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20230326AJGEOG_GIS

 20230326AJGEOG_GIS

・2023年日本地理学会春季学術大会「学校教育・生涯学習における地理情報活用の一般化」シンポジウム https://www.ajg.or.jp/20230224/16188/#S4
・「地図の民主化」に向けたオープンな協働型マッピングの展開

Toshikazu SETO

March 26, 2023
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Transcript

  1. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
    1
    「地図の⺠主化」に向けたオープンな
    協働型マッピングの展開
    瀬⼾ 寿⼀ @tosseto
    A02
    KOMAZAWA UNIVERSITY
    Visual Identity Guidelines
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    駒澤⼤学⽂学部地理学科・准教授
    東京⼤学空間情報科学研究センター・特任准教授
    (グローバル空間データコモンズ社会展開寄付研究部⾨)
    https://tossetolab.github.io/

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  2. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
    2
    Contents
    • 「KTGIS.net」におけるWebサービスと
    ボトムアップによる地理空間情報の活⽤
    • 「地図の⺠主化」をめぐる議論と研究
    • OpenStreetMapと「地図の⺠主化」
    • 本発表のまとめと展望

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  3. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
    3
    • 地図化(マッピング)ツール
    • ⽇本語では当時少なかった
    OSSのLeaflet教材も
    • 東⽇本⼤震災を契機とした
    災害関連地図の迅速公開
    • クライシスマッピング

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  4. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
    4
    市⺠調査における活⽤と普及
    後藤真太郎・⾕ 謙⼆・酒井聡⼀・坪井塑太郎・加藤⼀郎 2013.『MANDARAとEXCEL
    による市⺠のためのGIS講座―地図化すると⾒えてくる 第3版』古今書院.

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  5. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    ▼⾃治体の「オープンデータ」の普及に
    おいて,住所を緯度経度に変換可能な使
    いやすい仕組みがあまりなかった点も利
    ⽤促進の背景にあると推察

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  6. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
    6
    • 位置参照情報や住居表⽰住所,⽇本⾏政区画便覧データ(⽇本加除出版)等
    を基にした変換サービス。地理院地図の住所検索機能でも活⽤されている
    • 20年以上の運⽤実績があり⽇平均50万アクセス以上
    • CSVのリストを⼀括変換する仕組みのため⼤学や⼀定規模の⽤途︖
    0
    500,000
    1,000,000
    1,500,000
    2,000,000
    2,500,000
    3,000,000
    3,500,000
    4,000,000
    4,500,000
    5,000,000
    0
    20,000,000
    40,000,000
    60,000,000
    80,000,000
    100,000,000
    120,000,000
    140,000,000
    160,000,000
    2005-07
    2005-12
    2006-05
    2006-10
    2007-03
    2007-08
    2008-01
    2008-06
    2008-11
    2009-04
    2009-09
    2010-02
    2010-07
    2010-12
    2011-05
    2011-10
    2012-03
    2012-08
    2013-01
    2013-06
    2013-11
    2014-04
    2014-09
    2015-02
    2015-07
    2015-12
    2016-05
    2016-10
    2017-03
    2017-08
    2018-01
    2018-06
    2018-11
    2019-04
    2019-09
    Record/day Record
    参考︓東京⼤学CSIS「CSVアドレスマッチング
    (ジオコーディング)サービス」運⽤(2000年6⽉開始)
    レコード総数
    ⽇平均

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  7. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    KTGIS.NETにおけるWebGIS関連
    サービスの到達点
    • 地理学・GIS研究や地理教育のツールとしての利⽤+
    地理空間情報の操作⾯でのハードルを下げるための
    アジャイル開発
    – データ開発・ソフトウェアに関する学術論⽂も
    • 市⺠調査や教材採⽤など⼀般社会で活⽤される地理
    情報のツール&データインフラに
    – 今昔マップ︓旧版地図配信のデータ連携基盤
    – ジオコーディング︓代表的な住所変換ツールの⼀翼に
    • KTGIS.NETへの期待の⾼まり
    → 「利⽤者」は地理関係者にも多かったが,そのイン
    フラを維持する⽀援体制や研究としての評価が⼗分で
    あったか︖

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  8. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    参加型GIS研究と「地図の⺠主化」研究の背景
    • 「誰でも・いつでも・どこでも 利⽤可能」という
    キーワードのもと,1990年代以降地理空間情報の
    活⽤(cf. WebGIS)が⼤きく展開
    – 2004年Google Maps登場のインパクト
    – 地図を⾃由に使える国がまだ少ないという社会的背景
    • 「参加型GIS」の登場(若林ほか,2017)
    – WebGISによる地理的可視化やマッピング
    (≠GIS分析)活動を通じた社会参加が世界的に普及
    – ツール開発研究やデータのエコシステムに関する研
    究の増加(Yap et al., 2022)
    • 2007年頃〜「ネオジオグラフィー」
    「(初期の) ボランティア地理情報(VGI)」
    データ志向型の研究
    – 「ネオジオグラファー」が地理的知識に関する前例の無い
    ような⺠主化の促進に貢献(Warf and Sui, 2010)
    – 国連OCHAの戦略アドバイザー「技術⾯ではGoogle
    Microsoft,OpenStreetMapがマッピングの⺠主化を実現
    した」(Lohr, 2011)

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  9. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    「地図の⺠主化」をめぐる可能性と課題
    • ⺠主化: エリートや特権階級に限定されたプロセスや活
    動を、社会のより広い層(潜在的には全ての⼈)が利⽤
    できること
    • 実際は道具主義的では︖(Haklay, 2013)
    – ⺠間企業の地図API︓恩恵を受けるのは誰なのか︖技術に精
    通し教育を受けた⼈々の間でしか⾏われないのでは︖
    – ⼤都市部で⾼精度&⾼頻度に地図が整備される傾向
    〈今⽇的な課題(⼭本,2022など)〉
    → 国家介⼊や巨⼤テック企業でのデータ集中に伴う
    「スプリンターネット(分断)」・「デジタル囲い込み」への対応
    → 容易に利⽤出来る⽅法(≒オープン化)が重要な⼀⽅、その社会的影
    響を適切に評価することは難しい(瀬⼾&⻄村,2021)
    → 様々な空間スケールで起こる社会課題(コミュニティ問題・災害対
    応・⼈道⽀援など)を考慮して地図やツールがよりオープンに提供さ
    れる必要
    • Haklay, M. (Muki). (2013). Neogeography and the Delusion of Democratisation. Environment and Planning A: Economy and Space, 45(1),
    55–69. https://doi.org/10.1068/a45184
    • 瀬⼾寿⼀・⻄村雄⼀郎(2021)「クラウドソーシング時代における参加型調査と倫理性︓デジタル地図を事例に」、近藤康久・⼤⻄秀之編著『環境問題
    を解く: ひらかれた協働研究のすすめ』、かもがわ出版、pp.70-83
    • ⼭本眞⼈(2022)『コモンズ思考をマッピングするーポスト資本主義的ガバナンス』 BMFT出版部

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  10. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    OpenStreetMap (OSM)
    • Wiki的な⼿法で⾃由に地図データ作成を⾏う活動=地図のデータコモンズ
    – 運営は基本的にボランティアで⾏われ、OSM財団はサーバー管理やコミュニティ⽀援、外
    部機関との連携・調停・法務対応など窓⼝として機能
    – ⼆次利⽤可能(OdbL)なライセンスの地理データベース(≠ 背景地図)
    • 2004年にイギリスで開始。世界で1000万ユーザー超(Mapper)が登録
    – 全世界を⼀つのXMLデータで整備し、様々なアーカイブ配布も実施
    – ⽇本からは累計約35,000ユーザーが参加 (Seto, 2022)
    • OSMデータを操作・検証するツールの多くはオープンソースで開発
    – 地図エディタもオープンソース(GISソフトウェアに内包されている場合も)
    – Facebookなどのグローバル企業や国際連合での採⽤・ツール開発等の⽀援
    • OSM研究論⽂︓累計1,100本以上(WoS掲載論⽂のみを集計)
    https://www.mapbox.com/osm-data-report/

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  11. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    OSMにおける活動上の主な課題
    • 地理空間データとしての品質向上とモニタリング
    – 特にローカルでの⽇常的な活動に対するデータアセスメント
    – 意図しない&悪意のあるデータ破壊に対する対応 (Juhász et al., 2020)
    • 多様なアクターの出現と活動コミュニティにおける受容
    – 商業的︓企業メンバーの台頭とAI技術の進展 (Anderson et al., 2019)
    – ⼈道的︓ジェンダーギャップ問題・ローカルな貢献者や若⼿育成(Solís & Zeballos,2023)
    → 活動の⼤規模化に伴う活動のオープン性&組織体制維持の必要性 (OSMF, 2022)
    OSM財団は年1回の総会・⽉1回の理事会・年1回の国際コミュニティ会議を主催
    近年は企業買収への対抗の特別委員会や専属の職員雇⽤なども
    https://www.openstreetmap.org/user/mvexel/diary/400035

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  12. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    OSMCha: データ編集のウェブ確認ツール
    https://osmcha.org/
    • Mapbox社が開発しオープンソース化(ISCライセンス)
    • https://github.com/mapbox/osmcha-frontend/
    • 主にはデータの不完全性や破壊⾏為がないかを確認→ 精度向上を⽬指す

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  13. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    OSMを⽤いた⼈道⽀援マッピング活動
    Herfort, B., Lautenbach, S., Porto de Albuquerque, J. et al. The evolution of humanitarian mapping within the
    OpenStreetMap community. Nature Sci Rep 11, 3037 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-82404-z

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  14. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    OSMを⽤いた⼈道⽀援マッピング活動
    Herfort, B., Lautenbach, S., Porto de Albuquerque, J. et al. The evolution of humanitarian mapping within the
    OpenStreetMap community. Nature Sci Rep 11, 3037 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-82404-z

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  15. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    Herfort, B., Lautenbach, S., Porto de Albuquerque, J. et al. The evolution of humanitarian mapping within the
    OpenStreetMap community. Nature Sci Rep 11, 3037 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-82404-z
    OSMによる⼈道⽀援マッピング活動の分析
    • 2014年以降災害時以外の時期においても建物・道路マッピングの活性化
    • 他⽅2017〜2019年に参加者の減少(コミュニティとしての成熟や緊急性
    や危機感の減退︖)
    • 通常の活動に⽐べ,世代・ジェンダーのギャップは多少緩和︖

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  16. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    Youth Mappers活動を通じたマッピングの⼈材育成
    Solís, P., Zeballos, M. (2023). Introduction. In: Solís, P., Zeballos, M. (eds)
    Open Mapping towards
    Sustainable Development Goals
    . Springer, Cham. https://doi.org/10.1007/978-3-031-05182-1_1

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  17. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    OSMChaの2022年のデータによる⽇本でのOSM活動分析
    • ⽇本国内では1年間に約9万件
    (⽉平均約7500件)の編集
    実績
    • 1年間の総活動ユーザー数は,
    670。うち220が新規登録者
    • 1ヶ⽉以内に活動を始めた新
    規登録者「New mapper
    (220)」による編集が約1
    万9000件(⽉平均約1600
    件)で,全体で2割以上.
    • 組織的な⼤規模編集は,⽇本
    のOSM活動がアジアでも⽐較
    的早い段階で⾏われていたこ
    とから実験的に点在する程度
    • 実際の編集内容を詳細に分析
    すると,その多くが既存の
    データ⼊⼒がされている都市
    圏を中⼼とする主要道路や,
    地物の属性修正など修正作業
    が多く⾏われている.
    新しい登録者(220ユーザー)の⽉別活動回数

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  18. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    Seto, T.: Development Process of OpenStreetMap Data in Japan in Wakabayashi, Y.
    and Morita, T. eds.: Ubiquitous Mapping, Advances in Geographical and Environmental
    Sciences, Springer, pp.113-126, 153p, 2022.
    • OSMの全アーカイブデータから⽇本国内の参加者数や地物単位でのデータ整備状況を
    集計するツールをohsome APIを元に開発し、2008年〜2020年までの⻑期的な傾向把握
    • ⽇本国内では2011年の東⽇本⼤震災を契機として災害時に参加が多くなる現象が何回か
    ⾒られ,その後ワークショップや報道等での活動認知に伴い定着し増加
    • 道路や建物データの整備状況を都道県ごとに公式的なデータと⽐較し,地域的な遍在性の
    有無を確認。道路データについてはカバー範囲の割合は⽐較的⾼い結果も
    ▲2008年から⽉次別OSMのコントリビューター数 ▲国内主要道路(DRM)に対するOSM道路延⻑データのカバー割合

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  19. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    Japan Map Compare
    地理院地図・OSM・Bing・Google・Apple・Mapfan・HEREの各地図サー
    ビスを⽐較できるサイト(基盤B特設における研究成果として構築)
    https://mapcompare.jp/

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  20. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    「地理情報活⽤の⼀般化」に向けた
    (KTGIS.netとOSMの事例を元にした)展望と課題
    • 地理空間情報・デジタル地図=社会におけるデジタルコモンズ
    – 閲覧 → ニーズに合った地図の共有・作成
    – 専⾨家が想定する⽤途を超えた多様な活⽤の期待
    – 新たなデータ・ツール開発 → 研究としての評価も重要に
    • 「参加型」地理空間情報を巡る活動の意義と課題
    – 持続的に様々な⽤途に使える意義(オープン化とシェア)
    – ユーザー⽣成型データの正しさの検証(OSMの事例など)
    – 活⽤コミュニティの同質性(ジェンダーギャップや世代など)
    への懸念
    • 地理空間情報をめぐるリテラシー教育の新段階
    – 地図リテラシーだけでなくデータリテラシーも
    – 学校教育のみならず活⽤が期待されるすべての世代や
    広い活⽤コミュニティに共通して広げられるか︖
    – 地理空間情報活⽤推進基本計画(第4期)︓
    他分野の⼈材を引き込み⼈材育成や交流機会の創出の必要性を⾔及

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  21. 2023/03/26 2023年春季学術⼤会「学校教育・⽣涯学習における地理情報活⽤の⼀般化」
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    Thank you!
    [email protected]
    https://tossetolab.github.io/
    本シンポジウムの意⾒交換の続きは…
    13:00〜14:50︓「GISと社会」研究グループ集会(12号館202号室)
    話題提供︓地図アーカイブをオープンデータ化することの意義
    ー迅速測図データ公開から得たものー(岩崎亘典@農研機構)

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