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プロジェクトチームの停滞感をエモいふりかえりで活性化する

 プロジェクトチームの停滞感をエモいふりかえりで活性化する

2025年10月4日のスクラム祭りの福井トラックにて講演した際のスライドです。
https://confengine.com/conferences/scrummatsuri/proposal/22738

アジャイルなプロジェクトをスタートして活動をしているとさまざまな状況が見えて気になるようになってきます。
もっと笑顔が増えると思ったのにとか、活発な会話がされることを期待していたのに全然会話が活性化しないとか、メンバー間の協力や助け合いが起こらないとか、アジャイルだからと「やらねばならないこと」がどんどん増えただけで良いことが何もない、そんな声が囁かれるようになってくることが多くあります。

本来、ふりかえりではそのようなチームの課題が取り上げられ、どんどん改善していくための仕組みでありながら、やらねばならないことを生み出す辛い時間となり、逆に時間の無駄だから今週はスキップしましょう、辞めましょうと言われる始末です。

事実、形骸化したふりかえりは時間の無駄であることも多く、有意義で効果を得る時間になっていないことも多いでしょう。そこで、本セッションでは、エモいふりかえりにすることでどのような変化を起こすことができるのかや、エモいふりかえりを具体的にどのようにすれば良いのかについて実例も示しつつ実践的に学べます。

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Transcript

  1. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya このセッションの概要と対象者などについて • アジャイルなプロジェクトをスタートして活動をしてい

    るとさまざまな状況が⾒えて気になるようになってきま す。 • もっと笑顔が増えると思ったのにとか、活発な会話がさ れることを期待していたのに全然会話が活性化しないと か、メンバー間の協⼒や助け合いが起こらないとか、ア ジャイルだからと「やらねばならないこと」がどんどん 増えただけで良いことが何もない、そんな声が囁かれる ようになってくることが多くあります。 • 本来、ふりかえりではそのようなチームの課題が取り上 げられ、どんどん改善していくための仕組みでありなが ら、やらねばならないことを⽣み出す⾟い時間となり、 逆に時間の無駄だから今週はスキップしましょう、辞め ましょう⾔われる始末です。 • 事実、形骸化したふりかえりは時間の無駄であることも 多く、有意義で効果を得る時間になっていないことも多 いでしょう。そこで、本セッションでは、エモいふりか えりにすることでどのような変化を起こすことができる のかや、エモいふりかえりを具体的にどのようにすれば 良いのかについて実例も⽰しつつ実践的に学べます。 • スクラムマスター、 チームリーダー、 プロジェクトマネージャー、 ファシリテーター、 チームメンバー • SCRUMを実践する⼈ • アジャイルじゃないけどKPT(A)で ふりかえりを実践している⼈ • 振り返りや反省会をしている⼈ • とにかく形骸化したふりかえりを している⼈ 2
  2. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya はじめに No このまま

    ⽼害スピーカーによる 45分にも渡る当講演を お楽しみください!! 3 Yes XP祭りの天野勝さんのセッション参加した? ジャーーン
  3. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya 今⽇のアウトライン 1. ふりかえりのおさらい

    2. チームの停滞の考察 3. エモさの定義と理論 4. エモいふりかえりの技法 5. モチベーションとエモさの関係 4
  4. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya ⾃⼰紹介 松本 潤⼆(まつじゅん)

    • 合同会社 松本屋 • ⼀般社団法⼈ 戦災復興⽀援センター(WDRAC) 理事 • 国際コーチング連盟(ICF) Professional Certified Coach 主にチームや組織に⼊り、コーチングやファシリテーションを活⽤し て変容を促す実践経験に⻑ける。2004年頃からアジャイルプロセス 協議会と⽇本コーチ協会東京チャプターに⾝を置き、⽇本でのアジャ イルとコーチングの普及活動を⾏ってきた。 現場主義に重きを置き、机上の理論ではなく実際に実践するととも に、その考察と知⾒を講演やワークショップで伝えている。 活動はIT業界以外に、国際交流事業や福祉分野でのプロジェクト⽀援 やファシリテーションなどの研修も実施。現在は、アジャイル開発を 始めようとする組織やチームに、アジャイルマインドセット教育と実 践導⼊の⽀援を提供している。 5
  5. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya ふりかえり・・・・KPT(けぷと)法 アジャイル実践の 中で、プロジェクト

    ファシリテーション の⼀部として作成さ れた資料より抜粋 20年以上前から実践 され続けている鉄板 のふりかえり⼿法 プロジェクトファシ リテーションの資料 https://objectclub. jp/community/pf/ 7
  6. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya 繰り返して定着化/習慣化させたいが、、、 9 改善⾏動として、Tryを考えて設定することはできる。

    しかし、 うまく実⾏されないことが多い。 やろうとしたけれど、 何をやっていいのかわからない。
  7. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya KPTの拡張フォーマット:KPTA(けぷた)法 スローガンの様なTryを実践可能 なアクションプランにすること

    で、 ⾏動しやすくするための改良版 いつ、だれが、何を、どうする の様に、具体化していく。 プロジェクトファシリテーション 実践編:ふりかえりガイド https://objectclub.jp/downloa d/files/pf/RetrospectiveMeetin gGuide.pdf 10
  8. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya ふりかえり実施時に起こること 13 AIに聴いてみました。

    すこし、今回のセッションの肝である エモさに直結しそうな感じはないものの あるあるの内容ではないでしょうか? 全員が付箋に無⾔で書き出して、その後、 各⾃の発表をするだけで、対話もなくて 淡々と進んでいくパターン Problemではいちいち、発表に対してリー ダーやファシリテーター役が、問題解決的な 発⾔をして説得されるパターン
  9. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya チームが停滞しているとは? まずは「停滞してるって」どんな感じ? 期待に反して「笑顔が減って仏像のように」

    効率を優先で「会話がなくなり淡々黙々と」 ⾃作業納期で「助けるには助けられねばニワタマ」 ふりかえりで「やらねばならいことがマシマシに」 チームの主体性や⾃主性が無くなり、チームとして機能不全 に陥ってしまい、パフォーマンスが出ず成⻑が⽌まった状態 「やらねばならない」がマシマシになる理由は何か? 16
  10. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya プロジェクトファシリテーションでは PMが「計画達成のマネジメント」に重点を置くのに対して PFは「参加者の協調の場作り」に重点を置いています。

    PMは、計画の⽴案と実⾏、差異に注⽬した管理が中⼼で、どちらかと⾔うと「コマンド・ コントロール型」のマネジメントスタイルが背後にあります。 これに対して PFは、その場その場の変化に対応し、チームが協⼒し合って創発的に成果を出してい く、「リーダーシップ・コラボレーション型」の新しいチーム作りの形です。 PMは、成果を計画的に出していくための必須技術です。これに対して、 PFは、プロジェクトの現場を活性化し、モチベートし、協調関係を作るために必要な 技術です。 PMをプロジェクトの「動脈」とすると PFはプロジェクトの「静脈」といえるかもしれません。 静脈が詰まってしまっては、動脈がうまく働きません。 20 オブラブ、プロジェクトファシリテーションより抜粋 https://objectclub.jp/community/pf/
  11. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya ふりかえりの⽬的や意図 良いことを継続して習慣化する 関係性の質を⾼めてチームの⼒の向上をはかる

    ポイント: Problemよりも習慣化に向け実はKeepが重要 事柄の合理性よりも個⼈の納得度で気持ちをあげる チームの⼼理的安全性を⾼めチームの能⼒を最⼤可 当然、チームのやる気を削ぐのが⽬的ではない!! 21
  12. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya PFにある「モチベート」とは モチベート(motivate)するとは? 動機づける・やる気を起こさせる。

    ⽂脈次第でこんなニュアンスも 「奮起させる」「意欲を⾼める」「動機づける」 「〜する動機になる」「⼈のやる気を引き出す」 ⼼理学や研究の⽂脈では 「⾏動の動機」となり、 動機づけ理論のモチベーション(motivation)は、⼀般的な 「やる気」より広義で、⼈間の⾏動を⽅向づけ、活性化し、 持続させる内的プロセスを指す 23
  13. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya モチベーションとは(AIに聞いてみた) 「⼈間の⾏動を開始させ、⽅向づけ、強さを規定し、持続させる⼼理的メカニズム」 1.

    内容理論(What motivates?)  「何が⼈を動機づけるか」に焦点を当てる理論 マズローの欲求階層説 アルダーファーのERG理論 ハーズバーグの⼆要因理論 マクレランドの欲求理論 2. 過程理論(How motivation works?)  「どのように動機づけが⽣じるか」を説明する理論 期待理論(Vroom) 公平理論(Adams) 強化理論(Skinner) 3. ⾃⼰決定理論(Deci & Ryan) ⼈のモチベーションは「外発的」から「内発的」までの連続体で説明される。 内発的モチベーション(興味・好奇⼼)が最も持続的・⾼品質な⾏動を⽣む。 24
  14. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya PFにある「協調関係」とは ⼈々が⽬的を共有し、相互理解と信頼を基盤に建設的に関わ り合い、協働しながらプロジェクトを推進できる関係性

    ただし、エモさが協調関係に与える影響は正負ある 正の影響(プラス): 共感による結束、信頼貯⾦、モチベーションの伝播 負の影響(マイナス): 負の感情の拡散、同調圧⼒、感情の抑圧による不⼀致 マイナスの影響を抑え、プラスに働くようにしていく 25
  15. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya 「協調関係」にプラスに働くエモさ 共感による結束: 喜びや達成感の共有で「⼀緒にやった!」という⼀体感

    苦労や不安を開⽰し「⾃分だけじゃない」という安⼼感 仲間としての⼼理的安全性が⾼まる 信頼貯⾦: 常に感謝を⾔葉にして、相⼿の貢献を承認する 「この⼈は⾃分を尊重してくれる」という信頼貯まる モチベーションの伝播: 誰かの熱意や誇りを感じ、チーム全体に広がる エモさは「雰囲気」を作る要素で協調の雰囲気を後押し 26
  16. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya 「協調関係」にマイナスに働くエモさ 負の感情の拡散: 怒りや苛⽴ちが周囲に伝播して緊張感や防御的な態度に

    「誰かに⾮がある」という空気で責任の押し付け合いに 同調圧⼒: 感情や意⾒を抑圧して「場の空気」に過剰に合わせると 短期的には協調、⻑期的には不健全で対話が失われる 感情の抑圧による不⼀致: 本当の気持ちを抑え進み「表⾯的に協調、内⼼は不満」 このズレの重なりで、信頼関係が崩れやすくなる 27
  17. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya 前回のTry/Actionをエモくふりかえる 「実⾏したか」「成果が出たか」の結果は重要ではない 焦点を当てるポイント:

    実⾏してみて何を感じたか 実⾏しなくて何を感じているか 成果が出てどんな感じが得られたか 成果が出なくてどんな気持ちになっているか その時の状況やTry/Actionの設定具合で変化する 31
  18. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya Keepをエモくする 気分が上がる事はさらに求めてしまう 焦点を当てるポイント:

    嬉しかった事、楽しかった事、安⼼した事(不安解 消)、 助けた事、助けられた事、充実した事、達成できた事 達成感、充実感、充⾜感、⾃⼰肯定感、ワクワク感、 ⾃由感、成⻑感、安⼼感、貢献感、承認感、連帯感など ⼀⼈で得られるものと他者との関係性によるものがある 32
  19. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya Keepを「よかったこと」でエモくする 実践の中の「よかったこと」を継続できるようにする 焦点を当てるポイント:

    具体的な事柄や結果で「〜〜出来た」はもったいない 「終わってよかった」で⽚付けず、それによって得られ た感覚や、その過程で感じられたことを意識 「〜〜出来た」を「〜〜したから、それが感じられた」 ということは、端的に⾔うと「〜〜をする」だ!と変換 TODO的なコレをやって完了しましたは、どうでもいい 33
  20. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya Keepを「感謝」でエモくする チームとしての成熟を促すために、関係性を⾼めるきっかけ 焦点を当てるポイント:

    ⼈と⼈の関係性から⽣まれる感情、最初のうちは「〇〇 さん、△△で助けてくれてありがとう!」で⼗分 感謝は、⼀⼈仕事や割り振られ仕事、チームの関係性が 薄い時やギスギスしている時には積極的に ありがとうと⾔われて嫌な気分になる⼈は少なく、気分 が良くなるのでまた感謝されることをしたりする 34
  21. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya Problemをエモくする 客観的事実の上で主観的情動を丁寧に扱い動機づけする 焦点を当てるポイント:

    まずは、客観的事実(fact)をニュートラルに表現する 次に、その事象で感じている主観的情動を観ていく 客観的事実の裏や⼿前にある要因が、主観的情動を、 引き起こしている可能性もある 不安感、嫌悪感、怒り、苛⽴ち、悲しみ、怠惰、諦め、 無⼒感、劣等感、羞恥、不信感、孤独感、無関⼼、疲労 36
  22. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya 発⾔の中に「情動」があるか注⽬しそれを取り扱う 焦点を当てるポイント: 感情や感覚を表現したものを⾒つける。その際、⾃分の

    主観と⽐較し「そんなことはないよ」と説得しない 丁寧に、相⼿に寄り添いその感情に⽿を傾ける ex)「⾟いって書いてあるけどどんな感じなの?」 状況説明をしている時は、まだエモくない 「あなたの感じたことを聞かせて」と問いかけてみる Problemを「主観的情動」でエモくする 37
  23. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya Problemをエモくする 情動の源泉とその情動発現の要因の事象を確認 焦点を当てるポイント:

    情動に⽿を傾けて、それが発現する要因となった事象 (客観的事柄)を深掘りしていく ex)「納期が迫っていて⾟い」→「⾟いとは」  →「品質が下がるのが不安」→「…」→「…」 解決すべき対象が、納期に対してなのか品質に対してな のかも変化するし、その感情にどう寄り添うかが変わる 38
  24. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya Problemをエモくする 本当のエモさが⾒えてくるとモチベーションに影響する 焦点を当てるポイント:

    ⾃分の抱えるエモさが⾃⾝で感じられれば、それをどう にかしたいというモチベーションが湧く可能性がある どうにもならないと感じたらモチベーションは下がる しかし、⽬の前でエモく困っていれば、通常は助けたく なるのが⼈情でその関係性でチームを強化していく エモさは正負が表裏⼀体、関係性を作り正側にできる 39
  25. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya Tryをエモく創り出す 完璧な問題解決思考は⼿放して、⾃由にアイディアをだす ポイント:

    思いついたことは全て⼝にして誰かをインスパイアする ⼈のアイディアを否定したり評価したりしない やりたいこと、嬉しい、助かる、安⼼、楽ちんが重要 エネルギー感が落ちるやつは「ねばならない」の呪縛 Keep/Problemがエモければ、アイディアは出やすくなる 最初はとにかく発散的にアイディア出し実現性はActionで 41
  26. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya Actionをエモく決める ⾃発的なアクションだけを⼤切にする ポイント:

    Actionは⾃発的に「やりたいこと」だけが健全 「やらねばならない」は、チームの⼠気で解るので、 「本当にやりたいこと?」と確認しよう! やりたくないなら、やらない⽅がマシ とにかく、エモさが源泉の⾃発性を⼤事にしましょう 42
  27. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya ふりかえりの最後もエモく締める Actionが実際に実⾏された未来の気分で締める ポイント:

    Actionすると⼿に⼊る⾃分たちの良い未来を望んで 暗く重いムードで終えるのは厳禁 「これ〇〇さんお願いね」「ありがとう」と不⽤意に ファシリテーターやリーダーが、最後の確認や締めの つもりで⾔うと、ここまでのエモさによる動機づけが まぁまぁの確率で台無しになりますw 43
  28. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya エモさとモチベーション 45 ここまでお伝えしてきた通り、

    エモさ(情動)とモチベーションには密接な関 係があります。 エモさを上⼿く⾒える化して、モチベーション がチームにとって、プラス⽅向に傾くよう、 意識的に取り扱う事が重要です。
  29. Copyright (c) 2025 Junji Matsumoto / Matsumoto-ya おまけ 46 ふりかえりの中で、全ての意⾒をエモくやるの

    はとても時間と労⼒、⼼的負担がかかるので、 お勧めしません。 チームの改善にとってキーとなるトピックを 狙って効率よくエモくしましょう。