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伴走から自律へ: 形式知へと導くSREイネーブリングによる プロダクトチームの信頼性オーナーシ...

伴走から自律へ: 形式知へと導くSREイネーブリングによる プロダクトチームの信頼性オーナーシップ向上 / SRE NEXT 2025

2025年7月11日より開催された「SRE NEXT 2025 IN TOKYO」の登壇資料です。
https://sre-next.dev/2025/

▼関連資料
プロダクト全体で取り組むSREing イシューから始める信頼性・生産性向上の実践
https://speakerdeck.com/visional_engineering_and_design/sre-next-2024

「分からない」をゼロへ――BizReach SREが挑んだプランニング改善と信頼性強化
https://engineering.visional.inc/blog/681/sre-scrum-improvement/

ユーザー数100万人規模の事業成長を止めずに、レガシーコードと戦う
https://speakerdeck.com/visional_engineering_and_design/jjug-ccc-2022-fall

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Transcript

  1. 伴走から自律へ: 
 形式知へと導く SREイネーブリングによる 
 プロダクトチームの信頼性オーナーシップ向上 
 
 @SRE NEXT

    2025, 2025/07/12 
 株式会社ビズリーチ( Visionalグループ) 
 プロダクト本部 /プラットフォーム統括部 /ビズリーチプラットフォーム部 /SREグループ
 
 佐々木 康徳
 1
  2. 自己紹介
 経歴
 • 2019年〜 SIer
 ◦ 主に顧客システムの更改案件を担当 
 
 ◦

    リーダー/サブリーダーとして経験を積む 
 
 
 • 2024年〜 株式会社ビズリーチ
 ◦ SREとしてビズリーチプラットフォームの 
 
 信頼性向上に貢献 
 
 趣味
 • eSports(競技プレイヤー #スマブラ)
 • アウトドア(キャンプ . ボルダリング など)
 佐々木 康徳
 2
  3. アジェンダ
 1. SREについて
 1.1. ビズリーチのSREとは
 
 1.2. 私たちが目指すSREの将来像
 
 2.

    イネーブリングを進めた背景 
 2.1. SREが行っていた作業
 
 2.2. なぜイネーブリングが必要か
 
 2.3. ビズリーチSREはどうイネーブリングしていくか
 
 3. SECIモデルで進めるイネーブリング 
 3.1. SECIモデルとは
 
 3.2. ケーススタディ:WAF運用を「できる」ようになるため
 
 3.3. イネーブリングがもたらす価値
 
 4. 最後に
 4.1. 明日からできること
 7
  4. ビズリーチのSREとは
 • 日々の取り組み
 SREについて
 オンコール対応
 他チームへの
 イネーブリング
 システム&組織改善
 (Issue対応)
 学びへの投資


    (勉強会など)
 システム管理や運用における課題を解決し、 
 突発的な問題に速やかに対応する仕組みを設けて、サービスの信頼性を向上させる。 
 10
  5. 私たちが目指すSREの将来像
 直近⽬指している姿 SREについて
 ビズリーチSREが掲げる理想的な姿 
 Product A
 Product C
 Product

    B
 BizReach SRE
 Team A
 Team B
 Team A
 Team B
 Team A
 +SRE能力
 +SRE能力
 +SRE能力
 12 Product A Product C Product B BizReach SRE Team A Team B Team A Team B Team A Enabling
  6. 私たちが目指すSREの将来像
 直近目指している姿 
 SREについて
 Product A Product C Product B

    BizReach SRE Team A Team B Team A Team B Team A Enabling Embedded Embedded Embedded ビズリーチSREが掲げる理想的な姿 
 Product A Product C Product B BizReach SRE Team A Team B Team A Team B Team A +SRE能⼒ +SRE能⼒ +SRE能⼒ 13 プロダクトチームが信頼性の向上を 
 自律して行えるようにしたい 
 
 SREが伴走して、取り組みを浸透させたい 
 SRE プロダクトチームは 
 信頼性を向上する取り組みを 
 主体的に行える 
 SREは
 「開発者の『やりたいこと』への集中」 
 を後押しできる

  7. • 現代の開発状況
 ◦ システムの複雑化が加速する一方、ビジネスは「開発速度」と「信頼性」の両立を強く要求している
 ◦ これらの大きなプレッシャーの板挟みが、開発現場における大きな課題となっている
 
 • 課題
 なぜイネーブリングが必要か


    イネーブリングを進めた背景
 17 開発者の認知負荷の増⼤ サービス信頼性の 低下リスク サービス信頼性の
 向上活動のオーナーシップを
 プロダクトチームに
 持ってもらうべき
 開発サイクルの遅延と コミュニケーションロス
  8. • 定期的な運用
 
 
 
 • 突発的な運用
 イネーブリングを進めた背景
 WAF設定変更の検討と導入
 攻撃性リクエストへの遮断対応

    
 監視設計とアラート導入
 誤遮断検知対応 
 20 リクエスト状況分析
 新機能(アップデート)確認
 SREが行っていた作業

  9. SECIモデルとは
 SECIモデルで進めるイネーブリング
 • SECI(セキ)モデル※1
 ◦ 個人が持つ知識や経験などの暗黙知を、形式知に変換した上で組織全体で共有・管理し、 
 それらを組み合わせることでまた新たな知識を生み出すフレームワーク 
 


    
 
 • SECIモデルの4つのプロセス
 ◦ 共同化 (Socialization)
 ◦ 表出化 (Externalization)
 ◦ 連結化 (Combination)
 ◦ 内面化 (Internalization)
 ※1…野中郁次郎. Knowledge-Creating Company(邦題『知識創造企業』). 東洋経済新報社, 1995. https://str.toyokeizai.net/books/9784492522325/ Socialization 共同化 Externalization
 
 表出化
 Combination
 
 連結化
 Internalization
 
 内面化
 暗黙知
 暗黙知
 形式知
 形式知
 暗黙知
 形式知
 形式知
 暗黙知
 23
  10. SECIモデルとは
 SECIモデルで進めるイネーブリング
 Socialization
 
 共同化
 Externalization
 
 表出化
 Combination
 


    連結化
 Internalization
 
 内面化
 OJTやペアワークなどの体験共有を通じ 
 個人の勘や感覚などの「暗黙知」を 
 他者の「暗黙知」として直接伝えるプロセス 
 暗黙知
 暗黙知
 形式知
 形式知
 暗黙知
 形式知
 形式知
 暗黙知
 個人の勘やノウハウといった「暗黙知」を
 マニュアルや図解などの「形式知」へと
 変換(言語化)するプロセス
 言語化された「形式知」同士を
 組み合わせ体系化することで、より高度な
 新しい「形式知」を創り出すプロセス
 「形式知」を実践や反復練習を通じて
 使いこなし、個人のスキルという
 「暗黙知」として体得するプロセス
 24
  11. ケーススタディ:WAF運用を「できる」ようになるため
 Socialization
 
 共同化
 Externalization 表出化 Combination 連結化 Internalization 内⾯化

    SREがプロダクトチームの開発者と
 WAF運用のペア作業を実施
 暗黙知
 暗黙知 形式知 形式知 暗黙知
 形式知 形式知 暗黙知 個⼈の勘やノウハウといった「暗黙知」を マニュアルや図解などの「形式知」へと 変換(⾔語化)するプロセス SREが⾔語化‧図式化した情報を プロダクトチームの使いやすい形に 変化させたり、組み合わせる提案をした 開発者がオーナーシップを持って WAFの運⽤を進めることで ⾃分⾃⾝のスキルとして体得した 説明を聞いてもらう
 WAFについての説明や、具体的な仕組みを共有する。 
 全てをここで理解してもらう必要はなく、まずは情報を浴びてもらう。 
 一緒に手を動かす
 説明や共有が済んだら、ペア作業を行う。 
 SREの実作業を見せつつ、対話を通じて、 
 思考プロセス(暗黙知)のスキルトランスファーを行う。 
 25
  12. ケーススタディ:WAF運用を「できる」ようになるため
 Socialization 共同化 Externalization
 
 表出化
 Combination 連結化 Internalization 内⾯化

    SREがプロダクトチームの開発者と WAF運⽤のペア作業を実施 暗黙知 暗黙知
 形式知 形式知 暗黙知 形式知
 形式知 暗黙知 SREが持つWAF運用の手順を
 言語化してドキュメントに記した
 SREが⾔語化‧図式化した情報を プロダクトチームの使いやすい形に 変化させたり、組み合わせる提案をした 開発者がオーナーシップを持って WAFの運⽤を進めることで ⾃分⾃⾝のスキルとして体得した 属人化していたWAFの運用を、チームとして対応できるようにする。 
 「どのような通信を怪しいと判断するか」といった 
 基準や調査の手順を明確にしたマニュアルを作成した。 
 26
  13. ケーススタディ:WAF運用を「できる」ようになるため
 Socialization 共同化 Externalization 表出化 Combination
 
 連結化
 Internalization 内⾯化

    SREがプロダクトチームの開発者と WAF運⽤のペア作業を実施 暗黙知 暗黙知 形式知
 形式知 暗黙知 形式知 形式知
 暗黙知 SREが持つWAF運⽤の⼿順を ⾔語化してドキュメントに記した 表出化した情報を使って
 プロダクトチームの使いやすい形に
 変化させたり、組み合わせる提案をした
 「形式知」を実践や反復練習を通じて 使いこなし、個⼈のスキルという 「暗黙知」として体得するプロセス 改善活動の開始
 運用後に振り返りを行い、改善策を検討する取り組みを始めた。 
 
 課題
 調査の仕方や道具は既にある状態だったが、 
 複数の資料を行き来することが、運用の手間となっていた。 
 
 解決策
 表出化した調査手順とツールをまとめ、 
 運用しやすくするためにダッシュボードの作成を行った。 
 28
  14. ケーススタディ:WAF運用を「できる」ようになるため
 Socialization 共同化 Externalization 表出化 Combination 連結化 Internalization
 
 内面化


    SREがプロダクトチームの開発者と WAF運⽤のペア作業を実施 暗黙知 暗黙知 形式知
 形式知
 暗黙知 形式知 形式知 暗黙知
 SREが持つWAF運⽤の⼿順を ⾔語化してドキュメントに記した SREが⾔語化‧図式化した情報を プロダクトチームの使いやすい形に 変化させたり、組み合わせる提案をした 開発者がオーナーシップを持って
 WAFの運用を進めることで
 自分自身のスキルとして体得した
 理解して運用出来る状態になっている 
 プロダクトチームの開発者が主体的に 
 WAFルールのチューニングを提案、実施することで、 
 知識を自分自身のスキル(新たな暗黙知)として体得した。 
 新しい状況に対して適用できる 
 プロダクトチームの開発者が自主的にリクエスト分析を行い、 
 必要であれば遮断対応を進めている。 
 30
  15. オーナーシップを持った取り組み 
 • 実際にアラートが鳴った際、 
 プロダクトチームの開発者がオーナーシップを 
 持ってリクエスト分析を行っている 
 •

    WAFルールやモニタを、このようにチューニングしてはどう か、という対応や提案を自主的に行っている 
 ケーススタディ:WAF運用を「できる」ようになるため
 内面化の例
 31
  16. イネーブリングがもたらす価値
 • 意思決定の高速化
 ◦ SREに聞かなくても判断できることが増え、開発がスピードアップする
 
 
 • オーナーシップ
 ◦

    「自分たちが自分たちのサービスを守る」という自律性を養い、
 それを実現するための技術的なナレッジの蓄積が加速する
 
 
 • コミュニケーションの効率化 
 ◦ プロダクトチームの認知・技術レベルが高まることで、前提を省略して迅速にコミュニケーションが取れる
 
 32
  17. 最後に
 なぜイネーブリングが必要か
 課題「システムの複雑化が進む中で『開発速度』と『信頼性』を両立させたい」 
 →認知負荷を下げ、属人化を解消し、開発チーム全体の自律性を高めるとともに 
  本質的な価値創造に集中させ、開発サイクルの高速化する必要がある 
 どのようにプロダクトチームのオーナーシップを向上させたか 


    「なぜ◯◯が必要か」を説明し、こうしてほしい、どういう状態になって欲しいかを共有する 
 →ペアで作業したり、暗黙知となっているナレッジを表出化することで、 
  知っている状態からできる状態に変化させる 
 今日分かること
 35