情報を摂取せずに適切なニュースを受 け取るかは、コロナ禍に限らず今後の 社会にとって⼤きな課題となるだろう。
  17. 3-1. トラフィックは増加だが追加コストも 21 「 YouTube Viewership is Up, But YouTubers

    Are Earning Less Money 」 https://www.searchenginejournal.com/youtube-viewership-is-up-but-youtubers-are-earning-less-money/361446/#close • デジタルメディアにおいて企業から短期的に警戒されているのは、トラフィックは増 えている割に広告収益など売上が減少する現象だ。 • YouTubeは、トラフィックが15%増加したものの広告の掲載率は50%低下していると 指摘されている。CPMの低下は、多くのYouTuberが指摘しており、3-50%ほど低下し たという声もある。 • これはメディア企業に限らず、ECや⼩売企業などにとっても「通常の帯域幅(BW)の 使⽤量をすぐに超えるため、追加コストが発⽣するリスクがある」。 • 企業は短期的にも収益が⾒込まれづらくとも消費者からの信頼を獲得するために追加 コストを⽀払う必要があり、デジタルメディアの扱いについて難しい決断を迫られて いる。
  18. 3-2. オンライン会議が普及、ビジネスアプリはインフラに 22 「Videoconferencing apps saw a record 62M downloads

    during one week in March 」 https://techcrunch.com/2020/03/30/video-conferencing-apps-saw-a-record-62m-downloads-during-one-week-in-march/ • ZoomやMicrosoft Teams、Hangouts Meetは記録的なダウンロード(図9) • オンライン会議に限らず、ビジネスアプリは2019年の週平均ダウンロード数から90% 増(図10)全てのビジネスプロセスにおいて、ソフトウェア・アプリケーションがビ ジネスにおけるインフラとなっている。 • オンライン会議などリモートワークで利⽤するツールを活⽤できているか、家庭のネ ット環境や仕事環境は⼗分に整備されているか、など新たな問題が出はじめている。 • ビデオ通話やチャット、画⾯・ファイル共有などの分野では、コンシューマー向けサ ービスとエンタープライズ向けサービスの垣根がなくなってきている。 図9. 動画会議アプリはいずれも急伸 図10. ビジネスアプリも世界的に90%増
  19. 3-3. セキュリティ・新たなリスクの顕在化 23 「Hackers are jumping on the COVID-19 pandemic

    to spread malware」 https://www.techrepublic.com/article/enterprise-elearning-uptick-in- education-demand-during-coronavirus-outbreak/ • Zoomの脆弱性はいち早く世界中で報告されたが、それ以外にもコロナ禍にあわせてサ イバー攻撃が増加するなど、世界中でセキュリティ・リスクが⾼まっている。 • 地震などの災害、社会的混乱に際してハッカーが活発化することは以前から知られて いたが、リモートワークの普及によってこのトレンドはますます強まっている。 • 企業は⾃社および従業員のリモートワークについて、セキュリティや帯域幅、アクセ ス許可、ハードウェアなどに注意を払う必要が出てきているが、デジタルメディアも 例外ではない。リモートワークによってこれまで業務中にアクセスすることがなかっ たメディア(SNSや時にはアダルトサイトなど)にアクセスすることもリスク要因に。 セキュリティ以外の問題 • 従業員のモチベーションやメンタルヘルス、教育研修でも変化とリスクが⽣じている。 • オンラインで学ぶことが出来るように、企業は様々なリソースを統合・提供する必要 に迫られている。Tech Republicによれば、ある学習プラットフォームに毎週アクセス するユーザーは平均18.5%増加した。 • オンライン学習プラットフォームのCourseraが、失業者に対して3,800のオンラインコ ースへの無料アクセスを提供するなど、デジタルは新たな学びの機会を提供している。
  20. 3-4. オンラインでのエンゲージメント、デジタルのチャネルが重要 24 「 Which company is winning the food

    delivery war? 」 https://secondmeasure.com/datapoints/food-delivery-services-grubhub-uber-eats- doordash-postmates/ • スモールビジネスがデジタル化することは不可避だったが、コロナ禍はそれを加速さ せた。Fast Companyは、デジタルチャンネルを通じてつながりを維持することが⾮常 に重要だと述べている。 • Uber EatsやDoor Dashといったフードデリバリー業界は急速に社会のインフラとなっ た。⽶国では3⽉末までに前年⽐24%の成⻑を⾒せており、3⽉には消費者の28%が主 要サービスを1つ以上利⽤した経験があるという(図11)。 図11. フードデリバリーの⽉次成⻑ • フードデリバリー業界の成⻑に伴い、ゴ ースト・レストランと呼ばれる新たな業 態が⽣まれた。彼らは対⾯のレストラン ではなく、デリバリー専業のレストラン であり、コロナ禍でも収益を上げている。 • これまで飲⾷店にとってデジタルのチャ ネル活⽤は、⾷べログやクーポンサイト でPRをすることが中⼼だったが、注⽂ からロジスティクスまで全てのプロセス がデジタル化している。
  21. 3-5. イベントもデジタル化へ 25 「 Coronavirus tech conference cancellations list: Apple

    WWDC, Salesforce Dreamforce, Microsoft Build and Ignite, VMworld, HPE Discover, Gartner, Dell World and more 」 https://www.zdnet.com/article/coronavirus-tech-conference-cancellations-e3-nab-gartner-dell-world-and-more/ • 多くの企業がコロナ禍によってイベントの中⽌を決定した。 Adobe SummitやApple WWDC、 DEF CON、Facebook F8、 Google I / O、SXSWなど影響⼒の⼤きい⼤規模 なイベントが延期や中⽌、オンライン化を発表している。 • しかしSalesforceなどは、2020年末までの物理的なイベントをすべてオンラインでお こなうことも明らかにしており、ヒルトンのようにこれまで仮想イベントに懐疑的で あったブランドもやむを得ず選択をしている。 • また⼤規模なイベントに限らず、⼩規模なイベントをオンラインで開催する流れが強 まっており、ウェビナーの検索ボリュームは急増(図12)。コロナ禍後にも社会に定 着する可能性が⾼い。 図12. Googleにおける「Webinar」の検索数
  22. 4-1. リベンジ消費でも広告業界やデジタルメディアは苦境 27 Why the Economic Recovery Will Be More

    of a ʻSwooshʼ Than V-Shaped , https://www.wsj.com/articles/why-the-economic-recovery-will-be-more-of-a-swoosh-than-v-shaped-11589203608, How the coronavirus is impacting the advertising business as sports TV viewing evaporates, events are cancelled, and consumers stop spending https://www.businessinsider.com/breakdown-of-coronavirus-impact-on-advertising-industry-2020-3 • コロナ禍による消費の落ち込みは、収束後に急速に戻るのか回復までに⻑い時間がか かるのかで意⾒が別れている。その2つのシナリオは、そのままデジタルメディアや 広告業界の未来を⽰している。 • コロナ後の景気が急速に回復すると楽観視する⼈々は、中国の5⽉初旬の連休以降、⾃ 粛の反動から消費意欲が勢いよく戻った「リベンジ消費」を念頭に置いているかもし れない。しかしエコノミストの⾒解は、経済の回復がV字型かU字型かで分かれている。 • いずれにしてもBusiness Insiderが指摘するように、消費者が⽀出を控え、ブランド主 が伸⻑に引き締めをおこない、スポーツや物理的イベントなどが減少することで、 2020年度の広告業界が苦境に陥ることは間違いない。 • これにあわせて、メディア業界や企業のマーケティング⽀出に依存するセクターも苦 しむだろう。ただしメディアに関して⾔えば、これは以前から予測されていたことの 延⻑に過ぎない。BuzzFeedのような新興メディアであっても、広告収益に依存してい る場合は、景気サイクルに影響を受けやすい。反対にNewYorkTimes紙や⽇経新聞の ようにいち早くサブスクリプション型ビジネスを強化できたブランドは、今回の波を 乗り切ることができる。
  23. 4-2. ビジネスアプリやメディアがますます重要に 28 • ZoomやSlackを業務で使った経験や、YouTubeやTikTokの視聴習慣があるビジネスパ ーソンはそれほど多くなかったかもしれない。しかし今後は、電話やメールを使った 経験がないことと同義になるかもしれない。 • 社内ツールとコンシューマー向けサービスの境界は薄れており、YouTubeがエンター プライズ向け企業のマーケティングに活⽤されたり(例えばオンラインセミナーやイ

    ベント)、Slackをコラボレーションツールのように扱うケースは増えていくだろう。 • 経営者やマネージャーが、リモートで社員にメッセージを伝えるために、YouTubeや 社内ラジオを開始するケースが出てくるかもしれない。 • TikTokはさておき、FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSアカウントを企業が保 持することは当たり前になっている。しかし各メディアへの接触時間が伸びているこ とと反対に、コンテンツやフォーマットの⽬新しさ、⾼いエンゲージメントを⽣み出 すことは難しくなっている。 • マネージメントでもマーケティングでもデジタルメディアの重要性はますます⾼まっ ているが、その効果を最⼤限活⽤するため、単に広告費⽤を渡してプロモーションを 依頼するのではなく、インフルエンサーと中⻑期的にコラボレーションする事例が増 えてくるだろう。
  24. 4-3. 隙間を埋める新たな同期型コミュニケーションSNS 29 「Andreessen Horowitz Wins VC Sweepstakes To Back

    Clubhouse, Voice App Still In Beta, At $100 Million Valuation 」 https://www.forbes.com/sites/alexkonrad/2020/05/15/andreessen-horowitz-wins-vc-sweepstakes-to-back-clubhouse-voice- app/#1cfddd4b6f2a, https://jp.techcrunch.com/2020/05/11/sns-latest-topic-z-gen-next-sns/ • これまでSNSは⾮同期での会話を⾏っていたが、同期性という新たなトレンドが⽣ま れている。HQ Triviaというクイズアプリのように2019年頃からのトレンドではあった が、コロナ禍が加速させた。 • 「今の⾃分を⾒せる」というコンセプトでは、例えばYouTuberのEmma Chamberlain のように、未編集(のような編集)で、スッピンのまま家でダラダラしている様⼦が 配信されているコンテンツがある。「飾らない姿で、いまこの瞬間を切り取る」とい うのは、アンチInstagramであるとも⾔えるし、InstagramのストーリーやTikTokから ⽣まれはじめたコンセプトであるとも⾔える。 • シリコンバレーで話題となっているClubhouseが、テストフライトの段階で評価額100 億円をつけたニュースは⽇本でも注⽬されたが、⾳声であれ動画であれ、同期型コミ ュニケーションが未来のSNSであることは確実だろう。 • コロナによって⻑時間家にいることで、多くの⼈が⾃分を表現したいという欲求に駆 られているが、これはリモートワークの進展やコンテンツ接触時間の増加、従来の SNSへの飽きによってますます加速していく。
  25. 4-4. ローカルな、信頼できる情報に価値 30 「Western governments pressured to save local news

    from coronavirus strain 」 https://www.axios.com/local-news-coronavirus-government-aid-3291dfba-86fc-4275-8478-7e816eddb237.html • ローカルな情報は危機に瀕しているが、コロナ禍によってその重要性が改めて認識さ れた。地元の病院や保健所、感染状況など公衆衛⽣に関する情報は地元政府はうまく 発信できておらず、ローカルな新聞は次々と閉鎖している。 • これを代替するのがNextdoor(⽶国)やマチマチ(⽇本)などのようなローカルSNS なのか、新聞に変わるオンライン・ニュースメディアなのかは不明だが、信頼できる ローカルの情報が求められるようになることは間違いない。ただしそのニーズに応え ることができるプレイヤーが現れてくるかは不明。 • 近年は、Googleも⼤企業や公的機関など信頼できる情報を検索で上位に表⽰させる傾 向を強めているが、⼀⽅で専⾨的な情報が⼀般ユーザーにとってはわかりづらいまま で表⽰されるという問題を抱えている。企業などは、複雑で専⾨性の⾼い情報をわか りやすく噛み砕いて伝えることで、潜在的な顧客から⽀持を集めることが可能となる だろう。
  26. お問い合わせ 株式会社マイナースタジオ ⽯⽥ 健 [email protected] 池⽥ 紳 [email protected] 株式会社マイナースタジオでは、デジタルメディアに関するコンサルティング、戦略構築・運⽤、開発などを おこなっております。また株式会社メンバーズ(東証⼀部)のグループ企業でもあり、メンバーズグループで

    は企業のWebサイトやソーシャルメディア・アプリなどのデジタルマーケティング⽀援を幅広くおこなってい ます。 お問い合わせや本資料に関してご不明な点がございましたら、下記までお問い合わせください。 ⽯⽥ 健 / 株式会社マイナースタジオ代表取締役 1989年東京都出⾝。⼤学在学中に株式会社アトコレを設⽴後、⼤学院での研究⽣ 活を経て、株式会社マイナースタジオを創業。2015年にメンバーズ社(東証⼀ 部)より企業買収。個⼈として、スタートアップへの投資や現代ビジネスやダイヤ モンド、Abema Primeなどでニュース解説。早稲⽥⼤学⼤学院政治学研究科修⼠ 課程(政治学)修了。 文責