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DMMで自己組織化に向けてやってきたこと

 DMMで自己組織化に向けてやってきたこと

DMMでのアジャイル開発、特にチームが自己組織化するために行ってきた「チームのプロセス作り」について

naiban

May 21, 2022
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Transcript

  1. 自己紹介 内藤 聡(ないとう さとし) 合同会社DMM.com データ本部 データサイエンス部 プロダクトグループ スクラムマスター 中小SIer数社にて流通基幹系

    , 情報コンテンツ会社等の toB系システム保守運用開発を中心に、 SE, PM, PMO, ディレクター を経験、2019年DMMへ入社。入社時より 専任スクラムマスターとしてチームビルディングやチーム をアジャイルにする活動全般を企画実行している。 Certified Scrum Master® https://twitter.com/sasatoshin3104
  2. DMM.com での ナイトウ の守備範囲 DMMの横断組織であるデータ本部 データサイエンス部 プロダクトグループ 配下チームのうち、 主に レコメンド系プロダクト開発の2チーム

    を中心に、 専任スクラムマスターとして支援中 スクラム適用, チームビルド, メンバーのお悩み相談から経費でうちわ購入まで チームと組織が全力疾走するための土台作りを担当
  3. 自己組織化のためにやってきたプロセスの工夫 不確実性 への対応 キーワード 1. 日々の検査と適応が中心 2. ✕ 適当に計画する →

    ◯今ある材料で出来るところまで。 3. ブレそうな、今考えても仕方ないことを必要以上に検討しない( JIT) 4. デイリー、レトロスペクティブ、観察 5. うまく行っていることの確認ではなく、うまく行っていないことを認知し対処すること 6. 導入すればうまくいくではなく、うまく行っていなかったことが明らかになるだけ
  4. デイリースクラム • 検査 ◦ 3つの質問(省略版) ▪ 昨日やったこと、今日やること、障害を 見つけたか? ◦ 重要なのは

    ▪ 計画通りじゃない部分は何? ▪ それに対してどう手を打つ? • 適応 ◦ 計画の見直し(「どう手を打つ?」) ▪ 作業の見直し ▪ PBIの見直し ▪ スプリントゴールの見直し ◦ チーム全体(DevとPOと)で会話大事 ◦ 安易な見直しはモラル低下招くので注意 プランニング • 検査 ◦ 過去の実績 VS これから立てる計画 ◦ ベロシティ ▪ 「昨日の天気」 ▪ 過去の事実を拠り所にする • 適応 ◦ 実行計画(SBL)を作る ▪ デイリーで進捗確認しやすい大きさ ▪ 半日前後 日々の検査と適応
  5. デイリースクラム あるチームの例 • miro でタスクボードを作成 • このボードになるべく情報集約 & 可視化 ◦

    アジェンダ、バーンダウン、TRY、忘れたくな いボード、今日の目標、等 ◦ 「情報冷蔵庫」にしない • 「やべぇこと」 ◦ 3つの質問の3つ目、「何か障害を見つけた か?」よりも軽めのニュアンス ◦ 出やすさ考慮 • カンバン使わずガント ◦ 完了計画の可視化のため ◦ 「ここまでで終わらせるつもりだったよね」の気 づきを残すため
  6. デイリースクラム 物理出社時代の工夫 • 課題:話題発散で長時間化 ◦ トーキングスティック ルール ▪ トークン =

    発言権 ▪ それ以外 = 一生懸命聴く • 課題:アジェンダの流れ忘れちゃう ◦ カード化 • 結果 ◦ アジェンダ 一体型 トーキングスティック「うち わ」爆誕 ◦ タイマーを掛けてタイムボックス意識させつつ 開催
  7. スプリント プランニング ベロシティのヒット率 • ベロシティ増減を見て一喜一憂は無意味 ◦ 若いチームの100%以上DONE ▪ →まぐれあたりの疑念が拭えない •

    チームのペースが安定したか?が大事 ◦ ベロシティヒット率 ▪ 完了ポイント ÷ コミットメント ▪ 右図の折れ線グラフがなるべく100% 近辺で平らになると、チームが落ち着 いた、と判断できそう
  8. スプリント レビュー フィードバックを得る • レビューの目的 ◦ デモするだけではない ◦ ステークホルダーから今後へのフィードバック をもらうこと

    • 仕掛け ◦ レビューの最後にアジェンダを設置 ▪ 「フィードバックから新たなPBIを作る か?」 ▪ 「着手順を見直したいか」 ◦ チーム自身でフィードバックループを作れるよ うにしている
  9. チームのプロセスの検査と適応の場 • 「走りながらでは靴紐は結べない」 ◦ 一度立ち止まり、自らの行いや思考を 見つめ直す時間 • 「問題 VS わたしたち」

    ◦ 思っていることをフラットに吐き出し、全員で議論できるか? ◦ 「AさんがXXしたのが良くなかった」 → 「AさんがXXせざるを得なかったのはなぜ?」 • 様々なアクティビティの使い分け ◦ 議論の誘導は避けるが、 議論が活性化しそうなアクティビティを選ぶ ◦ うまくできたこと/やれなかったこと、事実/感情、それぞれに注目する • 「ふりかえりのふりかえり」 ◦ ふりかえり自体の質も高め続ける スプリント レトロスペクティブ
  10. スプリント レトロスペクティブ 最近やったアクティビティ • Timeline & 些細なことの積み重ね ◦ 時系列に沿って事実を書き出し ▪

    今回はバーンダウンに沿って ◦ やり方 ▪ 黄色;事実や感情を書き出す • ポジは上へ、ネガは下へ ▪ オレンジ:1%でも良いから良くなりそう なアイディアをいっぱい出す ▪ 効きそうなアイディアをドット投票で絞 り込み ▪ 紫:その中からSMART目標化 ▪ ピンク:仕立ての良さそうなものを次ス プリントのTRYのとして採用 ◦ 時系列に沿うので思い出しやすい
  11. スプリント レトロスペクティブ 最近やったアクティビティ • Speed Car ◦ メタファーを効かせたアクティビティ ◦ チームをスピードカー(ドラッグレースカー)に

    例えて ▪ チームを前に進めたエンジンは何? ▪ チーム減速のパラシュートは何? ▪ もっと改善するにはどうしたら? ◦ を聞いていく ◦ 全体的にメタファーが効いて発想が出やすい のかも
  12. スプリント レトロスペクティブ 最近やったアクティビティ • 感謝 ◦ そのまんま ◦ レトロスペクティブの最後にやる ◦

    気持ちを言葉にすることで心の栄養を届ける ▪ 贈られたほうも当然うれしい ▪ メンバー間の心理的安全性やモチ ベーションを高めるのに寄与 ▪ 何より、気持ちよく終えられる ◦ 類似に「360度感謝」 ▪ 一人ずつ全員に感謝を伝える
  13. スプリント レトロスペクティブ 最近やったアクティビティ • ふりかえりのふりかえり ◦ レトロスペクティブ自体のアンケート ◦ レトロスペクティブの最後に行う ◦

    ファシリの客観的な評価 ◦ 改善ポイントの汲み上げ ◦ 実り多いふりかえりにするための材料 • 類似でプラスデルタ(+/ Δ)もありますが、 後で集計したいのでGoogle フォームでやっ ています
  14. 自己組織化のためにやってきたプロセスの工夫 チーム化 への対応 キーワード 1. COVID-19前後で違う a. 群がりをどう想起させるか b. コミュニケーションプラットフォーム(miro,

    discord, とかとか) 2. 自己開示と共感、可視化 a. チームキャンバス、パーソナルマップ、ドラッカー風エクササイズ、デリゲーションポーカー、ムービングモ チベーターズ、ToMo指数、心理的安全性スコア、みんなで1on1
  15. • 五感 ◦ 視覚 ▪ 現物の本人を見ることが難しくなった ◦ 聴覚 ▪ 近くで聞こえていたザワザワがつかみにくくなった

    ◦ 触覚 ▪ 近くにいる空気感、雰囲気・気配がつかみにくくなった ◦ 味覚 ▪ 一緒にランチ食べたり飲みに行ったり難しくなった ◦ 嗅覚 ▪ 近くにいる空気感、雰囲気・気配がつかみにくくなった
  16. • 五感 ◦ 視覚 ▪ 現物の本人を見ることが難しくなった ◦ 聴覚 ▪ 近くで聞こえていたザワザワがつかみにくくなった

    ◦ 触覚 ▪ 近くにいる空気感、雰囲気・気配がつかみにくくなった ◦ 味覚 ▪ 一緒にランチ食べたり飲みに行ったり難しくなった ◦ 嗅覚 ▪ 近くにいる空気感、雰囲気・気配がつかみにくくなった 八方塞がり?
  17. チームキャンバス • チームの方向性やあり方を可視化し議論す るためのアクティビティ • 見開き1ページでワークできて残せる手軽さ が好き • 各項目の意味(ざっくり) ◦

    共通のゴールへの合意、個人のゴールを表明、 ◦ 自分(達)の呼称と役割の表明、 ◦ 共通のゴールに向かうモチベーションは?なぜそれをや りたいのか? ◦ 共通の価値は?我々は誰の代表者か? ◦ 共通のゴール実現、目的達成のために我々が働きやす くなるルールや約束事は何か? • 自己開示とチームビルディングが同時 にで き、議論と会話を段階的に深められる • 前後の枠との整合性 を確かめつつやれる • 最後にルールぎめがあることで価値最大化 を自分事に考えることができる 項目少ない版の 「チームキャンバス ベーシック」実施例
  18. パーソナルマップ • 楽しい自己開示アクティビティ ◦ Management 3.0 ◦ マインドマップ形式、8つの定形質問に答えて いく ▪

    家、教育、仕事、趣味、 ▪ 家族、友人、価値観、目標 • 使い所 ◦ これを事前記入してもらってオンボーディング ランチなんかをやると思いの外盛り上がる! ◦ 意外な共通点に共感したり得意分野、敢えて 話すことが少ないバックグラウンドなどを発見 • やりかた ◦ 手書き・ツールいずれもOK! ◦ miro上に全部貼る、チャットツールや Confluenceでチーム全員分を公開など ◦ 意外な方から反応あったりして management3.0日本語サイトより引用 http://management30.jp/2019/01/09/personalmap/
  19. ドラッカー風エクササイズ • ドラッカーが言いそうな答えにくい質問に答 えていく自己開示&期待マネジメントなアク ティビティ ◦ もとは4つの質問だが、+2している ▪ 自分は何が得意なのか ▪

    自分はどんなふうに仕事をするか ▪ 自分が大切に思う価値は何か ▪ チームメンバーは自分にどんな成果を 期待できるか ▪ このチームメンバーに期待しているこ とは何か ▪ このチームメンバーに感謝しているこ とは何か • 効き目 ◦ 自己と客観での認識ズレに気づけたり、 意外な期待・感謝に気づける • A面とB面がある
  20. SMとしての心がけ 自己組織化に向けて意識したこと キーワード • 観察する(PrOpERサイクル) • サーバント・リーダーシップ、声に応える信頼貯金、2歩先に行き待ち構える、組織文化を作り整える気持ち、カタを知り , カタを学び, カタに学ぶ、傾聴・共感、評価を期待しない

    ◦ カタ → 型 → 武道の型、型は先人の知恵の結晶、守破離、形無し、型破り • スクラムガイド2020にも「スクラムはシンプルである。まずはそのままの状態で試してほしい。そして、スクラムの哲学、 理論、構造が、ゴールを達成し、価値を生み出すかどうかを判断してほしい。」と書いてある
  21. 観察する • チームが止まった瞬間を探す ◦ 熱が失われた ◦ 話題が逸れた ◦ 集中力が削がれた ◦

    → この原因を「妨害事項」として管理 • PrOpERサイクル ◦ アジャイルコーチング(Rachel Davies・Liz Sedley)より引用 ▪ Problem:課題(選定) ▪ Options:選択肢 ▪ Experiment:実験 ▪ Review:レビュー 「2歩先で待つ」 • SCRUMMASTER THE BOOK(Zuzana Sochova)からインスパイア ◦ 本では「一歩だけ先を行く」 ▪ 先に行き過ぎるとチームがついてこな い ◦ 私は準備が遅い ▪ 一歩先よりもうちょっと先にいく ▪ 気づきを先に準備しておく ▪ ほどよきタイミングで「はいっ!」と出す
  22. 声に応える信頼貯金 • SM 1on1 の開催 ◦ 生の声を聴く ▪ 最近ワクワクしたことあった? ▪

    最近気になっていることある? ▪ SMにやってほしいことある? ▪ 次までに試してみたいことある? ▪ ただ聴く(傾聴) ▪ 共感 ◦ 声を聴いたらすぐやる ▪ できてもできなくても、それが信頼関係 につながる 組織文化を作るつもりで • アジャイル開発は、開発プロセスというより 組織づくり ◦ アジャイルであることは自己組織化 ◦ 自己組織化を目指すことは組織づくり ◦ 会話できることが全ての始まり ◦ 会話しやすい環境づくり ◦ もはや組織文化づくりの一端 • 目線は組織文化作りでも、足元をちゃんとみ て一つずつやる ◦ 「一歩だけ先を行く」 ◦ 「二歩先で待つ」
  23. アジャイルな「カタ」 • カタ(=型:武道の型)は先人の知恵、じゃん じゃん活用 • なぞるだけじゃなく、一歩踏み込み カタの意 味を考える ◦ 使ってみて、事実を観察し、結果を考える

    • 守破離 • 形無し、型破り アジャイルな「チーム」 • チームでの部分最適 では成長限界がくる • 全体最適 = チーム間・組織・組織間・会社 全体…という方向へ • 簡単なことじゃない • ひとりではできない、みんなで行く
  24. 評価を期待しない • 褒められるために活動しない(自分に都合良く振る舞 わない) ◦ 「アジャイルコーチとしての働きを認められる なんてことを、期待しちゃダメ」 ▪ アジャ イルコーチング(Rachel

    Davies・Liz Sedley)より引用 • SMは、時にはタフクエスチョンを投げかける役割、煙 たがられることもある ◦ 「賢い愚者」 ▪ 組織パターン(James O. Coplien, Neil B. Harrison)より引用 • それでもチームが成果を出せるようになるなら、時に は口やかましく言うことも厭わない気持ちで
  25. ふりかえり(まとめ代わりの YWT) 自身の経験から以下を発表 アジャイル開発の土台 = チームのプロセス = 自己組織化 不確実性に対する 日々の検査と適応と

    スクラムイベントの工夫 人の群がり想起とチームづくり事 例紹介 SM心構え チームプロセスづくり ≒ チーム/組織づくり ≒ 組織文化づくり カタの意味を理解することで より効果的になる カタをなぞるだけでなく、 事実を観察して、 課題に愚直に対応し続ける SM評価問題の難しさ 次また機会があったら、 チーム作りにフォーカス して 詳しくお話ししてみたい やったこと(Y) わかったこと(W) 次やること(T)