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チームの成長を促すためにふりかえりの改善に本気で向き合った話

 チームの成長を促すためにふりかえりの改善に本気で向き合った話

2023/05/20 Scrum Fest Niigata発表資料

Proposal: https://confengine.com/conferences/scrum-fest-niigata-2023/proposal/18373

moyashimaru

May 20, 2023
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Transcript

  1. チームの成長を促すために
    ふりかえりの改善に
    本気で向き合った話
    Scrum Fest Niigata 2023
    Atsusuke Murata

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  2. 自己紹介
    Atusuke Murata
    Cybozu
    Software Engineer / Scrum Master
    GitHub: @kuroppe1819
    Twitter: @kuroppe1819

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  3. Target Audience
    Learning Outcome
    ふりかえりの効果を高めたいと考えている人
    形骸化したふりかえりを見直したい人
    ふりかえりを導入したいと考えている人
    効果的なふりかえりの場の設計
    潜在的な情報を引き出すテクニック

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  4. 目次
    ふりかえりの改善に向き合った背景
    1
    ふりかえり改善の目的
    2
    ふりかえりを設計する
    3
    改善によって得られたこと
    4

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  5. ふりかえりの改善に向き合った背景

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  6. ふりかえりを始めた頃の様子
    簡単に解決できて効果の高い課題が沢山ある

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  7. ふりかえりを始めた頃の様子
    問題の共通認識が最初から揃っていることが多い
    あるべき姿が自然と一致する

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  8. ふりかえりを通して
    チームは加速度的に成長した🚀

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  9. 数ヶ月後...

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  10. 数ヶ月後のふりかえりの様子
    簡単に解決できて効果の高い課題がない
    長期的に取り組む必要のある課題を意識し始める

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  11. 数ヶ月後のふりかえりの様子
    問題の共通認識が揃わない
    あるべき姿が一致しない

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  12. 何が起きたのか?

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  13. チームの成長に伴い、問題解決の難易度が上がった
    解決すべき課題を発見することが難しくなった
    簡単に解決できて効果の高い課題がなくなった
    チームが成長したことで痛みを伴う機会が減った
    問題の共通認識が揃わなくなった
    Aさんは問題だと考えているが、Bさんは問題だと考えていない
    あるべき姿が一致しなくなった
    AさんとBさんで理想の状態が異なる
    より深いふりかえりが求められるようになった

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  14. 観察した結果、何が分かった?

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  15. 最初は全員が簡単で効果が高い課題に集中している

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  16. そのうち、当初解決したいと思っていた課題はあらかた片付く

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  17. 次の課題を見つけるためにメンバーは物事を見る解像度を上げる
    広さ 深さ

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  18. しかし、メンバーが物事を見る解像度にはズレがある
    広さ 深さ

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  19. 解像度の差が考えや認識の齟齬を生む

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  20. このままふりかえりを続けるとどうなる?

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  21. †ふりかえりの死を招く†

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  22. ふりかえりの死
    課題やアイデアが出てこない
    問題の共通認識が揃わない
     →チームの成長に繋がる話ができない
     →チームが成長しきったと錯覚
     →時間がもったいない
     →ふりかえり以外のことに時間使いましょう!
     →問題の解決に向かう施策が立てられない
     →安易な解決策を立てる
     →本質的な問題解決ができない
     →ふりかえり意味あります?

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  23. ふりかえりの死
    課題が出てこない
    問題の共通認識が揃わない
     →チームの成長に繋がる話ができない
     →チームが成長しきったと錯覚
     →時間がもったいない
     →ふりかえり以外のことに時間使いましょう!
     →問題の解決に向かう施策が立てられない
     →安易な解決策を立てる
     →本質的な問題解決ができない
     →ふりかえり意味あります?
    https://speakerdeck.com/navitimejapan/a-demise-of-a-retrospective
    ふりかえりが停滞する
    メカニズムと、停滞した
    ふりかえりを復活させる
    アプローチが紹介されて
    いるスライド

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  24. ふりかえりを続けますか?
    つづける
    やめる

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  25. ふりかえりを続けますか?
    つづける
    やめる
    かいぜんする

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  26. かくして勇者(Scrum Master)はふりかえりの
    改善に向き合うことになった

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  28. ふりかえり改善の目的

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  29. ふりかえり改善の目的
    チームメンバーが状況を正しく把握できるようにする
    問題解決に向かう施策を継続的に立てられるようにする

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  30. ふりかえり改善の目的と目指す状態
    チームメンバーが状況を正しく把握できるようにする
    問題解決に向かう施策を継続的に立てられるようにする
    情報が過不足なく共有されている
    解像度が揃っている
    問題の共通認識が揃っている
    あるべき姿のイメージが一致している

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  31. さまざまなふりかえり手法を試した
    ふりかえりカタログ
    https://speakerdeck.com/viva_tweet_x/retrospective-
    catalog-59bd3a29-314c-45dd-911b-f8e5f1308333
    Retrospective Community Templates
    https://miro.com/miroverse/retrospectives/

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  32. さまざまなふりかえり手法を試した
    Random Retrospectives
    https://www.randomretros.com/
    アジャイルレトロスペクティブズ
    強いチームを育てる「ふりかえり」の手引,
    Esther Derby (著), Diana Larsen (著), 角 征典 (翻訳)

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  33. さまざまなふりかえり手法を試した
    目的を達成できなかった
    ふりかえりに出てくる情報が採用したふりかえり手法の影響を受ける
    ふりかえり手法によっては情報共有が制限される
    本来議論したい話題を出しづらくなることがあった
    チームがポジティブになるふりかえりを採用したときに、メンバーの1人が
    ネガティブフィードバックを共有することができず、後日チーム外のマネー
    ジャーと3人で話し合いをすることになった
    それぞれのふりかえり手法に期待する効果がある
    闇雲に良さそうな手法を採用したのがよくなかった

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  34. 目的に沿ったふりかえりを
    設計する必要性に気付いた

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  35. ふりかえりを設計する

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  36. 目的達成のために必要なアクティビティを考える
    観測できる情報を集める 事実と解釈を分けて考える 問題の共通認識を揃える
    メトリクスの活用
    アウトプットの心理的
    ハードルを下げる
    事実、感情のデータ
    を整理する
    感情的な話題から
    事実を引き出す
    共通認識の醸成

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  37. メトリクスの活用
    何のために測るのか
    何を測るのか
     →プロセスの改善点をトラッキングするために計測する
     →仕事がどのくらいうまく進んでいるか

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  38. メトリクスの活用
    仕事がどのぐらいうまく進んでいるかメン
    バーが認知できるように問いかけを行う
    ボトルネックになっている工程はある?
    スウォーミングできてる?
    ベロシティは安定している?
    見積り健全性は?
    リードタイムは変化した?
    例:
    例:スプリントのPBIのステータス推移

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  39. アウトプットの心理的ハードルを下げる
    お気持ちを共有する場を作る
    反応がない = 自分の意見が受け入れられていないと感じてしまう
    ことがあるので、相互フィードバックの時間を設ける
    感情の共有が潜在的な問題を見つけるきっかけになる
    うまくいかない時の根本原因は感情に起因していることがある
    苦労話を共有すれば互いの経験から教訓を学べることもある

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  40. 事実、感情のデータを整理する
    Fact/Emotion, Positive/Negative
    の 2 軸のマトリックスを用意
    事実と感情を分けて考える

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  41. 感情のデータから事実を引き出す
    観測できていない事実を感情データから洗い出す
    事実質問を行う
    5W1Hのうち「なぜ Why」と「どう How」を徹底的
    に避け、「何 What」「いつ when」「どこ Where」
    「誰 Who」の4つの疑問詞を使う質問方法
    事実質問とは?
    対話型ファシリテーションの手ほどき,
    中田豊一 (著), 山崎美帆 (イラスト)

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  42. 感情のデータから事実を引き出す
    私たちは「なぜ?」と聞かれるとつい「言い訳」をするよう
    にできている
    「どう How」質問は、それに対してどうとでも答えられる
    だけに、相手を戸惑わせたり、確信のない答えを強要したり
    する可能性が高い
    相手の問題や失敗について「なぜ?」と直接聞くのは詰問や
    非難として受け止められるリスクがある
    事実質問で背景や意図を明らかにして気付きを促す
    引用: 対話型ファシリテーションの手ほどき, 中田豊一 (著), 山崎美帆 (イラスト), p10, p15, p74
    対話型ファシリテーションの手ほどき,
    中田豊一 (著), 山崎美帆 (イラスト)

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  43. 共通認識の醸成
    発散→創発→収束の3部構成
    発散フェーズではできる限り多
    くの情報を追加する
    創発フェーズでは情報を分類・
    比較・議論して気づきを得る
    収束フェーズではアイデアを絞
    る・結論・行動を決める
    スライドの引用: スクラムイベントを効果的な場にするためのファシリテーションの学び方 / Scrum Fest Fukuoka 2023
    https://speakerdeck.com/ama_ch/scrum-fest-fukuoka-2023?slide=17
    Dave Gray (著), Sunni Brown (著), James Macanufo (著),
    野村 恭彦 (監修), 武舎 広幸 (翻訳), 武舎 るみ (翻訳),
    ゲームストーミング, 2011, p.13

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  44. ふりかえりの流れを考える
    スプリントゴールの達成状況を確認
    前回のネクストアクションの効果を確認
    メトリクスの確認 & 気づいたことの共有
    スプリントの事実、感情データの共有
    議論することを絞り込む
    現状分析
    ネクストアクションを決める
    1.
    2.
    3.
    4.
    5.
    6.
    7.

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  45. ふりかえりの流れを考える
    スプリントゴールの達成状況を確認
    前回のネクストアクションの効果を確認
    メトリクスの確認 & 気づいたことの共有
    スプリントの事実、感情データの共有
    議論することを絞り込む
    現状分析
    ネクストアクションを決める
    1.
    2.
    3.
    4.
    5.
    6.
    7.
    発散
    創発 → 収束
    発散 → 創発
    収束

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  46. ふりかえりの流れのイメージ

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  47. フォーマットに起こす

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  48. ふりかえりフォーマットを作る
    ふりかえりフォーマット
    の詳細内容は左のブログ
    記事に掲載しております
    https://blog.cybozu.io/entry/2022/12/18/183000

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  49. 改善によって得られたこと

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  50. 改善によって得られたこと①
    問題の共通認識が一致するようになった
    情報が過不足なく共有される
    事実認識の一致を図る
    事実と感情のデータを上手に扱えるようになった
    言語化が難しいフワッとした情報も課題発見のきっかけになる
    主観的な情報から事実を引き出す
    問題の解決に向かう施策を実行するようになった
    安易なネクストアクションを立てなくなった
    発散、創発が充分できているか意識するようになった

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  51. 改善によって得られたこと②
    付箋の数と配置場所からチームの健康状態が一目で分かるようになった
    ネガティブフィードバックが多い状態 ポジティブフィードバックが多い状態

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  52. 改善によって得られたこと③
    チームメンバーがメトリクスを見る習慣がついた
    チームのふりかえりが継続している
    ふりかえり手法が他のチームにも広がった

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  53. さらなるチームの成長を目指して考えたいこと
    ポジティブフィードバックの扱い方
    チームがうまくいってるときに、さらなる成長に向けた施策を生み出す方法

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  54. 勇者(Scrum Master)の冒険は
    まだ始まったばかり...。

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