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巨大不明生物ゴジラの細胞生物学的考察:フィクションを成立させるサイエンスの想像力

 巨大不明生物ゴジラの細胞生物学的考察:フィクションを成立させるサイエンスの想像力

オープンサイエンス mini ワークショップ:京都クリスマスレク(チャー)
スピーカー:浜地 貴志さん(京都大学)
日時:2017年12月19日(火)18:30〜
場所:MTRL KYOTO

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Transcript

  1. 元素変換を阻害して増殖する極限環境微生物 元素変換 極限環境微⽣物 協⼒:M. Sunada 素材:いらすとや 細胞膜活動 抑制物質 ⼀般の微⽣物は 元素変換の影響を受け

    ゴジラ細胞周辺では 増殖できない 元素変換 微⽣物が創りだした
 物質が元素変換を
 抑制(ブロック)するため、
 増殖することができる ゴジラ細胞 ⼀般の微⽣物
  2. 存在感を増す極限環境微生物 (1) 極限環境とは? ➡ 海底火山のような熱水噴出孔などの高温・高圧や、
 DNAに突然変異が生じやすい高放射線量の環境。
 特に熱水噴出孔は、
 現在の地球上に繁栄する細胞性生物の起源を解明する
 手がかりを期待する生物学者も少なからずいる。 (2)

    ここでの微生物とは? ➡ バクテリア(原核生物)が主。
 我々ヒトのような真核生物と異なり、
 細胞内でゲノムDNAを包む核を持たない。 (3) いつ、なぜ存在感を増したの? ➡ 1980年代から加速的にDNA配列の解読が容易になった。
 バクテリアのDNA配列を比較すると多様性がハンパないことが
 次々に明らかになってきた。
  3. もうひとつ:DNAが人間の8倍?     大腸菌 ヒト キヌガサソウ (植物) 50倍

    生物ごとのゲノムサイズ(塩基対・対数グラフ) 10万 1000万 10億 1000億
  4. あとひとつ:進化と変態 (1) 「ポケモンは進化か」→変態(遺伝的にプログラムされている) (2) (シン・ゴジラの)ゴジラはプログラムされていないんですか ➡ 一個体がそのまま変化して、直立したり、皮膚が強化したりしたが、 おそらく出たとこ勝負。
 これを進化と呼ぶことに、むしろ抵抗は少ない ➡

    例えばヒトの疾病である癌の出現においては、
 ゲノムDNA配列における異変の蓄積を通じて細胞の特性が変化。
 この事象は、進化というフレームに合致している (3) 作中、矢口が進化と言った一方、巨災対発足時に
 間准教授は当初、生物学者らしく変態と言及。
 しかし、その後、間自身も進化という言葉を躊躇わなくなる。 ➡ 進化とも変態とも捉えうることに自覚的か。
  5. 「シン・ゴジラ」における空想科学の説話構造 専門用語をちりばめた 一見もっともらしいが 実は意味不明な発言 (例:ヒトの8倍の 遺伝情報) その直後に発言される 「**、ということか」 などで含意を提示 (例:もっとも進化した


    生物であることが確定した →進化してて凄い) 提示された含意だけ つないでいけば ひととおり意味・展開は
 わかる(ことにする) この部分は カッコよさがある。 この部分を深読みしすぎて ハマると、20年が平気で飛ぶ ので注意