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技術書典から見た技術書の生態系について
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Masayoshi Takahashi
September 07, 2026
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技術書典から見た技術書の生態系について
Code4Lib Japan Conference 2026での発表資料です。
Masayoshi Takahashi
September 07, 2026
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Transcript
技術書典から見た技術 書の生態系について 2026/09/07 Code4Lib Conference 2026 株式会社達人出版会・テックベース合同会社 高橋征義
技術書典とは
技術書典とは 技術のおまつり いわゆる同人誌即売会 技術書に特化 商業書籍も売ってる 最近は年2回開催 オフラインとオンラインで開催 オフラインは1日のみ オンラインは2週間程度 IT・配信を活用
企業スポンサーも多数
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自己紹介
自己紹介 現在は北海道札幌市在住 20世紀からWebエンジニア 今も仕事で(手+AIで)コードを書 いてます 株式会社達人出版会 代表取締役 ITエンジニア向けの技術系電子書籍 の制作と販売 一般社団法人日本Rubyの会
代表理事 技術書典の運営(テックベース合同会 社) 好きな作家は新井素子
日本Rubyの会 などのイベントを主催 RubyKaigi 2022は三重県津市で開催 COVID-19後初のオフライン開催で大変 思い出深い 懇親会がなかったりとか 海外参加者対応が重かったとか 今回は4年ぶりに三重に来ました RubyKaigi
最近の趣味
最近の趣味 にコードを書かせること AI Claude Code, Codex, OpenCode このプレゼンツール Kotoyomi(Ruby) +
mruby-wasm-runtime スライドのスタイルとかもClaude Codeに相談しながら 内容を相談したらどうにもつまらない出来になったので捨てた PDF/EPUB管理・表示アプリ ChoroReader (Swift / Tauri) モデルの推論・訓練ツール Kohagi (Rust) Ruri v3等の埋め込みエンコーダー Torobi (Ruby + Rust) Rubyでfine tuning AI
本日のお題
本日のお題 技術書とコンピュータ書と同人誌 技術書典の概要 技術書典の経緯 技術書の制作 技術書の販売・配送 生成AIと技術書
技術書とコンピュータ 書と同人誌
「技術書」と「コンピュータ書」 技術に関する本 コンピュータに関する本 ……ではあるのだけれど、ちょっと含意がある
コンピュータ書とは 出版社サイドから生まれたカテゴリ 1989年にコンピュータ書籍を取り扱う コンピュータ出版販売研究会(コン販 研、現CPU)が発足 コンピュータ関連書籍を「コンピュ ータ書」として整理 増えるコンピュータ書を書店店頭で 整備する必要があった パソコンは使うための書籍が必要な
家電 「理工書」「医学書」とかよりはずっと 新しいカテゴリ いろんなジャンルにまたがる 工学 数学 ホビー ビジネス コンピュータが広く使われるようにな るにつれてコンピュータ書の幅も広が った
年(平成元年)のコンピュータ 1989 年 月設立の「コンピュータ出版販売研究会」がスタートとなりま “ 「コンピュータ出版販売研究機構」は、 す。コンピュータ書販売のインフラ作りと販売効率の向上をめざす出版社が集まり 結成されました。 設立当初、 1989
11 書店店頭にはコンピュータ書というジャンルはなく、主に「電子情報」の棚にまとめて置かれていました。急激な パーソナルコンピュータの普 及に合わせて、コンピュータ書の新刊発行点数も圧倒的に増加するという状況の中 で、早急に書店店頭でのコンピュータ書の整備の必要に迫られました。
年(平成元年)のコンピュータ 1989 東芝 dynabook(J-3100SS) NEC PC-9801N (98NOTE) ジャストシステム 一太郎ver.4 NeXT
初代NeXT 任天堂 ゲームボーイ 富士通 OASYS 30LX(初のラップトップ型ワープロ) NEC 文豪mini7HR(12インチ縦型CRT) 黎明期よりは少し後、普及期と言えそう https://museum.ipsj.or.jp/computer/word/0023.html
年(平成元年)のコンピュータ 1989 ワープロ専用機の全盛期(その後ほぼ絶滅) https://web.archive.org/web/20150121071228/http://rapas.doshisha-u.jp/ja/list_papers/get_dls.php?fid=28
技術書
技術書 もうちょっと技術者寄りの言葉 技術書典では広くとらえている IT系から理工書、それ以外の「技術」全般に この辺はコンピュータ書にも似てる 「技術者が読むやつ」
技術書 「 や機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、 “ 技術書典における「技術書」とは、 ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスから、その他科学・工学全般などのジャンルを対象としていま IT す。 情報通信やコンピュータサイエンスに限らず、数学、化学、法学など各種専門分野、通信、アルゴリズムなど各種 工学分野も技術書の範疇と考えています。最近はVTuberの方々や自然科学など、さらに様々なジャンルの本が集ま
ってきています。 たとえばプログラミング解説書のように現存する技術要素の解説を行うもの、架空の工学、未知の科学技術なども 対象です。また、作ってみた、「やってみた、などの体験談や考察、上記のジャンルに付帯した開発効率を高める方 法のようなライフスタイル、実体験も歓迎します。 自分の積み重ねてきたマニアックな技術や成果、ノウハウを詳細に書き記し世に広めたいと思いませんか? 細かく分けていくと数多くのジャンルがあり、技術書の範疇を厳密に定義することは難しいですが、ご自身の書こ うとしている書籍が「技術書」に当てはまるのか、特に迷う場合は運営までお問い合わせください。 https://techbookfest.zendesk.com/hc/ja/articles/360051698491
なぜ技術書の同人誌が必要なのか 従来の商業出版と現代の技術情 報のギャップ 技術が変わるのが早い 題材がマニアックすぎて数が売れなさ そう 現場の人が一番くわしい でも本を書く余裕はあまりない 同人誌なら出せるかも 書きたいところだけ書ける
それでも買ってもらえそう 分量が少なくても一冊になる パッケージとしてのまとまり感 編集が甘くても大目に見てもらえる
があればいいのでは? Web というのも一時期良く言われていた が、なかなかうまく行きそうな気配がない 無料の限界? Zennやnoteの技術記事もそんなに売れてる雰囲気はない 生成AIの時代になり、Webの衰退が加速している? 何が言いたいか良く分からない記事とか 何も言いたくないのかも(AIなので) 読む方はとにかくつらい
技術書コミュニティ 書いている人と読んでいる人の層が重なる ある技術では読み手、別の技術では書き手 専業のライターだけが本を書くわけではない 言ってみれば元々商業出版であっても同人誌っぽかったのでは 学術系出版だけではないのもあるかも?
技術書典の概要
技術書典の概要 「技術のおまつり」 技術書の同人誌即売会 技術書オンリーイベント 書いてる方はその技術のプロ 出版については素人 プロフェッショナリズムとアマチュ アリズムが共存 技術書典が提供するもの マーケット
「売り手」・「買い手」・「商品」 オフラインでは買い手の顔が見える 有料noteを書いても普通はあんまり 売れない 締め切り 人類の多くは締め切りがないと原稿 を書かない
「マーケット」という場 「技術書典コミュニティ」という存在はなさそう 「Rubyコミュニティ」「Web技術コミュニティ」より核がない感じ 技術書典そのものに帰属意識がある感じがしない やはり「マーケット」なのでは 一方、参加サークルにはコミュニティ感があったりする サークルがコミュニティそのものだったりコミュニティのメンバーだったりする 「本」からはコミュニティを感じる いろんなコミュニティが集まる場
技術書典の経緯
はじめるきっかけ さんのサークル「TechBooster」 Android本を作ってコミケなどにサークル参加 自分たちで即売会的なものをやりたくなったらしい 高橋は声をかけられた側 技術書の出版と、Rubyのイベント開催の経験 法人格としての達人出版会もあった 初期は達人出版会で会場契約等をしてた mhidaka
技術書典1 土 秋葉原通運会館 57サークル参加 入場待機列が伸びてやばかった 警察沙汰にならなくてよかった 初回の手応えとしては十分以上 2016/06/25( )
技術書典2 日 アキバ・スクエア 195サークル参加 一気に増えた 場所を移転 広がった面積があっと言う間に厳し くなった 2017/04/09( )
技術書典3 日 アキバ・スクエア 年2回開催 かんたん後払いを試験導入 技術書典の独自決済手段 利用者 195名/来場者 2750名(UU) 利用率
7% 立ち読み広場を導入 2017/10/22( )
技術書典4 日 アキバ・スクエア 246サークル参加 サークル通行証を電子化 かんたん後払いのiOS版を導入 つまり前回はAndroidのみだった 2018/04/22( )
技術書典5 日 池袋サンシャインシティ 2F展示ホールD 池袋に移転 面積が足りなくなったため めちゃめちゃ広くなった と、当初は思っていた 470サークル参加 すでにあまり余裕がなくなる
2018/10/08( )
技術書典6 日 池袋サンシャインシティ 2F展示ホールD 463サークル参加 一般参加の有料化 同人誌即売会では珍しかった お金よりも入場者待機列を減らした い、という意図 サークルべんりカードの導入
2019/04/14( )
技術書典7 日 池袋サンシャインシティ 2F展示ホールD+3F展示ホールC 642サークル参加 2フロア使うようになった 面積が足りなくなったため とはいえ導線設計が難しくなった 2019/09/22( )
技術書典8 2020/02/29-3/1 池袋サンシャインシティ → 中止 2日間でやろうとしていた COVID-19のため中止 急遽、応援祭を開催を決定 現在のオンラインマーケットの原型 元々準備はしていたが完成していな
かったので突貫工事でなんとかした
技術書典9 2020/09/12-9/22 技術書典オンラインマ ーケット 応援祭のインフラを利用 比較的長めの開催期間 Youtubeの活用 参加者向けの説明、本のつくり方の 紹介動画 「刺され!技術書アワード」開催
自薦で申請された技術書を全部紹介 してアワードを決める
技術書典11 〜 2021/07/10 2022/07/25 ケット オンラインマー オフライン開催(池袋サンシ ャインシティ展示ホールD) 「トライアル開催」という形でオフラ インを復活
アクリルボード衝立を全サークル分 導入 完全前売りチケット制 参加人数をコントールして密にしな い 2021/07/11
技術書典13 〜 オンラインマーケット 2022/09/11 池袋サンシャインシティ展示 ホールD 2022/09/23 技術書典カンファレンス〜シ ンカンオマチランド〜 オフライン正式再開(12はオンラインの
み) 技術書典カンファレンスを開催 (当然ながら)運営は大変… 大変すぎたせいか2回目はまだです 2022/09/10 25
技術書典16 〜 オンライン 2024/05/26 池袋サンシャインシティ展示 ホールD 完全手ぶらセット 初出展は準備に困る 何を持っていけばいいのかわからな い
テーブルクロス、お品書き、値札、「新 刊」「人気」シールなど 託児施設の無料提供 COVID-19前はやっていたのを復活 2024/05/25 06/09
技術書典18 〜 オンライン 2025/06/01 池袋サンシャインシティ展示 ホールD 技術書店 商業出版社から担当者が仕入れて販 売 2025/05/31
06/15
技術書の制作
技術書の制作ワークフロー 基本的には普通の出版と同じ 執筆 編集・推敲 組版 印刷・製本(入稿)
技術書とソフトウェア開発 合同誌はチームで作る 技術書制作はほぼソフトウェア開発の道 複数人で執筆・編集しても破綻しな 具立てで進む いようにする エディタで原稿執筆 原稿の変更をpull requestする 組版ソフトで本をビルド
差分や自動ビルド結果を見ながら作 LaTeX、Re:VIEW、Vivliostyle、Typst 業を進める など 個人出版の場合はもっとゆるく作れる Git & GitHubで変更を管理 GitHub Actionsによる共同作業や自動化
技術書の販売・配送
技術書の販売・配送 売り手の体験 紙と電子の扱い オンラインとオフラインの扱い 決済
売り手の体験 技術者は販売に関わらない人が多い おとなのキッザニア的 「在庫」がある ITだと物理在庫に触る機会が希少 ロジも考えることがいくらでもある 値付けが体験できる 適切な値段をつけることは本当に難 しい 技術書典は商業主義との親和性が比較
的高い 同人誌即売会にしては珍しいかも 成人向けはNG 二次創作っぽくならない 一方でマニアックなネタも喜ばれる
紙と電子の扱い
紙と電子の扱い 紙の本 技術書典は紙の本を推している 紙の本は体験が大変よい 「あとから印刷」 受注生産 リスクゼロで紙の本が作れる できるだけコストを下げる オフラインでは著者が搬入出する オンラインでは会期後まとめて発送
する 電子の本 などのファイルをダウンロー ドする方式 ビューアの提供は鋭意計画中 DRMは特にない 性善説の運用で今のところ特に問題 なく済んでいる PDF/EPUB
紙の本の配送 会期後にオンラインで購入されたもの を発送するのが大変 サークルはオンラインで売れた分の 本を運営に送る あとから印刷も売れた分だけ発注 印刷所は製本した本を運営に送る 運営に全ての本が集まる 運営から各購入者にそれぞれまとめ て発送する
相当複雑なオペレーション サークル 印刷所(運営が発注) 在庫から売れた分 あとから印刷した分 技術書典 運営 まとめて発送 各購⼊者
決済について 「かんたん後払い」を開発・運用 技術書典の独自決済手段 各サークルにQRコードつきの紙を配布 購入者は専用アプリでQRコードを読む そのサークルの販売物が表示される つまり商品マスタと連動 後でMyPageからPayPal/Stripe/Amazon Payで支払う 入金後ダウンロード可能になる
決済について 実際はかなり絶妙なしくみで運用している 開発そのものよりも法律が重い 決済は資金決済法を遵守する必要がある 技術書典は後払い方式で法律を回避している 前払式支払手段でも資金移動業でもない なぜ後払い方式が流行らないのか リスクを丸抱えすることになるため 消費者には有利なので規制が薄い 今のところはうまく行っている
生成AIと技術書
生成AIと技術書 生成AIは技術情報をばんばん生成できる 書籍より(?)詳しい 書籍を元に質問に答えてくれる 「(パソコンは)使うための書籍が必要な家電」 AI時代は書籍もいらなくなる? そもそも「(人間が)パソコンを使う」必要がなくなる? つまりパソコンはAIが使う道具になる?
生成AIと技術書 があれば技術書そのものがいらなくなるのか AI
時代の技術書の役割 AI におけるアライメント AI 「AIシステムを人間の意図や価値観に沿 って行動させること、その目的のため の取り組み」 RICE原則 堅牢性(Robustness) 解釈可能性(Interpretability)
制御可能性(Controllability) 倫理性(Ethicality) 「アライメント」のための技術書 「AI+エンジニア」をチーム・企業・技 術者コミュニティと協調させる AIは独自用語を作る 利用者とAIは理解しあっても他の人 には通じなくなるのでは? AIアライメントは人間の都合を一方的に AIに押し付ける 技術書は押し付けるものではなく、み んなで作って合わせるもの 静的・パッケージ・公開のコンテンツ としての技術書
まとめ
まとめ 技術書は出版・技術・コミュニティに支えられている 商業出版とは絶妙に違うやり方による出版の生態系を作っている 生成AI時代には技術書でアラインする必要があるのでは