Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
建設的な現実逃避のしかた / How to practice constructive esc...
Search
Sponsored
·
SiteGround - Reliable hosting with speed, security, and support you can count on.
→
Pauli
April 11, 2026
Technology
130
3
Share
建設的な現実逃避のしかた / How to practice constructive escapism
【劇場版】アニメから得た学びを発表会2026 クロージングキーノート
https://engineers-anime.connpass.com/event/375981/
Pauli
April 11, 2026
More Decks by Pauli
See All by Pauli
「任せる」をちゃんとする / To delegate effectively
pauli
0
40
そんなのおかしいよ! 高い椅子に座って、素敵な事業開発に<中略>... それがどれだけ幸せなことか、 わかってるぅ!? / That is ridiculous! Sitting in a high-end chair, contributing to wonderful business development, using tools in an enterprise environment... do you have any idea how lucky you are!?
pauli
2
50
「決め方」の渡し方 / How to hand over the "decision-making process"
pauli
6
1.2k
新任部長から学ぶ 1on1 / Learning 1-on-1 Techniques from a New Department Head
pauli
1
36
好奇心という宝石 / The jewel of curiosity
pauli
0
29
マネージメントプリキュア!/ Management Precure !
pauli
1
62
フィッシュボウルのやり方 / How to do a fishbowl
pauli
2
660
子育てで想像してなかった「見えないダメージ」 / Unforeseen "hidden burdens" of raising children.
pauli
2
370
技術広報のOKRで生み出す 開発組織への価値 〜 カンファレンス協賛を通して育む学びの文化 〜 / Creating Value for Development Organisations Through Technical Communications OKRs — Nurturing a Culture of Learning Through Conference Sponsorship —
pauli
5
1.1k
Other Decks in Technology
See All in Technology
TUNA Camp 2026 京都Stage ヒューリスティックアルゴリズム入門
terryu16
0
670
サイボウズ 開発本部採用ピッチ / Cybozu Engineer Recruit
cybozuinsideout
PRO
10
77k
Oracle AI Databaseデータベース・サービス: BaseDB/ExaDB-Dの可用性
oracle4engineer
PRO
1
120
レガシーシステムをどう次世代に受け継ぐか
tachiiri
0
260
プロダクトを育てるように生成AIによる開発プロセスを育てよう
kakehashi
PRO
1
600
"まず試す"ためのDatabricks Apps活用法 / Databricks Apps for Early Experiments and Validation
nttcom
1
170
Cortex Code君、今日から内製化支援担当ね。
coco_se
0
270
「活動」は激変する。「ベース」は変わらない ~ 4つの軸で捉える_AI時代ソフトウェア開発マネジメント
sentokun
0
150
【AWS】CloudTrail LakeとCloudWatch Logs Insightsの使い分け方針
tsurunosd
0
130
15年メンテしてきたdotfilesから開発トレンドを振り返る 2011 - 2026
giginet
PRO
2
280
2026-04-02 IBM Bobオンボーディング入門
yutanonaka
0
200
主催・運営として"場をつくる”というアウトプットのススメ
_mossann_t
0
110
Featured
See All Featured
No one is an island. Learnings from fostering a developers community.
thoeni
21
3.7k
Bioeconomy Workshop: Dr. Julius Ecuru, Opportunities for a Bioeconomy in West Africa
akademiya2063
PRO
1
85
Chrome DevTools: State of the Union 2024 - Debugging React & Beyond
addyosmani
10
1.1k
Beyond borders and beyond the search box: How to win the global "messy middle" with AI-driven SEO
davidcarrasco
3
100
Tips & Tricks on How to Get Your First Job In Tech
honzajavorek
1
480
Design and Strategy: How to Deal with People Who Don’t "Get" Design
morganepeng
133
19k
From Legacy to Launchpad: Building Startup-Ready Communities
dugsong
0
190
WENDY [Excerpt]
tessaabrams
9
37k
The State of eCommerce SEO: How to Win in Today's Products SERPs - #SEOweek
aleyda
2
10k
Designing for Timeless Needs
cassininazir
0
180
Dealing with People You Can't Stand - Big Design 2015
cassininazir
367
27k
Building a Scalable Design System with Sketch
lauravandoore
463
34k
Transcript
建設的な現実逃避のしかた 株式会社ビットキー パウリ 2026.04.11 / 【劇場版】アニメから得た学びを発表会2026
本心から納得する未来を迎え入れ、 その未来を、決断を、人生を、 自分自身で蓋をせず走り抜けよう
パウリ @pauli_agile EM支援、DevHR、技術広報 WEB・iOSエンジニア → マネージャー → SM/EM育成。 現在はビットキーで組織開発・技術広報・ 採用を横断担当。
・EMConf JP立ち上げ・実行委員会 ・EM Oasis 立ち上げ・運営 ・Startup in Agile 立ち上げ・運営 ・EM Meetup 運営
今日は、
今日は、"現実" の話をします
今日1日、いろんなアニメからの学びを聞いてきたと思います 最後のセッションでは、少し重い話をさせてください
SNSを始めとして、たくさん情報が入ってきますね
「同年代が登壇し、 OSSを出し、年収を上げている」 「あの人、自分より成果出してるな」 「同期がテックリードになった」
見にいってるわけじゃない 勝手に入ってくる
こういう情報は 「比較」を生む
比較でモチベーションが上がる人もいる 比較で意気消沈する人もいる
"Those high in SCO tend to experience more negative affect
from social comparison, regardless of the direction of comparison." 社会的比較志向性が高い人は、比較の方向(上方・下方)にかかわらず、 社会的比較からより多くの負の感情を経験する傾向がある。 Buunk & Gibbons (2007):Social comparison: The end of a theory and the emergence of a field
だから、「比較するな」
だから、「比較するな」 ...は正論
正論では変わりづらい
もっと根深い "現実"がある
テックリードに進んだが、突き抜けられない
マネジメントに舵を切ったが、うまく回せない
「あの人と比べて劣っている」と感じる 他者からの評価でも、自分自身の中でも
私の目の前にあった"現実"は 確実に私を蝕んでいた
https://speakerdeck.com/pauli/manezimentopurikiyua?slide=38
「自分が活躍する見込みがないから、そのキャリアを選択しない」 本当にそれでいいのだろうか?
この"現実"をどう扱うか 一つの作品から考えたい
ひゃくえむ。 100m ごまかしが効かない世界
タイムという絶対的な数値 チームで補い合うことはできない 個の力が全て
エンジニアリングはチームで戦える 100mは一人で走るしかない でもキャリアは一人で走るしかない場面がある
この世界で、4人の人物に注目する トガシ、小宮、財津、海棠
※ ここからネタバレとパウリの解釈が入ります
4人がそれぞれ異なる"現実"を抱え 異なる向き合い方をしている
四者四様の現実との向き合い方
トガシ(作中、中〜後半までの) 本心に蓋をした主人公
トガシには圧倒的な才能があった 生まれつき足が速い それで友達も居場所も手に入れてきた
でもトガシは「走ること自体」に 熱がなかった
仲間、居場所、評価、走った先にある関係性... 走ることで得られる「環境」に意義を見出していた
仲間のため 周囲の期待に応えるため
一見、美しい チームプレイヤー。利他的。周囲から信頼される
でもそれは、自分の本心に 蓋をしたということでもある
「本当は自分がどうしたいのか」に向き合わなかった 環境を理由に「自分自身の探究」を怠った
社会人選手になったトガシは自問する ー「何の為に走ってるんだ?」
圧倒的だった中学、復活した高校 そして今、普通の選手になった自分 蓋をし続けた結果、走る理由を見失った
私はこのシーンを見て、 めちゃくちゃ人間臭い と思った
「チームのためにマネジメントやります」 「会社が求めてるからテックリード引き受けます」 「この技術が好きだけど、需要があるのはこっちだから...」
周囲の期待に応えることで、本心を問わずに済む
蓋をしている間は楽 意思決定を環境に委ねているから
でもいつか 蓋が外れる瞬間が来る
その瞬間に、自分が何のために走っていたのかわからなくなる トガシの「何の為に走ってるんだ?」と同じ
「チームのため」「会社が求めてるから」と期待で動く。 組織で活動する際には馴染みやすい反面、 キャリアを進めていくうちにミドルエイジクライシスに陥るかも。 仲間のため、期待に応えるため本心に蓋をした 一見美しい利他的な姿勢。でもそれは自分の欲求から逃げたということ 🔸 才能はあったが、走る理由を「環境」に委ねていた 🔸 蓋が外れた瞬間、走る理由を見失った 「何の為に走ってるんだ?」
才能がなくなったのではない。走る理由がなくなった 🔸 現実世界に置き換えると、、、 トガシタイプ:活動理由を「環境」に委ねる
小宮 自身の信念を貫く好敵手
小宮は辛い現実を忘れるために ただがむしゃらに走り始めた
そしていつしか 走ること自体が小宮の全てになった
100mに対して一切ブレなかった 最初から最後まで、軸を変えなかった
周囲がどう変わろうと 走る理由は自分の中にあった
現実の世界にもこういう人はいる トレンドに流されず 自身の興味関心領域を淡々と深掘りし続ける人
評価が追いつかなくても 本人は気にしていない
(正直、憧れる)
トガシ = 走る理由がわからず、環境に意義を見出す。 小宮 = 走る理由が内側にあり、一切ブレない。
辛い現実を忘れるために走り始め、やがて走ること自体が全てになった 周囲がどう変わっても軸がブレなかった 🟩 走る理由を生きる意味まで昇華したストイックさ 🟩 トガシとの対比 トガシ:走る理由がわからず、環境に意義を見出す。 小宮 :走る理由が内側にあり、一切ブレない。 🟩 現実世界に置き換えると、、、
自身の中に確固たる軸を持ってキャリア形成する 常に一つの目標だけを見据え、それ以外を削ぎ落とす 「人生の目標は?」に即答できるタイプ 小宮タイプ: Work As Life. 仕事と人生の目標の合致
財津 闘争心駆動の絶対王者
日本100m界の絶対王者 圧倒的な強さ。誰も並べない
財津は闘争心で走ってきた男 競い合うこと に価値を見出していた
「競い合って勝ち取った1位は、どんな記録より尊い」
しかし、速くなればなるほど 横に誰もいなくなった
「そこで見える景色は最下位のそれと同じだよ」
「横を見ても誰もいない。 こんなに退屈なことはない」
闘争心は使う相手がいなくなれば、 枯れる
現実世界でもこの構造はある 競う相手がいなくなることもそうだが、 競う競技そのものが変わってしまう 技術トレンドの変化、組織変更、評価軸の変化... かつて競い合っていた環境そのものが、気づけばなくなっている
「負けたくない」で走ってきた人 でも、その燃料はいつか切れるおそれがある でも、その燃料の使い所がなくなるおそれがある
理由が他者に依存している限り 軸がないことに近しい
「加速すればするほど皆は離れていく」孤独な景色 走る理由が他者に依存していると、自分ではコントロールできない 同僚などと競い合い切磋琢磨することに拘る 切磋琢磨することは良いのだが、それをやりがいに直結させると いつしかそれは他者や環境への依存になりかねない この状態を続けるとやる気が枯れてしまうかもしれない 「競い合って勝ち取った1位は、どんな記録より尊い」 競い合うことに価値を見出していた 財津タイプ:他者と競い合うことに拘る 🟥
闘争心で走ってきた絶対王者 🟥 速くなるほど横に誰もいなくなり、闘争心が枯れた 🟥 現実世界だと、、、
海棠 現実を見つめ、逃避する
17年間、2着 それでも走った人の話をする
キャリア15年超のベテランスプリンター
17年間、財津に勝てなかった
才能の壁絶対王者・財津がいる
身体の衰え、全盛期は過ぎている
後進の台頭トガシ、小宮といった若い世代が出てくる
現実世界で言えばかつては第一線だった人 技術トレンドが変わり、若い世代が台頭し 自分のスキルの賞味期限を感じる
海棠は 誰よりもその "現実"を正確に把握していた
自分のタイムの推移、身体の状態、財津との差 全てをデータとして冷静に理解している
目を逸らしていない むしろ誰よりも見ている
海棠の特異な点はここから
海棠は現実を見切った上で 結論を採用しなかった
「建設的な現実逃避」
現実を見ないことではない
現実を歪めることでもない
現実から導かれる "最も妥当な結論 "を 意志の力で 採用しない という選択
「自分は勝ってない」 これは事実
「だからもうやめるべきだ」 これは事実ではない
これは"結論"だ
事実と結論は違う
事実は受け止める でも結論は自分で選択できる
「記録が出ないかもしれない」を認め 「だから勝てない」を採用しなかった
自分のタイムの推移、身体の状態、財津との差を正確に把握 目を逸らしていない。むしろ誰よりも見ている 🟪 現実の解像度が異常に高い事実から目を逸らさない 「記録が出ない」は事実。「だからやめる」は結論 事実は受け止める。でも結論は否定し、自分で選ぶ 財津が伸び続け、小宮、トガシまでもが自分を追い抜いていく 「衰え」「引退」という現実を真っ向から否定する 🟪 「建設的な現実逃避」
= 現実を見切った上で、結論を採用しない 🟪 現実世界に置き換えると、、、 海棠タイプ:現実を受け入れ、逃避する 記録という絶対的な数値でなく、相対的に指標をもつことに拘る その相対指標は時代と環境変化によって変わり続ける 常に無上の目標を持ち続けることで飽きずに続けることができている
4人の整理 走る理由 現実への向き合い方 結末 トガシ 他者、環境(蓋をする) 獲得しやすい期待のみ受容する 走る理由を見失った 小宮 内側(確固たる目標)
確率と計算、傾向と対策 虚しさを感じる 財津 他者(闘争心) 燃料にする 燃料が枯れる 海棠 内側(選び直す) 見切った上で結論を再定義 17年目に抜いた
トガシに共感し、 小宮に憧れ、 財津に焦り、 海棠に活路を見出した
"現実"で思い出す
この4人、私の周りにはいた
そして私自身が、このうちの誰かだった
私自身、トガシのように、自己分析もそこそこに 他者や環境への貢献を「これがやりがい」と結論づけることもあった
私自身、小宮のように、確固たる目標を持って、 人生の大半の時間を費やしていることもあった
私自身、財津のように、他者と競い合い、 競うことで達成感を感じることがあった
そして今
海棠のように、現実を高解像度で見据え、 その現実一つ一つを認めて、本心に正直になり、 納得する未来を構築している最中
現実逃避 ≠ 怠惰に逃げること
現実逃避 = 本心から納得する未来を迎え入れること
あなたは今、誰に近いですか ?
明日からできること
1. 現実の解像度を上げる
なんとなく「ダメだ」「納得いかない」で終わらない 何がどうダメだと感じるのか、事実を言語化する
2. 走る理由を点検する
私は一時期、他人の名前で走っていた
「なぜエンジニアをやっているか」に 他人の名前が混ざっていないか
「Aさんみたいになりたい」中間目標としてはいい でも人生の目標として走る理由にすると 届かなかった瞬間に、届いた瞬間に走れなくなるかもしれない
100%切り離す必要はない でも30%でもいいから 他者がいなくても成立する理由 を持っておく
3. 事実と結論を分離する
事実:「同期のAさんはリードになった。自分はメンバーだ」
結論(?):「自分はAさんより劣っている」
この結論は脳が勝手に生成したもの あなたが選んだものじゃない
「事実はそう。 で、自分はどうしたい ?」
3つの実践 1. 現実の解像度を上げる 「なんとなくダメ」を事実に分解する 2. 走る理由を点検する 他人や環境のみに依存していないか 3. 事実と結論を分離し選択する 脳の自動生成を疑い、取り扱う
メッセージ
「それは事実か、結論か」
海棠は17年間、万年2着だった
勝てる保証なんてなかった
でも「勝てないからやめる」という結論を 採用しなかった
現実は見た 受け止めた
その上で 走ることを自分で選んだ
それが「建設的な現実逃避」
私のキャリアにも「勝てない現実」はあった 今もある
でも、その現実に結論を決めさせる必要はないと 今は思えている
自分はどんな現実を見ているのか そこからどんな結論を導いているのか まず、それに気づくこと
そしてその結論を 採用するかどうかを、自分で決めること
あなたが下したその判断は 誰にも邪魔できないし、するべきでもない
みんな気づいているはず
すでに負けを認めていて それをスッと受け入れている領域も あるということを
スッと受け入れられないのって そこに偏愛があるからではないか そこに憧れがあるからではないか
あとは自分の気持ちに正直になり、認める。 その判断を信じて、全速力で走るだけ
最後に
本心から納得する未来を迎え入れ、 その未来を、決断を、人生を、 自分自身で蓋をせず走り抜けよう