つくばチャレンジ2021シンポジウム - connpass https://tsukubachallenge.connpass.com/event/234618/
1Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419つくばチャレンジ2021シンポジウムブラシレスモーターの停止方法~移動ロボットを止めるには~2022年1月8日オリエンタルモーター株式会社制御開発部 引頭 一樹
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2Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419発表の流れ・概要[第一部:理論編]ブラシレスモーターを用いた移動ロボットにおける,停止時の動作について• 急停止させたら,ドライバが破損した,理由は?• 具体的な停止方法・破損対策の紹介[第二部:アプリケーション編]最新のブラシレスモータードライバを用いた際の,停止の実現方法• 制御による減速,停止方法• 坂道での停止→手押しによる移動→自律運転復帰 の事例紹介ブラシレスモーターついて情報提供することで,つくばチャレンジに貢献する※本資料では,つくばチャレンジにおける停止について扱う
3Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419はじめに:ロボットを止める,とは?移動しているロボット 停止しているロボット速度v質量m速度v =ゼロ𝐸ロボ=12𝑚𝑣2 𝐸ロボ= 0質量m動いているロボットを止める → 蓄えられた運動エネルギーをゼロにするつくばチャレンジのロボット(速度1m/s,質量十数kg程度)で適切な方法は?→ 駆動に使うモーターをうまく活用する[主な要求]• 停止スイッチ押下により,走行を停止すること : 安全の確保• ドライバが破損しないこと : 実験を継続するために重要
4Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419はじめに:ブラシレスモーターのおさらいモーター : 電気エネルギーを,機械エネルギーに変換するもの電磁石(ステーター巻線)と永久磁石(ローター)の吸引,反発により,トルク(シャフトを回そうとする力)を発生するブラシレスモーターを回すためには,ドライバが必要(3相インバータ)スイッチング素子(FET等)のON/OFFの制御は,ドライバ内蔵のマイコンで行う ← ソフトウェアで動作を変えられるモーターの内部構造電源3相インバータドライバの内部回路とモーターとの接続マイコン+ゲート駆動
5Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419はじめに:モーターと発電機は同じものモーターと発電機は,構造が同一である(違うのは入力と出力の対応関係)モーターが減速トルクを発生すると,電力が電源に返ってくる(回生と呼ぶ)電源ドライバ電源ドライバモーター力行運転時 モーター減速(回生運転)時慣性体に蓄えられた運動エネルギーが電気の形で逆流するのが厄介電気エネルギー 運動エネルギー 運動エネルギー電気エネルギー
6Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419モーターに潜むエネルギー : 運動エネルギーだけではないモーターの巻線はインダクタンスを持つモーターの巻線には,トルクを発生させるために電流を流す.→磁気エネルギーが蓄えられる→電流を遮断すると高電圧が発生する(サージ電圧)ドライバを破損させずにモーターを止めるには→エネルギー源(運動エネルギー・磁気エネルギー)から発生する電力を,吸収する,逃がすことが重要𝑅𝑚𝐿𝑚𝑖 電流を遮断すると,コイル両端に高電圧が発生する→電子部品の耐圧を超えると,部品が破壊される
7Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419なぜドライバが壊れることがあるのか?ドライバは電子部品で構成される電子部品は,耐えられる電流,電圧,温度が決まっている(絶対最大定格という)→絶対最大定格を超えると,部品が壊れる急停止や電源遮断を行うと,絶対最大定格を超えるような電圧,電流が発生する場合がある.なぜ発生するのか?発生源はどこか?引用元:東芝デバイス&ストレージ社webサイトhttps://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/product/mosfets/12v-300v-mosfets/detail.2SK2232.htmlこのFETの場合ドレインソース間に60Vを超える電圧を加えると,破損する可能性あり
8Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419停止方式の一覧番号 方法 停止する主要因停止までの時間停止時の保持力ドライバ破損リスク#1モーター – ドライバ間を切断• 外付けリレー• インバータFET全OFFギヤヘッドの粘性摩擦,路面との摩擦✕ ✕ 少ない#2モーター線を短絡• 外付けリレー• インバータFET片側全ONモーターが発生するダイナミックブレーキトルク△ △ 少ない#3 ドライバの主電源断ギヤヘッドの粘性摩擦,路面との摩擦✕ ✕あり電源ラインへのコンデンサ接続逆並列ダイオードの外付けにより,リスク低減が可能#4 ドライバの制御による減速停止モーターが発生する減速トルク○規定された時間で停止○(位置サーボ)少ないただし,回生吸収能力が不足する場合は過電圧が発生
9Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419#1 モーター線の開放による減速:フリーラン停止電源ドライバリレーコイル停止スイッチ手段ドライバとモーターの接続を,リレー,または,インバータFET全OFFにより切断するモーターへのエネルギー供給がなくなり,モーターはトルクを発生しなくなる.路面との摩擦や,ギヤヘッドのグリスの粘性摩擦等により,エネルギーが消費され,ロボット停止メリット ドライバの破損リスクが少ない : モーターとドライバが物理的に切断されるためデメリット停止までの距離が長くなる : モーターは減速トルクを発生できないため保持力は無い.← 坂道では停止後,動いてしまう部品が増える:リレーの外付けが必要となる.リレー接点リレーで電流経路を切断するまたは,FET全OFF
10Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419#2 ダイナミックブレーキ(短絡ブレーキ)とはモーターが発生する電力を,モーター巻線や,外付け抵抗で消費させることでブレーキ力を得るe.g. モーター線3本を短絡した状態で,シャフトを手で回すと,回転が重たくなることを実感できる → ブレーキ力が発生短絡するための手法は2つ1) リレーで巻線をドライバから切り離し,かつ,巻線を短絡する回路を組む2) モータードライバの片アームFETを全ONするモーター巻線の等価回路(1相分)𝑅𝑚𝑖𝐿𝑚𝑑𝑖𝑑𝑡𝐾𝑒𝜔𝑖モーターが回っていると,誘起電圧が発生するモーター線を短絡すると,電流経路ができる.電流がブレーキのトルクを生み出す
11Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419#2-1 ダイナミックブレーキによる減速:リレー短絡式電源ドライバリレーコイル停止スイッチブレーキ抵抗器手段リレーを用い,モーター巻線をドライバから切り離し,ブレーキ抵抗に電流を流すモーター巻線とブレーキ抵抗に短絡電流が流れブレーキ力が発生するメリットドライバ破損のリスクが少ない :ドライバのFETに電流が流れないためブレーキ抵抗の値で,ブレーキトルクを調整できる弱いが,保持力があるデメリット部品が増える : 外付けのリレー,および,ブレーキ抵抗が必要になる.リレーの接点容量の選定を誤ると,リレー接点が溶着し,破損するC接点 3回路入りリレーの外観例通常運転時のモーター線電流に対し,余裕のある接点容量のものを選定する
12Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419#2-2 ダイナミックブレーキによる減速:下アームFET全ON電源ドライバ手段ドライバの下アームFETをすべてONにするモーター巻線が,FET経由で短絡され,ブレーキ力が発生するメリット外付け部品が無いため,コンパクトである弱いが,保持力があるデメリット短絡時に流れる電流が非常に大きくなる(巻線抵抗値が小さい,かつ,制限抵抗が無いため)→ドライバのFETに大電流のストレスが加わる → 定格を超えるとFETが破損→電流定格が大きいFETに変更することで対策は可能(ただし,FETの値段が上がる)ブレーキトルクの調整は困難出力が大きいモーターほど,短絡電流は大きくなる.この方法で止められるのは数十W程度の小型モーターが限界である下アームのFETを全ON
13Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419#3 停止方法 : ドライバ駆動電源を遮断する逆並列ダイオードを挿入し,電源に返す手段もあり電源ドライバ𝑈𝐿=12𝐿𝐼2コンデンサ両端電圧V+⊿V12𝐶𝑉2 + 𝑈L=12𝐶(𝑉 + ∆𝑉)2初期状態の静電E巻線からのエネルギ⊿Vの増加でエネルギを受け止める手段 電源スイッチをOFFすることで,ドライバへの電力供給を止めるメリット 外付け部品が無いため,コンパクトであるデメリットドライバの状態が不定のため,停止までの時間を規定できないモーター巻線の電流がゼロになり,巻線に蓄えられた磁気エネルギ起因の高電圧が発生する→ 外付けの電解コンデンサ(目安1000μF,50V),逆並列ダイオードにより対策が可能保持力はない電源SWこのコンデンサが重要開放された磁気エネルギを静電エネルギで吸収
14Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419#4 停止方法 : 制御された減速運転時間速度時間モータートルク時間ドライバ入力電力=トルク×速度負の電力=回生電力運動エネルギーが電力になって逆流する吸収させる手段モーターの回転速度を徐々に低下させ,ロボットを止めるモーターが運動エネルギーを電気エネルギーに変換する(発電機)メリット外付け部品が無いため,コンパクトである減速度を,制御でコントロールできる ← 重心が高く転倒しやすいロボットだと特にメリットありデメリット減速のための,専用ソフトウェアが必要モーターから発生する回生電力が,ドライバを破損する場合あり
15Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419#4 対策:減速度を抑える急停止の場合回生エネルギー主回路電圧電圧が急上昇する時間速度電圧の上昇が抑えられる時間減速停止の場合減速度を抑えると,単位時間あたりに発生する回生エネルギーを小さくすることができる→主回路電圧の上昇を低く抑えることができる→破損リスクを低減できる※回生の対策は#3を参照
16Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419第二部:アプリケーション編ロボット向けに開発されたモータードライバ(BLVシリーズRタイプ)を活用することでこれらをサポートつくばチャレンジにおける,モータードライバへの要求• 停止スイッチの押下により,モーターを停止できること• 停止後,自律運転へ復帰ができること• 停止後,シャフトの保持/フリーを切り替えられること : 坂道対策 / 手押しによるロボットの退避• これらを少ない工数で実現できること画像は電磁ブレーキなしのタイプ電磁ブレーキ付きもあり
17Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419ロボット向けモータードライバの技術動向• エンコーダの高分解能化• 低回転速度でもなめらかに回転• シリアル通信に対応(RS485 / CAN)• 制御PC-ドライバ間で情報のやりとりが可能(位置,速度,内部ステータス等)• 省配線化• モーター停止のための機能を装備• 外部信号による減速停止運転• 外部信号によるモーターフリー• モーターの電磁ブレーキの自動制御• 余裕のある出力(100W/200W)
18Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419アクティブモーター停止のためのドライバ機能 : 減速停止/シャフトフリードライバはロジック入力を4点備えるロジック入力に停止機能を割り当て,停止スイッチを接続する停止スイッチがアクティブになると,ドライバはモーターを減速させるフリー機能を割り当て,フリースイッチを接続することで,任意のタイミングでモーターをフリーにできる[ポイント]• 減速停止の動作は,ドライバで完結する.→もし,制御PCがハングアップしても停止可能• 制御優先度 :停止入力 > 制御PCからの速度指令→停止スイッチONにより,確実に,停止動作に移行• ロボットに応じた減速レートを,事前に設定可能e.g. 重心が高いロボットは,減速が急すぎると転倒してしまい,逆に危険モーター速度減速レートは事前に設定制御PCからの速度指令値に追従制御の主導権自律運転中制御PC ドライバの停止機能停止スイッチ時間OFFIOコネクタ停止スイッチフリースイッチ
19Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419アプリケーション例 : 坂道上での停止 → 手押し移動 → 運転復帰手押しで移動=モーターフリー自律運転再開ぶつかりそう!停止スイッチ押下自律運転中停止後,位置を保持=電磁ブレーキをロック想定するケース:1)坂道上で停止 → 停止後に保持力が必要2)オペレータが手押しでロボットを移動 → モーターフリーが必要3)自律運転を再開 → ドライバの動作ステータス取得が必要
20Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419制御PCモータードライバアプリケーション例: ブロック図電磁ブレーキ付きモーター電源指令(位置,速度,加減速レートetc…)状態取得(動作ステータス,位置,速度etc…)停止入力(B接点)(QSTOP)フリー入力(A接点)(FREE)停止スイッチフリースイッチRS485 or CAN通信
21Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419ロボットの状態モーター速度停止入力電磁ブレーキフリー入力自律運転 自律運転中断 自律運転運転準備完了出力(内部ステータス)停止ドライバ機能による減速運転停止後,ブレーキにより位置を保持保持 保持開放 開放 開放フリー入力により,ブレーキ開放→手押しで動かせるオペレータによる停止指示停止入力&フリー入力が非アクティブになったら復帰アプリケーション例: 坂道上での停止 → 手押し移動 → 運転復帰オペレータによるフリー指示
22Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419停止のための安全対策:フェイルセーフ設計ケーブルの断線を想定した場合: 停止入力はB接点にする→ 停止スイッチのケーブル断線時は,停止入力:有効 となり,ロボットは停止する停止入力(B接点)停止スイッチ ケーブル断線ドライバ制御PCのハングアップまたは通信ケーブルの断線を想定した場合 :通信タイムアウト処理を有効にする→ 制御PCからの通信指令が一定時間途絶したら,ドライバはモーターを停止するもし,停止入力がA接点だと,ケーブル断線時に,ロボットを停止できなくなる→ 危険!BLV-Rドライバは両機能ともに搭載しています制御PC 速度指令シリアルI/Fドライバハングアップ 通信ケーブル断線もし,速度指令を送った後に通信が途絶すると,最後に送った指令速度でモーターが回り続ける→ 危険!
23Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.TB-67419まとめ[第一部:理論編]ブラシレスモーターを用いたロボットの停止方法について紹介した.停止時に発生する回生・インダクタンス起因のエネルギーの処理方法が重要[第二部:アプリケーション編]最新のブラシレスモータードライバを用いた,停止の実現方法の紹介を行った• 制御による減速,停止方法• 坂道での停止→手押しによる移動→自律運転復帰
24Ver.01.02©2022 ORIENTALMOTOR CO.,LTD.