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「持続可能な社会づくり」に向けた解決すべき課題(自然地理学的視点):鈴木康弘(日本学術会議連携会員、名古屋大学減災連携研究センター教授)

 「持続可能な社会づくり」に向けた解決すべき課題(自然地理学的視点):鈴木康弘(日本学術会議連携会員、名古屋大学減災連携研究センター教授)

「持続可能な社会づくり」に向けた解決すべき課題(自然地理学的視点):鈴木康弘(日本学術会議連携会員、名古屋大学減災連携研究センター教授)
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持続可能な社会づくりに向けた地理教育の充実
-SDGs実現における教育の役割-
日本学術会議公開シンポジウム(2017Nov04)開催報告

http://www.iknowshachu.org/scj/

Taichi FURUHASHI

November 04, 2017
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Transcript

  1. 1.「持続可能な社会づくりに向けた解決 すべき課題の明確化」 : 政府等への提言 (日本学術会議提言「持続可能な社会づくりに向けた地理教育の充実」)  SDGsに基づいて、①主に地理教育が貢献すべき課題を見極め、②課題 解決の方法論をグローバルな視点と地域の視点から明らかにする。そして ③「解決する力」とは何かを具体的に明らかにする。 

    文科省は関係省庁や学術機関とも連携して、持続可能な社会の在り方や 解決すべき課題について、国民的な議論を深め、地理教育に反映できる ように取りまとめることが望まれる。  防災・減災においては「短期的な経済効率重視からのパラダイムの変換」 を求めた2007年の答申や、2014年の2つの提言、環境問題においては、 環境教育の統合的推進に関する2016年の提言が基本とされるべき。  対策の実現には利害が絡む場合もある。持続可能性を確保するための方 策を、現状の社会経済システムが必ずしも肯定しない場合もあり得る。こう した問題にどのように取り組むか。  日本学術会議を含む政府関係諸機関は、課題解決のために必要な社会 変革の方向性も見極める努力を続けなければならない。
  2. 防災教育の内容 「防災教育が重要、地形の理解はその基礎」  なぜ地形が重要か、標高だけの問題ではないことを納得 させることが重要  地形のタイプ名称だけを教えるのは止める 「防災教育を地理が担う」  防災教育は今のままで良いか?(体系化が不十分)

     避難「訓練」は必要だが防災教育とは異質。防災教育と は自ら考えさせること  現状の災害対応力はどの程度か、どこに改善すべき課題 があるかを考えさせる  「わかっちゃいるけど変えられない」日本社会を直すため の防災教育であるべき・・そうでなければ破綻するから
  3. 3.「持続可能な社会づくり」の方向性に関する 社会合意の必要性 : 防災を事例に 「問題を分かっていても変われないのが日本社会」  → 少なくとも問題意識を持てるように  →

    国策と必ずしも整合しないこともある 学術会議答申・提言:「地球規模の自然災害の増大に対する安 全・安心社会の構築」2007年  「短期的な経済効率重視の視点」から、「安全・安心な社会の構 築」を最重要課題としたパラダイムの変換  長期的な視点での均衡ある国土構造の再構築  リスク分散、将来の人口減を踏まえた適正化、首都機能のバッ クアップ体制等の整備
  4. 提言:「災害に対するレジリエンスの向上に向けて」2014年  レジリエンス向上のための防災・減災の推進  ①防災専門家の育成と人々の災害に対する意識啓発  ②災害時、被災地における司令塔設置と連携体制  ③防災・減災計画へのシステム冗長性の設計理念の導入 

    ④地域の実情に合った防災教育と、災害に関する自然史標本や遺構を活 用した「想起教育」の推進 提言:「東日本大震災を教訓とした安全安心で持続可能な社会 の形成に向けて」2014年  ①津波被害軽減に向けた学際的取組と社会還元  ②放射性物質の拡散の防止 (不安軽減の必要性に言及)  ③高レベル放射性廃棄物の地層処分研究の見直しと理解向上  ④安全安心で持続可能な国土の形成に向けた取組の強化  (科学的予測の向上と、利便性や短期的利益優先の見直し)  ⑤災害に対する理解と対応力を向上させるための教育・研究体制の改善  提言への取り組みが地理総合に反映される
  5. 「防災」に関しては「レジリエンス」(柔韌化) から考え、教える必要性  科学・技術の限界を考慮し、「防災・減災」を広義にとらえる  伝統的な知恵や文化・ライフスタイルの尊重  長期的サステイナビリティとの兼ね合い  Resilience

    Alliance(1999)による定義(「地域のレジアンス」香坂玲編)  1.Latitude (許容度、回復力)  2.Resistance (抵抗度)  3.Precariousness (危険度、現状の危うさ)  4.Panarchy (別のシステムの影響度)  社会的な軋轢の構造に触れないと気づきは生まれない  地理学界はこうした問題を避けて来なかったか?
  6. 「ナショナル・レジリエンス」の検証  国土強靱化基本計画(平成26年6月3日閣議決定)  「災害は、社会の在り方によって被害状況が大きく異なる。大地 震の度に甚大な被害を受け、長期間をかけて復旧・復興を図 るといった『事後対策』の繰り返しを避け、今一度、大規模自然 災害の様々な危機を直視して、平時から備えることが重要」  「東日本大震災から得られた教訓を踏まえれば、予断を持たず

    に最悪の事態を念頭に置き、従来の狭い意味での『防災』の範 囲を超えて、国土政策・産業政策も含めた総合的な対応を・・・ 千年の時をも見据えながら行っていくことが必要」  「このため、いかなる災害等が発生しようとも、①人命の保護が 最大限図られること、②国家及び社会の重要な機能が致命的 な障害を受けず維持されること、③国民の財産及び公共施設 に係る被害の最小化、④迅速な復旧復興、を基本目標として、 『強さ』と『しなやかさ』を持った安全・安心な国土・地域・経済社 会の構築に向けた「国土強靱化」(ナショナル・レジリエンス)を推進」 → ②のみ強調されていないか?
  7. 4.自然地理学的視点でアプローチすべき問題  災害予測、防災減災、地球温暖化、環境問題、エネ ルギー、核開発問題 活断層から考えると・・  阪神淡路大震災までは災害ハザードは非公開  その後、情報公開の流れの中でハザード情報提供 熊本地震でわかったこと

     活断層や長期評価の周知自体はある程度成功  しかし活断層災害の脅威は伝えきれていなかった  「どこでも強く揺れる」から「震度7は限られる」へ変換 が必要 →地理防災教育の貢献、軋轢も踏まえて